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私達は馬車に揺られて、丘の上に向った。





町並みは変わらない。

はじめてみた時と同じに綺麗だ。 

丘の上の屋敷もだ。

馬車を降りて、景色を眺める。


「綺麗…」

「何度見ても、綺麗だな?」

「うん」


風が吹いた。


「気持ちいいね?」

「そうだな、何時きてもいい所だ」


デュークさんが、また、私を抱き抱える。


「美味しいものを食べよう。テッドが作ってくれているぞ?」

「ほんと?わぁ、楽しみ!」


もう、甘える事にした。

久し振りにわくわくするね。

2人で食事をして、軽くワインを飲んで、それから、2人で喋っている。





夜になった。

ずっと2人きりで喋るなんて、久し振りだ。

だけど、私達の話題はセーラのことばかり。


「セーラはデュークさんにそっくりだよ?」

「そうか?笑うとカナコに似てるぞ?」

「そりゃ2人の子供だから、2人に似るんだろうけど…」

「けど、気の強そうなところは、カナコに似たな?」

「もう!我が侭なところはデュークさんに似たんだからね?」


笑っちゃった。


「幸せだね」

「そうだな」

「なのに、疲れちゃってた」


私の頬にデュークさんの手が触れた。

軽く唇が触れるだけのキスだ。


「カナコ、今日は我が侭言っていいぞ?」

「え?」

「俺に甘えろ。最近、全然甘えてこないだろ?」

「あ、」


そうだね、セーラのことで、寝不足が続いたんだ。

起きてるだけで、一杯一杯だった。


「どうした?甘え方を忘れたか?」

「もう!」


私は立ち上がってデュークさんの膝の上に乗った。

そんでもって、デュークさんに抱きついた。


「けど、子供がいるのに、子供みたいだって、変じゃない?」

「普通だ。カナコはそのままでいい。俺はそのままのカナコを愛してるんだから」

「だってお母様はいつもちゃんとしてるわ。ちゃんと、お母様だもの」

「ヴィクトリア殿が言ってたぞ。初めての時は色々と戸惑ったってな」

「そうなの?」


返事はなくて、また、唇に触れる。


「カナコ、もっと楽に生きていいから」

「だって…」

「ジョゼも1人では大変だ。あと3人程雇おう、いいな?」

「デュークさん、けどね…」


頬を軽く抓られた。

こいつ…。


「おまえはこの国の王妃だ。慣れて欲しい。駄目か?」


駄目か、ときたもんだ。

他人が生活空間に入るのが嫌なんだ。

だって、そうでしょ?

いろんなところ、見られるんだよ?


ジョゼはもう、身内みたいなものだから、いないと困るけど…。

返事が出来なかった。


「他人にセーラを取られると思っているのか?」

「ち、違うよ…」


また、キスされた。

今度はちょっと深い。

そんでもって、耳元で囁くんだ。


「カナコから笑顔を奪い取っているのは、なんだ?教えろ?俺がやっつけてやるから…」


なんか、降参。

思いっきり甘えていい?


「デュークさん、あのね、あの、ね…」

「どうした?」

「私、ちゃんとセーラを育てているのか、不安なの。もし誰かに駄目だしされたら…。それが怖くて、誰かに任せたくないの。だって、その人の方が上手に子育てできたら、セーラはその人に懐くでしょ?私のこと、母親だって思ってくれなくなるでしょ?それが、嫌なの。ちゃんと育てられないくせに、上手な人に取られるのも嫌なの」


