表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/52

第参拾漆話 今宵、月は赤く染まり④

作者反省中。


大幅に書き直しが必要になってしまったけど、ついやっちゃったんだ(。・ε・。)

第参拾漆話 今宵、月は赤く染まり④


 日が落ちた。光はまだ膝を抱え込んだまま部屋の隅に座っていた。もう怒りは治まっていたが、先ほどの勢いに任せた爆弾発言に猛省している最中である。真澄は居た堪れなくなったのか一時間程前に部屋から消えた。残された晶もまだ不安そうに双眼鏡を離しはしていなかった。


「ねぇ晶、向こうはどうなってるの?」


光はやっとそう喉から声を絞り出す。それに晶は暗い声を返した。


「まだ状況は変わりません。ただ、先ほど流された人達も含めて殆どがもう生きる術を失ったように感じます。」


「そう・・・。」


光はその悲観的な声に一言そう呟くように返す。


「あの、それでどうするんですか?私は麻子の安否が気になるんですが・・・。」


晶は双眼鏡を覗き込みながらそう言った。光はその言い回しに当然ながら、少女を救いたいという彼女の意思を感じる。


「助けたいの?」


「出来れば。私だけ逃げ出したわけで、それであんな事になっちゃったわけで・・・。」


その答えに光はげんなりとした目を晶に向けた。


「あのね、言ったでしょ?あんたが気に病む事は無いのよ。あんたはこれから好きなだけ生を謳歌したらいいの。今まで窮屈な生活をしてたんでしょ?楽しめばいいじゃない。」


「誰かの犠牲の上に成り立った幸せって意味があるんでしょうか・・・?」


そう言った晶に、光はさらに濁った目を向けた。


「あのね、あんた今の状況が分かってないでしょ?」


「といいますと?」


「私は、あなたを気に入ったから逃げるのに協力したの。だけど、他の人達は知らないわよ。最初に協力してあげるって言った事はもう達成しているわ。それをあれもこれも助けて欲しいなんて言われても、私達にだって限界があるのよ。今回はもう無理よ。あの工場はすでにゾンビの巣窟と化している。それに頭のイカれた人間も数人だけど居座っているわ。私達が今ここに居られるのは、奴らが海を渡る手段を持っていないからよ。もし船なんか持っていたら、すぐにでも逃げ出してる・・・。」


「そんな・・・。」


晶はそう言うと黙ってしまう。


(桜井なら喜んで助けに行くかもしれないけど、私はご免だ。情報収集に寄っただけの場所でお荷物まで抱えてこの先だってどうなるか分からない。そりゃあ、この子に同情するわよ。いつまでも神様だって崇め奉られ、プレッシャーも相当なもんだったでしょう。だから私は彼女だけ特別に逃がした。だけどあの工場がどうなろうが知った事じゃないわよ。)


光は晶を見ないようにしながらそんな事を考える。晶の瞳は、全く邪気の無いものだった。そんな目で見られると、罪悪感で押し潰されそうになってしまう。何より、光の目的は自分と真澄が生き抜く事にこそある。


「あの、桜井さんに相談してみます・・・。」


晶はそう言うと、ドアを開けて階下に降りていった。





 真澄は防波堤の隅に座って一服している最中だった。いつもは吸わないタバコに少し咽ながら向こう岸を見ている。精神を安定させるのには一役買っているが、その代償は大きいものだ。吸い続ければデメリットしかない。こりゃ続けたら寿命が縮むなと独り言を交えながら真澄は視線の先で起こっている悲劇をぼんやりと眺めていた。


「あの、ちょっといいですか?」


不意に声を掛けられ、真澄は反射的に火の点いたタバコを海に投げ捨てた。内心しまったと思いながらも後の祭りだ。悔やむような目で波間に消えたタバコを名残惜しそうに眺め、視線を声のした方に向ける。そこには夕闇に溶け込むように赤毛の女性が立っていた。


