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女神様の星作り  作者: いと
人間の住まう世界編
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しりとりの世界(後編)


 北東の森の中に大きな柵に囲まれた基地が存在した。

 ミサイルが十機ほどあり、すべて大きい。これ一発でどれほどの威力があるのかと思うと少しぞっとする。

『女神的には大した威力では無いわね』

「女神様的に考えないでください。僕の人間の考えを尊重してください」

 さて、まず確認したいことがある。ここはテロリストの秘密基地……と仮定するが、ここもしりとり絶対法が決まるのだろうか。

 試しに入り口の警備の人に声をかけてみる。

「ちょっと良いですか?」

「帰れ。ここは一般人禁止区域だ」

「ダメと言われても、是非中を見せていただきたい」

「今なら生きて返す。だが次は無い。最終忠告だ。帰れ」

 しりとりが続いてる。

 ……もしかして、有効?

「連絡係として、実はここに手紙を運んで来た者です」

「……(くいっ)」

 む、単語が出ない所を見ると、手紙をよこせとジェスチャーしてきたか。それなら。

 そう思って、先ほど嘘を言えない神力に近い、思ったことを声に出して言ってしまう神力を使う。

「……ぅ……その……手紙を……だせええあああ!」

 サイレンが鳴る。

 その人捕まる。

 僕は認識阻害を使って誰も見えていない。

『いやー、今のは少し面白かったわ。まさかこんな秘密基地にも警察が来るとはね。もはや秘密の基地なんて作るだけ無駄なのかしら』

「かもしれません。ただ、警察は犯人だけを逮捕して、この奥には興味を持たなかったみたいですが」

 何かが絶対あると思わせる柵だが、警察はそれよりも法律違反者を捕まえて帰る事だけを行っていった。

「それにしても、しりとりを法律にして、これほど厳しくする理由は何なのでしょう」

『そう設定したからよ』

「いや、確かにそうなんでしょうけど。それにしては過激すぎるというか」

 前の世界では、信号が赤に変わりかけたときに走ったり、自転車が歩道を走っていたりしてたが、それでもこれほど厳しい訳では無かった。

『世界はそれぞれよ。この世界ではしりとりを破った者には罰を与えるとだけ設定したわ。その先は人間達が勝手に厳しく取り締まり、あげく今になったわけね』

 捕まった人はその後どうなるのかも気になったが、今は考えずにテロリストの行動を止めることだけを考えよう。

 柵の中に入り、認識阻害を使って奥へ進む。

 ミサイルが並ぶ中、中央には基地らしきものが存在していて、その中に数人人間の反応がある。

「おそらくこの中に声明者が居るはずだな」

 てか、ここ、柵の中だよな。警察来るのかな?

