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「ふぁー!」
朝だ。
「起きたのか?」
目の前にデュークさんがいる。
慣れた。
怖くらいに慣れてしまった。
「あ、おはようございます」
「よく寝てた」
「そうですか?」
「何をしても、起きなかった」
ええええ???
危機?貞操の危機!!????
「え、なにしたんですか?なに?なにを?」
あ、笑った。
笑いやがった…。
「一通り、全部だ」
「え??????」
ちょっと、うそ!
寝てるのに襲われたの???
デュークさんって。
「寝てるのに襲ったんですか?野獣ですね?野獣なんですね?酷い!鬼!」
なんて野郎だ、私は真剣に怒る。
ところがだ、この人は少し真顔にになっていいやがった。
「嘘だ」
「え?うそ?」
「そうだ。アホみたいな顔をして寝てる奴とはやりたくない」
悪かったですね、アホで!
って、アホって言葉があるんだ。ふーん。アホ、か。
「起きろ」
「もう起きてます」
「そうだな」
デュークさんはさっさと自分だけ魔法を掛けてさっぱりしてます。
悔しい、ヒョイ!
すっきりした。
こんど、香りがつくような研究をしてみよう。
「朝は一緒に食べる。いいな?」
「いいですけど、…」
「どこまで頑張っているか、試験だ」
「へーい」
「おい?」
いっけねぇ…。
「わかったわ、デューク?」
「ああ、それでいい」
なんだよ?
リリさんラブだな、おまえ。
ジョゼが食事を2人分運んできた。
まったく朝から試験かよ?
まぁ、やるよ。大和撫子は頑張るんだ。
見とけよ?
ジョゼはきっちりと支度を整える。
行くぜ。
「ありがとう、ジョゼ」
「お上手です」
うん、頑張ったから。
えっと。
順番は、っと。
デュークさんの視線が怖い。
てっかいいよな、自分は好きに食べれるんだから。
いや、愚痴は言わない。
そんなの大和撫子じゃないもん。
トマト、目玉焼きの黄身を割って小さく切ったパンにつけて、ソーセージ、えっと?マッシュルームか?
「違う」
デュークさん、その指摘なに?
「ビーンズだ。次がベーコン、マッシュルームだ」
「なんで、知ってるんですか?」
「毎日一緒に食べていた。覚えてしまった」
「へぇー、愛ですね?」
「黙れ、リリじゃないぞ?」
「あ、…、そう?」
くそぉ、ビーンズ、ベーコン、マシュルーム。
もう一回繰り返しておこう。
「美味しかったわ、下げてくださる?」
「はい」
ジョゼが下げようとした。
ところが。
「ジョゼ、今日はいい」
と、デュークさんが遮った。
「陛下?」
「今朝は俺が食べたことにしろ。食べろ」
「え?いいんですか?」
「ああ、いい。好きに食べろ」
「やったー!では」
なんでこんなに美味しいんだろうね。
もうね、ガツガツいくよ、いっちゃうよ!
「美味そうに食べるな?」
「だって、美味しいですもん。自分の食べたい様に食べるって最高です。気づきませんでしたよ」
「そうか?」
「ええ。美味しいです」
「良かったな?」
「はい!」
ジョゼは少し驚いていた。
私の食べっぷり、そんなに豪快ですかね?
デュークさんも私も完食。
ああ、満足です。
「そのうち、学院の方にも出かけろ。どの位魔法が使えるか確認しとけ」
「はい、わかりました」
そして、デュークさんはお仕事だそうで出かけました。
ジュゼと午前中のスケジュールをこなしていた時だ。
ザックが入ってきた。
「おはよう、カナコ」
「ザック、おはよう」
ジュゼがザックを睨む。
「ザック、呼び捨てなど!」
「いいんだ、カナコも嫌がってないし陛下の前ではちゃんとするから」
「あなたっていう男は…」
なんか仲いいなぁ。
「仲良いんですね?」
「まぁな、俺の奥さんだから」
「へ?」
「言ってませんでしたね?これが私の夫です」
意外だ。
ザックだって背は低くないけど、ジュゼと並ぶと小さい。
「驚いた、ザックって結婚できたんだ…」
「失礼だな?」
「だって、あ、ジュゼ。ザックって話し易いから、ついつい…」
「いいんですよ、この人の良い所ですからね」
「そうそう」
で、ジョゼはデュークさんがいってたことを覚えていた。
「今日、陛下がカナコ様を学院に連れて行けと、そう仰っていました」
「ふーん、許可が出たんだ?」
「今直ぐにではありませんよ?」
「え?ジョゼ、そうなの?」
「ええ、まだリリフィーヌ様には…」
「程遠いと?」
「はい、それにダンスの時間もありますし」
すみません。
時間ないですね?
「せめて、ダンスの時間が1日おきになればいいのですが…」
「が、頑張るわ、ジョゼ?」
「はい、頑張りましょう」
ジョゼはザックを見た。
「今日の用件は?」
「今日は、カナコの魔法の件で」
「え?穴開けるの?」
「いや、穴はいいよ」
そう?得意ですよ?
「なんか残念」
苦笑いかよ?
「それよりも確認したいことがあって」
「何?」
「魔法を使った後、疲れない?」
「うーん、分からない。けど、たぶん、平気」
「眠くなったりとか?」
「わからないけど、今のところないと思う」
「たとえば、続けて魔法を連発できそう?」
「わからない、だってやったことないもの」
ザックは頷いた。
「そうだよね」
「今、やってみる?」
「それは駄目だ」
ジョゼまで、完全に否定。
「駄目です」
「どうして?穴開けたりしたよ?」
「それは、陛下が幕を張っていたからです」
「幕?」
「魔法を使ったことが分からないようにする幕ですよ」
え?やば?
「いない時にも使ったよ?」
「生活魔法や治療魔法はいいですよ?けど、大掛かりな攻撃魔法は駄目です」
なんで?
「どうして?」
「この世界には、魔物がいるんです」
ゲームか?ゲームの世界なのか?
「魔物?スライムとかゴブリンみたいな?」
「よくご存知ですね?」
「カナコ様の世界にもいたのですか?」
うーん。
「いたけど、想像上だけね。実在はしてない」
「いないんだ?だけど、名前は知ってる?」
「そうなる」
「不思議だ。やはり、ニホンは不思議だ」
「そう、かもね…」
えっと、話が逸れた。
「で、なんで攻撃魔法が駄目なの?」
「魔物が魔法に反応して襲ってくるからですよ」
「え?ここってそんなに危険なの?」
「当然です。城ですから」
何が当然なのか、わからない。
「攻撃魔法さえ出さなければ、大丈夫だよ。わかった?」
「なんとなく。とにかく出さないように努力する」
とにかく駄目なんだ。
「じゃ、学院に行けば魔法が使えるわけだ?」
「そういうこと。楽しみにしてるよ?」
「わかった、ダンス頑張るよ」
「マナーもお願いしますね?」
任せて!
「わかったわ、ジョゼ?」
「上出来です」
ルミナスに来て3日目だ。
それなりに前向きになるしかない。
ジョゼが言ってた覚悟が出来つつあるんだろうな。
あ、まだ人事だな。
なんか実写のアニメの中にいるみたいだからだよ。
緑やら白やら、金髪なんてさ。
なんでも色つけりゃ良いってもんじゃないよ?