「ああ、晶さんか。先輩かと思いましたよ。」


タハハと頭を掻きながら真澄はそう微笑む。それを晶はじっと見つめていたが、やがて口を開いた。


「麻子を助けたいんです。」


「でしょうね。でも無理ですよ。」


真澄は顔から笑みを消して即答した。その意外な返事を受けて、晶はぐっと口をつぐむ。


「先輩も無理って言ったんでしょ?だから俺の所に来た。でもね晶さん。先輩がダメって言うなら俺もダメです。」


「どうしてですかっ!?私の時は助けてくれましたよね。なんで麻子はダメなんです?」


希望を失った晶はそう真澄を責め立てるように言葉を続けた。


「何ていいますか。俺ね、先輩のお陰で今生きてるんです。だから、先輩の決定は逆らわないようにしてるんですよ。」


真澄はそう呟くように繋げた。


「光さんの命令は絶対なんですか?どうして・・・?私は逃がされてもあそこで人が死んだら私は・・・。」


「状況が違うんですよ。あなたを逃がしたと言っても僕らは道具とアイデアを貸しただけです。途中で拾う以外は全てあなたが自分でやったんですよ。だから僕らは厳密に言えばあなたを救ったわけじゃないんです。そうですね、言うなればあなたが勝手に助かったとでも言いますか。でも今回は違う。あそこに戻るのは自殺行為だ。晶さんは今まで箱庭で暮らしていたんで知らないでしょうが、あんな工場の中に十以上のゾンビが居れば簡単に外に出てきますよ。やつらの力は半端じゃないんです。俺は身をもって知ってる。だからあと幾ばくもしない内にあそこは地獄になります。もうフェンスで守られてるとか意味ないんですよ。破られる前に八島さん達が海に落としていたから今まで持ち堪えただけなんです。」


真澄は少し寂しそうにそう言った。八島とは少しだが話した間柄だ。正直見捨てるのは忍びないのだろう。だが、そこで情に流されれば自らの身も滅ぼす。それは今までの経験がそう言っていた。


「もういいです・・・。」


晶はそう言うと、スーパーハウスの中に戻っていった。


(ごめんね、だけど俺だって死にたくはないんだよ。それに先輩も・・・。)


真澄は夕闇に消える赤毛にそう謝罪しながら、二本目のタバコに火を点けた。





 無言の夕食。三人とも言葉を発しなかった。理由はいくつかあったが、主に晶の絶望したような表情に原因がある。


「諦めなさい。何度言おうが無理なものは無理なんだから。」


光がいい加減に嫌気がさしたのか、そう少し強い口調で晶をたしなめた。その言葉に晶は一瞬顔を上げたが、すぐに俯いてしまう。


「まぁ先輩、晶さんの気持ちも汲んであげましょう。でもね晶さん、最初に言った通り、この世界に未来はありません。実際に生き残りがいても、限られた空間で食料が無くなるのを恐れながら細々と暮らしているだけです。僕らの推測ですが、あなた方の工場のような場所は稀なんですよ。でも食糧問題は常に頭の隅にあったはずです。それにゾンビの本当の恐ろしさをあなたはまだ知らない。だから助けに行って欲しいなんて簡単に口に出すんです。俺も出来ればそうしたいですけど、無理なんです。今までも情で動いて、そして仲間を失ってきました。街なんて何人死んでるか分からないくらい人が死んでいます。今生きている事が奇跡なんですよ。ちょっと聞いてます?」


晶は真澄の言葉にピクリとも動かない。それを見た光は、いきなり晶の胸倉を掴んだ。


「あのねっ!あんただって見たでしょう?あそこはもう終わりなのよ。近付けても、上陸した途端に殺されるわ。もうあそこにゾンビを排除できる人が居ないの。だから中の連中が出てきたらフェンスの中だろうが決して助からないわ。それでも行きたいなら、あなた一人で行きなさい。それなら止めはしないわよ。殺されるだろうけどね。」


光はそう言うと晶を開放する。晶は床にストンと腰から落ちたが、まるで無反応だ。光はやれやれと首を横に振る。真澄もそれを見て苦笑を浮かべた。


「私が一人なら。」

 

不意に晶が喋った。真澄と光は顔を見合わせる。


「私が一人で行くなら、送ってくれるんですか・・・?」


光は内心しまったと後悔する。晶は目が据わっていた。思い悩んで出た答えがそれなのだろう。先ほどの光の脅しを真に受けてしまったのだ。真澄もやばいと感じつつ、光を伺った。


