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Dream Circulation  作者: 深雪林檎
一章 春日井莉亜
15/20

14 武器そして武器


「ナイトは中々腕がたつようですね」


市長邸に向かう途中リーフがナイトに声をかける。


「そうか?」


「ええ、ナイトの得物は日本刀でしたね。いつモンスターが出ても良いよう、私たちの武器について把握しておいたほうが良さそうです」


「それもそうか。よし、市長邸に向かう前にみんなのを確かめておこう」


「ん、良いんじゃない?」


「僕も賛成です」


「2人がそう言うのなら私も賛成するわ」


エアとサクに続いてシトロンも賛同する。

ベルも異存はなかった。


「じゃー広い場所に行こっか」


6人は近くの地図を見て、ヘリオスの中心にある広場に向かう事にした。







--------------------------------------





「「「「「「セロ」」」」」」


6人が同時に唱える。

それぞれの片手、または両手に光が収束し、一瞬激しく輝きを放って武器が現れる。


ナイトは純白の日本刀“一心”

サクは黒と白の双剣“陰陽”


「聞いてはいたけど、エアのはずいぶんと長いな」


「うん、無駄に長いんだコレ」


エアは“ドゥリンダナ”を地面に突き刺して上から下と眺める。

長さが150cm幅が15cmで、刀身には主に紫色を中心に彩色、装飾が施されている。


「シトロンのはいいね、軽そうで」


「そうかしら」


シトロンは金と蒼で華美に装飾された柄のレイピアの“fiore”(フィオーレ)を顔の前まで持ち上げて見る。


「それに突いたらすごいし」


「どうなるんですか?」


サクが首を傾ける。

それを見たシトロンはニヤリと笑ってレイピアをナイトに向かって突き出す。


「?……うわっ!?」


突き出されたレイピアの先から蒼い光弾が飛び出し、一直線にナイトに飛んでいく。

ナイトは不意をつかれながらも体を反らして避けようとするが、シトロンは当たる直前にレイピアを勢い良く上に向ける。

すると光弾も同じように上へと進路を変え、蒼色の軌跡を残して見えなくなった。


「ま、こんなところかしら」


シトロンはクスクスと笑って言う。


「……なぜいちいち俺を狙う」


「そんなことよりリーフのは何かしら?」


「私のは手甲です」


不満顔のナイトを無視して2人は話を進める。

リーフの両方の指先から肘までかけて手甲“撃破”(パワーブレイク)が覆っている。

朱い手甲に金色の鉱石らしき物で関節毎に強化してある。

具体的に言うと、指先、指関節、拳、手首、肘だ。

そして手の甲と手首から肘にかけての部分には銀色の丘があり、攻撃を受け流しやすくなっている。


「私はシトロンのような特技はありませんが、単純にこれを装着していると力が強くなるようです」


リーフはそう言って石を拾い、二本の指に挟んで粉々に潰す。


「私のはコレねっ」


ベルが翠色の綺麗な半透明をした弓“礼記射義”を高々と上げる。


「ベルの弓は300m先までなら、狙った場所に的中するようです」


リーフがベルの代わりに説明する。


「それはすごいな。色はともかく見た感じ形はシンプルなのに」


ナイトは普段弓道部が使っているような弓と変わらない“礼記射義”を見て感嘆する。


「ま、何事も見た目だけじゃないってことだよー組長」


(ベルの場合中身が残念だけど)


(エア、水を差すような事言うなよ)


2人は苦笑しながら小声で話す。


「サクちゃんのは剣が二本なのね」


「あ、はい。特にそれ以外は取り柄がないです。それに……」


サクはばつの悪そうに下を向く。

ナイトは4人に事情を説明する。


「サクはモンスターとはいえ生き物を殺す事に抵抗があるんだ。だから俺たちで力を貸してあげたいんだが、良いかな?」


「良いわっ!全然良いわっ!サクちゃんは私が護ってあげるわっ!主にナイトから」


サクを抱き寄せてナイトを睨むシトロン。


「……シトロン、話をちゃんと聞いてたか?」


「そういうお人ですから」


呆れるナイトにリーフが声をかけた。


「じゃあ次はもう一つの武器だな。みんな出してくれ」


「「「「「「カルバー」」」」」」


ナイトが促して再び6人が唱える。


「なんだかこれだけあるとすごい絵だな」


ナイトはエアを見て感想を述べる。

“ドゥリンダナ”に加え、それぞれが微妙に形状の違う12本の短剣“パラディン”がエアを囲むように浮いている。


「ナイト君だって」


エアもナイトの前に並ぶ五色の小太刀“五常”を見て笑う。


「ベルは空を歩く事の出来る足袋でしたね」


リーフがベルの足を覆う、“礼記射義”と同色の足袋“八節”を見る。

能力は『始まりの場所』で早速活用されている。


「そういうリーフは?」


ベルはリーフの足元を見ながら訊く。

ベル同様に“撃破”と同じく朱いブーツ“瞬破”(スピードブレイク)

