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砲撃の名手

 P-07の訓練を終え、疲れ果てた様子の砲手ディーター・クラッセン軍曹に話を聞く。

 彼は『砂漠の狐』ロンメル将軍のアフリカ軍団出身で、一九四一年一月の結成当初に機甲師団に組み入れられた砲撃の名手だ。

 同年十一月のアフリカ軍団最初の敗北(英国軍によるトブルク救援作戦『クルセイダー作戦』)の際、エルアゲイラに撤退する友軍を助けるため、負傷した車長に代わってⅣ号戦車を指揮し、英国軍のクルセイダー巡航戦車二台、マチルダ歩兵戦車五台を撃破する軍功を上げ、鉄十字勲章を授与されている。

 翌年一月から始まる反攻作戦において、わが軍は六月までにベンガジ、ガザラ、トブルクといった拠点を次々に陥落させ、英国軍をエジプトのエルアラメインにまで追い詰めるが、補給線が伸びきったこと、決死の戦いを続けた機甲師団の損耗が激しかったことで攻めきれなかった。

 そして、アフリカの地で一年半も戦い続けたディーター・クラッセン軍曹のⅣ号戦車もついに致命的な故障が発生して廃棄処分が決まり、彼だけがペンギンの砲手として抜擢されたという経緯があった。

 愛着あるⅣ号戦車が、こんな無様に改造されたことについて、彼は不満を持っていて、新しい機体の運用に嬉々として取り組んでいるP-08の砲手、クリストフ・ボーデンシャッツ伍長とは正反対の反応だった。

「低速時だと揺れが不規則すぎるっすね。精密射撃は、停車して撃つのが基本っすけど、コイツは、走ってた方が安定する感じっす」

ベルリンの下町なまりで、ぶっきらぼうにディーター・クラッセン軍曹が答える。

「とにかく、撃ちまくって、慣れるしかないっす。あと、装填手のクルトの野郎ですけど、ぶん殴っていいすかね? 野郎、もたもたしやがって動作が遅いんすよ。陸軍式だと鉄拳制裁で教育なんすけど、お上品な海軍さんのやり方を、こちとら知らないんでね」

 海軍にも反感をもっているのか、いちいち突っかかるような言い方もするのだが、困ったものだ。

 操縦手のコンラート・ベーア曹長とはすでに険悪な雰囲気で、私の悩みの種でもあった。 

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