会議に向かう
次の日、俺達はまた龍皇国に向かっていた。フェンリルの爺さんも一緒に会議に参加するとか。
それと黒牙のメンバー四人も一緒だ。アオイからの連絡でコクガはこの四人に仕事を与え、さらに情報を収集し易くするためらしい。
しかしその四人を爺さんが乗せてくれる筈はないので代わりにチビ達を使った。彼らに特に懐いているおチビ達を厳選、背中に乗せてもらう様に頼んだ。まぁそれでもメンバーはおチビ達に必死に掴まって移動中の風に耐えている。
「あいつら本当に大丈夫か?」
『頼りないしねぇ』
『仕方ないわよ。リュウに比べて頼りないのは当然でしょ』
「それにしても俺もあんなに情けない感じだったか?」
『リュウはそんな事無いわよ。あの子達が情けないだけ』
そうなのかね?俺には分からないけど。
ちょいちょい後ろを気にしながら龍皇国に近付いた。
今日からは龍皇国にしばらく滞在する事になる。会議もあるし一々爺さん達の所に帰るより効率的だからだ。その事を言ったら爺さんもついて来る流れになったのだが戦争が終わったらしばらくゆっくりしよう。
そして門の前に着くと昨日のドラコ・ニュートが「かいもーん!」と大声を上げた。
おチビ達は黒牙のメンバーを降ろして群れの方に帰って行く。そしてリルと爺さん達は人型になり、龍皇国に入国した。
入国後も黒牙のメンバーたちは驚いていた。一応事前に伝えてはおいたのだがここまで立派な国だとは思ってなかったよう。そして国の城に入るとコクガが居た。
「リュウ殿、お手数をおかけしてしまい申し訳ありません」
「気にしてないよコクガ。必要な事なんだろ?」
「はい。情報を纏めるのと少し現地に行ってもらうためです」
「現地に?なんか不審な動きでもあったか?」
小さな動きでも後々重要な事になるかも知れないので出来るだけ情報は知っておきたい。
コクガはその動きについて言った。
「通常より教会の騎士達の動きが活発なのです。もちろん最初は勇者達の魔王討伐のためかと考えていましたがそれとも違うようなのです」
「活発っと言うと具体的には」
「まず騎士達の武具が違います。通常ならただの武具なのですが今回の大森林への魔物狩りではツーランク上の武具の使用を許可したとの事、確実に今までとは違います」
「通常よりいい武具の使用か、ツーランク上と言うが効果とか加護だとかそういうものが付いてるのか?」
「はい、本当か嘘かは分かりませんが神のご加護と言いましてそこまで強い訳ではありませんが全属性への耐性が上がる鎧があると言われています」
全属性か、嘘くさいな。第一に全属性と簡単に言うが精霊の数だけと考えてもかなり多い。基礎的な四属性の他にティアが使っている聖属性、その逆の闇属性、もっと言えば雷や氷など多岐にわたる。
それなのに強い訳ではないけれど全属性への耐性を上げる武具が教会で大量に生産できるとは考えづらい。
コクガは俺が思考している間も話を続ける。
「さらに武器にも加護は与えられており、加護付きの武器で魔物を攻撃すると聖なる力で滅するとか。と言っても今回の武器ではそこまでの出力を放つものではないらしいですが」
「……そうなるとサンプルが欲しいな。いや、それはあまりにも危険か……解析とかは残った武具から行えばいいだろうしそうなると精霊王にでも頼むか……」
「いや私が行く」
突然俺の後ろでそう言ったのはダハーカだった。
連れてきた黒牙のメンバーは驚いていたがほっとく。それよりもダハーカが行くと言う方が問題だ。
「本気かダハーカ?お前には最初の兵を減らす時の魔術準備が」
「問題ない。コクガよ、その教会の騎士達はどこにいる?」
「現在はライトライトにて準備中です。しかし当然そこには多くの騎士達が」
「構わない。それより許可をくれリュウ」
「……喧嘩はしない事と問題を起こさない事。この二つを守れるなら許す」
「了解した。では行ってくる」
そう言って転移してしまった。動きが早すぎる。
「あのダハーカ様は?」
「転移した。全く、どうせならこいつ等も連れてってくれればよかったのに」
そう愚痴った後黒牙のメンバー三人がライトライトに向かって行った。道は龍皇国と精霊の森の間を通る最短ルートらしいので通常より早く着くと予想される。
残ったのは前に書類を持ってきてくれた男だった。彼は魔術の他にこう言った事務的な事も得意だそうでコクガの左腕らしい。ちなみに右腕はさっき言った体格のいい男らしい。
「それで今日の会議はアオイ」
「今日は長老の方々と共に森の被害をどう減らすかと言う話し合いです」
前みたいにいつの間にかそこに居ると何だか懐かしいな。最近は気配を消すようなこともなかったし。
「昨日はどう攻め込んでくるかの話ばっかりだったからな。と言っても俺のやり方が上手くいったら森に被害なんて出さないけど」
「楽観視は危険です」
「分かってる。あくまで上手くいったらの話だ。嘗めては掛からないように気を付ける」
「お願いします」
頭を下げて言うアオイから心配そうな気配がした。
「別に俺一人で戦う訳じゃない。アオイにもリル達にも頼らせてもらうよ」
「そうしないと怒るからね」
「パパは直ぐに一人で行っちゃうから心配」
「ボスならば後ろでどっしりと構えておれば良いのにのう」
んな事言われても俺はまだまだ若輩の身ですよ。本当に重要な事は俺が自分から赴いて作業したいが心配する側になって考えないとダメか。
それと個人的には魔王討伐の方も気が抜けないしな。
ゲンさんからの情報だと教会が気持ち悪いほど協力的らしい。人によるが教会の上層部は傲慢なものも多いらしい。教会の教えに背くような内容ではないらしいがやはり権力を持ってしまうと人は傲慢になりやすいようだ。
その傲慢連中があれこれ世話を焼いているのを見るとどうも落ち着かないとか。
しかも魔王討伐には教会の上位騎士達がそろい踏みらしく、他の騎士達からは今回は教会も本気だと言う話があちこちから上がっていると言っていた。
だが魔王討伐に関しては教会側がほとんど仕切っていることが不安らしい。俺としてはライトライトにあまり被害が出ないのは良い事ではないかと思うがどうも人的な問題ではないらしい。問題なのは教会に手柄を総取りされる事だとか。
いくら魔王を倒したのがティアだったとしてもそれはティア達勇者パーティーの手柄であり、ライトライトの手柄として捉えてくれる人はとても少ないらしい、そうなるとライトライトの騎士達が何してたんだと言われる事を想像するとやるせないと言っていた。
これから俺がする大森林への侵攻を止める際に計画していた事が一つだけあるがその内容は言わないでおこうと思った。
一芝居打つとしても結構これは屈辱的なやり方だしな。俺としては生きてるだけましだろと思うが。
「それじゃ、こちら側の被害を減らすためにも会議頑張りますか」
そう言って会議室に向かう俺だった。




