第弐拾壱話 蜘蛛の糸
速いペースで続きです(`・ω・´)
第弐拾壱話 蜘蛛の糸
急ぎ足で校舎に戻りながら、飛鳥は海老沼に簡単な説明をした。
「中は警察官が縛られて役場職員がピストルを奪ってるわ。クーデターよ。どうも警察本部は壊滅的打撃を受けたみたい。つまりもう救助は来ないの。だから体育館にある物資を外の一般人に渡したくないのよ。意味分かる?」
「ううん・・。展開が急過ぎてよく分からないが、とにかく役場の人間が悪者なんだな?」
「まぁ簡単に言えばそうね。グズグズしてたら警官は殺されるわよ。その死体が外に出されたら大変な事になる・・・らしい。」
「警官が殺されるっ!?何でだ?意味不明だぞ・・・。」
「あの殺人病ね、映画みたいに死人が起き上がってくるみたいなのよ。ただ死んだだけでゾンビになるってのが厄介ね。感染とかじゃないらしいの。つまり警官が殺されて外に出されたら、知らない一般の人は遺体を処分せずに安置しちゃうでしょ。それが起き上がったらどうなると思う?噛まれただけで仲間になるって昨日のTVでも言ってたわよ。」
「近くに居る人間に襲い掛かるとか・・・?それで噛まれたらどんどんヤバイ状況になるよな・・・?」
「そう、分かってるじゃない。もしそうなれば皆大パニックになる。小学校内でこの人数がパニックに陥ればどうなると思う?」
「犠牲者が爆発的に増えるな・・・。全滅するのかっ!?」
「その可能性が大だわ。死んだ人間が次々に起き上がってどんどん増える。つまり敵がどんどん増えるの。この狭い校内じゃ逃げ場が無いのよ。唯一安全なのが体育館だけ。だから役場の連中はあの場所を死守するわ。こっちが本気で反撃に出ないと、皆殺されちゃう。」
「やっべぇじゃんっ!俺に出来る事あるかっ!?」
「ん・・・、今私達が騒ぎ立てたって誰も本気にしないはずよ。だって絶望的過ぎるからね。信じようとはしないと思う。だから、何とか中に入って扉を開くのが最上だと思うの。」
「だな。でもあの窓は高すぎるぜ。どうやって上る?また梯子か?」
「頑丈な梯子と、あともしもの時に逃げる手段が欲しいわね。バスとかトラックみたいな車高が高い車があれば窓の下に停車しておきたいわ。屋根から窓に上がれる可能性もあるし。何か無い?」
「ん~、あっ!ここってバスが少ないから遠くから通う児童用のマイクロバスがあったはずだ。それを移動させられるか聞いてくる。」
「お願いね。私は家族を説得してみる。荷物があればあなたも荷物はバスに乗せておいたほうがいいわよ。」
「分かったっ!じゃあ30分後に体育館裏でな。」
「よろしくっ!」
飛鳥と海老沼はそう言うと別れた。飛鳥は家族の元へ、海老沼はマイクロバスと梯子の確保へ。
★
皆藤家の面々は、全員が2階端の教室に待機していた。父は暢気に夕飯の残りと野菜炒めの入ったタッパーを開け、老人達に振舞っており、母と姉は花梨をあやしながら寄ってきたオバサン連中と世間話の真っ最中。会話の内容はこの馬鹿げた騒ぎが中心だろう。まだ家に帰れないのかと言う言葉が飛び交っている。そのある意味平和な光景に飛鳥はイラッとした。
「ちょっと、何やってんのよっ!?」
言葉に怒気が孕む。その声に世間話をしていた姉と母が振り返った。
「何キレてんの飛鳥?あんたも少しは落ち着いて座りなさい。」
「そうよ。苛々してるのは美容にも良くないわよ。あんたは嫁入り前なんだから。」
それぞれが好き勝手な事を言っている。事態が悪化の一途を辿っている事を知らないので無理は無い。今はこんな暢気に世間話に花を咲かせている場合では無いのだ。飛鳥はさらに心が波立ったが、我慢して優しい口調で事情を説明した。しかし母も姉も笑い飛ばしただけだった。
「馬鹿ねぇ飛鳥は。そのうすらハゲって山下さんでしょ?あんな感じのいい人がそんな事するもんですか。」
