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ダハーカの魔術レッスン

 風呂から上がってすぐに寝た次の日、俺は殺気に気付いて目が覚めた。

 そっと目を開けると、黒いオーラを出しながら俺を笑顔で見るティアが何故かそこにいる。


「えっと、おはようティア」

「おはようリュウ。で、この状況は何?」

 この状況と言われるとリル達と寝てる事か?

 そう言えばティアが会った事があるのはリルだけで、まだ他の皆は紹介すらしていない。

 しかも今日は皆人型で寝ていた。

 ここは……正直に言うしかないか。

 こんな状況じゃただの従魔との関係と言っても納得しないだろうし。


「皆俺の従魔だよ。あと嫁だ」

 その言葉にティアは固まった。

 ティアは一人一人品定めする様に見るとさらに黒いオーラが噴き出した。


「へ~お嫁さんねぇ。へ~~」

「あの、ティア?」

「確かに可愛い子と綺麗な人がいると思うけど皆魔物でしょ?」

「それは、まぁ」

「ならリュウも人間同士で結婚しないとダメじゃない?」

「でも皆俺の事好きだって言ってくれたし」

「それは主としてのリュウじゃないの?それともリュウはペットを嫁って言っちゃう人なのかな?」

「ペット感覚じゃねぇよ。本気で、本当の意味で嫁だ」

「子供が混じってるけど?」

「オウカは婚約。まだ子供だからそう言う形になった」

 話を重ねる毎に黒いオーラが増していく。

 ヘルプだ‼

 誰かこの空気を壊してくれ‼


「リュウ、朝食の時間……なんだ勇者か。お前も早くせねば遅れるぞ」

 何でダハーカなんだよ!

 ここはゲンさんが来てくれる場面じゃないの!?


「ダハーカさん。この状況は一体?」

「状況?何か変だろうか」

「変に決まってるじゃないですか!リュウが従魔の子達を嫁って言ってるんですよ!?」

「変では無いだろ。確かに従魔関係は様々な形になるが、夫婦という関係になった者もいなくはないぞ」

 まさかの他にもいる発言!

