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約束の時間に、女性陣が集合した。




私、安静中のはずだけど、いいんだよね? 




お母様、グレイス義姉様、サーシャ姉様、マリ姉ちゃん。

話は尽きないだろうなぁ。

けど…。


「ねぇ、お母様。今日は、お小言は無し、でお願い!」


入ってきたお母様に、お願いした。


「どうしたの?」

「だって、みんなに怒られてるのよ…、充分に反省したから、ね?」


お母様はちょっと諦めたような笑い顔だった。


「フィー、分かってるわよ」

「お母様?」

「陛下がね、夕べお電話下さって。陛下が充分過ぎるくらいに叱ったら、堪えて欲しいってね」

 

あ、デュークさん…。

嘘ついてくれたんだ。

だってね、本当は、デュークさんはね、あんまり怒ってないんだよ。

優しい嘘は、心がキュンとするね。


「その代わり、今日は、サーシャにお小言を言う日にしますから」


いいのか、お母様?


「もう、お母様ったら。私の事は諦めてっていったでしょ?」

「サーシャ、そうは行きません。妹達はもう結婚したのよ?いつまでも、独りなんて」

「ジャックはどうなるの?」

「あの子は…、いいの、あの子の事は!」


お母様、なんでそんなにテンションが高いのでしょうか?


「え?」

「フィー、そこには触れないで」

「マリ姉ちゃん?」


その時、グレイス義姉様が、お母様に話しかけるんだ。


「お義母様、少し落ち着かれては?フィー様も安静中なのですから、」

「そ、そうね…」

「何かあったの?」


私はマリ姉ちゃんに尋ねた。

マリ姉ちゃんは話をずらして答える。


「サー姉様ね、船に乗るんだって…」

「ふ、船????」


ずらされた話も相当にショックな話だ。


船に乗るって事は、ここじゃ片道切符なんだよ。

見たことない土地に船に乗って出かけるなんて、大体、男の世界だよ?

また、なんで、そんな苦行の中に飛び込むんだ?


「サー姉様、本気?」

「そういう道もアリかなって思うのよ」

「けど、男の世界だよ?また、あんな事になるかもしれないよ?」

「そうね、否定は出来ない」

「だったら!」


サー姉ちゃんは、昔のままの瞳で私を見た。


「急いで考えないわ。けどね、ガナッシュで生活を続けようと思ってるの。ガナッシュを基盤にして、手始めは短い距離を行き来してみる。そして、そこで知ったことを地図や本にしていきたいのよ」

「海の地図?」

「そう、まぁ、これはパートナーの受け売りなんだけどね」

「え?え?パートナーって?」


なんだ?なんだ?


「サー姉様、お相手の方と家に滞在中よ」


と、マリ姉ちゃんがサラっと言う。


「え??そうなの?」

「まあね」


なんだよ、なんでだよ?

いつも結果しか知らされないって、なんだよ…。


「なんか、つまんない…」

「なに?」

「だって、いつも結果しか教えてくれないんだもの。みんなが知ってて、私だけが知らないってこと、多くない?」


のけ者扱いじゃん、捻くれるぞ?


「エリフィーヌ、」


お母様が、珍しくフルネームで私を呼ぶ。

こんな時は、お小言が多いんだよ…。


「なあに?お母様?」

「分かっていると思うけど、皆、貴女に気を使っているのよ?」

「それは、理解してるつもりよ。けど、いつだって驚いてばかりだもの。寂しいの」

「フィー、」


今度はサー姉様だ。


「うん?」

「私が、止めてたの。フィーには自分の口から言いたかったのよ。ごめんなさいね」

「いいよ、サー姉様。姉様がそうしたかったんなら、それで…」


そうだよ、姉様のしたい様にしてくれればいい。


「私ね、フィーに謝りにきたのよ」

「姉様?」

「ごめんなさいね、エリフィーヌ。辛かったでしょう?」


本当だよ。

気づけなくて、間抜けで、自分の事の方が優先になってて…。


「どうしたの?なんでそんな事聞くの?」

「妹の結婚式にすら出られなかった、情けない姉だもの。ジャックにも辛い思いをさせたし。きっとアンリもマリーも私の事で、嫌な思いをしたわ。兄弟みんなに迷惑を掛けて、本当はここに来ちゃいけないわね、私」

「サー姉様の馬鹿!」


マリ姉ちゃんが怒る。

私もだ。


「そうだよ、サー姉様は大馬鹿だよ!」

「マリー、フィー…」


本当のこと、言っていいんだね?