母はうすらハゲと知り合いらしい。飛鳥が見た残忍な一面をどうしても信じようとしなかった。飛鳥は必死で説得を試みたが、結局無駄だと思い知るだけとなり、自分の荷物を掴むと教室を後にしようとしたその時、不意に校庭からスピーカーの声が流れた。
「皆さん、配給が始まりますよ。家族の代表者が並んで下さい。昨晩にこちらで名前を確認されていない方は手続きが終わってから並ぶようお願いしまーすっ!繰り返します。配給が始まり・・・・・・・」
そのスピーカー音声に飛鳥は信じられないと言う顔をして校庭を見た。確かに箱の山が校庭のど真ん中に置かれ、町内会の面々がスタンバイしている。
(どう言う事?結局あの方法はリスクが大きいからやめにしたのかな?でも何か引っ掛かる・・・。)
スピーカーの声に反応して父は立ち上がると飛鳥の横をすり抜けて行ってしまった。飛鳥はまだ納得できずに、とりあえず海老沼の元に向かう。体育館の裏手にマイクロバスを移動させているはずだ。急ぎ体育館の横を通り抜けようとした矢先に、飛鳥は不吉な音を耳にした。
★
-----パァーーーーーーンッ!-----
それは明らかに銃声だった。音源は体育館内部。飛鳥は背筋に冷や汗が流れた。体育館周辺に人は居ない。皆配給に釣られて校庭に散ってしまっていたのだ。今の銃声に気付きはしただろうが、体育館からとは思わないかもしれない。飛鳥は慌てて体育館の入り口に向う。程なくして、鉄の門が開き山下が顔を出した。すでに数人が発砲音を聞きつけ体育館入り口に現れていたが、気にした様子も無く駐在の遺体を入り口に放り出す。続いてその奥さんと息子2人の遺体が部長課長に引き摺られて入り口に投げ出された。集まった人々はあまりの事に声も出せずに立ち尽くしている。飛鳥は堪らず役場職員3人に大声を張り上げた。
「あんた達っ!!!何て事を・・・。」
その飛鳥の声で我に返った住民も非難の声を上げた。
「何て事をしてるんだっ!狂ったのかっ!」
「人殺しっ!!!」
「皆死んでるのかっ!!!」
その声に山下が薄笑いを浮かべ、飄々とした態度でこう答えた。
「皆さん落ち着いて、これは自殺です。この警察官が家族を殺して無理心中したんですよ。我々も驚いてますが遺体をすぐに安置しないといけないと思いましてね。こうやって持ってきたわけです。」
飛鳥はこの言い訳に激怒した。簡単に人を殺しておいて涼しい顔で嘘を吐く。全てを聞いていた飛鳥には当然の嘘だと分かったが、気が動転した住民達はそうなのかと納得した顔をしてしまった。その隙に、山下が体育館の扉をすばやく閉めて鍵を掛けた。
「おいっ!何で閉めるんだっ!!!」
「この死体どうしたらいいんですかっ!?」
住民達のパニックの声が響く。程なくして中から部長と思われる人間の声が聞こえた。
「皆さん落ち着いて。警察官が無理心中なんかしてしまいましたので、混乱を招くと思います。ここの食料を狙って暴動を起こす人達が出るかもしれません。ですのでこの体育館は配給までは封鎖にします。早くその遺体を他の住民に気付かれないようにどこかの空き教室にでも安置してください。」
若干声が震えている。この部長は小心者のようで、自分が犯した罪の意識を隠しきれていない。飛鳥はまた大声を張り上げる。
「ふざけないでっ!あんた達が何を企んでいたか全部知ってるんですよっ!」
「企むとは聞き捨てならないな。君が何を知っているというのかね?皆さん、その娘さんは昨日、体育館に入れろと迫って私共に追い返されているんです。だからその娘の言う事に耳を貸さないようにお願いします。パニックを煽って何とかここの食料を狙ってるだけですから騙されないように。」
またしても山下の声だ。住民はその声に飛鳥をジッと見つめた。まるで飛鳥が悪者だ。うまく口車に乗せられてしまっている。
