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目が覚めた。

ここ、部屋だ。 




あ、そうか、私はデュークさんに魔法を掛けられたんだ。




納得して、私は起き上がって、居間に行く。


「お目覚めですか?」


あ、ジョゼがいる。

なんか、気まずい。

けど、それは私だけみたいだ。


「うん、ねぇ…」

「なんでしょう?」

「今、何時かな?」


ジョゼがホット蜂蜜レモンの入ったカップを渡してくれた。

匂いでわかる。

一口飲んだ。美味しい。

落ち着いた。 

 

「お戻りになられたのは、昨日の夕方でした。今は昼前ですよ」

「そんなに寝てたんだ?」

「ええ、陛下がかなり強い魔法をお掛けになられたみたいで…」

「そうなんだ…」 

「かなり動揺なさってました」 

「誰が?」 

「陛下です」


そうなの?動揺してたのは私だけど?違う?


「そうなんだ…、それで、デュークさんは?」

「魔物征伐に行かれました」


え?なんで?

いきなり魔物征伐へ?


「どうして?」

「昨日のことが引き金になったみたいです。あの地域に多数の魔物が現れました」

「え?私のせい?」


ジョゼが首を左右に振った。


「違います」

「だって、」


いや、言えない。言葉が止まる。

あんな化け物みたいなこと…。

口ごもったまっまで、黙ってしまう。


「カナコ様のせいではありません。そう陛下が仰ってました」

「でも、私、雷落としたんだよ?そのせいでしょ?」

「いいえ、違います」


本当ですか、ジョゼ?


「陛下が、自分が悪かったと」

「え??」

「カナコ様を追い詰めた自分が悪い、と仰ってました」

「デュークさんが?」


ジョゼは私の手を握った。

落ち着かせてくれてるんだ、ありがとう。


「はい。珍しいです、陛下がご自分で認められるなど」

「そうなんだ?」

「さようです、カナコ様」


そうだ、聞いてもらおう。


「ねぇ、ジョゼ?」

「はい?」

「私、あんなに大きな魔物2匹も焦がしちゃったんだよ。一瞬でだよ?これって、化け物だよね?」

「そんなことありません」

「だって、デュークさんもザックも最初会った時、私のこと、化け物って呼んだよ?」

「陛下はいいとしても、ザックがですか?」

「うん、」


てか、デュークさんはいいのか?

まぁ王様だからな…。

けど、傷ついたのは同じだぞ?


「あの馬鹿は帰ったら〆ときます」


あ、程ほどでお願いします。


「もとからカナコ様が凄い魔法を使えることはわかっておりました。ホンの一端が出ただけです。大丈夫ですよ」

「そうかな…」


いい事にしておいて、いいみたい、だね?


「ただ、これはザックも言っていたのですが、魔量が多い分、制御することを覚えないといけません」

「そうだよね、野放しになってて、怖いのは私だもの」

「ええ、早急に学院で学ぶべきかと。事態が変わって来てますので、陛下にお怪我をさせる訳にはいきませんから」


なんでデュークさんが怪我するの?

あ、そうか、私が魔法を使う度に魔物が出るからか。


「そうだよね、その度に魔物征伐に行ってたら、いつか怪我するよね?」

「あ、カナコ様?」

「はい?」


ジョゼと目が合う。

なに、その哀れむ様な目は?


「いえ、」


え?なんかため息ついてませんか?

心配事?相談に乗りますよ?


「陛下がお困りになる訳です…」

「へ?」


ジョゼは私を見て、笑った。


「カナコ様。ニホンに帰るなど言わないで下さいね?」

「え?どうして?」

「陛下が寂しがります」


そうか、そうだよな。

一緒に酒飲む相手がいないと、詰まんないよね。


「そうだね、飲み友達がいないのは寂しいもんね」

「あ、…」

「うん?」

「いえ、いいです」


やっぱり、ため息だよ?

大丈夫?

そして、食事の用意をしてくれた。


お腹が空いてましたよ。

ガッツリ食べました。



それから、適当に時間を過ごした。

気もそぞろだったんだ。

私のせいで、魔物征伐なんだもん。




デュークさんの魔物征伐は1日で終了したらしい。




夜に戻ってきた。

相変わらず、魔法でスッキリしてるけど、お疲れモードは消えていない。

瞳も濃銀のままだ。


私、思わず、反省。


「お帰りなさいませ」

「ああ」


なんか、怒ってる?え?

謝っておこう。

そうしよう。


「あの…」

「なんだ?」

「色々と迷惑掛けてすみません」

「気にするな」

「けど…」


気になるよ、怒ってるだろう?

小心者なんだよ。

そんな私なんかに見向きもしないで、着替えを始める。


目の前でデュークさんが着替えることも当たり前の光景になった。


「食事は?」

「まだです」

「一緒に食べよう」


マジですか?

私と一緒でいいんですか?本当か?


「いいんですか?」

「何がだ?」

「だって、デュークさん、怒ってるから…」


デュークさんは、着替えてた手を止めた。


「おまえは、やっぱりカナコだな?」

「え?」


どういう意味だ?


「どこまで行ってもカナコだ」


どこまでって、どこまで行かせる気だ?


「意味わかりませんよ…」


笑った。

なんで、今、笑うの?ちょっとキュンとするじゃんか…。


「カナコだから、カナコだ。わからないのか?」

「そんな禅問答みたいなこと、言わないで下さい…」

「ぜんもんどう?なんだそれ?」


墓穴を掘った。


「面倒です。説明しません」

「それじゃ、分からないままじゃないか?」

「いいんです、わからなくても!」


手が伸びる。

顎を掴まれた。

目が合った。


「何するんですか?」

「よく喋るな、と思った」

「そう仕向けたのは、デュークさんです」


キスされそうだ。

私は、とっさにデュークさんの手首を掴んで俯いた。


「キスは無しです」

「残念だな」

「へ?」


なんだって?

思わず、顔を上げた。


「変な顔をしても、今日は飲まないぞ?」

「もう…」


そう毎晩飲んでいられるか…。


食事は美味しかった。

好きなものを好きに食べさせてくれたから。

たわいのない話も、好きだなぁ。

それは、デュークさんと話すからなのかな?

あの日以来、私達は遠慮なくいろんな事を話すようになった。


ちょっと嬉しい。




ところで、デュークさん、少し、優しくなった?

気のせいかしら?






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