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女神様の星作り  作者: いと
人間の住まう世界編
9/28

フラグを言うと髪が消える世界(後編)

テロリストをご送信してしまった女神様。その後のカンパネは冷静に避難をし、目の前の出来事をいつも通り観察する。


 鳴り響く銃声と爆発音。さながら戦争物の映画の役者になった気分だった。

 僕の力を使えば、テロリストを倒すこともたやすいのだけれど、少しの人間の感情が邪魔して手を出すことに抵抗がある。

 タタタタタッと銃声が再度近所で鳴り、一発の銃弾が僕の近くの壁に当たる。

『念のため言っとくけど、その姿で死んだら、もう戻ってこれないからね』

「知ってますよ! だから逃げているんです!」

 女神様も僕が力を使って人間を倒すことを良くは思っていない。というのも、『面白くない』からだ。

 女神様は残酷で残念な、そして残虐な神であると言うことを再認識させられる。

 もしかしたら今回のこの状況も、ちょっと間違えてでは無く、意図的にやったことかも知れないとも思える。

「とりあえずあの建物に隠れます!」

 戦闘機からの機関銃も飛び交っているので、屋外より室内の方が良いと判断。実際身を守る力は許されているみたいなので、いざとなれば『シールド』を使うが、極力頻度は少なくしたい。

 鳴り響く銃声から逃げ、ガラスの割れた銀行へ入る。 受付のテーブルは倒れ、中に爆薬でも投げられたのかと思うほどの惨状だった。

 倒れているテーブルの影に隠れ、息を整えると、隣でもテーブルが倒れている影に人が隠れていた。

「あれは、人間。テロリストでは無いけど、銃を持っている?」

 よく見ると、人間が二人。

 一人は三十代くらいの男性で、右手に拳銃を持っている。もう一人は女性で右足に縦断が命中して身動きが取れないのだろう。

『ん? カンパネ、その人間の会話を聞けるようにしなさい』

「わ、わかりました」

 疑問に思ったが、女神様の命令だ。ここは従っておく。

「傷口の上をしばったから、少しは大丈夫だろう。あとは助けが来たらすぐに助けを求めるんだ」

「先生はどうするの?」

「俺は……テロリストとはいえ何人か殺したからな。目をつけられている」

「じゃあ隠れていれば」

「もう予想は付かれているさ。ここから離れるよ」

「だ、だめ! 私まだ先生に言ってないことが!」

 何やら戦場の中で起きた恋愛ドラマを見ている気分になった。あれ、でも今の状況って女神様の神力があるのでは……?


「俺には家族が居るんだ。(髪が少し無くなる)なにすぐには死にはしないさ」

「先生……」

「それに、お前みたいな可愛い生徒もいるし、教えることも沢山あるしな(髪がまた少し無くなる)」

「教えてください! 色々まだ聞きたい事が沢山あります!」

「そうだな。それに、


 家に帰る頃には生まれてるだろう。二人目の娘がな」


 この瞬間、どこかしら神々しい光が男性を照らし、男性の髪が全て無くなった。

 しかし、それはとても笑える状態ではなく、むしろ男性が神々しくも見える。

「先生。今の先生は神様のように見えます。きっと無事に帰って、私の所に戻ってきてください!」

「ああ。そうするよ」

『あ、まずいわね』

 突然に話し出す女神様。

「何かあったのですか? 今とても良い場面なのですが」

『髪が全部無くなってしまったから、これ以上言うと、別な『毛』が無くなるわ』

「え?」

 その言葉を聞いた頃には、すでに遅かった。


「俺の居場所は自宅と学校だ。絶対に帰ってみせる(眉毛消滅)。娘と遊ぶ約束もしているからな(まつげ消滅)。嫁は最近病院にいたし、少しいたわってあげるさ(胸毛消滅)。それと、お前らの期末のテスト。回答がまだだったな(すね毛消滅)」


 ありとあらゆる毛が消滅するも、男性は動揺しない。それを見ていたであろう女性も嫌がること無く男性の言葉を聞く。

「じゃあ、気をつけろよ!」

「先生……」

 そして先生と呼ばれていた男性は拳銃を片手に持ち、銀行を出る。

「先生……やっぱり行っちゃ、いや……」

 小さく呟く少女に、少し心を痛めるも、僕にはどうしようも無い。

「女神様、今回は僕にとってあまり面白くない星だったと思います」

『そうかしら?』

「え?」

 意外にも、女神様は肯定的だった。

『人間にとって毛は成長の証であり、無ければジンクスにもなる代物。それが無いのにも関わらず目の前の女性は動揺することなく話していた。これはとても興味深い内容ね』

「そう……なのですか?」

『カミノセカイとは別の場所にいる神から聞いたけど、人間は禁断の果実によって異性を意識し始めたわ。このベースの星の世界の人間も異性の意識は別の世界の人間と同様で意識しあうもの。相手の姿形が変わっても、通常通り見ていられるのは、それ以上の別な感情があるのかもしれないわね』

 女神様が自問自答を続けていて、僕には理解できない。少なくとも、あの女性は男性を好いていたと認識して良いのだろう。それ故に髪が無かろうが、関係が無かったのだろう。

『面白い情報は得たわ。そろそろ戻すわよ』

「はい」

 その返事と共に、再度光に包まれる。

4話目は少し少なめの記述となりました。いろいろ書いていくうちに消してはまた書いてを繰り返す感じですね。次回もどうぞお付き合い下さい。

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