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「おかあさま!」

「おかあさま、おきた?」


娘の声が聞こえる…。


あっ。




私は目を開けた。

6つの瞳が私を見ていた。

セーラとアリスと、そして…。


「カナコ?」


デュークさん。

なんだか申し訳なくなってきた。


「あ、お帰りなさい…」


その手が頬を撫でてくれる。 

優しさが伝わる。


「なんて無茶をするんだ?」

「ごめんなさい…」

「いいか、しばらくは安静にしてろ?ハイディからのキツイお達しだ」

「はい」


怒られた。

けど、キスは優しい。


「おかあさま、いたい?」

「ううん、もう痛くないわ」

「よかった…」

「うん」


セーラがデュークさんの腕を引っ張る。


「おとうさま、ほら、おかあさまに」

「ああ、そうだったな」

「なに?」

「おとうさまのおみあげ!」


まだお土産が言えないアリスだ。


「ほら、これだ」


それは、綺麗な藤色のストールだった。


「これから、肌寒い季節になるだろ?おまえは慌てん坊だからな、それを羽織って、暖かくするんだぞ?」

「うん、嬉しい!」

「あのね、セーラもアリスも、おそろいなの」

「おそろい!」


そう言って、2人も小さなストールを持ってくる。

綺麗なピンク色だ。


「似合ってるわ。2人とも、可愛いわよ?」

「うん!」


クルクル回ってる。

ストールが揺れて羽のようだ。

2人がじゃれ合っている。

その姿を見ている私達。


私はデュークさんの手を握った。


「どうした?」

「こうしてたいの」

「わかったよ」

「みてー!」

「みてよぉー!」


子供の声が部屋に響く。

幸せだ。


「今日からは俺のいう事を聞くんだぞ?」

「うん、だから、側にいて?」

「もちろんだ」

「うん」


良かった。

みんな生きてる。

私も生きている。




安心だ。





デュークさんは事後処理の為に仕事に行ってしまった。


子供達はアリエッタと一緒に部屋で大人しく遊ぶようにしてもらった。

まだ、余韻が消えてない。

何があるか分からないもの。



私が目覚めたと聞いて、慌てて先生が来た。

飛んできたって感じだよ。



そして、私は、ハイディ先生に怒られてる。


「カナコ様!一体何を考えてあんな無理をなさったのですか?いいですか、今は初期の段階、1番不安定なのですよ?それを、空を飛んだ?信じられません!」

「ごめんなさい…」

「はぁ…」


ため息を付かれても、私も辛いよ。


「申し訳ありませんでした。妃殿下に向って、こんな事を…。けれども、ですね」

「ハイディ先生、これからは大人しくするわ。だから、見捨てないで?」

「見捨てるなど…、妃殿下のためならば、必ずお元気なお子を世に送り出すお手伝いを致します。が、それも、妃殿下のご協力があって成り立つもの。今日からは、御身を大切にすると、お誓い下さいね?」

「わかってます」


エイミィが苦笑いしてる。


「ハイディ先生。もうその位に致してくださいませ。今回の事は陛下もお許しになっておられます。カナコ様がおいでなければ、城に向って飛んだ魔物は征伐できませんでした。いくら幕があったとしても、もし、魔物が破っていれば、城とて無傷ではなかったのですよ?」

「存じております。確かに妃殿下がおいでなければ、どうなっていたことか…」

「ならば、先生?お願い致します」

「畏まりました。もうこの件は忘れましょう。このハイディ、ご立派な御子が生まれるようにお世話いたします」


と言って、先生は笑ってくれた。

そして、きっちりと釘を刺してくれる。


「けれども、カナコ様?1週間は安静になさって下さいね」

「はい、そうします」

「先生?ご家族の方にお会いになるのは?」

「構いませんよ。お話なされば、気も紛れるでしょうからね」

「ありがとう!」


そう言って、先生は去っていく。

忙しい最中でも、私を最優先にしてくれる。

ありがたい。


そして、私を庇ってくれたエイミィ。

思わず、エイミィに感謝だ。


「エイミィ、さっきはありがとう」

「お気になさらずに、カナコ様」

「けどね、自分でも無茶したなぁって思うもの」

「カナコ様?」

「だって、そうでしょ?王妃が先等切って魔物征伐ってだけでも無茶なのに、お腹に子供がいるなんてね。どんなに暴れたんだって話でしょ?」


仕掛けた仕事の手を止めて、エイミィは私が寝ているベットの側に来て、膝を突いて私を見た。


「私はカナコ様にお使えすることが、嬉しくて…」


と、私に対して深々と臣下の礼を取る。


「どうしたの?」

「王妃が自ら身を挺して民を魔物から救う姿に、心打たれない者はおりません。私はカナコ様の侍女であることに誇りを感じております」

「え?エイミィ、見えてたの?」

「もちろんです。凄い音と光景でした。見た者は大勢おります。けれども、見られなかった者達も、また、大勢おります。が、その者達は見たものが語る話を聞き、その話を他の者に話しております。今やルミナス中が王妃様のご活躍でルミナスが救われた事を知っているのですよ」

「そ、そう…」


私は戸惑い無言になった。

心配そうにエイミィが私を見た。


「どうかなさいましたか?」

「え?だって、先頭を切って魔物を倒しに行くなんて、王妃らしくないでしょう?」

「そんなこと!」


エイミィが笑うんだ。


「カナコ様らしくて、いいと思います」

「そう?」

「はい!、あ」


思わず、元気に答えたエイミィは苦笑いしてる。

私も心が温かくなった。


「嬉しいわ、ありがとう」


ゆっくりと立ち上がった彼女は、照れている。


「では、今日はヴィクトリア様がお越しになられますので、準備して参ります」

「ええ、お願い」


そうだった。

今日はお母様が来るんだった。







あ、またお小言だなぁ…。

お母様のお小言はパンチが利いてるからな…。








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