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何度か、デュークさんはマリウス君と2人きりで話をしてる。

段々と彼を信用していくのが伝わった。




それでも、寂しいのは変わらないみたいだ。






夜のことだ。

デュークさんがゆっくりと私の上に落ちてきたんだよ。


「カナコ…、」

「あい、してるわ?」

「俺もだ…」


息がまだ上がっている。

だって、素敵だったんだもの。


「カナコは素敵だ」

「ありがとう、デュークさんも、だよ?」


もう一度口づけされてしまう。

私は綺麗なその顔を指で撫でる。


「私は、幸せな人生を過ごしてるわ」

「俺もだ。カナコがくれたんだ」

「そう?」

「ああ、もしあのままだったなら、リリがいなくなって、俺には何も残らずに、あの伯父に全てを奪われていたんだろうな」


そうかもね…。


「けど、違う誰かと恋したかもしれないわ」

「それはないな」

「本当にそう思う?」

「俺に愛されるために、生まれ変わってくる女なんて、お前以外にいないさ」


あ、駄目だ、また感じちゃう。

構うものか、何度でも愛されていたいんだものね。


「ねぇ、キスして?」

「わかったよ、」


その優しい返事とは裏腹に、キスは情熱的なんだよ。

深くて、官能的だ。


長いキスの後、私はデュークさんの体に唇で触れる。

この刺激が、デュークさんを唆すことなんか、とっくに知っている。


「ああ、カナコ、」


そう言って、私の肌を求めてくれる。

あ、感じてしまうよ…、?




その時だった。




急にだ、突然にだよ。

息が出来なくなった…。

胸がドンと締め付けられて、動けなくなったんだ。


「うっ!」

「どうした?大丈夫か?」

「うっ、…、い、き、が、」


息が出来ないんだ。

苦しい…。

冷や汗が流れる、痛くて、苦しい…。


「カナコ、大丈夫だ、今、」


そう言ってデュークさんが魔法を掛けてくれた。

やっと、息が、出来る。


「はぁ、あ、はぁ、は…」

「カナコ?大丈夫だぞ、俺がいるからな?」

「ぁ、はぁ、あ、デューク、さん、、まだ、少し痛い…」

「分かった。これでどうだ?」


デュークさんの魔法が体に染みる。

楽になる。


「はぁ、楽に、なった」

「良かった…」


始まった?