「な、何よ・・・。私が嘘を言ってるとでも・・・?」
飛鳥は後退りしながらそう言うのが精一杯だった。住民の一人が飛鳥に一歩詰め寄る。飛鳥は恐怖を感じた。確かに飛鳥は今やこの町を出て外で暮らす人間だ。片や町役場で真面目に働く公務員。信憑性は明らかに向こうに分があった。飛鳥はその事を計算に入れていなかったのだ。住民は山下の言葉を全面的に信頼したのである。身を翻して逃げようとした飛鳥を、男が取り押さえる。飛鳥は地面に押さえつけられ、身動き一つ取れなくなった。こんな時に非力な女性の体を疎ましく思う。飛鳥の叫び声はすぐにかき消され、体育館の前は騒ぎを聞きつけた大勢の民衆が集まりだしていた。
★
駐在の無理心中(仮)事件はすぐに住民全員が知る事になった。遺体は空き教室に子供の学習机を並べた上にカーテンを掛けられて安置され、飛鳥はロープで縛られて校長室で尋問を受けていた。目の前には町長と思われる老人が座っている。
「だから何度も言ってるでしょうっ!?あの遺体を放置してると起き上がって皆殺されますよっ!何回言えばいいんですかっ!?私は別に皆の不安を煽ったりしたいわけじゃありませんっ!あの役場職員達が警察殺しを画策しているのも直に耳で聞いたんです。うちの母にも事前に相談しましたっ!そうよねお母さんっ!?」
飛鳥は隣に座る両親に向って必死で身の潔白を晴らさせようとしたが、両親は頭を垂れて皆に謝罪をする始末。誰一人飛鳥を信じる者は居ない。飛鳥が昨夜、山下に突き飛ばされているのは住民数人に目撃されており、飛鳥が罪人である証拠の方が簡単に裏が取れてしまった。
「おかしいでしょうっ!?何で人が死んであんな冷静に処理できるか、その事が変だと思いませんかっ!?理由は簡単ですっ!あの人達が駐在さん一家を殺したんですよっ!その証拠に体育館から一歩も出て来ないじゃないですかっ!じきに死体が歩き出すと知っているんですよあのハゲ共はっ!後手に回ると皆殺しにされますよっ!お願いだからあの遺体を縛るか焼くかだけでもしてくださいっ!」
「バカげてる・・・。もう聞き飽きたよ。仏さんにそんな事出来るわけないだろう。もういいから連れて行きなさい。」
町長は飛鳥の必死の弁明もその一言で片付けた。飛鳥はしばらく謹慎という罰が下され、窓も無い薄暗い倉庫に軟禁される。飛鳥は腕に付いたロープの跡を撫でながら、独り絶望と共にしゃがみ込むしかなかった。
★
一時間もしないうちに、学内は騒然となった。ドアの向こうから、住民達の金切声や悲鳴が聞こえ、たくさんの足音が逃げ惑っているのが分かる。もう手遅れだ。
(馬鹿みたい・・・。全員死ねばいいのに・・・。)
騒ぎの始まりに飛鳥は必死で外に出すように中から大声で叫んだが、誰もその声には応えてくれなかった。もう疲れ果て、声も出せなくなった飛鳥は皆を呪い、当然の報いだと心の中で嘲笑していた。あの町長も今頃必死で逃げているのだろう。もう殺されている可能性も高い。飛鳥を罪人でも見るように見下していた住民の目を思い出すと怒りしか沸かない。唯一人真実を教えた飛鳥にこんな仕打ちをした人間達などすでにどうでも良かった。気になるのは家族の安否くらいである。両親はご老体だ。体育館に逃げ込むくらいしか生きる術は無い。姉は子連れ。これまた逃げるのは絶望的だ。血塗れで断末魔を上げる家族の姿が脳裏にちらつく。その映像をかき消すように飛鳥は頭を振った。最早自分も生き延びれるとは思えない。いつかこのドアも破られ住民に食い殺される運命しか残っていないのだから。せめて餓死した方がいくらかマシな気がしてきた。
「舌を噛むって痛いんだろうなぁ・・・。首は吊れないしどうしよう・・・。」
