出番が一度だけの世界(後編)
一度だけの出番ということで、ただ認識が消えるだけなので多少気が楽と思えたカンパネ。しかし女神様の本当の性格を改めて思い知った発言から、信じられない世界と変わってしまった。
女神様は本来どういう人物かを知っていたはずだった。残虐で残酷な、自分が楽しければ問題ない。そんな人だった。
『カンパネと何かしら接触を一度でもすると、認識が阻害されるという事を全員の頭に入れたわ』
「……は?」
『安心しなさい。ちゃんと人間は生きているわ。認識が阻害されるだけ。つまり、その人間は存在するけど、周囲からは認識されないということ。それを人間は知っている世界にしたわ』
この世界のルールについて人間が知ったということだろうか。
とくに何か変化したようには見えなかったが、気がつけば全員が黙り込んでいた。
とりあえず何があったかを左斜め前の男子生徒に聞いてみよう。
「ちょっと、質問いいかい?」
「へ、あ、ぬああああ! カンパネ貴様ふざけるなよ! 何で俺に話しかけて来たんだよ! これだと俺は、消えていなくなるだろうがあああああぁぁぁぁぁ」
息が切れるまで話し、そして徐々に、その姿が消えていなくなった。
「……えっと、これは一体」
「笹原君! そんな……あ、いや、き、消えたくない!」
廊下側の席の女子生徒がまたしても消えていった。
とりあえず僕と話すと消えるらしい。状況がわかったのでとりあえずメモを出してそれを皆に見せる。
「状況は分かった。とりあえず僕に関わらないようにしてくれ」
そう掲げられたメモに皆見て、目を伏せる。
どうやら声を出したり、直接僕と対面で何かをしなければ消えないらしい。
チャイムが鳴り響き、先生が入ってくる。
「……そ、それでは授業を始めます。まずは前回のテストですが……三浦君、今回百点を取ったのは君だけだ」
「やった!」
どうやら何かのテストで百点を取ったらしい。
そして、先生と三浦君は消えていった。
『さ、さすがに理不尽な世界かしら』
「理不尽過ぎますよ!」
「ひっ!」
女神様の声に大声で反応したせいで、左隣の女子生徒が悲鳴を上げて消える。
『アニメとかだとキャストが凄い数になると思わないかしら』
「そうですけど、さすがにこれは僕も生きてて辛いというか」
ことごとく消える友人達。ドラマでも積み重ねた努力等があってキャラクターが成り立つのであり、こうして一言で終わってしまうのは何というか安い。
『まあ今日はこの辺にしておくわ。廊下を出たところでゲートを作ったから、そのまま帰ってきなさい』
そう言われて僕は立ち上がる。
少し疲れたのか、歩く足も少しくたびれていて、何も無いところで転んでしまった。
「バチが当たったんだ」
「ざまあ見ろ」
「こんな世界」
「お前が消えれば良いのに」
そんな声が聞こえてきた。
もちろん声が聞こえた後は、その生徒達は消えていった。
僕は、人間のことは嫌いじゃないのに、どうして嫌われてしまったのか。
やるせないまま、カミノセカイに帰還するのだった。
いとです。
日常系のアニメを見ているととてもなごみますね。そして来週もこのキャラクターが見れるのかなという期待感というのは活力にもなります。
そんな活力を断ち切ってみた物語を書いてみたということです。
次回の女神様は何を思いつくのやらと私も考える今日この頃です。
では。




