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一年目 中休み その2(幕間)

 夜、マリス様と話をしていると、カティからお父様が呼んでいると言われた。お父様もゴドウィン邸に泊まっている。


「解りました、すぐに向かいます。マリス様、本日はお手合わせ含め、ありがとうございました」

「うん。ありがと。楽しかったよ」


 マリス様はあまり長々と話をしないが、その分素直に気持ちを伝えてくる。私も楽しかったと笑顔で告げて、マリス様の部屋を出た。

 お父様にあてがわれた部屋に入ると、手酌できつめの酒を飲んでいる。


「お父様、飲み過ぎじゃないですか?」

「大丈夫だ。歓談中に悪かったな。気功と言ったか、あれについてはゴドウィン卿と話がついた。儂も方法を教えてもらうが、色々と条件を付けられたよ」


 マリス様のお父上なら、そんなにあくどい真似はしないと思っていたが、甘かったのだろうか。しかし、元々私に教えたのだから、今更条件を付けるというのもよく解らない。


「何か不利になるようなお話でしたの?」

「いや、不利ではない。むしろ、援助をされるくらいだ」


 意味が解らない、と首を傾げると、かいつまんで説明してくれた。最近、隣国からよくちょっかいがかかっているが、どうにも国内に内通者がいるらしい。あぶり出すためにも、これからは連絡を取り合いたいという話らしい。


「それのどこが条件なのでしょう? まったく損は無いと思いますけど」

「この屋敷を出てから言える話では無いがな。隣国からの密偵を捕まえたらゴドウィン卿に引き渡すのも、条件の一つだ。実際にどこまでやるかは別として、捕まえた奴からの情報だとすれば、多少強引でもこじつけられるからな。ぼろが出ない程度に、ぎりぎりの線を進むのだろう」

「そうですか。マリス様に害が及ばなければ良いのですが……」


 聞いていると、かなり危ない感じがする。ゴドウィン公が原因でマリス様が学校に通えなくなったり、悲しんだりする姿は見たくない。


「それくらい、うまく立ち回るだろう。ゴドウィン卿は国王陛下のご友人でもあるからな」

「でしたら、そもそも危険な橋を渡らなくてもよろしいのではないでしょうか?」


 私の疑問に、遠い目をしながらお父様はつぶやく。


「この国も一枚岩では無いのだよ。お前が大人になる頃には、もう少し良くなっているといいがな……」


 政治の話はややこしい内容が多い。今まで辺境で暮らしていたため、中央での権力争いや暗躍などとは無縁の生活を送ってきた。これからも不要だと思っていたが、マリス様と長くつきあっていくには、もう少し勉強するべきなのかもしれない。


「ただ待っているのは、私の性に合いませんわ。お役に立てるよう努力しますので、色々と教えてください」

「まだお前は幼い。今は学校で学びながら、成長すればいい。学校も小さいとはいえ、立派な社会だ。そうだな、まずは学校の中で教師を除いて偉いのは誰か、どういう派閥があるかを調べるところから始めてみたらいいかもしれんな」


 派閥。まだ入学したてで、あまり考えてなかったけど、確かにいくつかあると聞いた覚えがある。こういった話は、グルケが詳しそうだ。一度、聞いてみる方が良さそうだ。


「解りましたわ。詳しそうなのが友人にいるので、調べてみます」


 お父様に就寝の挨拶をして、部屋を出る。私に割り振られた寝室に入ると、明かりがついていて、中にはマリス様とカティが待っていた。


「おかえり」

「マリス様、何かご用かしら? もう寝ておられるのかと思ったわ」


 二人は顔を見合わせると、どちらが話をするか言い合う。小声だったので聞き取れなかったが、カティが説明役になったようだ。


「お嬢様が、もしローリー伯と旦那様でうまく折り合いが付かなかったとしたら、シンシア様が怒られたのかもしれないとお考えになり、様子見にお伺いいたしましたの」

「そう。二人ともありがとう。問題は無いわ。うまく話ができたみたいで、今後も協力体制を敷いていくそうよ」


 伝えると、安心したようにマリス様が息を吐く。


「よかった。私も、もしシンシアと険悪になったら、どうしようかと思った」

「親は親、私は私ですわ。マリス様もそうなのでしょう?」

「そうだね。カティを除いて初めての友達だから、離れたらと思うと不安になった。ごめん」


 謝るような内容じゃない。お互いに若干照れながら話をするうち、徐々に眠くなってくる。結局、二人とも部屋に戻らず、三人で同じ寝台を使って眠った。

 学校と違い大きな寝台だったので眠るのに問題は無かったが、マリス様が部屋にいなかったせいで、侍女たちが屋敷中探して回ったそうだ。

 起きてから、三人揃ってしっかり怒られた。

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