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いきおいよく7-3

 俺の頭に後悔の念がよぎる。

 こんなことなら婚約するんじゃなかった。

 俺の人生は女の子まみれのハーレムみたいなものじゃないか。

 自分にはないと思っていた幸せな学校生活が、すぐそばにあったのに。

 しかも、婚約していても関係なしに言い寄ってくるのだ。

 男として生まれて、これほど僥倖なことはあるまい。

  

 そんなことを思い浮かべていると、竿竹をふりふりと揺らしながら、沙緒が口を開いた。 


「と、いうことで部長。今日、部活が終わったら買い物に付き合って欲しいんですけど」

「はい? 何を買いに?」

「菫ちゃんに頼まれてた部の画材道具を買いに行くんですけど、一緒にみてもらえないかなーって」


 確かに、部活で使う画材道具の購入は、今までも沙緒に頼むことが何度かあった。

 沙緒が帰る経路に、画材道具も売っている量販店があるからだ。

 その店は、夜の8時頃まで営業しているので、俺も利用することが多い。


 沙緒の言葉を聞いて、菫がしまったというような顔をする。


「そ、その件なら私も一緒に行きます。と、当然、部長にも一緒に来てもらいますけど」

 と、慌てて介入してきた。


「あー、ずるーい。それだったら私も行くー」

 茶々も一緒についていくと言い出す始末。


「いやいや、ほら。そんなにいっぱい行ってもしょうがないでしょ? 頼まれたの私だけど、ちゃんとしたもの買えるか心配だし。部長がいれば安心だし。それにお店は私と部長の家の方が近いし、だから今日は私と部長で行くよ」

 二人をなだめる沙緒は、さながら策士のようだった。


 まあ、確かに画材を置いてある店は、俺の家と沙緒の家のちょうど中間地点にある。

 菫と茶々の家からは結構な距離にもなる。

 それを理由に菫は沙緒に頼んだのだった。


「ああ、思い出した。きょ、今日は部長と、部誌のスケジュールについて話し合おうと思ってたので、沙緒だけで行ってくれる? ああ、そうだ。それもあるから、今日はもうお開きにしましょう。部長は残って下さいね」


「菫ちゃん、それ今、思いついたでしょ? ずるいよ? それに部誌のスケジュールだったら、私達も聞いた方がいいじゃん」

 

「そうだ、そうだ。副部長だからってそんなのずるい! ああん、今の顔もいい!」


 いつのまにかスペアの手鏡を手にした茶々が、自分の顔を見ながらのたまう。

 変態ぶりは変わらないようだ。

 

  

「お前ら、とりあえず落ち着け! 沙緒も、今日は天気も悪いし、無理して買いに行かなくてもいいだろ? それに菫、スケジュールの話なら、みんなで今しよう」

「……しょうがないですね」

「……はい。部長がそうおっしゃるなら」

 渋々納得してくれたようだった。


「――では、今度の土曜日に二人で買いに行きましょう」

「振り出しに戻すな!」

 沙緒の返しが早すぎて思考が追いつかない。

 恋する乙女はこんなにも手強いのか。

 目覚めた沙緒は積極的な女子だった。


「お前らの気持ちは嬉しいけど、部活に影響するなら俺は嫌だぞ! 見ろ! 誠は一人で作業続けてるじゃねえか。あいつを見習え」

 俺は無言で作業を続ける誠を指差して言った。

 

「部長。誠さん、さっきから部誌には関係ない、エッチな絵を描いてますけど?」

「――菫」

「――了解です」

 しばらくの間、肉を殴る音が部室に響いた。


 恍惚とした表情を浮かべて戻ってくる菫の背後に、ひくひくと痙攣して横たわる誠。

 俺が困っているというのに、まったく役に立たない奴め。


「まあ、とりあえず。とりあえずだ。作業を進めようぜ。スケジュール的に少し遅れてるだろ?」

 俺は三人に、それぞれの作業を続けるように指示した。

 