頭を撫でられた。

もう、こんなことされたら、堪らないじゃない。


「カナコ。その心配はない」

「どうして?」

「俺がいるからだ。俺は俺の家族を守るからな?」

「家族?」

「そうだ、俺とカナコとセーラ。3人家族だ。違うか?」

「うん、そうだ」

「おまえがよく言う普通の家族とは違うが、俺達は家族だ」

「うん」

「それに、侍女や侍従は弁えた人間しか雇わない。彼等にも生活が掛かっている。王族を裏切る恐ろしさは知ってるさ」

「そっか…」


そうだよね、デュークさん、怒ったら怖いもの。

なんか、私、どうしたんだろう…。


「そうだよね…」

「うん?まだ、何かありそうだな?」

「え?」


ちょっと顔が赤くなる。

えっと、ですね、いや、恥ずかしいんだよ。


「あのね、本当は抱いて欲しいのよ?けどね…」

「うん?」

「知ってる?母乳がね、出ちゃうから、…ベットが汚れちゃうもの」


そうなんだ。

裸になっちゃうと、お乳が出ちゃって、なんか、みっともないもん。


「なんだ、そんなことか?」


なんだって、思わず顔を見上げた。


「ベットなど汚れたら、俺が魔法で綺麗にしてやる。それが嫌なら、焼いてしまえばいい。新しいベットをその度に買えばいい」

「凄い発想だ…」

「カナコは俺が血塗れでも、抱いて欲しいと願ったら、抱いてくれるか?」

「うん。もちろんだよ?なんで?」

「俺も、同じだからだ。カナコがいるなら、抱きたい」


そうだった。

抱いて欲しくても、無理だったことがあったんだ。

幸せに慣れてくると、そんなことすら忘れてる。

私達は永遠に一緒にいることは出来ない。


なら、今を大切にしよう、と決めたのに。


「私、いろんなこと、忘れてた」

「思い出したか?」

「うん。デュークさんに抱かれたくて生まれ変わってきたんだった」

「そうだぞ?」

「愛されたかったんだ」

「俺も、待っていたんだ。カナコが戻ってくるというから、待っていたんだ」


もう、ウブなんだから。

なんて愛おしいんだろうか。


「もし、私が生まれ変われなかったら、どうしたの?」

「そりゃ、俺が死んでから、おまえを探し出して、文句を言って…」

「それから?」

「抱いたな」

「嬉しい」

「そうか?」

「うん、さすが、私の初愛の人だ」


そうだった。

私の全てを捧げた人だ。


「ねぇ、キスして?熱くなるようなキスが欲しいの」

「わかった、覚悟しろ?」


私の返事も待たずに、デュークさんが唇を奪う。

ああ、もう…。

駄目になりそうだ。


私を抱いて寝室まで運んでくれる。

私は抱きついたままだ。


デュークさんはね、とても、優しく私をベットに寝かせるんだ。

そして、悪戯小僧の顔で言ったりする。


「まだ俺のキスが欲しいか?」


こんな気障な言葉が愛おしく感じるんだよ。


「うん、もっと、欲しい」

「わかったよ、覚悟しろ?」


そう言って唇に触れる。


なんて、優しくて深いキスなんだろう。

これで感じない訳がない。

私の肌は、デュークさんを求めるんだ。


いつの間にか、服を脱がされ、私達の肌が触れ合う。

なんて気持ちがいいの?


「あっぁ、」

「愛してるんだ、俺にはおまえしかいないんだ」


デュークさんの指が、触れる。

触れられるたびに、今まで感じたことのない感覚が私の意識を遠くさせる。

まるで、デュークさんの熱にうなされるみたいだ。


「愛してるの、デュークさんがいるから、私、生きてるんだ、ぁ、よ」

「俺もだ。カナコのいない人生は、二度といらない」

「今は、あ、きて?デュークさんを感じたい、から」


その言葉に応える様に、私の中にデュークさんが入ってきた。

その刺激が、余りにも素敵過ぎる。


「か、カナコ、あ」

「デュークさん!」


その刺激に私達は我を忘れるんだ。

初めてのような時間だった。


汗まみれの私をデュークさんの指がなぞる。


「綺麗だ」

「もう、感じてきたよ?」

「何度でも、構わないぞ?」

「こんなに溺れてしまって、デュークさんなしで生きられないのよ?責任取ってね?」

「わかった。もう、カナコは俺のものだ。大切にするよ?」

「うん、何度でも愛して?」

「任せろ?時間はたっぷりあるんだ」

「うん」

「今夜は俺達の時間だ。わかったな?」

「うん、嬉しい」


それから、私はデュークさんの刺激に身を委ねた。


セーラが生まれてから、抱え込んでいた固い殻が、ガラガラと崩れていく気がした。

何を意地になっていたんだろうか?

こんなにも、私を愛してくれている人が側にいるのに。

どんな不都合が起こるっていうんだ?


何が起こったって、デュークさんが側にいるんだもの。

恐れることはないんだ。

ただ、愛されよう。





それだけのために生まれてきたんだから。










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