ティアとデート
式典最終日、今日はティアと遊ぶ事になっている。昨日の嫁とのデートの様に待ち合わせなのだが……
スキルを使わなくても分かるぐらい俺は凝視されている。見ているのはティア以外の勇者パーティー、タイガは分かるが他の連中は興味ないと思ってた。
それと嫁達は今日は全員俺の中に入っている。何でも浮気しないか見張るとか。
…………複数の嫁が居るのに浮気はダメとか少し矛盾している気もするがまぁ納得しておこう。
「えっと、お待たせ」
ぼんやりと空を見上げながら待っているとようやくティアが来た。
白いワンピース姿で登場だ。手には小さなバックを持っている、これだけならただの美人さんだろう。
「よ、その服どうした」
「この国で買ったんだけど……似合ってる?」
「似合ってるが……いいのか?あんまり激しく動けなさそうだけど」
「激しく動く事なんて無いでしょ。それより昨日リルさん達とデートしたんだから私の事もリードしてよ」
「リードね。それなら手、繋ぐか?」
そっと手を出すと普通に手を握るティア。
「うん。お願い」
それは手を握る前に言うもんだと思うがま、良いか。
自然と手を握った状態で街を巡る。昨日と似たような屋台に寄ったり、露天で売っているアクセサリーなんかも見て回る。
何でか少しだけ懐かしい感じがするっと言うよりは少しだけ思い出した。子供の頃にも似たような事があった。
町の収穫祭だかで俺とティア、タイガは少ない小遣いで様々な露店を見て、買って楽しんだ。
途中俺とタイガが先に行き過ぎてティアを置いて行ってしまい、思い出して戻るとベソ掻きながらオロオロしているティアに泣かれながら怒られた。
「何笑ってるの?」
串焼きを食べながら聞いてくるティアに正直言う。
「ちょっと昔の事を思い出してた。確かあったよな?俺達三人で町の収穫祭で露店巡りした事」
「あ~私を置いて行ったあの酷い事件」
「酷い事件って言うのは止めてくれよ。あの時は子供だったろ」
「子供だから余計酷いって思ったもん。小さな女の子一人ほったらかしにしてどんどん先に行っちゃうんだから」
「あ~はいはい、その節は申し訳ございませんでした」
「反省してください」
俺は笑いながらティアと喋る。最近は修行ばかりでこういった日常的な話はそういやしてなかったな。
平和なひと時に心地良いと思ているとティアの口にたれが付いてる事に気が付いた。
「勇者様、お口にたれが付いております」
「え、どこ?」
慌ててバックからハンカチを取ろうとしているのを見てまた少し笑えた。
「あ~俺が取るからちょっと顔こっちに向けろ」
「え、でも」
「いいからじっとしろ」
無理矢理顔を向けさせると指でたれを取る。
「ほい取れた」
「ありがって!何してんの!?」
「何って指に着いたの舐めただけじゃん。汚くはないだろ」
「だって……それ口元に……」
「なんだって?」
「な、何でもない」
何故だか顔を赤くするティアに俺は平然と指に付いたたれを舐め取る。
そうしているとティアは何やら疑う様な視線を送る。
「リルさん達にもこうしてるの?」
「こうって?」
「顔に付いた物を舐め取ったりしてるの?」
「まぁ……たまにあるな。オウカとアオイはやっぱり育ちの良さからか顔に物を付ける様な事はないけどリルとカリンがな……リルは顔に物が付いても気にしないし、カリンは単に子供だからって感じが強いけどな」
思い出しながら言うと体内で抗議が起こるが無視、だってそういう事あったじゃん実際に。
「はぁ、まだまだなのかな~私」
「何がまだまだなんだ?」
「リュウ、やっぱり私の事女の子として見てない」
「いや女として見て」
「女の後に友達って言葉が入るでしょ、多分」
「…………まぁ多分」
「でしょ、つまりリュウはいまだに私の事を一人の女の子として見てないって事。せっかく服も新しいの買ってきたのに」
…………そういやまだ諦めないって言ってたな。あ~本当にどうするかな……
頭を掻きながら真剣に考えていると何故かティアの顔が目の前にあった。
「どうし」
なんだろうと聞こうとしたとき、俺の口をティアが口で塞いだ。
ほんの一瞬だけだったが確かにくっついた。
俺は呆然と言うか、呆けていたと言うかとにかく動けないでいた。
「ティア?」
「えっと、その、ほっ本気だから!!」
そういうとティアは走ってどこかに行ってしまった。
何が本気なのか分かるがそのまま逃亡しないでほしい。だって今、俺の後ろからとんでもない怒りが五つ感じるのだから。
「えっとちょっと待って、今のは不意打ちで決して俺からしたわけじゃ」
「「「「「関係ない!!」」」」」