 えっと、とりあえず見回りの兵士を見つけて……いた。

「こんにちは」神力発動。

「ぁ……誰だお前ああああ!」

 サイレン

 警察

 僕無事。


 うん、大丈夫みたい。

 一連の流れに違和感しか無いというか、どこから出てきたのって思えるくらい警察がすぐに登場。

 もはやこの世界の地下は警察で埋め尽くされているんじゃ無いかなとも思えた。

 というより、女神様じゃないけど、本意じゃ無い言葉を発してしまい最後悲鳴に近い叫びを上げるのをやめて欲しい。

 とりあえず基地内部も警察は来る事を確認。

 それじゃあ早速中に入ってテロリストの仕事を阻止しますか。


 ガチャという音と共に扉が開く。が、認識阻害を使っているので誰も気がつかない。

 声明者は一番大きな椅子に座っていて、目の前には大きなレバーが設置してある。

 付近ではカメラを準備していて、これから何かの撮影でも始めるのだろうという雰囲気を出している。

「さて、そろそろ準備はできたか?」

「可能であります!」

「素晴らしい働きだ。ではこれから始める」

 そしてカメラが回り、声明者改めテロリストのボスだろうその人はカメラに向かい大きな声で言い放つ。

「諸君。これより共和国へ攻撃を行う!」

 おそらくレバーに手をかければそれで終わりだろう。その前に僕が何かを言えば良いのだろう。


「うまく行くと良いですね」


 僕の発した言葉に、その場の全員が静まる。というより、認識阻害も使っていたから、相手からすれば突然現れた得体の知れない侵入者だろう。

「(ぱくぱく)」

 言葉が見つからないのだろう。本当は誰だお前はとでも言いたいのだろうか。

「ネズミが一匹……紛れていた様だな」

 ボスが額に汗をかきながら言葉を放つ。

「なんでこんなことをするのですか?」

「簡単な事だ。アライド共和国の物資を奪う。そして輪が組織に繁栄をもたらすのだよ」

「弱い者をいじめて、自分だけが上に立つ。なかなかの悪役ですね」

「ね……寝言は寝て言え。悪は我々では無い。そもそもこの世界の根本からおかしいのだ」

 この人、しりとりについて気がついている?

「言葉の自由が半分奪われてから数百年。誰も疑問に思わなかったことが我々にとっての最大な疑問だ」

「だからって、その解決方法がこのミサイルとは思えないけど?」

「どうとでも言うが良い。だが、周辺国を破壊し、我々だけの国を作り、言葉の自由を得れば世界を我が物にできる!」

(……るって意外と難しいな)

 返す言葉が見つからない。このままミサイルを撃たれるのはさすがにまずいが、かといってボスの頭も回る。先ほどから会話が成り立っているのが地味に悔しい。

「ふん、返す言葉が見つからないか。では邪魔をせずにドアから出て行くんだな!」

「なら、最後に一つ! このミサイルの威力だけ教えて欲しいな!」

 神の力を使う。

 嘘を言えない力。

 思ったことを言う力を使う。

「ぅぉ……な、何故聞きたいかは疑問だが答えてやろう。」

 うお、耐えた!

「ミサイル一つで人間は千人殺せる。十機おいている理由は、周辺国への威嚇もある。その威力は。


 三発で国一つ分!」


 ……。

 この場合、どうなるんだろう。とりあえず神の力でボスの口を塞いでみよう。

「はっ! むぐぐううぁぁぁあ」

 間一髪だろう。

 しりとりの最後に「ん」がつけば負けというルールが存在すれば、先ほどの「国一つ分」で負けである。

 もしかしたらこんな世界だから「ん」で始まる言葉もあるかも知れないが、相手が焦っている所を見ると負けなのだろう。

 次第にサイレンが鳴り響き、やはりどこからともなく警察が登場。

 そしてテロリストのボスを捕まえる。

「覚えてろ! 貴様、絶対に殺してやる!」

「……」

 変に話して捕まるよりは黙って他方が良いだろう。

 ミサイルは撃たれることも無く、数分後に警察が取り調べを初めて基地が解体されたのは、一ヶ月後のことだった。



「ということで、地味に疲れました」

「お疲れ様。にしても「しりとり」という縛りでもっと楽しい世界かと思ったら、思った以上にスリリングな世界だったわね」

「軽いホラーですよ。日常会話でしりとりなのにあれほどスムーズに話しが進めるのは、人間という可能性を再認識する必要があります」

「そうね。まあ、今回の星はそれだけでそれ以上の面白いことは無いし、消去することにしましょう」


 え、消去?


 すると、何のためらいも無く、僕が先ほどいた星は、爆発した。


「いらない星は消すのが一番よ。増えすぎたら混乱が生まれるもの」

「え、ええ。そうですね」

 この心の中に残るもやがなんなのかは、今すぐには分からない。

 しかし、一つだけ思ったのが。


 女神様はやはり、恐ろしい存在なのだと思った。

いとです。

二話は比較的暗めの話が良いかなと思い、今回のような感じになりました。しりとりという子供が楽しむゲームがもしも世界のルールになったらという変な考えから生まれたお話です。

引き続きお付き合いくださればと思います。では。

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