言っちゃうよ?


「辛かったよ?姉様に会っちゃいけないって言われて、本当に辛かったんだよ?姉様のことで何か言われるよりも、会えなかった事の方が、辛かったんだよ?」

「フィー?」

「だって、何の力にもなれなかったんだ…。姉様が苦しんでいたのに、私は気づく事が出来なかった。何もしてあげられなかったんだ。姉様を助けるためなら、なんだってしたんだ。私、したかったんだ。でも、肝心な時に、姉様の危機に、私は目を瞑って耳を塞いでた。謝っても許してもらえないかもしれないけど、会ってくれないから、謝ることすら出来なかったんだ」

「あなた…」

「姉様の辛いときに、私は自分のことだけ考えてた。姉様を助けられなくて、ごめんなさい」


姉様が謝る私を抱きしめてくれた。

しばらくはそのままでいた。

そして、ゆっくりと離れたんだ。


「そんなの、当たり前のことよ。助けられなかったって言わないでね。いくら兄弟だからって、自分達の生活を始めているのよ。そちらを大切にするのは当然のことなの」

「サー姉様…」

「エリフィーヌ、私はね、自分の幸せは自分で掴むわ。大丈夫よ」

「けど、姉様、いつでも頼ってね?末っ子の私じゃ頼りにならないかも知れないけど、何かは出来るんだから、ね?」

「そうよ?ハイヒットの3姉妹なんだから!」

「マリー、フィー、ありがとう。私はハイヒットの子供に産まれて良かったわ」


姉様の目が潤んでる。

なんか、涙が出てきた。


「もう、ハイヒットは名乗ってないけど、それでも、お父様とお母様、弟達と妹達がいる事には違いないもの。これからだって、胸を張って生きていける」


お姉ちゃんは凛として、前を見ている。


「フィーの体調が落ち着いたら、みんなで会いたいの。その時に、私のパートナーを紹介するわ。いいかしら?」

「だから、あの方と結婚してしまいなさい。どうして、そんな宙ぶらりんの状態でいようとするの?」

「お義母様、落ち着かれては?そうそう、せっかくの紅茶がすっかり冷めてしまって…」


あ、そうだね。

私は、ベルを鳴らした。


「失礼いたします」

「エイミィ、温かい紅茶を持ってきてくれる?」

「はい、すぐに」


これで、大丈夫。


「ねえ、お母様?」

「なに、マリー?」

「その件は、もう終わりにしましょう。サー姉様が熟慮されて出した結論よ。姉様に限って間違った道を進むことはないわ」

「マリー、そう言ってくれるの?」

「もちろんよ。私たちの姉様はいつだって自慢の姉様だもの。そうでしょ?」


サー姉様の目から、また、涙が零れたよ。


「それにね、海の地図。ハイヒットも必要としてるわ。出来上がったら商会が購入するからね、姉様、お願いよ?」


しっかりと商人の妻になったね、マリ姉ちゃん。

サー姉様の潤んだ目は、キリリとなった。


「わかったわ。その話はあとでね?」

「ええ」


その後も、私たちはお喋りを続けた。


時々お母様が暴走するけど、グレイス義姉様が上手く操ってくれる。

いいコンビだ。

そして、私の体調が良くなったら、みんなで集まることが決まったんだ。







やっぱり、城に集合した方がいいんだろうな…。

けど、なんとなく、あの居間で集まりたいな。





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