 まだ少し渋っていたが、「部長命令だ」と強権発動すると、みんな席に戻っていった。

 これは俺が、固い意思を持たねばならないようだ。

 どんなアピールをされても、決して揺れ動くことのない固い意思を。



 しばらく静かに作業が進み、窓の外を見ると、雲が妙にどす黒くなっている。

 雷も少しなっているが、距離はまだあるような感じだ。

 雨は少しぱらぱらと降っているようだが、急激にひどくなりそうな気配もする。

 そんなことを思っていると茶々が二枚の原稿を持って近付いてきた。


「部長、ここの台詞って違和感ありませんか? 何か読んでたら違和感覚えたんですけど」


 ページを跨いだ台詞。

 読んでみると確かに少し違和感があった。


「ああ、本当だな。前のページで説明してないのに、何でか知ってることになってるな」

「これ、もしかして、修正でかくないですか?」

「本筋に影響しないとはいえ、これは気持ち悪いな。修正するにしても――」


 どうしようか?

 と、言おうとした途端、窓から部屋全体を照らすような凄まじい光が入ってくる。

 驚いて窓の方を見た瞬間、ドーンと部屋全体に響くような大きな音がした。


「――びっくりしたー。雷か、今の近いんじゃね? ……って、おい、茶々?」

 雷の光と音にびっくりした茶々が俺の腕に抱きついていた。

 茶々の顔は青ざめ、その手は震えてる。

 

「――雷、怖い」


 なんだよ。可愛らしいところもあるじゃねえか。

 まあ、元々可愛い顔してるんだけど。


「大丈夫だって、部屋の中いるんだし、落ちやしねえよ」

「怖いもんは怖いんだもん」


 大丈夫だって――、そう言って俺は茶々の頭をポンポンと撫でた。

 その途端、二方向から殺気が膨れ上がり、見てみると、キリングマシーン状態で俺達を見つめる菫と、竿竹が妖怪アンテナみたいにピーンと立っているのに、笑顔で見つめる沙緒がいた。

 怖いから止めてください。


「今のはしょうがないだろ? 故意じゃねえし」


 なぜか言い訳してしまう俺だった。 

 ぎゅうっと、茶々の手に力が入ったのを感じる。  


「ふえっへっへ。部長の腕って意外とたくましい」


 お前が言うと変態に輪がかかるようだから止めなさい。 


「おい、茶々、もう大丈夫だろ」


 手を振り払おうとすると、顔をぶんぶんと横を振って嫌がり、俺の腕を離さない茶々だった。


「首輪つけてくれたら離します」

「まだ狙ってんのか⁉ 嫌だっつってんだろ」


 俺の腕から離れない茶々をどうにか離そうとしていると、部室の扉からコンコンとノックする音が聞こえた。それと同時に俺の背筋に悪寒が走る。

 

 部室の扉が開き、そこには俺の想像通り朱里がいた。

 もう生徒会が終わったのだろう。

 朱里が顔を見せた途端、また、窓の外から激しい光と、ほぼ同時に激しい音がした。

 その場にいた全員が一瞬身をすくめ、その拍子に茶々がまた俺に強く抱きつき、ぶるぶると震える。

 

「――び、びっくりした……。凄い光った――――⁉」


 窓の外に視線を向けたあと、朱里は俺と茶々の姿を見て固まった。 


「……えーと、京介? なんで新城さんが京介に抱きついてるのかな?」

「朱里、これはだな。今ので茶々がびっくりしただけだ。事故だ。なあ、そうだよな茶々」


 殺気みなぎる朱里に向けて、全精力で言い訳する俺。

 だって、あの子怖いんだもん。


「他意もあります」


 俺の言い訳を裏切るようにそう答える茶々だった。

 お前、俺を陥れたいだけじゃねえのか?


