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訓示

 五機ものペンギンがひしめいて、急に手狭になった岩場。

最終の実地研修としての単独航行を三機のペンギンはやり遂げた結果だった。

 迷子にならなくて、良かったというべきか。

 ペンギンの上に、各々五人の新兵がならぶ。私を見る、顔、顔、顔。

 彼ら十五人のなかで最年長が十九歳になったばかり。最年少は十七歳だった。真新しい軍服を着て、緊張と興奮で頬を紅潮させている姿は、まるっきり少年だった。

「仮装行列かよ……」

 小さな声で、バルチュ伍長が毒づくのが聞こえた。私も概ね彼の見解に同意する。想像より幼くて、彼らがペンギン特有の激戦を潜り抜けられるのかと想像すると、頭痛がしてきた。

「今からA部隊隊長のシュトライバー大尉から訓示を頂く。総員、傾注!」

 副隊長となるバウマン大尉が号令をかける。少年兵たちが、ピシリと背筋を伸ばした。

「訓示の前に質問がある。挙手で答えるように」

 面倒で仕方ないが、彼らには現実を知ってもらわなければならない。私は、今からそれを突きつけることになる。嫌な役目だが仕方ない。

「航海士だった。もしくは甲板員だった者はいるか?」

 誰も手を上げない。当然だ、彼らが独国中から集められたズブの素人なのだから。

「よろしい。では、陸軍で戦車の搭乗した実績がある者は?」

 当然だが、いない。

「よろしい。では、陸軍防空隊にいた事がある者は?」

 もちろん、挙手するものはいない。機関砲など今まで触ったこともないだろう。

「よろしい。ようするに、諸君らは訓練以外で兵器を扱ったことがないということだな。最初に言っておくが、そんなもの、戦力にはならん」

 反応は様々だ。私の突き放したような言葉にショックを受けている者、無表情を保つ者、反発心をむき出しにする者……などだ。

「発言許可願います」

 新兵の一人が、一歩前に出る。P-21の艇長を務める少年だった。

「クルト・ヴァランダー准尉。発言を許可する」

 なんとも堅苦しいやりとりだが、正式にはこうなのだ。P-07も08も、面倒なので誰もやらない。それどころか、私など、ひどい時は「おっさん」呼ばわりである。

 彼らは、紋切り型の典型であるホフマン大佐が引き受けた、最初のP部隊の隊員だ。さぞ、張り切って『お作法』を仕込んだのだろう。

「戦力外とのお言葉ですが、我々は徴兵の兵士ではなく、全員が志願兵であります。独国のため粉骨砕身、務める所存であります!」

 多分、ヴァランダー准尉がこの連中のリーダー格なのだろう。彼の言葉に同調した全員が一歩前に出て、「自分もであります」「自分もであります」などと次々に言っている。

 私は、呆れるのを通り過ごして、怒りが湧いてきた。この少年兵たちにではなく、彼等を騙して洗脳している連中に。

 アルペンローゼの花が好きだと言っていた、エルネスト・ボーグナイン少尉の血の気を失った白い顔を思い出す。彼はバレンツ海に散った。

 月明かりの下、歌をがなりながら港に向った、ヌーバーグ・ヘンセン少尉と、カルバン・ランツクネヒト少尉の後姿を思い出す。彼らは地中海に散った。

 戦争がなければ、死ななかったはずの若者たちだった。もう、たくさんだ。

「生きて弾を撃て。死に憧れを抱くな。貴様らは、素人同然なのだから、私の指示に従え。貴様らの忠誠心を疑っているのではない。私が戦い方を仕込んでやるというのだ。わかったか、ひよっこども!」

 私は、これで確実に嫌われ者になっただろう。だが、そんなことは、どうでもいい。戦い方を仕込むというということは、戦場で生き残る術を教えるということだ。私は、この少年たちを死なせたくないのだ。


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