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144 あなざーさいど26

アンリの日常。




仕事を終えて家に帰る。

すると、真っ先に飛び出してくるんだ。

可愛いなぁ。



今日もだ。


「ただいま」


エディが飛びついてきた。


「ちちうえ!」


だろう?可愛いだろう?

グレイスにそっくりなところも、可愛いんだ。


「うん?エディは、また大きくなったんじゃないか?」

「なった!」


一緒に出迎えてくれるのは、もちろん、グレイスだ。

彼女が笑う。


「あなた、そんなに急に大きくなりません。でしょ?」

「そうかな、重くなったよ?」


そう言って、愛する妻の頬に口づける。


「ちちうえ、あそぼ!」

「わかった、着替えてくるから、待つんだぞ?」

「はーい!」


家族っていいなぁ、としみじみ思う。

グレイスと結婚して、良かった。




私達は正式にスタッカード公爵夫妻として活動を始めた。




グレイスにもサロンを任せている。

貴族にとって、サロンは社交場以上の役割をもっている。

訪れる人々の願いを仲介したり、人を繋げたり、だ。

こんな横のネットワークが大切なんだ。


グレイスは決して出しゃばらないが、その穏やかな仕草で、集う人達が癒されているみたいだ。

あの聞き上手な話し方で、皆がすっかりグレイスの魅力に参っている。

スタッカード夫人はルミナス社交界に咲く大輪の百合だ、と言ってくれる人もいる。


まあ、そのグレイスの最愛の夫は私なんだけどね。


彼女の足もすっかり良くなって、今では一緒にダンスを踊ったりも出来る。

まぁ、踊るといっても、プライベートで楽しむ程度なんだ。

私が、下手だから…。

こればっかりは練習しても上手くならない。


兄弟でも似ないのか、フィーのダンスは惹きつけるものがある。

どうやら、ワルツしか踊れないみたいだし、陛下のリードがないと駄目みたいだけどね。

それでも、2人のダンスを見たいという人間は大勢いるんだ。

これを、使わない手はないな…。

ポポロさんに相談しておこう。




私も右大臣として、トーマスさんの後を引き継ぎ、城で働いている。

ここ最近は魔物の数も減少傾向にあって、ルミナスも他国との貿易に力を入れられるようになってきた。

それに伴って、地下に住んでいる人間達が地上にも戻りつつある。

それも穏健派ばかりが地上に移り住んできた。



フィーが推し進めた米の生産は、そんな彼等に働き場所を与えている。

今年はついに販売可能な量まで生産量を上げた。


米はルミナスの民の人気となりつつある。

何しろトーフを受け入れたんだ。

米は簡単だった。


そこに、ショーユとミソが加わった。

これもフィーの情熱が注がれている。

昔から食い意地だけは張っていたからな。


とにかく、地上人口の増加に従って、食料調達が最急務になっている。

その点、大豆は栽培が簡単で栄養価も高いので、安心だ。

家畜の餌だったことも忘れるくらいに、ルミナスの民に馴染んでいってるよ。


そうそう、あのマサという人物、なかなかの策士とみているんだ。

自分は前面に出ずに、フィーを押し出すあたりは、計算だろうな。

けれども、仕事振りは真面目なので、安心だよ。



そうそう、フィーの影みたいにフィーを支えていたジョゼさんは、今、ザックさんと旅に出ている。

フィーがもっと暴れるかと思ったが、なんとか、穏やかに話が進んで、ホッとっしてる。

特に、ポポロさんがだけど。



魔物にも変化が訪れている。

ルミナスの魔物が減っていると同じ様に、アルホートやガナッシュでも魔物が減ってきているのだ。

なので、色々と変化が起きている。

ルミナスで言うと、例えば幕だ。

以前は城を中心にかなり大きな幕が張られた。

これに人員を割くのは、結構な負担だったんだ。

幕を張れる程の魔力を持った人間は限られていたから、足りない時は陛下にもお願いしたりしていた。

けれども、これだけ魔物が減ると、常時幕を張る必要も無くなった。

その人員を他に回せるのは有難いことなんだ。


これからもルミナスは変わっていくんだろうな…。





変わらないのはお爺様だ。

けれども、お爺様は、すっかりお年を召された。

まぁ、曾孫が4人も生まれて、心が落ち着いたんだろう。

フィーには言ってないが、フィーが男の子を産むまでは死ねないと、私たちには言ってる。


王妃だからな、フィーは。

時々、自分の妹なのかどうか、わからなくなる感覚に襲われる。


あのルミナス宣言は、この国の隅々にまで浸透しているし、エリフィーヌ王妃の人気は各地でも根強い。

視察に来て欲しいという問い合わせが、増えてきてる。

まぁ、陛下がいるから単独での視察はありえない。

となると、陛下との2人を招くことになする。

招く側の負担は大変なものなのに、来て欲しいというんだ。


それだけ、妹はちゃんと王妃を務めている。

偉い、と思う。




マリーの店、カフェ・マリーは順調に売上を伸ばしている。

2号店はガナッシュに出店するらしい。

そうそう、マリーも男の子を産んだ。

カルロスがデレデレで、五月蝿かった。



ハイヒットも、カルロスの代になりつつある。

父上も母上も安心しているようだ。


そして、時々、ガナッシュに出かけている。

ガナッシュにはサーシャ姉様が住んでいるから。


あの事件の後、サーシャ姉様は長い間病院で治療を受けていた。

陛下の温情で医者にも恵まれて、緩やかに回復して行ったらしい。

後遺症もなく、私達が知っている姉様に戻ったと聞いている。

そして、医師の勧めもあって、姉様はルミナスを出た。


今、ガナッシュで商会の仕事を手伝っている。


姉様は父上と母上にはお会いになるが、私達には会ってはくれない。

「けどね、アンリ。いつか必ず家族が集まれる日がくるから」と母上は言う。

今はまだ、親子をやり直しているんだそうだ。


兄弟が全員揃うのは何時になるんだろうな…。



あ、。

ジャックだ。

あいつはまだ独身を謳歌している。

出会いがない、とかなんとか言っているが、結婚する気がないんだろう。

まぁ、1人ぐらいそんなのがいても、いいんじゃないか?と思っているけど、母上は違うみたいだ。


今年中には結婚させるといって騒いでいる。

無理だろうと思うけど。






エディが私を呼ぶ。


「ちちうえ!」

「よし、投げてみろ?」


フィーから貰ったボールで息子と庭で遊ぶ。


「ほーら!」

「凄いぞ!」


それを、グレイスは見ている。


「エディ、足元に気をつけて!」

「はい、ははうえ!」


何度言ってもいいだろう?

幸せだ。






けれども、かなり前に感じた、違和感は消えていない。

何を忘れているんだろうか?


思い出せないんだ。






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