「へえ? 他意? 何かしら? それって? 非常に? 気になるんだけど? 一体? どんな? 他意が? あるのかしら?」


 『?』が多すぎだろ。お前、実は混乱してるだろ。


「会長に負けたつもりはないってことです! 例えば――」


 おい、と茶々に文句を言おうとして顔を向けた途端、俺の唇は茶々の唇に塞がれていた。

 茶々の可愛らしい顔が俺の視界を塞ぎ、柔らかい唇が確かに俺の唇に当たっている。

 

「こういうことです」

 俺の唇を奪った茶々が、してやったりと笑顔で自慢げに言った。


 まさかまさかの、最大のライバルを前にした堂々たる宣戦布告。

 冗談で通らない実力行使に――


 気配が弾けた。そう表現していいだろう。

 今まで味わったことが無いような殺気が三つ、凄い勢いで膨れ上がる。


 ここで俺の記憶が途切れた。


 正確に言うならば、鬼の様な形相で俺と茶々に迫り来る三人の姿を見たところでだ。

 あまりの恐怖からか、その後の記憶はない。

 ただ、次に気が付いたときには、ズタボロになって掃除用具のロッカーの中だった。

  

 そして、俺は新たな後悔を手に入れた。


 ☆  


 もしもし、人生悩み相談室ですか?

 高校三年生の男子なんですけど、話を聞いてもらえませんか?

 自分には婚約者がいるんですが、同じ部活の女子3人から告白されて困ってます。

 どう言っても諦めてもらえないのですが、自分はどうしたらいいんでしょう?

 そんな相談をしてみたい衝動に駆られる。


 俺が人生相談係の人なら、こう答えるだろう。


「死ね! 百回苦しんで死ね!」

 もしくは、

「今からフルボッコしにいくから、住所教えろ」

 もしくは、

「ああ、君は自由になりたいんだね。だったら婚約者も、告白してきた子も全員振ることだ。それで万事解決、自由だよ」

 と、答えることだろう。


 自由になりたい。


 

 それは俺の根底にある願望なのかもしれない。


 ☆


 今日は、とうとう待ちに待った文化祭。

 今、俺は当番中だ。

 俺の目の前には、俺達が手がけた部誌が積まれている。

 俺達の血と涙と汗の結晶だ。ギリギリだったけれど、何とか間に合った。

 反省点は残るけれど、出来上がった作品に後悔はしていない。

 今、俺の横には、俺との当番を賞品としたじゃんけん勝負で勝った沙緒がいる。

 嬉しげにアホ毛である竿竹も、ぶんぶんと大きく揺れ動いている。

 さっきから、竿竹の先端が顔に当たって、うざいんだけど。


 あの日――部員達から告白されて以来、俺に自由はない。

 

 なにせ休日になると、部員達が示し合わせたわけでもなく、誰やかれやと押しかけてくる。

 茶々を見たお袋たちが、茶々を着せ替え人形みたいにして遊んだり。

 沙緒が鍛え上げた家事能力でお袋達を助けたり。

 菫が親父達を相手に組み手をやって、親父達を感心させたり。

 何故か誠までやってきて、大地にいらぬ事を教えたり。

 親父達は面白がって、晩飯まで食べさせて帰す始末。

 美希や大地までも、部員たちに懐いてしまい、誰がお義姉ちゃんになってもいいと言い出していた。

(大地が朱里にフルボッコにされたのは言うまでもない)

 と、我が家の休日は騒がしくなった。


 と、いうことがあったり――――


 部活が停止する試験期間中も「勉強会をしましょう」、と沙緒の提案で、次元家に集まることになった。

 何故か、そこに生徒会役員の面々も集まっていた。

 俺から話を聞いた朱里が、それなら生徒会も一緒にと、半ば強制的に役員たちに話をつけたらしい。

 それから、双葉経由で菫に話が行き、結局、合同での勉強会となったのだ。

 三年生には朱里が教えて、一、二年生には、学年トップを競い合う、菫と双葉が教えることになった。

 

