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数日後。


今日は朝からデュークさんは城に出かけた。

どうしても、顔を出さないといけないそうだ。


寂しいと思うのは、会えてから日が浅いからなんだろうか?

早く帰ってきてくれるって、言ってくれたから我慢してる。




そんな私は、早目に護身術の稽古を済ませた。


早目って言ったって、1時間はみっちりだ。

今では男の人も投げられるようになった。

とにかく、逃げ出せればいい。

そうすれば、後は魔法で何とか出来るもの。


「カナコ様、お上手になりました。この分であれば、この体力が切れないように適度な運動に切り替えて問題ないです」

「ほんと?」

「ええ、けれども、時々はハードになります」

「それは仕方ないもの、ね?」

「その通りですよ」

「わかったわ、隊長に任せます」 

「はい」


そして、ストレッチで体をほぐして、スッキリして、着替えて、テッドの元に向ったんだ。

ウキウキとしている。

だって、今日は念願の日なんだから!





そう、私はテッドとようやく取り寄せた大豆を前に立ちすくんでいる。

豆腐だよ、豆腐。

なんとなく、思い出したんだ。

豆腐の作り方を。






ありがたいことに、大豆はルミナスでも作られている。

ただ、あまり食べられていないだけ。


今回取り寄せたのは、カップ2杯分だ。

その大豆を昨日から、一晩、水に浸けておいて貰った。

いい感じで、膨らんでいる。

なんか見たことある感じだ。


「カナコ様、本当に、これが?食べ物に?」


テッドが怪訝そうに言う。

そんなに怪しげなものではないんですよ?


「うん、なる予定」

「この大豆は若いときにはサヤごと塩湯でして食べますが。ですが、固くなったら、人間は食べないんですよ?」

「大丈夫よ。出来上がったら、固くないから」


うろ覚えの知識で、突っ走る。


「この大豆を浸けた水ごと砕いて、できるだけ滑らかにね、それから、そのまま暖めて…」

「それを布で濾すんですね?」

「そう。で、出来た液体に海の水を加えて、しばらく置くの」

「で、固まると?」

「その予定なの…」


では、とテッドが作業を始める。

私はただ、眺めていて、昔テレビで見た記憶を必死に引っ張り出す、だけだ。


「砕くのが、難しいですね…」


砕く、よりも、摩り下ろしている。

擂り下ろし鉢はルミナスにもあるんだ。

それで、上手に擂って液体状にするんだよ。

テッドの腕が疲れないか心配。


「ミキサーが欲しいところだわ」

「ミキサーとは?」

「果物とか葉っぱとかを水と一緒に混ぜてジュースに出来る機械よ」

「それなら、ありますよ?」


え?あるの?


「そうなの?」

「そうですね、ここにはないですが、地下では売られてます」

「地下って、凄い…」

「いろんな部族がいますが、機械を作る部族は穏健派ですから、地上とも上手く行ってます」

「そうなの?」


テッドの話によると、その部族は器用な性質で、発明することが得意なんだそうだ。

電話や電球なんかも彼等が作ったものらしい。


「じゃ、いろんな変わったものもあるかも知れないわね?」

「そうですね。城に戻られたら、城下街の一角にある彼等の店に出かけられるのも良いかも知れません」

「行っても大丈夫?」

「カナコ様には護衛が一杯付きますから、大丈夫だと思いますよ」

「そ、そうね…」


そんな話をしているうちに、テッドは器用に大豆を潰して茹でて、布で濾している。


「この残ったカスは何かに使うのですか?」

「炒めて料理に使ったり、肥料に使ったり。野菜と甘く炒めても美味しいと思う」

「やってみましょう」

「後でね。それよりも、液体に…」

「海水ですね?入れましょう」


慎重にテッドが海水を入れる。

ゆっくりと、固まっていった。

間違いない…。


「豆腐だ…」

「これで、いいのですか?」

「かなり柔らかいけど、うん、多分」


私はスプーンですくうと、皿に入れ、ルミナス特製オリーブオイルと塩をかけた。

醤油がないんだもの、仕方が無い。


この食べ方は日本にいた時に考えた方法なんだよ。

夏の冷奴に飽きて、試しにやったら美味しかったんだ。


さ、食べるぞ。…!


「美味しい!」


思わず大きな声で言ってしまった。

そんな私の姿を見て、ようやくテッドもスプーンを手にする。


「では、私も…」


テッドも驚く!


「これは!甘さが上品で、なんとも、美味しいですな?」

「本当はね、もう少し硬いのよ。四角に切れるくらいなの。けど、これも美味しい」

「なるほど、多分、温度や海の水の分量が関係するんでしょうな…」

「お願い。時々でいいから、作ってくれる?」

「もちろんです」


豆腐が出来れば、厚揚げや薄揚げ、がんもどき、が食べられる。

鍋も豪華になる。


「これを専門に作る者を募集してもいいのでは?」

「え?」

「これは、売れますよ」

「商売になる?」

「はい」


そうか、そうなったら、ハイヒット商会に頼るしかないな。


「わかったわ。ハイヒットに相談してみる」

「それが宜しゅうございます」

「ありがとう!」


そうだね、食べ物で商売する話は、小説にもたくさんあった。

あ、商会ならば、お米も知ってるかも。




夢が膨らむ。

こうなってくるとだ、断然、米だよ。

白米だよ。


ご飯に味噌汁、お漬物。

鯵の干物に卵焼き!

味付け海苔も最高だ!







しかし、炊き立ての白いご飯って、なんでこんなに懐かしいんだろうか…。







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