 俺も知らなかった。


「そんなはずは!」

「私は見た事があるぞ。私に挑んで来た者の中にな」

 その人達って絶対死んでるよな。

 絶対大昔の人だろ。


「勇者は何故それ程までに否定する?亜人と人間も交わる世の中だ。人型の魔物と人間が交わるのは自然だと思うが」

 ダハーカは自然と言う。

 ティアは言葉を探すと俺に一言だけ言った。


「リュウのバカ‼」

 そう言って部屋を飛び出してしまった。

 何となく誤魔化すのはダメかな、と思って言ったがやはり突然過ぎたか。


「リュウ、飯を食いに行くぞ」

「はいはい。ほれ皆起きてるだろ。早く入れ」

 そう言うと皆はティアとは逆に機嫌が良さそうな顔をしていた。


 食堂でまたティアと顔を合わせるとあからさまに避けられた。

 マリアさんやグランさんは不思議そうな顔になっていたが、タイガだけは嬉しそうだった。

 そんな時にゲンさんが俺達に言う。


「飯を食ったらドワル王様の使者が闘技場に案内してくれるらしい。それと耐久テストのためにもそこで練習をして欲しいそうだ」

 ほー、耐久テストね。

 そんなに俺の攻撃力が怖いか。

 食いながら聞いているとマリアが遠慮がちに聞いてきた。


「あの、勇者様と何かありました?」

「ああ、俺と従魔達が一緒に寝てるの見られた」

「それ大丈夫なんですか!?」

「ティアの方が大丈夫じゃないな。明らかに」

 話が聞こえて思い出したのか、また黒いオーラが漏れている。

 それを見たアリスが俺に言う。


「ちゃんと謝って下さいよ」

「謝るって言ってもなぁ」

「難しいのは何となく分かりますが謝って下さい!」

「……はい」

 はいとは言ったけど、どう謝ったもんかな。

 ティアの言いたい事は何となく分かるが、正直言うタイミングが悪すぎるんだよな。

 だってもう過ぎた話だし。

 そう思いながらも謝る言葉探しながら飯が終わった。


 ドワルからの使者は本当にすぐに来て案内してもらった。

 この国の北西にある一番大きい闘技場でするようだ。

 戦う場所は砂で敷き詰められ、地面に倒れたぐらいでは怪我一つ負わない。しかし少し歩き辛い。


「何か確認しておきたい事はございますか?」

「このドーム型の結界ってどのぐらいの強度なの?」

「技術者によれば上級魔術十発には耐えられると」

 後ろにいた魔術師の団体が自信ありげな顔をしている。

 そう言うが何だかぼこぼこの結界に見える。

 ここはダハーカさんに直してもらうか。


「ダハーカ」

「壊していいのか?」

「その代わりダハーカが直して」

「分かった」

 そう言って初級魔術一発で結界が壊れた。

 これには案内してくれた使者やその後ろにいた魔術師達が驚いている。


「確かに上級魔術に耐えられる術式ではあったが、その分細かい式が疎かになっていた。だから点の魔術攻撃に耐えられんかったのだ。では見本を見せるか」

 そう言って先程と見た目は変わらない結界を張った。

 俺は軽い魔力を放ったがビクともしない。


「きちんと細かい所まで構築すれば問題ない。大方急いで書き上げた術式なのだろう。次は丁寧にな」

 ダハーカが魔術師に言うと魔術師達は「はい!」と言った。

 詳しい事は分かんないがやっぱりスゲーな。

 あんなデッカイ結界を一瞬で造れるんだから。


「ここで練習して良いと聞いたが間違いないな?」

「は、はい。むしろここ以外では練習しない様にと言われています」

「分かった。ではリュウ、さっそく魔術の練習を始めるぞ」

「ほ~い」

 そんな感じで魔術の修業が始まった。


 レッスン1、魔術に関する簡単な授業。

 ダハーカから簡単な魔術の基礎を教えてもらった。

 まずは火、水、土、風などのポピュラーな魔術を一通り使いながら聞いた。

 四大元素と呼ばれるさっき言った属性は、魔力さえあれば誰にでも使える魔術であり、そう難しいものではない。だが、そこから攻撃に発展させるには、各元素について理解する必要があるらしい。


 どうやったら火は起きるのか、どうやったら水が湧くのか、どうやったら土は盛り上がるのか、どうやったら風が吹くのかを理解しないとダメだとか。

 火を起こすだけでも様々な方法がある事をダハーカから教えてもらった。

 日の光を集める方法、摩擦による発火、あとは落雷による火事など様々な方法があるらしい。

 その様々な方法の中から自分に合った魔術の使い方によって得意分野が変わるとか。


 ちなみに今の俺と相性が良いのは火と風だ。

 理由はリルとカリン、アオイにオウカが契約しているからだとか。

 風はリルから、火はカリンにアオイ、オウカから力を無意識に借りているらしい。


 それからティア、と言うか『勇者』や『聖女』と言った特殊な職業にのみ使える魔術がある事も知った。

 ティアが使えるのは聖属性と言われる属性だとか。

 なんでも『不死者アンデッド』などに効果のある、祓い、清める力の強い特殊属性らしい。

 この知識もダハーカは所持してはいるが使えない。


 レッスン2、詠唱を覚えよう。

 魔術を使う際に詠唱が必要なものがあるらしい。

 ほとんどの詠唱が必要な魔術は上位魔術ばかりだそうで、俺だとそう使う機会は少ないだろうとも言われた。

 ついでに言っておくと、ダハーカが俺との戦闘で詠唱しなくても魔術が使えたのはスキル『詠唱破棄』があるからだ。

 俺にもスキル『魔賢邪龍』にあるが初めぐらいは詠唱しろと言われた。

 どうやら『詠唱破棄』は一度唱えた魔術しか詠唱を破棄できないらしい。

 だから今は長ったらしい詠唱を棒読みで詠みながら一つずつ登録するしかない。


 レッスン3、魔法陣と術式を書けるようになってみよう。

 魔法陣と術式は詠唱を必要としない代わりに一々描かないといけない使い捨ての魔術だとか。

 使い捨てと言ってもまた新しいのを書けば良いし、俺が好んで使う付加術もこの中の一つらしい。

 すぐに効果が消えるものと消えないものもあるので要注意だと。

 特に魔法陣はオリジナルのものを創りやすい魔術らしいので色々あるとか。

 それから堅い魔術壁や結界の類のほとんどは無属性と言われ、他の属性との相性による弱点も無い代わりに決め技も少ないらしい。


 レッスンファイナル、魔術限定の実戦。


「ギャァァァァァァァアアアアアアアアア!」

「どうしたリュウ。先ほど魔術は教えただろ」

「だからっていきなり二桁で攻撃するなよ!」

「リュウにも詠唱破棄は私経由で所持しているのだから出来るだろ。またいくぞ」

「ギャァァァァァァ!」

 ダハーカの魔術でぶっ飛ばされるたびにティアが不幸な人を見るような視線を送っていた。

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