 試験の結果として、この勉強会のおかげだろう。

 参加した全員、中間試験よりも点数が上がった。

 さすがは学年のトップ集団にいるだけはある。

 朱里や菫ら教授陣の教えるのが上手だった証だろう。


 と、いうことがあったり―――― 


 夏休みに入った途端、個人合宿という名のもと、次元家に拉致連行された。

 菫のお母さんが、菫の味方をして、俺を救いにきた朱里を、何度も追い払う事態にもなっていたらしい。

 俺への待遇は、夜に簀巻きにされる以外は悪いものではなかった。

 実際、やっていた事といえば、個人毎に与えられた作業をしただけだ。

 三日目の夜、簀巻きの中で寝ている時に、菫が俺のところへ忍び込んできた。

 そして、簀巻きにされて動けない俺の唇を奪っていった。


「――これで同等ですよね?」

 と、菫は顔を真っ赤にして、部屋から出て行った。


 この事態がいつまで続くのかと思い始めた頃、ようやく、俺は救出された。

 俺が拉致されてから、四日目のことだった。

 俺の救出失敗に業を煮やした朱里が、ライバルである沙緒や茶々に救援を求めたと、あとで知ることになる。


 と、いうことがあったり――――


 八月頭に、茶々が家族旅行で部を休むと言い出した。

 行き先は聞いていなかったが、俺は楽しんで来いとだけ告げた。


 その日の夜、急に親父達が明日から二泊三日で家族旅行に行くと言い出す。

 相変わらず、いきなりで勝手なものだ。

 まあ、事前に準備はしていたのだろうけど。

 俺は部員達に至急連絡し、その期間は部を休むと連絡した。

 朱里は随分と喜んでいた。

 まあ、家族旅行だし、楽しんでこよう。

 そう、思えたのはホテルのロビーまでだった。


 海へと旅行に行った時、何故か茶々も同じ場所に来ていた。

 俺達が泊まるホテルに家族旅行できていたのだ。

 この偶然は、あってほしくなかった。

 俺の横では、殺気に満ちた表情で拳を固める朱里がいた。


 茶々から、ご両親を紹介された。

 茶々と違って、物腰の落ち着いた二人。 

 茶々の両親をはじめて見たが、美男美女だった。

 茶々が超可愛いのに納得した瞬間だった。

 せっかくなのでと、一緒に同行する羽目になる。(これは、お袋達のせい)


 浜辺に行った時、羽織っていたパーカーを茶々が脱いだ。

 朱里より胸が小さいが、将来を期待できそうなスタイルだった。

 俺の横で鼻の下を伸ばした大地が茶々のビキニ姿に見惚れてた。

 まあ、それは分かる。俺も見惚れたからな。

 そのせいで、朱里の拳が俺の鳩尾にめり込んだのだが。


 大地がジュースを買いに行って、半日ほど行方不明になったが、まあ、不幸なことがあったのだろう。(一緒にジュースを買いに行って、先に帰って来た美希の拳に血がついてたけど、気にしないでおこう)


 何度か茶々に襲われて、また唇を奪われる事件が起きたが、そのあとの事は俺も半日ほど記憶を失っているので、何が起きたか分からない。思い出そうとすると、強い頭痛がするから考えるのをやめた。


 親父達が茶々の母親にやたらと親切にしたり、鼻の下を伸ばしていたのは覚えている。

 お袋達も茶々の父親から親切にされるたびに、キャーキャー言っていた。

 帰ってきてから、親父達とお袋達がお互いに「ごめんなさい」と頭を下げあっていたが、気にしないでおこう。


 と、いうことがあったり――――


 

 夏休みも残り二週間となり、受験に備えて夏の短期講習に参加した。

 これは夏休み前に朱里が持ってきた企画だ。

 朱里は必要ないだろうに、俺と一緒に参加すると言い出した。

 まあ、これも俺の事を考えてくれてのことだろう。

 部活には影響しない時間帯だけの参加だったので、参加した。

 二人で講習に行くと、何故か、そこに菫と双葉がいた。

 本人に聞くと、「私達も来年に備えて受講しただけですよ?」と真顔で言った。

 俺の申し込み自体、朱里が代行してくれたので、菫は知るはずもない。

 ふと見ると、朱里が双葉に「裏切ったね?」と詰め寄っていた。

 どうやら双葉が菫にリークしたらしい。

 ふるふると双葉は顔を振って否定していたが、朱里が般若みたいな顔で問い詰めたら、肯定はできんわな。

 俺だって否定するわ。


 と、いうことがあったり――――


 沙緒と二人で印刷所からの帰り。(じゃんけん勝者の特権だったらしい)

