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女神様の星作り  作者: いと
人間の住まう世界編
19/28

推理不要なミステリー(後編)

犯人は分かった。どうやって殺害したかも分かった。しかしそれでも探偵は事件の真相を突き止めようとする。そんな中、とんでもない人物が登場することになる。

洋館の主人はとても優しかった。

 しかし、メイドとハンニンは交際していて、それだけは許してくれなかった。

 そんなハンニンは、逃げようと思ってメイドを説得。しかし、それもうまくいかず、最終的な判断が主人を亡き者とし、メイドは連れて行くという考えだった。

 そして、ハンニンは主人を殺害。

「それで私はヒガイシャになったわけです」


 ……僕は今、少し恐怖という感情を持っている。


 いや、だってね、女神様の一言の後、何があったと思う?

 死んでた主人がむくっと起き上がって、血を流しながら話し始めたんだよ?

 しかも「殺されてしまったか」とか、普通に話し始めて、もうこの世界は何が何だかわからないよ!

「まずお聞きします。メイドさんの指紋がこのナイフに残っているのですが、これはなんだかわかりますか?」

「殺された後、指紋を拭き取ってたし、それをキッチンに戻したんでしょ」

 軽いよ!

 てかその現場見てたって、半ばゾンビでしょ! いや、今ゾンビでしょ!

「では、犯人はハンニンさんでよろしいですか?」

「はい」

 ハンニンが素直に頷く。

「ま、待ってください!」

 メイドさんが涙を流して話し始める。


「確かにあの時間、私はカンパネさんにパンを持っていき、その後キッチンに行ってナイフを使いました。主人……いえ、ヒガイシャ様を殺してませんが、私がやりました!」


 い、意味が分からない展開が来たぞ!

『た、大変よカンパネ!』

「ど、どうしたのですか?」

『事実と世界のルールに亀裂が入ったわ。このままだと世界が滅ぶわ!』

「何故!」

『普通の世界では冤罪が存在するわ。でもね、この世界は冤罪が存在しないの。それをメイドがやるつもりよ! 簡単に言うと、バランスが崩れてブラックホールができあがるわ!』

 何さらっと凄い事言ってるんですか女神様は!

「どうすれば良いんですか!」

『な、なんとかしなさい! 私も思い浮かばないわ!』

 女神様もさすがに少し焦っている。

 そんな中、ヒガイシャがキッチンを歩き、当たりを見渡す。

「……このキッチンも。いつも綺麗にしてくれたのだな」

 寂しげに話すヒガイシャ。その目にはもう生気が残っていない。

「皿はあまり割ることも無く。毎日が楽しかったよ」

「ヒガイ……いえ、ご主人様」

 置いてあった犯行に使われたナイフを取り出し、それをメイドさんに渡す。

「私は、我が儘だったのかもしれないな。娘のようにかわいがっていたお前を、ハンニンに渡したくなかったのかもしれない」

「ヒガイシャさん、私も本当は殺したく無かった!」

 ハンニンが叫ぶ。

「メイドさんは僕よりもヒガイシャさんを優先に考えていた。そして、今回一緒に海外へ行こうと言ったときも断られたんだ。殺すことで、諦めてくれると……そう思って!」

「もういいんだ」

 ヒガイシャがハンニンの言葉を遮る。

「メイドよ。君はまだ若い。これからどんな苦難があっても、彼となら頑張れるだろう。私が保証しよう」

「……ご主人……様」

「だから、そのナイフで私を刺すんだ」


 え、今、何て?


「私を刺せば、君も同罪。彼と一緒に出れるだろう。何、一度死んでいる。私の事はかまわず刺してくれ」

「ご主人様!」

 涙を拭いても、また涙が出てくる。

「私は、ご主人様に仕えて良かったです! お世話に、なりました!」

 ぐさっ!

 そんな音が鳴り響き、再度ヒガイシャは倒れ込む。

 というか、さっきからヒガイシャは一回目に刺された場所から血が出まくった状態で話していたんだけど、なんで誰も言わないの?

「メイドさん。残念ですが、死者への冒涜も犯罪です。一緒に警察まで来て貰います」

「はい……」

 結果、メイドさんはハンニンと共に警察に行くことに。いや、推理が必要ないミステリーは、とても疲れることが分かった。


.☆


 まさか、あの後、ニワシもナイフでヒガイシャを刺して、「メイドさんを狙って他のはお前だけじゃねえ」とお言い始めて、三角関係になるとは思わなかった。

 カミノセカイに帰ってから起きた事件? なので、女神様は「早く帰還させてしまった!」と後悔している。

 いや、僕としては早く帰りたかった。

「今回の出来事でわかったのは、推理物の小説には推理が必要という事ね」

 一体何を言っているんだこの女神様は。

「食べ物が無いレストランって行ってみたいですか?」

「まあ、そういう事よね。ジャンルには必要な要素があって、それをクリアしてこその物語ね」

 次こそは、もっと楽な星に生きたいと、常々思う今日この頃だった。


いとです。

登場人物を全員役職にするのはいつも考えていて、今回から使用してみようかと。

推理物の作品は好きですが、見た目は子供の名探偵の作品で「前編」とついていると来週が待ち遠しいというか、もやもやが残るんですよね。

ということで、それを最初で解決するとどうなるか、自分でも迷走しながら執筆してみました。お付き合いいただければと思います。

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