表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/192

65 あなざーさいど 7

ジョゼの視線から。






その知らせは、アンリ・ハイヒットからもたらされた。 




エリフィーヌ・ハイヒットこと、カナコ様が拉致された。

忽然と消えたのだ。


「まさか!どうして?誰が?」


受話器を待った手が震える。

ザックが緊急事態に備えなくてはいけないので、我が家には電話が当然あった。

今回、それが役に立った。


「それが、わからないのです。今、妹を乗せた馬車の御者に聞いているのですが…」


いったい、誰が?なんのために?


「そ、それで、何か詳細は?」

「まったく消息が掴めないのです。それで、父が決心しまして、祖父と共に、陛下の元に行くと言ってます」

「何時ですか?」 

「直ぐにでも」


ああ、なんてことだ。

今までカナコ様が、会いたくないと言うので、陛下には何も言わずにきたのだ。

それが、こんな形で報告することになろうとは…。


「できるだけ、遅らせていただけませんか?」 

「何故でしょう?」

「私の口から、今までのことを陛下に謝りたいのです」


アンリは少し考えて、こう言う。


「ジョゼさんの気持ちは分かります。しかし、私達は今すぐにでもフィーを取り戻したい。妹に危機が迫っているのです。1秒でも早くに陛下にお願いに上がりたいのですよ?」

「それでもです。今まで黙っていたことを、謝らせて下さい。お願いします」


私は19歳の彼に願う。

彼はため息をついた。 


「分かりました、では祖父の屋敷で待機してます。あちらの方が城に近いですから」

「ありがとうござます」


せめてものお礼だ。

今の城の状況を伝えよう。


「スタッカード公爵がおいでるならば、大丈夫だとは思いますが、今の城は陛下の敵が取り仕切っているようなものです。今回の事も、直接陛下にお会いになってから、明かされた方がいいです」

「ええ、それは、私たちも分かっています。なので、祖父が私を陛下に紹介したいという体を装います」

「それは、良かった。では、後で」

「ええ、それでは」


私は身支度を整えて、急いでいるのだけれども、急いでないように城へいく。

呼び出したザックと共に、陛下の元に夫婦で伺う。

ザックには、道々、手短に説明する。


驚いている夫と共に、陛下の執務室に入った。


「久しぶりだな?ザック、ジョゼ。今日はどうした?」


陛下は急なことにも、対応して下さった。

ザックは話が漏れないように幕の確認をしている。


「ザック、どうした?」

「話が漏れないように、陛下の幕に少し強化を加えました」


陛下の目が変わった。


「何があった?」


私たちは覚悟を決めた。


「陛下、私達夫婦は、陛下にお叱りを受けに参りました」

「なんだ?」

「実は、カナコ様の事です」

「見つかったのか?」

「はい」

「どこに、いるのだ?」

「今は、わかりません」

「何を言っているんだ!意味がわからん!」


陛下が苛立ちを見せる。

申し訳なさ過ぎて、言葉が少し震える。


「実は、もう何年も前から、私達はカナコ様を見つけておりました。が、カナコ様が、陛下には会わないと頑なに仰って。なので、お気持ちが軟化するのを待っていたのです」

「あいつらしい…」


陛下は懐かしそうに仰る。

本当に、お2人とも、頑固者ですから…。

報告を続ける。


「カナコ様は、生まれ変わっておいででした」

「生まれ変わってた?誰にだ?」

「エリフィーヌ・ハイヒット様と言われて、スタッカード公爵の孫になられます」

「あの公爵の?」

「はい、さようでございます」

「そうか、生まれ変わってたのか…」


ザックも話し出す。


「私が最初に会った時には、すでに魔法を使われていました。まだ、10歳のころの事です」

「10歳?今、カナコは何歳なのだ?」

「14歳です」


陛下は無言になられた。

私は、この2人には約束が存在していたことを思い出す。


「ジョゼ、」

「なんでしょうか?」

「俺はカナコに会ったら、約束を遂行してしまう。問題はあるだろうか?」

「その点は、大丈夫かと」

「そうか…」


会ってしまえば、止められるはずもない。

お2人とも、頑固な上に、我が侭なところがあったから…。


「で、何故、どこにいるのか分からないのだ?」

「実は昨日、何者かに、拉致されたとのことです」

「拉致?カナコが拉致されたのか!」


王の気が変わった。

これは、戦いに行く前の気だ。


「誰が、カナコを?」

「まったく、今の時点ではわからないのです」

「カナコを奪って、何がしたいのだ?」

「それも、わかりません」


凄い気だ。私は前に立っているのが、やっとだ。

震えが止まらない。


「それで、何か方法があるのか?」

「と、とりあえずはルミナス国内を探すしかないと」

「わかった、トーマスを呼んでくれ、あと、…」

「陛下、兄は呼ばない方がいいかと…」

「そうだったな、リックはドリエールの味方だからな」


ザックが電話をしている。

私は、アンリの事を伝えることにした。


「陛下?」

「なんだ?」

「実はハイヒットの当主とスタッカード公爵が陛下にお目通りをと申しております」

「俺に?なぜだ?」

「エリフィーヌ様を救出して欲しいとのことです」


陛下は暫し考え込まれた。


「分かった、今すぐ会おう。ジョゼ、連れて来てくれ」

「畏まりました」


私は直ぐにスタッカードの屋敷に電話を掻けた。


「陛下がお会いになるそうです」

「分かりました、直ぐに参ります」


アンリ殿達は、直ぐに城に来られた。




そして、陛下はカナコ様の今の家族に会ったのだ。

カナコ様の父君に陛下は誓って仰った。


「必ず探す。必ず見つける。そのためならば、俺はどこにでも行く。安心してくれ」

「お願いいたします!」


時間が経てば経つほど、見つけるのは難しくなる。

一体、どの様な状況にいるのかも、分からないのだ。

お寂しいだろうに、お辛いだろうに…。





ああ、こうなるんであれば、無理矢理にでも側にいるんだった!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