「あのね、それは物の喩えであって、自殺と同じよそんな・・」


「送ってくれるんですよねっ!?」


晶が大声を出す。それに光は黙ってしまった。


「行くなら、早い方がいいです。今から、私を向こうへ連れて行ってください・・・。これは私が責任を取るべき問題です。だから私は行かなければなりません。」


もう梃子でも動きそうに無かった。光はその覚悟の瞳を見て、諦めた。縛り付けてでもここに留める方がいいのだろうが、そんな事をすれば一生この色の違う二つの目をまともに見れなくなるだろう。


「いいわ、だけど私達は絶対に上陸しない。あなたも無理だと判断したらすぐに逃げなさい。私達は岸から離れて待っている。それは譲れないわ。危険だと思ったら迷わず海へ飛び込んで。これはお願いよ。」


「分かりました。」


晶はそう呟く。覚悟を決めてしまった者を無理にでも引き止めるべきだったのだろうが、真澄と光はここで判断を誤った。





 頭上には月が瞬いている。昨夜とは打って変わって普通の月だ。微妙に欠けた十六夜とでもいう形をしている。その光に気圧されるように星がチラチラと輝いている。本当は月の何千倍も大きな天体なのだろうが、どうやっても地球の夜空では月が王様だった。


「さぁ、着いたわよ。いいわね、私達はここから少し離れた海上にいる。少しでも危険だと思ったら、すぐに海へ飛び込んで。」


「分かっています。私だって我が身は可愛いですもの。無理はしません。」


晶は光の最後の忠告にコクリと頷きながら船着場に降り立つ。手にはライトを持っている。武器は持っていなかった。それは光の忠告だった。下手に武器を持てば、それに頼って戦おうとする。だが、必ず命を落とす結果になるのは目に見えている。だから敢えて動きやすさに重点を置き、武器を捨てさせたのだ。危ないと思ったら逃げる。これが鉄則だと何度も言い聞かせている。


「あの、やっぱり俺も行った方が・・・。」


真澄がそう口走った。それに晶は明るい顔を向ける。


「ダメだって言ってるでしょっ!!!」


遮ったのは光の声だ。その声は今の真澄の発言を完全に否定するものだった。


「だそうです。すみませんが俺は付き添えません。」


真澄はそう項垂れながら言った。


「いいんです。私の我がままなんだし、だから私、一人で行きます。」


晶はニコリと微笑むと、ライトを持ち直す。そして歩き出そうとした所を、光が制した。


「待ちなさい、今の声に反応してゾンビが現れたらもう手遅れよ。行かせないわ。」


キッと晶を睨みながらそう告げる。そして、5分程待ったが、岸壁にゾンビは現れなかった。光は舌打ちをしたが、これは晶を気遣うが故のものだ。悪い意味ではない。そっぽを向いた光に一瞬笑顔を向けて、晶はライトを片手に真っ暗な工場に入っていった。





 フェンスは扉が開いていた。おかしい雰囲気を晶は肌で感じていた。普段なら鍵がしっかり閉まっているはずだ。これは中で誰も生きていないのかもしれないと不安が頭を過ぎった。


(いや、きっと麻子は生きている。母体にするんなら守るはずだもの。)


晶は自分にそう言い聞かせると、恐怖で縺れそうになる足を一歩一歩と全身させる。工場も真っ暗だった。中から唸るような不気味な声が聞こえてくる。中の連中はもう手遅れだろう。しかし、真澄に聞いた話では麻子は外で縛られているはずだ。きっとこの暗い敷地内に居るに違いない。


「麻子、どこにいるの・・・?」


晶は小声で少女を呼んでみた。当然だが返事は無い。あまり大声を出すと、良からぬ者まで呼び寄せてしまう。晶は無言に戻ると、ライトを振りながら先を急いだ。だが工場は広大だ。なかなか見つかるものじゃない。晶は慣れ親しんだ道をゆっくり前進する。そして遂に、自分の住まわされていた二階建ての前に辿り着いた。工場内に居ないとなると、この中だ。晶は覚悟を決めて、正面のドアノブに手をかける。ギィと小さな音を立て、扉はあっさりと開かれた。少し奥に明かりが見える。晶は音を立てないように明かりのある部屋まで忍び寄り、開け放ったままのドアから少しだけ顔を出して中を伺った。


(麻子・・・?居たっ!)