 しばらく歩いていると、小さな公園があった。

「せっかくの特権なので、少し寄って行っていいですか?」

 照れくさそうに言う沙緒のお願いを聞くことにした。

 二人で背もたれのないベンチに座って、少しばかり色々な話をした。

 その中で、沙緒から身の上話として、お母さんの話を聞いた。

 また、調子を悪くして入院することになったらしい。

 部活をやっていて大丈夫なのか? と問いかけると、

「弟が『今度は僕がやるから』って言ってくれてるんです」

「そうか。いい弟持ったな」

「ですね。姉としては、弟の成長は嬉しいです」

 お前を見てるからいい子になったんだろう、と俺は思った。


「あの、ちょっとだけいいですか?」 

 すすっと、俺の肩にもたれかかってくる沙緒。

「こういうの憧れてたんですよね……」

「そうか……。まあ、これくらいならな」

 気のせいか、竿竹が、蛇が獲物を狙うように蠢いている。

 しゅっと、音と共に竿竹が俺の首に巻きつく。

 首が絞まる程ではないが、なんとなくこそばい。 

 おいおい、竿竹よ。お前、俺をどうする気だ?


「じゃあ、そろそろ行きますか――って、あれ?」

 沙緒が動こうとして、繋がっている竿竹に邪魔され動けない。

 まあ、今、俺に巻きついてるんだから動けないわな。

 ――こいつ、もしかして、ご主人のために俺に巻き付いたのか?

「あ、あれ? いつの間に部長に髪の毛が絡まったんだろ?」

「じっとしてろ。解いてやるから」

 髪を傷つけないように、丁寧に竿竹を解いていく。

 直に竿竹に触ったの初めてだけど、やっぱりただの髪だよな?

「あふっ」

 変な声が沙緒からした。

「ぶ、部長そう優しく触られると……こちょばいというか、その……気持ちいいというか」

「ばーか。変な声出すなよ。こっちがドキドキするだろうが」

「部長もドキドキしてるんですか?」

「しねえほうがおかしいわ」


 竿竹を解いた途端、沙緒に唇を奪われた。

「部長が悪いんです。変なこと言うから、我慢できなかったじゃないですか!」

 唇を離して顔を真っ赤にして言う沙緒だった。


 どきっとしたけれど、これがばれたら殺されると雑念が頭に浮かんだ。

 

 二人して戻った時に、ちょうど朱里も来ていて、俺達二人の様子がおかしいことに察知して、おかげで恐ろしい目にあった。具体的に覚えていないけれど、きっとまた記憶障害にでもなったのだろう。


 と、いうことがあったりもした。 


 これから俺の残りの高校生活は、あいつらが諦めない限り、ずっと修羅場が続くだろう。


 愛する婚約者、愛する部員たちの手によって、愛されながら。

(どうせならエッチな展開になってくれたらまだましだったろう。よく生きていたものだ)


 これが、神様が俺にくれたご褒美だったのかもしれない。

 誰かに愛されるってことは、確かに素晴らしいことだ。

 神様を恨むのは筋違いだろう。


「諦めたらそれで終わりなんだよ」 


 俺の放った小さな一言が、新たな後悔の種を生んだけれど、それはそれで楽しいものだと俺は思う。

 ハチャメチャな婚約者と部員達に心から愛をこめて言いたい。

 なんならメモ書きでもいいか。


 こう残しておこう。


『探さないで下さい――――――菅原京介』



※後日談。その後、速攻で居場所がばれて連れ戻されました。

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