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side 勇者 教皇との会話

 私達はようやく帰ってきた。

 フェールクラウンで意外と時間を使ってしまった私達は馬を走らせ、ライトライトに帰ってきた。

 ここですべき事は多くある。

 リュウと約束した兵達を犠牲にしないために全力を尽くさないといけない。

 いつもの門番さん達に挨拶をして国に入る。


「にしても随分と教会がキナ臭くなってきたな。そうなんだろゲン」

「あまり言うな。一応教会にも支援は貰っているんだ」

「でも教会を警戒しないといけないのは確かですよ。何だか最近の教会はピリピリしてる」

 タイガも警戒する様に言う。

 ゲンさんがくれた情報が確かなら教会は何か急いでいる。

 具体的に何とは分からないが多分そうだろう。


「とりあえず帰りましょ。そこで今後の」

「ティア‼無事ですか!」

 言葉の途中で凛々しい声が響いた。

 その声の持ち主は早歩きで私に近付いて来る。

 私は馬から降りて手を広げるとその人は私に抱き着いた。

 普段のあいさつ程度のハグではなく、まるで戦地から帰ってきたような不安を抱えたハグ、なぜ震えているのか分からない。

 その人はハグから私の肩を強く掴んで続けて言った。


「例の幼馴染から変な事はされませんでしたかティア‼」

 この人が勇者パーティーの一人。聖女ヒカリ、私やタイガ同様希少な職を持っている私の数少ない同性の友達だ。

 髪は戦闘のために短い黒のショートヘアー、スレンダーで美しいと言うよりはかっこいいと言った風貌の女性。戦闘中では頼りになる女騎士だが普段は男の怖さを語る先輩で、先輩なのにため口なのはヒカリがその方が良いと言ったからだ。


「変な事って、そんな事無いよヒカリ」

「それでも男に違いありません。男は皆獣なんですよ!」

「それにリュウは鈍感だし……」

 相変わらずリュウの話になるとヒカリの目は怖い。

 心配してくれるのは嬉しいけど過保護な気がする。


「えっとヒカリさん。ティアも困っているし親睦はもう少し後からでも良いですか?」

「……タイガ、本当に何もなかったのですね」

「ええ、ヒカリさんが心配している様な事は何も」

「なら良いのです。それから馬を置いた後教会に顔を出してください。大事な話があります。ティアとタイガだけで来てください」

「分かりましたお伺いします」

 そしてヒカリは教会に向かって歩いて行った。

 いつもの事だが何故そこまで私を気に掛けるのかがよく分からない。


「……ティア、馬を置いたらすぐに教会に行こうか」

「うん」

 こういう時グランもマリアさんも助けてくれない、男の人がヒカリに話しかけるとすんごい目線で睨まれるし、マリアさんの場合は私と一緒に連れて行かれるので話に混ざろうとはしない。

 ヒカリはどこか不思議な雰囲気をしている。

 突然この国に現れ、聖女となった女性。そのぐらいの事しか分からない。

 彼女の過去は教皇しか知らないとまで言われている。


 私達は騎士団の所に帰ると色々フォールクラウンでの事を聞かれたが今は教会に行かないといけないからと先延ばしにした。

 皆最近まで私が不安定だったので心配してくれていた。

 この人達を守るために上手く教会と話をしないと。

 そして私達はこの国で一番大きな教会に行った。

 この教会も数ある支部の一つで本部はもっと西、教国に存在する。

 教会に入るとヒカリが待っていた。


「ティア、今回の話はとっても重要な話です」

「それはどう言う事?」

「……着けば分かります」

 いつもはこんな事は言わない、常に最悪の事態を想定していると言ってもいいヒカリがこんな事を言うなんて。


 ヒカリに連れて来られて来たのは教会にある通信用水晶がある部屋だ。

 普段はこの部屋ではなく大司教様の居る会議室である事の方が多いのだが。

 ヒカリが水晶に魔力を送ると少しずつ輪郭が現れる、そしてはっきりと姿がわかった時私達は立って姿勢を正した。

 現れたのは教皇、教会のトップだ。

 私が一度だけ拝見したのは私が教会から正式に勇者と認められた時の一度っきりだった。

 その人が何故?


