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115 あなざーさいど21-1

「学院に魔物を潜ませる?」

「そうです。アナタは何もしなくていいです。ただ、後日、何を聞かれても、わからない、知らないと言うんです。いいですね?」


と、モンクが私を抱きながら命令します。


「あ、は、あ、…」

「返事は?どうしました?」

「あ、はい」


私は頷く。


彼の言われることはなんでもしました。

学院の中に他人を入れられない場所も確保したし、鍵も渡しました。

断ることなんて、考えもしません。


だって、ちゃんとやり遂げたら、抱いてもらえるんです…。

抱かれないと、私、気が狂うんです…。








ポポロの視点、再び。






参りました。

今までも、色々と参りましたが、今回は、一番参りました。


まさか、カナコ様の姉が共犯者だなんて。


媚薬って、怖いんですね…。



カフェ・マリーの試食会の日の事です。

どうやら、カナコ様を渋々行かせたらしい陛下のご機嫌は斜めでした。


「どうかなさいましたか?」

「いや、なんでもない」


と、その時に、外の爆音と地響きがこの部屋まで伝わってきたのです。

余りの事に、陛下と会見中であったにも関わらず、窓の外を見に行きました。


「あれは!」

「あの方向は、カフェ・マリーの方向だ!ポポロ!」

「は!」


私は急いで城の外に出ました。

が、私の前を陛下が駆け抜けていきました。


どんな魔法を使ったのでしょうか?

ぜひ、教えて頂きたい。



私が城の玄関に辿り着いたとき、目の前では一悶着が起こっておりました。


気を失ってしまったカナコ様を、おそらくカフェ・マリーの従業員が救護用の馬車でここまで運び、降ろすために抱きかかえたのです。

それは、褒められて当然の行為でありました。



が、陛下は…。



彼等からカナコ様を奪い取ろうとしておりました。

ああ、もう、彼等が犯人ではないのは、明らかなのに…。

奪い取った挙句に、睨んでいるではありませんか。

まったく、この方は…。


「陛下!」

「ポポロ、カナコが気を失っている。原因を調べろ!」


物凄く不機嫌な顔で、物凄く居た堪れない空気を残して、カナコ様を抱いて、城にお戻りになられました…。


「あの…、」

「はぁ、はい?なんでしょうか?」

「私達、エリフィーヌ様がお倒れになって、カルロス様に言い付かってこちらにお連れしたんですが…」

「そうでしょうね、ありがとうございます。カナコ様が無事だったのは貴方達のお陰です」


しかし、彼等は震えていた。


「あの、私達、なにか、罰せられるんでしょうか?」

「いいえ、何も起こりませんよ?むしろ、感謝されて当然ですから」

「しかし、…」

「なんでしょうか?」

「陛下が、余りにも、お怒りで…」


あの方はカナコ様の事になると、見境がなくなる。

カナコ様に言わすと、馬鹿ップルだから、仕方ないんだそうだ。


「気にしないで下さい。カナコ様の事になると、ああなってしまうんですよ、あの方は」

「は、はぁ」

「それよりも、何が起こったのですか?」

「あ、そうでした。早く、来てください!」


私は彼等と一緒にカフェ・マリーの前に急いだ。


「ポポロさん…」

「アンリ殿!」


その場の状況は、カオスであった。

店からは500メートル程離れた広場に、衝撃で発生したであろう穴、黒焦げの死体らしき物体。

そこから、離れた所には、カナコ様の護衛を任されている隊長と彼女に押さえ込まれている女性。

その女性は、髪を乱して、奇声を上げ、暴れている。


そして、反対側には…、なんと!!


「ジョゼ殿!」


思わず、近寄る。


ジョゼ殿は顔色が真っ青なままで、気を失っている。

その彼女をマリー殿とカルロス殿が介抱していた。


「アンリ殿、一体?」


青ざめたアンリ殿が、力なく言葉を発していく。


「あ、姉が、ジョゼさんを、おそらくジョゼさんを殺そうとしたんです」

「え?」


驚いているところに、ザック先生が駆けつける。


「ジョゼ!」


私たちには目もくれず、ジョゼ殿を抱きかかえ、直ぐに治療に入る。

そのせいだろうか、少し顔色が良くなったみたいだ。


アンリ殿の配下の者が、隊長に変わり女性を捕獲する。

やっと、隊長がこちらに来た。


「隊長、いったい、何が起きたんだ?」

「ポポロ殿。ご説明します。まず、あの女性がジョゼさんに魔法を当て、私が取り押さえる間に、カナコ様がジョゼさんを魔法で治療なさっていたんです。そこへ、あの、黒こげになった男が、カナコ様を誘拐しようと、腕を取り、カナコ様に投げ飛ばされて、弾かれて、雷を落とされた訳です」


隊長は見たままを告げる。


「では、私は、陛下に報告に」

「お願いする」

「はっ!」


隊長は城に戻った。


しかし、事件が複雑だ。

とにかく整理が必要だな。


「ポポロさん、いいですか?」


少し気を取り直したアンリが、話しかけてくる。


「一旦、牢に姉を入れ話を聞きます。その対応でいいでしょうか?」

「ええ、お願いします」

「それと、今日はこの店の試食会なので、配下の者を忍ばせて置いたんですが、怪しい人間を見つけました。今、奴等を追っています」

「お任せしました。で、確認なんですが、この黒焦げの物体は?」


アンリの目が憎々しげになる。


「陛下の叔父、リチャードです。フィーに手を出そうとして、フィーに黒焦げにされました」


あ、そうなんだ。


「わかりました、では、あの物体を引き取って、直ぐに、牢での尋問を開始しましょう」

「ええ、」


ただ、あの状態では、まともな証言は得られないだろうな…。


私はザック先生にジョゼ殿を託し、ハイヒット夫妻には安心して営業を続けてもいいと伝えた。

だが、夫妻は今直ぐに店を閉じ、しばらくは自粛すると心を決めていた。

マリー殿の受けた衝撃が強いみたいだ。

私もその方がいいと思う。


清掃長が配下を連れて現れた。

これで、ここも元に戻るだろう。





さて、城に戻るか。






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