22
目が覚めた。
ここ、部屋だ。
あ、そうか、私はデュークさんに魔法を掛けられたんだ。
納得して、私は起き上がって、居間に行く。
「お目覚めですか?」
あ、ジョゼがいる。
なんか、気まずい。
けど、それは私だけみたいだ。
「うん、ねぇ…」
「なんでしょう?」
「今、何時かな?」
ジョゼがホット蜂蜜レモンの入ったカップを渡してくれた。
匂いでわかる。
一口飲んだ。美味しい。
落ち着いた。
「お戻りになられたのは、昨日の夕方でした。今は昼前ですよ」
「そんなに寝てたんだ?」
「ええ、陛下がかなり強い魔法をお掛けになられたみたいで…」
「そうなんだ…」
「かなり動揺なさってました」
「誰が?」
「陛下です」
そうなの?動揺してたのは私だけど?違う?
「そうなんだ…、それで、デュークさんは?」
「魔物征伐に行かれました」
え?なんで?
いきなり魔物征伐へ?
「どうして?」
「昨日のことが引き金になったみたいです。あの地域に多数の魔物が現れました」
「え?私のせい?」
ジョゼが首を左右に振った。
「違います」
「だって、」
いや、言えない。言葉が止まる。
あんな化け物みたいなこと…。
口ごもったまっまで、黙ってしまう。
「カナコ様のせいではありません。そう陛下が仰ってました」
「でも、私、雷落としたんだよ?そのせいでしょ?」
「いいえ、違います」
本当ですか、ジョゼ?
「陛下が、自分が悪かったと」
「え??」
「カナコ様を追い詰めた自分が悪い、と仰ってました」
「デュークさんが?」
ジョゼは私の手を握った。
落ち着かせてくれてるんだ、ありがとう。
「はい。珍しいです、陛下がご自分で認められるなど」
「そうなんだ?」
「さようです、カナコ様」
そうだ、聞いてもらおう。
「ねぇ、ジョゼ?」
「はい?」
「私、あんなに大きな魔物2匹も焦がしちゃったんだよ。一瞬でだよ?これって、化け物だよね?」
「そんなことありません」
「だって、デュークさんもザックも最初会った時、私のこと、化け物って呼んだよ?」
「陛下はいいとしても、ザックがですか?」
「うん、」
てか、デュークさんはいいのか?
まぁ王様だからな…。
けど、傷ついたのは同じだぞ?
「あの馬鹿は帰ったら〆ときます」
あ、程ほどでお願いします。
「もとからカナコ様が凄い魔法を使えることはわかっておりました。ホンの一端が出ただけです。大丈夫ですよ」
「そうかな…」
いい事にしておいて、いいみたい、だね?
「ただ、これはザックも言っていたのですが、魔量が多い分、制御することを覚えないといけません」
「そうだよね、野放しになってて、怖いのは私だもの」
「ええ、早急に学院で学ぶべきかと。事態が変わって来てますので、陛下にお怪我をさせる訳にはいきませんから」
なんでデュークさんが怪我するの?
あ、そうか、私が魔法を使う度に魔物が出るからか。
「そうだよね、その度に魔物征伐に行ってたら、いつか怪我するよね?」
「あ、カナコ様?」
「はい?」
ジョゼと目が合う。
なに、その哀れむ様な目は?
「いえ、」
え?なんかため息ついてませんか?
心配事?相談に乗りますよ?
「陛下がお困りになる訳です…」
「へ?」
ジョゼは私を見て、笑った。
「カナコ様。ニホンに帰るなど言わないで下さいね?」
「え?どうして?」
「陛下が寂しがります」
そうか、そうだよな。
一緒に酒飲む相手がいないと、詰まんないよね。
「そうだね、飲み友達がいないのは寂しいもんね」
「あ、…」
「うん?」
「いえ、いいです」
やっぱり、ため息だよ?
大丈夫?
そして、食事の用意をしてくれた。
お腹が空いてましたよ。
ガッツリ食べました。
それから、適当に時間を過ごした。
気もそぞろだったんだ。
私のせいで、魔物征伐なんだもん。
デュークさんの魔物征伐は1日で終了したらしい。
夜に戻ってきた。
相変わらず、魔法でスッキリしてるけど、お疲れモードは消えていない。
瞳も濃銀のままだ。
私、思わず、反省。
「お帰りなさいませ」
「ああ」
なんか、怒ってる?え?
謝っておこう。
そうしよう。
「あの…」
「なんだ?」
「色々と迷惑掛けてすみません」
「気にするな」
「けど…」
気になるよ、怒ってるだろう?
小心者なんだよ。
そんな私なんかに見向きもしないで、着替えを始める。
目の前でデュークさんが着替えることも当たり前の光景になった。
「食事は?」
「まだです」
「一緒に食べよう」
マジですか?
私と一緒でいいんですか?本当か?
「いいんですか?」
「何がだ?」
「だって、デュークさん、怒ってるから…」
デュークさんは、着替えてた手を止めた。
「おまえは、やっぱりカナコだな?」
「え?」
どういう意味だ?
「どこまで行ってもカナコだ」
どこまでって、どこまで行かせる気だ?
「意味わかりませんよ…」
笑った。
なんで、今、笑うの?ちょっとキュンとするじゃんか…。
「カナコだから、カナコだ。わからないのか?」
「そんな禅問答みたいなこと、言わないで下さい…」
「ぜんもんどう?なんだそれ?」
墓穴を掘った。
「面倒です。説明しません」
「それじゃ、分からないままじゃないか?」
「いいんです、わからなくても!」
手が伸びる。
顎を掴まれた。
目が合った。
「何するんですか?」
「よく喋るな、と思った」
「そう仕向けたのは、デュークさんです」
キスされそうだ。
私は、とっさにデュークさんの手首を掴んで俯いた。
「キスは無しです」
「残念だな」
「へ?」
なんだって?
思わず、顔を上げた。
「変な顔をしても、今日は飲まないぞ?」
「もう…」
そう毎晩飲んでいられるか…。
食事は美味しかった。
好きなものを好きに食べさせてくれたから。
たわいのない話も、好きだなぁ。
それは、デュークさんと話すからなのかな?
あの日以来、私達は遠慮なくいろんな事を話すようになった。
ちょっと嬉しい。
ところで、デュークさん、少し、優しくなった?
気のせいかしら?