『このような形で申し訳ない。勇者ティア、賢者タイガ』

「いえ滅相もありません」

「我々は教会からの支持のおかげで円滑に魔物を狩る事が出来ています」

『そう言って頂けると助かります。今回は重要なお話が合って連絡をいたしました』

 穏やかに言う教皇からはあまり重要という気は感じないがとにかく話を聞いてみないと。


『まずはお座りください』

 そう言われて改めて座る、水晶の向こうでは教皇様が何かを取り出している。

 あれは……カード?


『まず初めに行方不明だった方とお会い出来たのですか?』

「は、はい。フォールクラウンで会った後別れましたが元気だったので安心しました」

『……その方は本当に幼馴染の方でしたか?』

「え、はいそうです」

 そう言うと教皇様はカードを見ながら不思議そうにする。


『こちらの本国にはカードの複製がある事はご存知ですか?』

「はい存じ上げています」

『こちらでリュウ、と言う人物のカードを見つけた際に少々異常がありまして』

「異常ですか?」

『異常と言うのはこのカード表示です。ほとんどの部分がおかしな事になっています。名前、年齢、職業までは問題ないのですがスキルの部分に関しては完全に読めない状態になっています』

 教皇様が私達に見やすいようにカードのスキル部分を拡大してくれる。

 文字の分列や数字が意味不明に並べられていてとても読めない。


「その報告は先に聞いていましたがその文字化けの原因は分かりますか?」

『モジ?この意味不明な表示については調べた結果、いくつか可能性が浮上しました。一つはご本人が所持しているカードに何か異常があった場合によるもの、二つ目はキャパシティーオーバーによるもの、三つめは悪魔や魔物に取り付かれている場合のどれかです』

「つまり教皇様は魔物によるものの可能性が高い、と」

『それは念のためです。最初に言ったものが最も可能性としては高いではありませんか』

「ティアとタイガはその人の事どう思った?」

 私達はつい顔を見合わせてしまう。

 会った私達からすればそれは絶対二つ目が原因だ。

 スキルの数に関しては分からないが伝説の魔物達と契約するリュウの事だから絶対に二つ目だ。

 でもそれは言えない。


「魔物の気配はしませんでした。なので最初の可能性が高いと思います」

「彼はカード更新もせずに冒険者として行動しています。そのせいでカードの調子が悪いのでは?」

『そうでしたか、それなら安心です。あまりこういった事はありませんので少々警戒し過ぎたようです。では今回の魔物との戦闘ですが勇者様には別のお仕事を任せたい』

「別な仕事ですか?」

『はい、それは魔王討伐です』

 その言葉に私達は息を呑んだ。

 正直今の私達では早いと感じているしパーティー全員が揃っている訳でもない。


「お言葉ですが教皇、それは急ぎ過ぎでは?」

『……こちらにも事情があるのです。もちろんパーティー全員が揃ってからなのは当然。しかしアンデットの魔王が教会を狙っていると言う情報があります。流石にそれは見過ごす訳にはいきません』

「アンデットの魔王……」

 話に聞いた事はある。

 この大陸中の死者や魔物の死骸を集め魔王になったアンデット。

 確かに私やヒカリが所有するスキル『聖者』によってアンデットを浄化する事が可能だ。

 今の私なら『骨者スケルトン』ぐらいは触れなくても浄化出来るだろうが魔王を浄化する事は出来るのだろうか……


「私は反対です。私とティアはまだそこまでの実力があるとは思えません」

『しかし勇者様はフォールクラウンで『覚醒』というスキルを手に入れました。なら可能では?』

「それでもです。魔王が攻めてくると言うなら応戦しますがそれは最終手段であるべきです」

 ヒカリは強く言ってくれた、しかし教皇は止まらなかった。


『それでもやってもらわないと困ります。今回の討伐には参加せず魔王討伐に向かっていただきます。聖女ヒカリには初日のみ討伐に参加、その後魔王討伐に向かっていただきます以上です』

 こうして教皇との会話は終わった。

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