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俺対オウカ

 次の日、俺は早速リル達を連れて闘技場に向かった。

 アオイが言っていた成長がオウカ限定とは思えないので軽く戦いながら調べてみようか。

 そう言う事で今日は闘技場を貸し切ってひたすら戦闘だ。


「それで誰から戦う」

「俺の中ではオウカ、カリン、リル、アオイ、ダハーカの順番で戦おうかと思っていたんだがいいか?」

「私は構わない。リュウの力を使った状態でどこまで戦えるかは試してみたいと思っていたところだ」

 ああ、やっぱりダハーカにも俺の魔力は流れているのか。正直周りへの被害がとんでもない事になりそうだから全力では戦ってほしくないなぁ。

 ダハーカ限定で放出系魔術はお互いに禁止って事にすれば大丈夫か?いやいっその事全員禁止にしておくか。


「今回は全員放出系は無しにしないか?どうやら噂が広まって観客と言うか野次馬みたいなのも居るみたいだからさ」

「むぅ、仕方がないか。なら全力で殴らせてもらおう」

「他の皆も良いか?」

 一応確認を取ると皆問題ない様だ。

 ただリルだけがあまり気乗りでは無い様だが。


「どうした、調子悪いのか?」

「ううん、調子は悪くないよ。ただ不安なだけ」

「不安?やっぱり調子が」

「戦えば分かるよ」

 そう言うリルはやはり不安そうだ。そんなリルを撫でて落ち着かせようとするがあまり効果がない、普段なら甘える顔一つぐらい見せているが今日はそれがない。なんとなく俺まで不安になってくるな。

 そんなリルと正反対なのがオウカとカリンだ。やる気に満ち溢れていて、すでに俺をどう倒すかまで二人で話し合っている。

 お二人さん、話聞こえてますよ。


「それじゃ行ってくる」

「行ってくるのだ!」

 リル達を残して同じゲートから出てくる俺とオウカ、外の観客席にはただの野次馬だけではなく、長老達の姿もあった。恐らくこの機会に俺と俺の眷族達の力を確認しておきたいんだろう、本気出すと多分この闘技場も壊すだろうから程々にしたいが……

 オウカは本気出すみたいだし、本気を出さないのは失礼か。


「何だか懐かしいのだ」

「懐かしいってどこが」

「初めてリュウと戦った時を思い出してな、あの時のリベンジなのだ!」

「なる程、なら俺はまだ負けないようにしないとな」

 お互いに闘技場の中心で準備体操を始める。

 オウカは俺と一緒に行動している内に強くなった。師匠との修業や、嫌がってたアオイの修業もこなす様になったし、初めて会ったあの頃よりはるかに強くなっている。

 どうせ力試しなんだし、本気出すか。


 お互いに準備体操が終わり、一度礼をした後拳を構える。審判はいない野良試合、けれど勝ちを譲るつもりはない。

 そして先手はオウカだった。以前より速く俺の懐に入り込み、鳩尾を狙って拳を突き出す。

 俺はバックステップで下がりながら蹴りを入れる。しかしオウカはそれを避けて残った足を払って俺を転ばせた。


「おっ!」

「はあぁぁぁ!」

 身長差は転ばして詰めるようだ。はっきり言って俺はオウカをとらえるのが難しい、俺とオウカの身長差から俺は体勢を低くしないと上手く攻撃が出来ないし、その代わりに蹴りを繰り出したが当たり前のように避けられた。

 以前のオウカなら簡単に蹴られていただろうがそれを避けただけでも成長が分かる。

 オウカは俺の上に乗り、拳を入れようとするが俺はオウカを突き飛ばす事で脱出した。オウカはまだ子供で軽い、それでも人間から見れば十分な重さかも知れないが今の俺から見れば普通の子供の体重と変わりない。

 突き飛ばされたオウカは空中で立て直し、再び俺と対峙する。


「あ~驚いた」

「むぅ。そこは大人しく殴られるのだ」

「何か懐かしいセリフだな。でもいい一撃だったと思うぞ、成長したな」

「それは嬉しいのだ。では次はリュウの番なのだ」

「ではお言葉に甘えて」

 そう言った後俺は正面からオウカを殴った。身長差による部分は俺が攻め方を変える事でカバーする。

 その戦法は四足の獣の様に全身を前倒しにする事でオウカに向かって低い姿勢のまま攻撃が出来る。ただしこの戦法はかなりの背筋を使っているし、姿勢を保つのも辛い。だからここは手数ではなく一発一発的確に拳を入れる。

 もちろんオウカは普段通りの姿勢なので簡単に防ぐ。やっぱダメだなこの攻め方、かなり疲れる。


 結局俺は普段の姿勢に戻し、戦っているがそうなると今度はオウカがまた懐に入り易くなりまた振出しに戻った。

 さて、どうしたものかな。攻めあぐねているのは俺だけではなくオウカもだ。オウカの場合はリーチが足りない、懐に入られたら俺は手で払っているのでお互いに決定打がない。

 そう思っていた時、不意にオウカから一撃を頭部に食らった。その正体はオウカの尾だ。

 オウカと同じピンク色の尾が俺の頭をとらえていた。


 ようやくいい一撃を入れられた事に嬉しいのかオウカは攻撃の所々に尾による攻撃を混ぜてくる。尾なら足りないリーチを補えると考えたんだろうが俺もそう何度も尾で殴られる事はしない。すぐに尾にも対応し弾く。

 しかしその尾は俺の腕に巻き付いて動きを止めようとしてきた。俺はそれを利用して思いっきりオウカの尾を掴んだまま回転して投げた。

 オウカは壁にぶつかった後、目を回している間にオウカの鳩尾にようやく一発入れる事が出来た。


 俺は離れて少し様子を見ると再びオウカは俺に立ち向かってくる。どうやらオウカは俺から貰った魔力でとっさに腹部を強化したらしい。しかもアオイから学んだ攻撃の受け流しによってダメージも軽減出来た様だ、何とも器用な事をする。


 再び殴り合いをするとオウカはとうとうじれったくなったのか雑な動きが大きくなってきた。一発の拳が大振りになっているし、翼を出して空中で殴るのも踏ん張りが効かずにすぐに俺に飛ばされてしまう。

 オウカの弱点は気の短さだな。長期戦には向かない性格だ。


「があああぁぁぁぁ!」

 オウカはとうとう人化を解いた腕や脚を使って攻撃してくるが全てカウンターで逆に殴り返した。

 こうなると俺の勝ちは見えてくる。動きは単調、がむしゃらに向かってくるだけの攻撃、それだけで勝てる程俺も弱くない。

 オウカは俺の魔力をほぼ攻撃にばかりまわしていたのですぐに尽きた。


「はぁっはぁっはぁ……」

「俺の勝ちだなオウカ」

「う、うむ。参った……」

 こうして俺の勝ちが決まった。しかし俺の魔力でどのくらい育っているか調べるための試合だったがその結果は予想以上だった。

 確かに俺はオウカの攻撃はほぼ避け切ったわけだが代わりに闘技場がボロボロになっている。ドラゴンの成体が暴れてもそれほど壊れないつくりになっているはずの闘技場がオウカの拳や蹴りでズタボロになっているのを見るとかなり強化されているようだ。

 ある意味、今の内にこの事を確認できたのは良かったと考えておくべきだろう。


 これは全員調べておかないと危険だな。

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