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side 聖女 仲間の成長

 私はヒカリ、この国で聖女をしています。

 聖女と聞けは清楚とか教会の奥でにっこりしているイメージが強いと思いますがそんなのは幻想でした。

 回復系とか癒し系だとか私も戦場に出る前はそう思っていました。

 私のイメージとしては戦場で傷付く騎士や兵士を治す聖母のような人。

 しかし現実は戦線で戦う女騎士でした。


 初めは教会内でひっそりと暮らしながら力を蓄え、魔物と戦う毎日でした。

 しかしある人ある少女が勇者だと言う噂が立ちました。

 その少女が目の前にいるティアです。

 初めて会った日は本当に普通の少女と言う感想でした。

 多くの大人達に囲まれ、おどおどとしているティアは本当に勇者なのかと疑う毎日でした。


 しかしある日その少女が大怪我をしたと聞きました。

 何でも魔物から女の子を護った際に腹を食い千切られたとか。

 その事を聞きやっぱりあの子が勇者なんだなと感じました。

 まだまだ未熟な少女が目の前の女の子を助けられるとは思えませんでしたから。

 でもティアは助けました。

 それが勇者として必要な事だという事ぐらいは分かります。


 そして現在、ティアはとても強くなっていました。

 フォールクラウンで何があったのかあまり話してはくれていませんが、何かいいきっかけの様なものを手に入れたようです。

 先ほどの試合でも今までなら使ってこないような戦法、魔術など正面から戦い、勝利しようとしていたティアとは思えません。


 現在のティアは多くの騎士と一対複数の試合をしています。その動きもまだぎこちないですが今までより良く動いています。

 でもティア、足元の砂を足で蹴り上げて相手の目を潰そうとするはどうでしょうか?

 あまりにも今までとの戦い方の違いに私は未だに戸惑っています。


「驚いていますね。ヒカリさん」

「マリア様。はいとても驚いています。先ほどの試合でも今までのティアなら正面からどうにかしようとしていたはずですからね」

「……やっぱり間違いだったでしょうか?」

「間違いとは?」

「リュウちゃん、ティアちゃんのもう一人の幼馴染からその、コテンパンにされたのが原因でして……」

 ティアがコテンパンにされた?


「まさか、調教師が勇者に勝てるはずがありません」

「私もそう思っていました。しかしそれが事実だからこそティアちゃんの戦法に変化が出ました」

 ……そう言われては反論出来ません。


「詳しく聞いても?」

「はい、リュウちゃんには勇者パーティーになら構わないと言ってました。しかし他の方にはご内密に」

「分かりました」

 マリア様が言うにはそのリュウと言う幼馴染はとてつもない力を所持している事、そして先ほどの妻騒ぎは彼と契約した魔物だと言う事です。

 しかもその契約した魔物はフェンリルやガルダと、とてつもないメンバーだと言う事を知りました。

 その彼に敗れたティアは彼から教えを請い、現在の戦法をとるようになったと言うのですがとても信じられません。


「本当にそのような人間が存在するのですか?」

「存在しますよ。ちなみに私も彼から課題を言われました。回復系に必要なオーラの変化の仕方、そして状況に左右されない胆力です。とても恐ろしかった……」

「一体どんな訓練をしたのですか?」

「修業で傷付いたティアちゃん達を治療している間、常に殺気を向けられていました。リュウちゃん曰く、『回復系に大事なのは動じない事、だからこの中で治療しましょう』ってしかも時間制限付きです」

「時間制限を超えるとどうなりますか?」

「殺気を向けたままデコピンをされました。肉体的より精神的にとても疲れました」

 どこか遠い目をしながらマリア様はため息を付きました。

 相当恐ろしい殺気だったようです。


「ちなみにグランとタイガちゃんにも修行をつけてくれました。グランは力の一点化、タイガちゃんは魔力の増加です」

「確かにグラン様の剣も鋭くなりましたし、タイガ様は少し逞しくなった様に見えます」

「グランの剣は技術的な事で詳しくは分かりませんがタイガちゃんは単純な体力作りです。タイガちゃんの場合は魔術の反動が来ても耐えきれる体作りだと言っていました」

 そう言う事ですか。意外にも単純な訓練で強くなれるものなんですね。

 しかしタイガ様の身体から出てくる魔力は以前より増加しています。グラン様の剣技も鎧ごと斬ってしまうのではないかと言う勢いで訓練に付き合っている騎士を斬り伏せています。


「……私も負けないように訓練に参加します」

「気を付けてください」

 マリア様は微笑みながら送り出してくれました。

 向かう先はグラン様の元です。

 あの力を一点に集める剣技は習得しておきたい剣技です。

 私は早速試合後のグラン様に声を掛けました。


「グラン様よろしいですか?」

「ん?ヒカリじゃねぇか。どうかしたか?」

「私にもその剣技を学びたいのですがよろしいですか?」

 基本的に騎士は基礎の技以外は教えたがらないものですが、この方なら快く受けてくれるでしょう。


「ああ良いぞ。他の連中も教えてほしいって言われたからな」

 やはり快く教えてくれました。

 若手の騎士からも教え方が上手いと言われるこの方なら問題にでしょう。

 早速グラン様は他の教えてほしいと言った騎士達を集め、そしてなぜか古い鎧を用意しました。

 鎧は模擬用のかかしに装備させた後グラン様は説明を開始しました。


「力の一点化、口で言うのは簡単だが実際に行うにはとても難しい。なので俺が目の前の鎧で見せておく」

 そう言って鎧の前で上段の構えをとりました。

 一体何をする気なのか予想は出来ますがそれをやってのける人は滅多にいません。

 しかしグラン様は


「ふん!」

 と言って鎧を切ってしまいました。

 その人並み外れたパフォーマンスに私は開いた口が塞がりません。

 他の騎士は『すげぇ』『流石団長!』などと言っていますが普通は出来ません。

 出来ないのが普通です。


「ふぅ。まぁこんな事が出来る様にはなる。ただしこれを行うには様々な技術がいる。力、呼吸、相手との間合いなど多くあるのでまずは自分が最も力の入るタイミングを知る事。それが出来たら次の訓練に入る。以上だ」

 他の騎士達は早速訓練を始めるがこの剣技は一体何を想定して作られたのか知りたくなりました。

 なので早速聞いてみます。


「グラン様、これは一体何を想定とした剣技なのですか?とても人間を想定した剣技とは思えないのですが」

「まぁ……一応はドラゴンを想定した剣技だよ。結局鱗に傷を付けただけで斬れはしなかったがな。聞いたんだろ?マリアに」

「ほ、本当にドラゴンと契約を?」

 小声で話すグラン様に私も合わせて小声で話します。


「ああ、しかもこの技術でドラゴンを殴ってやがった。しかもちゃんとダメージを与えていた。悔しかったな、あんな若いのに出来て俺が出来ないのは」

 本当に悔しそうに言うグラン様からは哀愁を感じました。

 ……一体どれ程強いのでしょうか?そのリュウと言う方は。

 ティアを倒し、ドラゴンを殴る。

 恐ろしく感じる私ですが会ってみたいとも感じました。

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