飛鳥は何かいい道具が無いか倉庫を物色する。無論、自分の命を絶つ為の物だ。しかし無常にもあるのは机と椅子ばかり、手刀の一つも無い。やはり舌を噛むしか無いようだ。飛鳥は溜息を吐いてまた座り込む。外の喧騒が疎ましい。もう少し冷静に考えさせて欲しいと飛鳥は舌打ちを繰り返した。頭はすでに諦めモードに突入し、独り言が唇からこぼれ出す。その時、ガチャリと音がして飛鳥を閉じ込めていたドアが簡単に開き、海老沼が立っていた。
「海老沼君・・・?」
「無事か皆藤っ!?」
海老沼は苦しげな息を吐きながら飛鳥の傍へ走り寄ってきた。飛鳥は呆然としながらその姿を見つめている。信じられないと言う表情だ。
「何呆けてるんだよっ!逃げるぞっ!来いっ!!!」
海老沼はぼんやりとした飛鳥の腕を掴むと強引に立たせて飛鳥を引き摺るようにドアの外へ出た。
「どうして・・・?」
「何がっ!?」
「すぐ逃げれば体育館に入れたでしょう?」
海老沼はマイクロバスで待機していたはずだ。騒ぎが起こればすぐにでも体育館に避難できたはずである。
「お前を置いてのうのうと助かるもんかっ!いいからシャンとしろっ!」
海老沼はそう吐き捨てて飛鳥の腕を取りグイグイ引っ張っていく。外は地獄だった。そこら中に血が飛び散り、歩く死体が何十体も徘徊している。床には何人も住民が倒れ、それに死体が群がっている。
(映画みたいだな~・・・。)
飛鳥は他人事の様にそんな事を考えながら海老沼に手を引かれ、子供の様に走っていた。もう全てを諦めていた矢先に助けが舞い込んだのだ。まだ頭がしっかりと現実についていけない。海老沼はそんな飛鳥の様子に気付きもせずに、いつの間にか手にしていた角材で行く手を阻もうとするゾンビを打ち倒す。
「ちっ!やっぱこっちはダメだ。体育館に人が押し寄せてるっ!裏から回るぞっ!」
海老沼はそう叫んで廊下の窓から外へ飛び出した。体育館に繋がる廊下は逃げる人で溢れ、満員電車のような混み具合だった。飛鳥は海老沼に習って窓の外へジャンプした。死体はそこら中に臥していたが、まだ復活はしていない。ゾンビの群れは体育館入り口で狂ったように鉄の扉を叩く集団に引き付けられ、校舎裏は若干余裕があった。2人は疎らな死体の間を慎重に進む。マイクロバスに辿り付けば飛鳥達は助かる。海老沼の頭にはそれしかなかった。2人は遂に体育館の見える位置まで到達した。校舎の影に隠れ様子を伺う。阿鼻叫喚の群集は危険だ。幸い、体育館の裏手はデッドエンドになっており群集はこちらに注意は向けていない。飛鳥は群集にチラリと視線を走らせ、そして凍りついた。姉と手に抱かれる花梨、それに付き従い潰されそうになっている健太郎の姿を見つけてしまったのだ。
「お姉ちゃんっ!まだ生きてたっ!!!」
急に興奮しだした飛鳥を海老沼が制した。
「待てっ!落ち着けっ!あそこはもうダメだっ!」
「でもお姉ちゃんがっ!助けないとっ!」
飛鳥は海老沼の制止を振り切って姉の元に走る。海老沼は舌打ちを漏らして飛鳥を追った。
「お姉ちゃんっ!!!こっちよっ!そこに居たら殺されちゃうっ!」
「馬鹿っ!皆藤アホかっ!」
飛鳥の声に姉がこっちを振り向き、子供を連れて一目散に走り出した。飛鳥は姉と抱き合う。海老沼はその2人の間に割って入り引き離した。飛鳥の姉の状態を見てしまったからだ。体中に血が付着して、腕からも足からも血を流している。もう手遅れだろう。飛鳥の話が本当なら噛み付かれた人間は発症する可能性がある。飛鳥はそんな事も忘れてしまっていた。海老沼は暴れる飛鳥を引き剥がし、強引に引っ張りその場を離れた。姉は息も絶え絶えになりながらついてくる。
「離して海老沼君っ!お姉ちゃんっ!お姉ちゃんっ!」
「皆藤冷静になれっ!お姉さんはもうダメだっ!」
「お姉ちゃんっ!お姉ちゃんっ!」
