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私はポポロと隊長と部隊で地下に向っている。

初めてだな、地下は。




私は、もしものために、隊長の部隊の一員になった。

だから、魔物征伐の時の格好をしてる。


城から1時間。入り口まで馬車で行く。


地下への入り口は意外に大きい。

高さは3メートル、幅は4メートルくらいの扉。

その扉の向こうはエレベータになっていた。

奥行きが3メートルほどあるんだ。


地下の人達って、こういうところが、凄いよね。


「ポポロ、大きいんだね?」

「そうですね、かなりの荷物を運んだりしますからね」

「そうなんだ…」


エレベーターで一気に降りる。 

深さは、地下5階って感じだ。


扉がゆっくりと開く。

初めての地下だ。





なに?ここ?

え?地上? 






「天井が、高い…」

「凄いでしょう?時間に合わせて地上の空みたいに変わりますから」

「あ、こんな施設、見たことあったなぁ…」

「え?」

「なんでもない。行こう」

「では、部隊の中へ紛れてください」

「うん」


小声での会話を終えて、私はポポロから離れた。


地下は不思議だ。

地下なのに、空があって、木々があって、花が咲いている。

池も見たし、建物もみた。

屋根だってある。


ただ、何かが地上とは違う。

なんだろう?

同じはずなのに、乾いている感じなんだ。


「お待ち下さい」


地下の門番が私達を止める。


「私達は…」


ポポロが、地下の人間と話している。

こんな時のポポロの威圧っぷりは素晴らしい。

やっぱり左大臣だよ。

ルミナスも安泰だ。


「カナコ様」

「なに?」


隊長が小声で話しかけてきた。


「どうやら、直ぐには通してくれないようです」

「みたいね」


ポポロの声が大きくなっているんだ。




30分程の後。




私達の後ろにも横にも地下の人間がいる。

この状態で、地上の使節団のいるエリアに連れて行かれる。


移動はゴルフカートみたいな乗り物だ。

凄い!

やっぱり地下の人は進化に抵抗がないんだな。

こんな時なのに、辺りを見てしまう。


一際大きい建物の前で止まる。

ここにいるんだな?


「着きました」

「わかった」


ポポロが案内してくれた人と中に入っていく。

続いて入ろうとしたら、私達は止められた。


「従者はこちらへ」


え?

思わず隊長を見た。


「駄目です。ポポロ様の護衛に2名入ります」

「伺っておりません」

「いえ、習慣です」

「しかし、」

「早く行かなくては、護衛になりません。いくぞ!」


隊長は私の腕を掴んで無理やりに中に入っていく。

さすがだ、隊長。


私達は小走りにポポロの後を追う。


あちらこちらに、警護が立っている。

けれど、ルミナスの左大臣に刃向かう人間はいない。

ポポロと一緒でよかった。

楽に目的地に向う。


ようやく着いた。


私達は、護衛が立っているドアの前の廊下にいる。

この部屋の中にデュークさんがいるらしい。

警護が厳重になっている。


ポポロがドアを開けようとした時だ。


知らない女が、前を塞ぐ。


「ご入室は、ご遠慮下さいませ」


その女はルミナスの左大臣が王に会うのを拒否した。

誰だ、おまえ?

私は知らない。


「私はルミナスの左大臣、ポポロ・ライゲルです。陛下に火急の用事があって、参ったのですから、直ぐに通していただかないと困りますね」


その女はニッコリ笑うと、こう言った。


「いえ、今は、誰も入れるなと、陛下から伺っておりますので」


ちょっと待て。

なんで、こんな地下の人間にデュークさんが指示を出すんだ?

城からの護衛は何処に消えたんだ?

思わず言葉が出る。


「どうして、地下の人間が護衛をしてるの?みんなは、どこにいるの?」

「変ですね…」


隊長も不思議そうだ。


おかしい…。


平静を装ったポポロが、さっき入室するなと言った女性に聞く。


「私達の使節団の人間はどこへ?」

「皆様、それぞれに、お部屋におられます」

「別々にですか?」

「はい、皆様、別々にです」


どういうこと?

やっぱり、軟禁されているって、ほんと?

ポポロが呆れたように聞く。


「まさか、それぞれに、女性が?」


女性が笑みを浮かべて答える。


「皆様、楽しまれておりますわ」


信じられない!

それで、仕事が出来るか?

思わず、一歩前に出てしまった。

そして、自分でも驚くくらいに、低い大きな声で、女性に尋ねた。


「アナタは、だれ?」

「私、皆様の世話係です。ミイと申します」

「世話係?なに、それ?」


隊長が私の腕を掴んだ。

ポポロが、不機嫌そうに尋ねる。


「世話係?こちらはですね、その様な世話を頼んでおりませんよ?」


その女が、クネクネと気持ち悪く体を動かしながら、答えた。

どうやら色仕掛けのようだ。


「こちらでは当然の事ですの。交渉を円滑に運ぶ手段ですわ」


むかつく!

私はその女性を睨んだ。


「なにが、円滑に運ぶよ!ふざけないで!」


その女に詰め寄ろうとしてしまう私。

隊長の手が離れると同時に、ポポロが私の腕を掴む。


「おやめ下さい!」


隊長は女に対して、構えを取る。


「ポポロ、離して!」

「しかし、」

「アナタ、陛下は、この中ね?中にいるのね?」


女は頷いて、言葉を続ける。


「お休みになられてますが?」


お休みに?はぁああああああ???


「冗談じゃないわ、隊長!」


ようやくやってきた隊員達が騒ぎを聞きつけ集まってきた人間を捕獲する中、隊長は目の前の女性の腕をねじ上げて押さえ込んだ。

そして、周りの隊員に指示を出す。


「作戦開始だ。至急に行動を開始しろ!」

「「「「はっ!」」」


数人がいなくなる。

この部落の制圧とコチラの人間の探索に向かったようだ。

10人程度だと思っていたのに、以前から侵入していた人たちとの連絡が取れてたみたいだ。

やっぱり隊長に任せると安心だ。


そして。


ポポロの手を振り払った私は、誰にも邪魔されずに、ゆっくりとドアの前に立ち、かなり乱暴にドアを叩く。


ドンドン!ドンドンドオン!


中の反応がない…。

けれども、この激しい音に女が大きな声で反応した。


「お止め下さい!陛下がお休みに、なられているのですよ!」

「何、その反応?陛下の他に、誰か人がいるの?」

「誰かって、それは…」

「女が、いるのね?」


私の低い声にビビッたのか、ミイと呼ばれた女が、渋々頷いた。


「いらっしゃいます」




場が凍った。





ポポロが恐る恐る私を見ているのが分かる。


あ、毛穴から、怒りが溢れていくわ…。

私の気が怒りマックスになったのを見たポポロが、怯えながら声を出した。


「か、カナコ様?」

「ポポロ、隊長、離れていて!」

「そ、それは!」

「カナコ様!」

「いいから、怪我するわよ!」


皆が慌てて避難する。

かなり離れていく。



私は、怒っているんだ。

濃銀になったら、何が何でも帰ってくるって言ったじゃないか!


女だと!


ふざけるな!

女がいるだぁ~~???


一体、どんな女なんだよ、ええ?

デューク、事と次第によっちゃ、容赦しないぞ!







私は、ドアに魔法をぶつけた。

怒りが篭っている爆破の魔法だ。







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