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ルミナスの王様は、どうやら、ご機嫌のご様子。
とっても、宜しゅうございます。
「ルミナスのチーズは美味いぞ、食べてみろ?」
「あ、いいですねぇ」
早速、いただくよ。
モグモグ。
なんと!こ、これは!
「とっても、美味しいです!」
「だろう?」
ワインも美味しい、チーズも美味しい。
ルミナス良いとこ、一度はおいで、か。
「ルミナスって、綺麗なところですか?」
「そうだな、美しいぞ」
「季節ってあるんですか?」
「あるな。今は春だ」
「春ですか、いい季節ですよね」
デュークさんは遠くを見た。
なにか哀愁が漂っているぞ?
「いい季節だ」
「何か思い出でも?」
「ある」
「そうですか」
そうですか…、けどね、あれだよね。
聞いちゃいけない。
立ち入っちゃいけません。
「興味ないのか?」
「え?」
「俺に、興味はないのか?」
「えーと、ないですね」
「信じられんな」
「と、いうよりも、興味を持っちゃいけないでしょう?」
「そうか?」
「そうですよ、デュークさんはリリさんの彼氏なんでしょう?いや、夫か?とにかく、人の恋人を取っちゃいけません。そんなモラルに反したことしたら、罰が当たります」
グラスにワインが注がれる。
遠慮なんかしませんよ。
「モラル?」
「倫理感ですかね、人のモノを取っちゃいけないでしょ?」
「潔癖だな?」
「普通ですよ、私のいた世界では貞節を守るのは常識でした。でも、守らない人もいましたけどね」
「一応は、ルミナスもそうだ。それを守らない人間がいるのも、同じだ」
「なんだ同じか。良かった」
「けど、王は何人側室がいても許される」
「まぁ、王様ですからね」
「そうだ」
「で、何人いるんですか?」
「え?」
「側室ですよ、何人?」
どうした、デューク、酔ったか?顔が赤いぞ。
「うるさいな」
「何を恥ずかしがっているんですか?」
「…、いないから」
「え?いない、ですか?」
「ああ」
ウブなのか?リリさん、一筋なのか?
そんな細いくせに筋肉質の肉体してて、怖い顔して人に命令ばかりしてるくせに。
純情なのか?おい?
「純情なんですね?」
「はぁ…」
ため息の後に、ワインを一気した。
顔が赤いぞ?
お酒のせいか?それとも、照れたか?
「カナコくらいだ、ズケズケと聞いてくるのは」
「へへへ、酒の席ですよ。いいじゃないですか」
「そうだな、いいのか…?」
「そうそう、そうこなくっちゃ」
「わかった、飲め」
「へへー!」
注いでくれた、ありがとう。
私が注いでやろう!
クイっと飲むよ?空になるよ?
当然、私にも注ぐよ。
だって3本空けないといけないもん。
今夜の使命ですから。
「ところで、カレシってなんだ?」
今頃ですか?
「彼氏ですか?恋人のことですね」
「カナコにはいなかったのか?」
「今はいないですけどね、昔に1人だけいましたよ」
「どんな男だ?」
ははは、私を、私の人生を臆病にさせた男だよ。
「ちょうど、リリさんくらいの年に、健全なお付き合いをしてました」
「健全な?」
「肉体関係なしです」
「にくたいかんけい?」
「あー、めんどくさい。ようはベットの上で色々やったりです」
「ああ、するとお前は処女か?」
「悪いですか?」
「いや、なんだ…」
モジモジしてる?
「え?」
デューク、酔ったか?
意外に酒に弱いのか?
「いや、いい。それで?どうなったんだ?」
「死んじゃいました」
「死んだのか?」
「ええ、交通事故で」
「こうつう事故?」
「この世界って、車はないんですか?」
「馬車のことか?」
伝わるのか?
「うーん、馬がいなくて、車だけが動くんです」
「車だけが?」
「ええ、けど、扱う人間が未熟だと暴走するんで」
「車だけが、自由に動くのか?」
「そうですよ、運転の試験に受かれば誰でも運転できます」
「魔法が使えなくてもか?」
「もちろんです」
「そうか…、で?」
まだ言わせるのか?
「続けますか?」
「ああ」
「で、車に撥ねられて死んじゃいました。あっけないもんでした。けど、中学の時から憧れていたから、高校に入って告白して、付き合って。3年ですよ?3年。デートといったって、街をブラブラしたり、公園や川沿いを歩いたりする程度でした。でもね、一緒な大学に入ろうねって、同じ塾に行って。ああ、一度だけ、キスしました」
「たった、一度か?」
「はい、一度だけです。彼が死ぬ2日前でした。子供のキスだったけど、でも、…」
泣き上戸じゃないのに、なぁ。涙がでそうだ。
健吾は優しかったなぁ。
「うん?」
「もの凄く、好きでした。もし生きていたら、間違いなく結婚してました。だから、その後の人生はおまけみたいな人生でしたね、きっと」
「おまけ?」
「適当に生きてました。適当に大学に行って、適当に就職して、人とも適当に付き合って」
空になったグラスにワインが注がれた。
「そうですね、真剣に生きてませんでした。だから、恋愛も苦手になったし、結婚も面倒になってしまったのかもしれません。なんか、もったいないことしてました」
「今は、ルミナスに来た今はどうだ?」
「今ですか?学生に戻った気分ですよ。楽しいって思えてます」
「それは、良かった」
「ところで、私の話、理解出来てます?」
「まぁまぁ、だな。分からないところは、適当に補填してる」
「上出来です」
「お、カナコに褒められた」
嬉しそうな顔するな、惚れるだろう??
「飲め」
「はい、頂きます」
次のボトルに突入だ。
今宵は、ゆっくりと過ぎていくなぁ。
私達、喋りっぱなしだ。