そこには紛れも無く巫女服を着た少女が横たわっていた。体には縄が巻きついており、衣服は乱れている。周囲には誰も居ない。晶は警戒しながら近付くと、麻子を抱き上げる。少女はよほど酷い目に会わされたのだろう。縄はきつく雁字搦めに縛られていた。これでは指の力だけでは到底解けない。晶は仕方がないので、麻子を縛られたまま背中に背負った。その時、彼女は気付くべきだったのだ。少女が何故、そんなきつい拘束を受けていたかに。そして床に続いていた血の跡に。





 晶は急いでいた。すぐにでもここを離れなければ、いつ死体が襲い掛かってくるか分からない。行きはよいよいと言うわけでは無かったが、帰りは恐ろしかった。荷物を持って機動力は半分以下に落ちている。ここで襲われれば、折角助けた彼女の命も無駄になってしまう。しかし、それも杞憂に終わった。船着場までの道に、死体は居なかった。後はあの二人を呼んで船に乗れば全てが終わる。


「光さ~んっ!」


船着場に入るや否や、晶は大声で二人を呼んだ。手にしたライトを大きく振ると、光の輪がスワンボートを捉える。ボートはすぐにやってきた。巫女を背負う晶を見て、光は安堵する。


「無事だったわね。後は逃げるだけよ。さぁ乗って。」


「やりました。私麻子を助けましたよっ!」


光の声に嬉しそうに声を張り上げる晶。その声に反応したかのように、麻子がゆっくりと頭を上げた。その顔を見た瞬間、真澄が大声をあげた。


「晶さんっ!その子を離してっ!!!早くっ!!!!」


「え?」


不思議そうな顔をした二色の瞳が、赤く染まった。晶は、呆けたような顔をしている。飛沫のように首から赤い液体が飛んだ。信じられないと言う顔で首筋を撫でた手を目の前に持ってくる晶。そして、背負った麻子をドサリと落とすと腰から砕けてその場にへたりこむ。震える手は、手首まで真っ赤に染まり、まだ信じられないと言う顔の晶は、一瞬光を見て、血塗れの手を伸ばした。光はその手を掴もうと必死で手を伸ばす。しかし、指先が触れ合った瞬間、晶は前のめりに崩れ海中に消えた。


「晶あああああああああっ!!!」


光の悲痛な声が静まり返った海に反響され、そして消えた。辺りには静寂が訪れ、光はまだ信じられないと言う顔で晶の落ちた辺りに手を突っ込んでザブザブと掻き回す。しかし、晶の体は見つからない。


「先輩っ!無駄ですって。」


真澄は無駄な事を繰り返す光を無理やり引っ張る。


「離してっ!あの子を助けないとっ!」


光は取り乱していた。よほど晶を気に入っていたのだろう。我が子を探す母親のような表情には鬼気迫るものがある。


「ダメですっ!いいですか、晶さんは噛まれました。」


「噛まれたくらい何よっ!」


光は尚も海に手を突っ込もうとする。真澄は仕方なく、光の頬を掌で張る。破裂音が鳴り響き、光は唖然とした顔でフリーズした。


「噛まれたという意味はもう分かってるでしょうっ!助けられません。仮にまだ生きていても、致命傷でなくとも無理です。」


真澄は呆けた光の肩を掴んでガクガクと揺らしながらそう説得した。


「何で?誰が決めたの?噛まれたら絶対にゾンビ化するって誰が決めたのよっ!!!」


「いい加減にしてください。先輩、らしくないっすよ・・・。晶さんは残念だったけどあれは自殺と同じです。誰も悪くない。」


真澄は光を諭すように言葉を繋ぐが、光は納得しない。その時、ザブッという音と共に沈んだはずの晶がスワンボートに手を掛けた。


「晶っ!!!」


光は咄嗟に手を伸ばす。真澄はその暴挙に驚き、光の首根っこを掴むと力任せに引き寄せた。もしかしたらすでにこの世の住人で無くなっている可能性がある。迂闊に手を出させる訳にはいかない。晶は首筋、肩口あたりからまだ血をどくどく噴出しながら、激しく咽る。


