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また、落ちた。
しかし、2回目ともなると、慣れたもんだね。
あれ、暗いぞ?
それだけじゃない、よ!
狭い!痛い!
なんだ、この狭さは…。
あっ?これって、お腹の中なのか…。
痛ーい!
いたーーーい!
…。
なんだ?眩しい。
ちょっと、なに?
オギャー?私、オギャーって言ってるよ?
私、生まれたのか、おい?
まるで、ネット小説の転生モノと一緒だよ。
あれを書いた人達、転生したことあるんじゃないの?
体験してないと書けないわ。
で、今の私の状態です。
どうやら、生まれたみたいです。
目の焦点が合ってない感じです。
耳もよく聞こえません。
眠いです。
お腹はこまめに空きます。
オッパイは…、美味しいです。
寝ないともちません。
3ヶ月が経ちました。
首が据わって、なんとか寝返りしてます。
けど、まだ睡眠と感情をコントロール出来てません。
聞こえてくる音が、はっきりしません。
目ははっきりとした色彩ならば、わかりますが、淡い色はわかりませんよ。
6ヶ月です。
ハイハイしてます。
この頃になると、ようやく周りが理解できます。
子供がいます。
どうやら兄です。
父です。
美形です。
まぁ、デュークさんの方が美形度80増しですが。
緑の髪に、赤紅の瞳。
魔法は使えそうです。
母です、
美人です。
緑の髪に、薄い赤紅、お疲れなのでしょうか?
それとも、それとも…。
9ヶ月ですよ。
掴まり立ちしてアンヨの練習してます。
音もしっかりわかります。
目も見えてます。
言葉は出そうとしてるんですが、出ません。
不思議です。
ところで、一体私はどんな顔をしてるのか?
まだ鏡でも見てません。
あ、抱き上げられました。
「フィー、ご機嫌はどうかな?」
どうやら私は、フィーという名前らしいです。
父があやしてくれてます。
「あーー、ぱ」
「パパといったか?」
「あら、あなた、まだよ?」
「いや、フィーは利口だな?美人だし」
「そうね、」
ふーん、美人なんだ?親ばかじゃなければいいけど。
あれ、周りに子供が?
なんか、子供がいっぱいいるよ。
1歳です。
やっと歩ける。
体を自由に動かせる。
兄妹構成がわかりました。
一番上のお姉ちゃん、次のお兄ちゃん、その次のお兄ちゃん、で、直ぐ上のお姉ちゃん。
5人兄弟の、今のところ末っ子です。
兄妹が多いって、なんか楽しそうだな。
さてさて、魔法は使えるはず、だよね。
うん、そうお願いした。
ところが、なぜだかわからないけど、今までの間で魔法を使おうって一度も思わなかった。
毎日を過ごすことで、精一杯なんだ。
本当に、赤ん坊って、大変なんだよ。
生きるだけで一生懸命だった。
毎日毎日できることが増えるってのは、それを覚えていくので、結構頭使ったり、体使ったりするんだ。
だから、いつでも眠たいんだよ。
思ってたより、赤ん坊って忙しいんだ。
けれども、1歳くらいになると、魔法のことを考える余裕が出てきた。
そうだな、一度、どこかで魔法を試したい。
もちろん、誰も見てないところですよ。
今のところ、魔法が使えることを家族にも知られたくないんだよね。
ところがだ。
全然、1人になれないのさ。
父は仕事があるらしく、昼間はいない。
母はお出かけすることが多く、昼間はいない。
が。
兄弟がいる。
誰かが側にいるんだ。
そりゃ、1人じゃないから楽しいし、寂しくないけど…。
1人になるチャンスが欲しいのに。
お姉ちゃんもお兄ちゃんも、離れろよ。
そして、兄弟がいないとき、チャンス!と思っても、侍女がいる。
まだ、私が幼いから、昼間は絶対に誰かがいるんだ。
気持ちはわかるが、少しは離れて欲しい。
1人になれない。
魔法を試せないじゃないか…、もう。
けど、愛されてるんだね。
嬉しい。
しばらくして、思いついた。
夜だ。
睡魔と闘うんだ。
母がオッパイを飲ませてくれた後、寝たふりをして、眠いのを堪えろ!
うん、いなくなった。
この世界は1歳から1人で寝るようにしているらしい。
助かったよ。
いなくなった。よしよし…。
さて、ちょっと試そう。
まず、空気から氷を出してみる。
仰向けのまま、空で作ったら落ちるな…。
氷になれ、落ちるな!
シャリン。
謙虚な音だ。
けど、できた、赤ん坊の手のサイズくらいの氷だ。
浮かんでるよ、氷…。
キラキラ綺麗だなぁ…。
一瞬、気がずれた。
途端に氷が落ちてきた。
オムツの横に落ちる。
冷たい…。
…いやん。
氷、空気に戻れ!
無事に、戻った。
けど、なんで氷が、落ちたんだ?
間抜けた顔をして見てたからか…。
『間抜けな顔はやめろ?』
あ、急にデュークさんの声を思い出したよ。
会いたいなぁ、デュークさん。
元気にしてるのかなぁ…。
あ、なんか、胸がキュンとしてきた。
悲しいでもなくて、悔しいんでもなくて、なんだ、これは?
あ、切ないんだ。
泣きたくなる。
アーーーン!
声出して泣いてしまう。
なんか、まだ、感情が大幅に揺れるんだよね。
制御不能になるんだ。
泣き声に、母が気づいて様子を見に来てくれた。
「フィー?どうしたの?」
「ま、ま」
「寂しかったの?」
「アーーーン!」
母にしがみついた。
優しい匂いがする、安心するんだ。
でもね、本当に会いたいのはデュークさんだから、涙が止まらないの。
ごめんね、母。
「アーーン!」
「フィー、いい子ね?」
「ヒックヒッ…」
泣いたし、魔法を使ったせいもあるし、眠たくなった。
お休みなさい。
いい夢、見るよ。
2歳になりました。
最近はお姉ちゃん達に連れられて、庭で遊ぶことが多い。
しかし、この家の庭、どんだけ大きいんだ?
そのウチに秘密基地でもこさえて、…。
うん、そうしよう。
当然、魔物対策で幕は張られている。
だから、幕を破らない程度での魔法を出してみたい。
2歳になると、少しの間は1人になれる。
時々、10分程、1人になれる様に隙を狙ってる。
毎日って訳じゃないけど、、チャンスはあるんだ。
今日もあった。
しかも、5回も、だ。
よし、今は光だな。
可愛い光!
ポッ。
よし、指先から30センチは出た。
今日はここまで。
あ、眠い。
5回も魔法を使うと、眠くなる。
頑張って歩いて、サー姉ちゃんに抱っこしてもらおう。
あ、サー姉ちゃんは一番上のお姉ちゃんです。
とっても優しくて、私の面倒を良く見てくれるんだ。
「さーねぇたん、」
「フィー、何処にいたの?」
「ねむ、ねむ…」
「眠いの?」
ああ、もう持たないよ。
後はよろしく…。
サー姉ちゃんも、いい匂いがする…。




