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女神様の星作り  作者: いと
人間の住まう世界編
20/28

出番が一度だけの世界(前編)

ドラマやアニメを見ていた女神様。そこには毎回登場する俳優やキャラクターに少し飽きを感じていた。もしそのドラマやアニメの登場人物の出番が一度きりだったら。そんな思い付きから、カンパネを主人公とした物語が始まった。

「ドラマでもアニメでも、イケメンな人や可愛い人っているわよね」

「まあ、いわゆる主役というやつですね」

「でもね、いくらイケメンと言っても、私クラスになると、数分見ただけで飽きるのよ」

「はあ」

 唐突に、全人類を敵に回す発言を容赦なく放つ女神様。今度は何を思いついたのだろう。

「それで、今度はどんな星を作ったのですか?」

「話しが分かるわね。それでこそカンパネね」

 女神様は手を広げて一つの画面を見せる。

「……至って普通のようですが?」

「そうね。この星には主役が存在しないわ。そしてその主役はカンパネ。貴方が行うの」

「僕がですか?」

 何かしら関わることはあったけど、直接僕が何かをするのは初めてである。

「一体何を?」

「この世界では『一度登場すると、今後出番が無くなる』というルールがあるのよ」

「どういう事です?」

「例えば、カンパネがある女性と挨拶をする。で、その後その女性は一切カンパネの前には登場しないわ」

「それって、消滅するってことですか?」

「消滅ではなく認識的な問題ね。存在はするけど登場しないだけ。それでどんな感じになるのか見てみたいの」

「はあ」

 特に殺伐とした感じでも無いし、今回は比較的平和そうだ。何より僕が主観的に行動できるということは、場合によっては平和的解決を率先して行えるということでもある。


 そう思った時が、あったが、今となっては遅かった。


☆出番が一度だけの世界


 青い空、白い雲。

 そんな澄み切った空気の中、僕は制服を着て学校の校門の前に立っていた。

『最近流行の学園物よ! 喜びなさい!』

「と言われましても……」

 そんな独り言が漏れる中、後ろから声をかけられた。

「カンパネ君!」

 その声はとても可愛く、何度でも聞きたいと思える美しい声だった。

「その声は……その……あれ?」

 後ろを振り向くと、そこには誰も居なかった。

「えっと……可愛い女性の声が聞こえたのだけど」

『当然じゃない。今ので出番終了よ!」


 見たかった!

 凄く、その可愛い声の主を見たかった!


 この憤る感情は何処へぶつければ良いのだろう。

『それにしても想像以上ね。まさか一言出てきただけで居なくなるなんて』

 女神様が独り言を漏らしている中、また誰かが僕に声をかけてくる。

「おいカンパネ。昨日はよくも俺のことを無視してくれたな!」

 今度はしっかり目が合った。とても厳つい男子生徒。体格も大きく、けんかをしたら強い。そんな人が目の前に……目の前に……ん?

 瞬きをしたら、消えていなくなった。

『認識の問題よ。男子生徒は存在するけど、カンパネからは認識できなくなったのよ』

「何かすげー怖いんですけど!」

 こんな学園生活、嫌だー。

 だって、話す人話す人、全員がもういなくなるんだもん。

 しかも設定の関係もあってか、交友関係は最初存在していて、それから何故か消えていなくなるという状態だ。相手が誰かもわからないまま消えるので、凄くもやが残っている。

 そんな悶々としているなか、チャイムの音が鳴る。

「ほら予鈴が鳴っている。遅刻になるぞー」

 男の先生と思える人が声を上げる。

 そして、当然のように僕の認識から外れて見えなくなる。

「いやいや、話しても無いのに消えるんですか!」

『当然よ。物語に一度でも倒叙鬱したら、その人は今後出てこないのよ』

 やばいよこの世界。まだ消滅とか死亡とかでは無いからましかも知れないけど、それでも凄く複雑な状況だよ!

 とりあえずこれ以上人を消すわけにもいかないので、教室に走り込む。

 靴を履き替えて階段を上る。

 少し見上げると、女子生徒が上っていて、そのスカートの中が少し見えかかる。

「きゃっ! ……見た?」

「いや、その、見てな……もう見えない」

 学園物の物語でのお約束。異性とのこういったトラブルも、起こったとしてもフラグが無くなる。これって、物語として破綻してないかな?

 教室に入り椅子に座る。

「よおカンパネ。昨日のサッカーの試合の話しを聞いてくれよ!」

「うん、何が……あったか聞きたかった」

 多分クラスメイトで仲の良い友達だろう。しかし、その姿はすでに僕の目の前から消えていた。

「何か、悪いことをしている気分なんだけど、大丈夫かな?」

「どうしたのカンパネ君。顔色悪いよ?」

「うん。大丈……大丈夫じゃないかも」

 心配してくれた女子生徒の顔も見る暇も無く、その少女は消えていた。

 死んでいるわけでは無い。認識ができないだけだと自己暗示し、目をつむって授業まで待つ。

 本鈴が鳴り響き、先生が教壇につく。

「朝のホームルームを始める。まず風邪で佐々木と田中が休みだな。後は鈴村と鈴木は部活で欠席だ。ではこれでホームルームを終える」

 要件を話して先生は消える。なんというか、この世界について分かっているような身振りというか、必要事項を淡々と答えて消えていった。

「何だよ、鈴木と鈴村は部活かーいいよなー授業サボれて」

 人間はどうやら勉強が苦手らしい。僕にとっては知識をつけるという観点から授業は嫌いでは無い。

 ちなみにさっき独り言を言った右斜め前の男子生徒も消えていった。

「……本当にこんな世界で大丈夫なのだろうか」

 そんなことを思う中、女神様が信じられない発言をする。


『ちょっと刺激が欲しいから、新ルールを追加するわね』

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