爪先、踵、脛、足首に補強がされている。

「私のはブーツみたいですね。ベルのように空は飛べないと思いますが、こちらはスピードが向上されるようです」


リーフは爪先で地面を何度かつついて感触や感覚を確かめている。


「私のは盾みたいわね」


シトロンは左手首に曲がれた、葉っぱのような形が4つ付いたブレスレット“flor”(フロル)を見ながら呟く。

シトロンが念じると“フロル”が弾け、ナイトの前に巨大化して現れる。


「うわっ!?」


ナイトは突然に目の前に現れた4つの盾に驚いて下がる。


「わぁ、四つ葉のクローバーですか?」


サクが真っ先にモチーフになっている物を言い当てる。

4つの葉はバラバラになっているが、確かにそれは四つ葉のクローバーだった。


「……だから何で俺を狙う」


「そういうお人ですから」


「……リーフ、さっきから思ってるがそれはフォローなのか?」


「ご想像にお任せします。サクのは何でしょうか?」


シトロンが再び念じて“フロル”を消しているのを見ながらリーフはサクに訊く。


「えっと、僕のも盾みたいです」


サクは首からぶら下がるチェーンに通った円形のネックレス“虚無”を手にしながら答える。

サクが目を瞑って念じると、サクの周囲に球状の膜のようなものが発生する。


「あ、これ堅いぞ」


ナイトはコンコンと膜を拳で叩く。


「本当ね。サクちゃん中に入れてっ」


「……しばらくこのままでいます」


サクは安全地帯にいながらも後退りながら言う。


「で、エアと組長のは何なの?」


ベルが合計17本の剣を見て尋ねる。


「僕のはただの短剣だね。12本もあるし。数字は3を選んだんだけどなぁ」


「俺のは五本それぞれに力があるみたいだな」


ナイトは初めて出した時には気付かなかった事を口にする。

紅色の“仁”には火の力が、橙色の“義”には癒しの力が、黄色の“礼”には電気の力が、翠色の“智”には風の力が、そして蒼色の“信”には冷気の力が感じられた。


「それは随分と便利な力ですね」


「でもそのオレンジの刀ってどうやって使うの?まさか傷口に刺すとか?」


エアが勘弁してくれといったような顔で訊く。


「いや、これを持っているだけで傷が治っていくみたいだ」


ナイトは“義”を右手にとって答える。

持った右手から暖かいものが流れるような気がした。


「とにかくこれで大体分かりましたね」


「そうだな。戦闘になったら俺とエアが前衛、ベルとシトロンが後衛、サクが真ん中でサポートに入って、リーフが遊撃ってところか」


ナイトはそれぞれの特性を考えて言う。


「私も全く同じ意見です。流石ですねナイト」


「いやいや、それにしても不思議だよな」


ナイトは謙遜しながら自分の武器を見る。

他の5人も同じように見た。


「不思議ですね」


「不思議ね」


「不思議です」


「……不思議だねー」


「ベル、無理に合わせなくて良いから」


ベルはともかくとして、同じ事を考えていた。

自分の武器について説明したのだが、自分自身でさえ使った事がないのに不思議と用途・能力が分かるのだ。

ナイトのように後から気付く者もいれば、ベルのように直感的にすぐ分かる者をいる。

それは不思議としか言いようがなかった。

エアも自分でそう設定したにも関わらず不思議に思う。


「ま、考えても仕方がないわ。さっさと市長さんに許可証とやらを頂きに行きましょう」


シトロンが周りに呼び掛ける。


「そうですね。とにかく先に進まないと。セロ、カルバード」


サクも同意して、早速“陰陽”と“虚無”をしまう。

が、油断したサクはあっさりとシトロンに捕まる。

そんな光景を見ながら4人も武器をしまう。

そしてそれぞれの手に刻印として戻った。


「いつまでもやってんだ。早く市長邸に行くぞー」


「んー、サクちゃん可愛いー」


「ナイトさん!た、助けて」


「楽しそうだね、私も混ざろうかな?」


「ベル、お願いですから辞めてください」


「……サクがいて良かった」








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