「飛鳥ぁ・・・。助けて・・・。飛鳥ぁ・・・。」
飛鳥は嫌々と首を振り海老沼の手を逃れようとする。海老沼はもがく飛鳥を必死で抑えた。
「お姉さんは噛まれてるっ!もう無理だっ!」
「ふええ・・・、お姉ちゃぁん・・・。」
飛鳥はもう泣きじゃくっていた。姉はもう助からないと頭が理解してしまったのだ。両親の安否も絶望的だろう。
「もういいよ、もういいよぉ海老沼君・・・。もう死なせてぇ・・・。」
「馬鹿かっ!こっちに来れば助かるんだぞっ!!!」
海老沼の不用意な大声が群集に届く。群衆の目が一斉にこちらに注がれた。
「そっちに行けば助かるのかっ!」
「あっちだあああああっ!!!」
狭い渡り廊下の中で群集が一斉に移動を始めた。海老沼はギョッとして飛鳥の手を引っ張る。早くマイクロバスに到達しなければあの細い梯子だと持たない。あれだけパニックに陥った人間は我先に登ろうとするだろう。壊れるのが目に見えている。そして梯子が壊れたら詰みだ。
「急げっ!あれが来たらもう無理だっ!!!」
「いやあああああああっ!!!」
海老沼は嫌がる飛鳥を担ぐ。そこに飛鳥の姉が手を掴んだ。
「離せっ!妹だけでも助けるっ!俺に任せてくれっ!」
「この子達は噛まれてないっ!お願いっ!連れて行ってっ!」
「・・・分かった。ボクッ!こっちだっ!」
海老沼はそう言うと花梨を抱き、飛鳥を担いで走り出した。健太郎は泣きながら後に続く。何度も何度も母を振り返りながら。
「待てええええええええっ!!!自分達だけ逃げる気かあああああっ!!!」
群集は怪我と混乱で将棋倒しとなりまだ追いついて来れない。海老沼は必死で走り何とか梯子に到達した。
「さぁっ!早く登れっ!」
「もういいよぅ・・・。」
飛鳥は姉を置いてきた罪悪感とこれから先の絶望感に打ちひしがれて自暴自棄になっていた。海老沼は飛鳥のその様子に思わずその頬を平手で張る。ここでもたつけば群集に追いつかれ自分達は死ぬ。
「いい加減にしろっ!この子達まで死ぬぞっ!」
「うううう・・・。」
「分かったらさっさと登れっ!」
「・・・・分かった。」
飛鳥は海老沼の勢いに押され、渋々梯子を上り窓に滑り込んだ。その後に健太郎が続き、飛鳥が引っ張り上げる。そして最後に花梨を抱いた海老沼が続いた。飛鳥に花梨を渡すと、窓に体を入れる。何とか這い上がった所に目を血走らせた群集が追いついてきた。
「あの梯子だああああああああああっ!!!」
「私が先よっ!」
「どけっ!俺が先だっ!」
「私を先に行かせてっ!!!」
海老沼はその光景を見てゾッとした。まるで蜘蛛の糸だ。梯子に縋り付いた女性を巨漢の男が蹴り飛ばし、梯子に足を掛ける。その瞬間、梯子は中央からボッキリと折れた。呆然となる群集に、海老沼は上から悲しそうな視線を向けた。そして、目を見開いていた群集は追いついてきたゾンビの波に飲まれ、後には断末魔の悲鳴だけが残された。
あなたならどうしますか?作者なら迷わず梯子を倒します。
海老沼君は結局新しい梯子を見つけられず、マイクロバス(スクールバス)を移動させただけでした。窓からみえる位置に停めています。群集はマイクロバスに逃げ込もうとしましたが、鍵が掛かってて結局外で無残に食い殺されました。
体育館ってそんな頑丈か?という疑問があると思いますが、作者の小学校の体育館は古く、鉄製の出入り口が4つ付いていただけで、窓には全て鉄格子が埋め込んでいました。鍵を掛けると難攻不落の砦になります。たびたびそこに立て篭もる妄想をしていた作者は今回遂にその妄想を文章にしました。まぁ何十人も大人が頑張れば扉を開く事も出来るかもしれませんが、数人では絶対に不可能です。焼き切るくらいしか開ける方法が思いつきません。
そんな訳で足りない補足終わります。次もまた読んでくださいな(ㅎωㅎ*)