始まってしまったのか…。

私のカウントダウンが。

私のエリフィーヌとしての人生が終ろうとしてるんだ…。


「怖い…」


思わず言葉が出てしまった。

怖かった。

覚悟していた筈なのに、怖くて堪らなかった。


急に涙が溢れてきて、止まらない。

デュークさんにしがみ付くと、泣きじゃくってしまった。


「怖い、よ。デュークさん、怖い。私、あ、」


痛い、痛くなる。

それが、良くないみたいで、また胸が痛くなる。


「あっ!いた、はぁ、ぁ…、いたいよ」

「カナコ。俺がいる。大丈夫だ、俺がいるから、な。泣くな」


けど、泣きそうな顔してる。

デュークさんも戸惑っている筈だよね。


それでも、魔法を掛けてくれる。


「ほら、楽になったろう?」

「う、うん…」


私は静かに泣いている。

そんな私の髪を撫でて、優しく抱いていてくれる。


「カナコ、大丈夫だからな。心配するな。俺の側を離れるな、いいな」

「うん…」

「さぁ、寝ろ?スリープを掛けてやるから、な?」

「うん」


私はそのまま、眠りにつく。

デュークさんの腕の中ならば、絶対に安全で安心なんだもの。







次の日、問答無用で城の医師がやってきた。

今の先生はローランド先生だ。

デュークさんは仕事にも行かないで私の側にいてくれる。

診察が終った。


「妃殿下、1度病院で検査しましょう」

「そんなに悪いのか?」

「なんとも…、とにかく、拝見させて下さい」

「わかったわ」

「では、午後に迎えの者を寄越しますので」

「いや、こちらから行く」


デュークさんは譲らない。

ローランド先生は早々に引き下がる。


「分かりました。では、病院にてお待ちしております」


私は寝室で横になったままにさせてもらった。

子供達は心配そうな顔で、私に挨拶をして、それぞれに出掛けて行った。


「ははうえ、今日は、寝ててね?」

「わかったわ、ルイ」

「はやくもどるからね」

「ええ、行ってらっしゃい」


そして、2人きりになる。


「デュークさん?」

「どうした?」

「夕べは、取り乱して、ごめんなさい」

「いいよ、けど、俺の前では取り繕うな。いいな?」

「うん」


それ以上の事は、何も言えなかった。

私達はお互いに覚悟が出来てなかったみたいだ。


病院で検査が行われた。

やはり、心臓が弱っているらしい。

今は過激な運動を避けて、休憩を取りながら行動すれば大丈夫だけれども、段々と私の心臓は弱って行くらしい。

あの神もどきの言った通りになるんだな…。


デュークさんはずっと手を握ってくれている。

だから、私は安心できた。









1ヵ月後。






私が元気なうちに、と、デュークさんが婚約式を行ってくれた。

ハイヒットのお父様もお母様も喜んでくれた。


時間が無かったけど、セーラの支度は精一杯のことをした。

アリの店で、アリの娘さんのジェシカがデザインを担当してくれたドレスを何着も作った。

その中の1着、真っ白な絹のドレスを身に纏った彼女は、とても綺麗だった。


「セーラ、綺麗よ?」

「お母様…」


子供達には私のことをちゃんと伝えた。

ただ、死ぬなんて言えなかった。


「セーラ、ありがとうね」

「どうして?」

「まさか、貴女の花嫁姿を見られなんて思ってもいなかったの」

「見られるわ、これからだって、見られるわよ?」

「そうね…」

「だって、アリスのも、ルイの花嫁になる方のも、見ないと、でしょ?」

「うん、そうね」


泣きそうだ。

そのやり取りを聞いていたデュークさんが話を逸らしてくれる。


「セーラ、綺麗だな。マリウスに渡すのが惜しい」

「お父様ったら!」


そこにエイミィとアリエッタがやってきた。


「お時間です」

「皆様、お集まりです」


デュークさんは両手に花状態で部屋を出る。


簡単だけど、式が淡々と進み、2人の婚約は正式なものとなった。

これで、マリウス君にチョッカイを出す女もいないだろう。

デュークさんを敵に回すなんて、ルミナスに住めなくなるからな。


食事会は庭で行われた。

穏やかな日差しで、年寄りにも優しい日となってよかったね、と、お父様とお母様を冷やかしてみた。



メインのテーブルではセーラとマリウス君がラブラブ振りを見せ付けてくれている。


私達はビクラード夫妻と同じテーブルとなった。

覚悟を決めたデュークさんだが、目の前で娘が他の男とラブラブなことにショックを受けている。


「カナコ、なんで、セーラはあんなに嬉しそうなんだ?」


などと、夫妻の前で言い出す始末…。


「ねぇ、あなた。当たり前でしょう?マリウス君と一緒になるのが夢だったのよ?」

「けど、俺といる時よりも嬉しそうだ…」

「そんなの、そうに決まってるわ、あっ、デュークさん?」


そんなに落ち込まないで…。

ビクラード公爵夫妻が、オロオロしてしてるじゃないか。


「陛下、息子が姫様を妻にしたいなどど、言い出したばかりに、申し訳ありません」

「公爵、謝らなくてもいいのよ?マリウス君だから、陛下も許したんだから。ね、そうでしょう?」

「もちろんだ。マリウスはいい青年だ。セーラの婿に申し分ない、分かってるんだ…」

「分かったから、ね?あ、公爵、陛下はセーラが大切だから、ちょっと受け入れられなくてね、けど、直ぐに落ち着いていつもの陛下に戻るから、ね」


私はデュークさんを慰めたり、公爵夫妻に話しかけたりと、忙しくて、大変だ。



けど、主役の2人には親達のアタフタ振りなど届いてはいないようだ。


セーラは、キラキラと輝いていた。

とても綺麗な紫紺の瞳で、ただマリウス君を見つめるセーラ。




これでいい。

それで、いいんだよ。

娘の嫁ぐ姿まで見ることが出来た。


幸せだ。




綺麗なセーラとマリウス君を囲んで私達家族が入った肖像画を作ってもらうことにした。

この肖像画は私がいる私達の最後の絵になりそうだ。






1番幸せそうな絵だ。

良かった。





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