「ゲホゲホゲホッ!ガハッ!ゲホゲホッ!」


これは人間の反応だ。ゾンビは喉に水が入ろうが咽て咳込んだりしない。光は顔を輝かせて晶を水から引き上げた。水を吸った衣類がかなりの重量になっていたが、光は晶を抱きしめるように持ち力任せに船に引っ張り上げる。


「先輩っ!ダメですってばっ!!」


「真澄っ!」


「は?」


「これは実験よ。噛まれて本当にゾンビ化するのかのね。この子は被検体。文句は言わせない。」


光の理論は無茶苦茶だった。今まで信用せずに慎重に慎重を重ねて行動していた女性とは思えない。冷徹な仮面はどこに落としてしまったのだろう。余程真澄の方が冷酷に見える。


「言ってる事が支離滅裂ですよ。どうしてそんなリスクを・・・。」


「ごめん、これは私の我侭。この子には未来を見せてあげたいの。無理だったら私が始末する。だからお願い・・・。」


もう光は引き下がらないだろう。真澄は全て光に任せる事にした。光は後ろの席にぐったりした晶を連れ込み、口にタオルを咥えさせる。


「苦しいだろうけど我慢して、舌を噛まれたら困るから。」


光はそういいながら、 ZIPPOのアルコールを薄い手拭に垂らしてそれをナイフに巻いた。そして、真澄にライターを要求すると火を点けた。


「痛いわよ・・・。」


光はそう呟くと、晶の首筋でまだ血の流れる傷に火を押し当てる。ジュッという音と共に、髪の焦げる嫌な臭いが辺りに立ち込める。


「!むごうううぐぐぐぐっ!!!!」


晶は一瞬目を見開いて暴れたが、じきに動かなくなった。あまりの激痛で気を失ったのだ。少しアンモニアの臭いが焦げた臭いに混じる。失禁したらしい。想像を絶する痛みだ。


「何やってんすか・・・?」


真澄は猛然とペダルを漕ぎながら光の異常な行動の真意を聞く。


「血止めよ。この出血が続けば死ぬわ。傷を焼いて火傷にしちゃえば出血は軽く済む。痕が残るけどこの際命には代えられない。」


真澄はその答えに納得したように頷く。そして、普段の真澄からは想像できないような低い声でこう言った。


「では先輩、今から晶さんに縄をかけてください。手足にもね。口のタオルも外さないで。」


「ちょっと・・・。」


「我侭は連れ帰る所までしか聞きません。ゾンビになるかもしれない人間なら当然です。それくらい今までの先輩ならやってましたよね?今回は先輩が異常なんです。これを飲めないなら晶さんはここで海に沈んでもらいますよ。それが嫌なら言った通りにしてください。」


真澄の冷徹な声は今までの光なら当然そうするであろう判断を口にした。光は言い返す言葉も見つからず、渋々晶を拘束する。


「ごめんね・・・。」


真澄はそれを見て安堵したように表情を緩ませ、沖の防波堤へ急いだ。

えっと、何をやらかしたかと言いますと、沈んで終了だった話が浮いてきた辺りから全て書き直しています。当然続いていた次話も全て廃棄になりました。


コメントにこんな甘い事してたら死ぬねと書かれていましたが、その通りだと思います。実際、一度死にました。でもまぁ、今回は敢えて生かしました。純粋で鬱陶しい娘さんの邪魔さ加減は読んでいる方もイライラさせます。ゾンビもののある意味お約束のような存在だと思うんですよ。でもいつか本当に邪魔になるんだろうなぁwww


【光姐さんが晶に拘る理由】

このキャラを出す前に脱線壱話を載せた理由はこれです。まぁ不遇な少女時代を送った自分が晶にダブっているわけです。過去に自分が取り逃した様々な経験を晶にさせる事で、自分の中の過去を清算しようという無意識が光さんを晶に執着させている要因になります。また、危なっかしい晶を守らなければという姉のような心理も芽生えています。


最後に、次の投稿は遅れます。すまないと思っている(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