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「げっ…」
思わずこんな声が出てしまった。
なんだ、ここ?
なんだ、このデジャブ感…。
ルミナスって、こんな国なのか?
そりゃ今までだって、窓から外を見てたよ?
だから建物の概要は判らなかったさ。
雰囲気から察するに、ヨーロッパ調だろな、って思ってましたよ。
まぁ良くてベルサイユ宮殿クラスかな、なんて。
ところが、だよ。
なんだよ?サグラダファミリアか?
ガウディか?
スペインか?
意外すぎですよ。
ガウディさん、あなたの建築物がすっかり綺麗にコピーされてますよ?
なんでだ?
なんで、そっくりなんだ?不思議だわ。
要は建物に直線がない!ないのだよ。
曲線が地上を覆っている。
絵本の世界、いや…、まるで、ゲームの世界だ、アニメの世界だ。
FFだよ、ドラクエだよ…。
頭クルクルしてきました。
私、もしかして、誰かの夢の中に生きてるのかな?
ありえそうで怖い。
立ち止まって、口あけて見てました。
悪いですか?
すかさず、デュークさんが突っ込む。
「どうした?アホ面して?」
アホ面って、もっと他にいい様がないのか?
「だって、直線がないんだもん」
「直線?」
「説明するのが面倒」
言葉が通じなくなる時って、面倒だ。
私が拗ねていると思ったらしい。
苦笑いで、言う。
「まぁ、いいから、乗れ」
「うん」
デュークさんに促されて、馬車に乗り込んだ。
向かい合わせで座った。
ゆっくりと走り出す。
うん、乗り心地最高!ガタガタ揺れないのよ。
「揺れないね?」
「本当は揺れているんだ。けど、専任の者が魔法で抑えている」
「え?御者とは別にいるの?」
「ああ、外に2人いただろう?」
「そうだった、いたわ」
「王家の馬車だ。その位の者はいるんだ」
別に魔法使いがいるらしい。
スゲェな、ルミナスの王様って。
それにしても、快適。
魔法って、凄い。
喋ることもないので、私は窓の外を見る。
ゆっくりと流れていく景色はとても綺麗だった。
町並みは絵葉書の様に美しく、清潔だった。
建物は月に一度は専門の魔法使いが掃除するそうだ。
本当に天辺から綺麗。
PCで修正かけてないですよね?
「デュークさん、綺麗」
「だろ?ルミナスは美しいんだ」
「本当…」
城が遠くなる。
ここから城を見てみると、高い建物は城とその周りに数件あるだけ。
まぁ城の周りは街って感じで大きいけど、その外に出てしまうと平原だ。
ポツン、ポツンとこじんまりとした家があるだけ。
物凄い田舎って感じ。
人口はそんなに多くなさそう。
「ルミナスの人口は?」
「そうだな500万程だ」
「え?そんなに?何処に住んでるの?」
「地下だ」
「地下?」
なんで?地下????
「上に建てても魔物に壊されることが多い。だから、あれは全て街の入り口だ」
驚愕です。
あの小さい建物は地下への入り口ですか…。
地下、どうやって生活しているんだろうか…。
「信じられない…」
「そうか?」
「ねぇ、魔物に壊されるんなら、なんで宮殿は高いの?」
「俺が住んでると示すためだ」
「ふーん」
「そうすれば、民は安心できる」
「そっか…」
私達は小高い丘の上に来た。
馬車が止まる。
少し機嫌のいいデュークさん。
「今日は好きに喋って大丈夫だ。好きに食べてもいい」
「ほんと?」
「ああ、着いたぞ、降りろ」
「うん」
嬉しいことを言ってくれて、手を差し出してくれる。
ありがたい。
手、大きいなぁ。
丘に降り立った私は、改めて景色を見た。
その美しい景色を。
城が遠くに見える。
一番高くそびえ立っている。
王が住んでいる場所だ。
荘厳さが、ここからでも良く分かる。
そして、広い平野だ。
緑の平野。
何かが栽培されているように、整然としている。
緑が濃い。
ところどころに、別の色。
花が咲いているんだろうな。
少し離れたところには小さな森が点在している。
城から離れたところに、港が見えて、海が見える。
海に川が流れて込んでいる。
川の流れは雄大で、力強い。
春の日差しがキラキラと、緑が、水が、輝いている。
小さい家、改め、街の入り口が点在している。
あれが入り口だと思うと不思議だ。
そう言えば、ドアの部分が大きいな。
地下はどうなっているんだろう?
とにかく、ルミナスが綺麗なのは、平野に生活感がないからか…。
だからゲームの風景に似ているんだな。
「どうした?」
「だって、ルミナスが綺麗だから…」
振り返った私を、デュークさんは眩しそうに見る。
そして、言ってしまう。
「リリ…」
違うぞ?
「あ、すまない…」
「あれ?王様はむやみに謝ったら駄目なんでしょ?いいんですか、謝っても?」
「しかし、傷つくだろ?」
うーん、そうだね。うーん。
「なんか、慣れましたよ」
「慣れた?」
「だって、体はリリさんなんですもん、仕方ないと思います」
「そうか、けど、すまない」
それよりも、だ。
「いいじゃないですか。それよりも、お弁当、食べましょう!お腹空きました」
「そうだな、ワインも飲むか?」
「もちろんです。昼間の酒は美味いんですから」
「よく知ってるな?」
「どうせ、オバサンですよ」
デュークさん、笑った。
御者さんが用意してくれた。
お弁当はフランスぽい感じ。
フランスパンに数種類のチーズ、なんかのペースト。
玉ねぎとニンジンのマリネ。
それに、オリーブ、え?枝豆?マジか???
「これ?」
懐かしいぞ、緑だ、豆だ、枝豆だ!
「豆だ。塩茹でしてあるから美味いぞ」
「知ってます、日本にもありますよ。私ザル1杯分食べれます」
「カナコだな…」
「感心しないで下さい」
デュークさんが美味しそうに食べる。
私にも、くれ。
サヤごと食べる勢いですよ、う~~ん!
「美味しい!懐かしい!」
「良かったな、ニホンと同じものがあって」
「うん、本当ですよ」
美味しいよ
枝豆だよ?枝豆!
「カナコは美味しそうに食べる」
「そうですか?デュークさんは上品に食べますね?」
「そう躾けられた」
「大変ですね、王様になるのも」
「そうだな」
しばらく、喋りながらワインを飲んで食べた。
外の食事は、美味しい。
私、こんなに素敵なピクニックは、初めてです。




