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Dream Circulation  作者: 深雪林檎
一章 春日井莉亜
13/20

12 合流そして選択


「…………ん」


エアが目を開けるとそこは『始まりの場所』だった。

周りにはエアと同じように、それぞれの制服をきた高校生たち。


「うん、問題はないかな」


エアは小さく呟いて笑みをこぼす。


『やあ、いらっしゃい。これで三度目だね。昨日死んじゃった人たちは気分はどうだい?』


エアにとっては当然、高校生たちにとっては突然にヒュプノスの声が響く。

ヒュプノスといっても魔術思念干渉システムによってエアが音声を作っているので、エアが話しているようなものである。

DCでは着けていない手袋の位置にある刻印は僅かに光っている。


『じゃあ早速だけど今日から何をするか詳しく説明しようか。昨日生き残った人は知ってるけど、今日からは本格的にRPGを始めるよ。舞台はここ』


天井に風景が5つ現れ、高校生たちはざわつく。

樹海の中に広がる緑豊かな街並み。

青い海と多くの船が見える街並み。

露店と人で活気良く賑わう街並み。

炭鉱の近くの谷に広がった街並み。

立派な城から広がるような街並み。

高校生たちがそれらを見上げていると、ヒュプノスは説明しだす。


『樹海都市サーダル、港湾都市ウズリル、商業都市ヘリオス、炭鉱都市ガンジバレ、そして王都イクシル。冒険の舞台イクシリル王国の五大都市さ』


ヒュプノスが説明するとそれぞれの風景に名前が現れる。

エアは満足そうにそれを眺めていた。


『今からここを旅してもらうわけだけど、目的は『終点の地』を目指す事さ。何処にあるのか、どんな場所なのか……それは自分たちで探してもらうよ。それぞれの都市で情報を集めたり、自分の足で運だよりに探すのも良いかもしれないね』


“まあ、そんな簡単には見つからないけど”


『注意する点は昨日と同じく、LPが無くなったら今日の旅は終わり。それから都市の中には人がいるわけだけど、普通のゲームと違って、何回話しかけても同じ返事しかしないなんて事はないから。悪さをすれば捕まるし、有力な情報を持っている人の機嫌を悪くすると最悪だよね。それから、全員にこれを渡そう』


ヒュプノスがそう言うと、高校生たちの目の前に袋が転送される。

エアは中身が分かっていながらも、他に倣って開けて確かめる。

中身は金貨が10枚。

昨日生き残れなかった高校生が驚く。


『昨日の生存者には報酬として100枚渡したけど、全員に10枚配るよ。イクシリル王国中で使えるお金だから大事に使ってね。宿代、武器代、飲食代、いろいろ使う機会は多いからね。まぁ昨日みたいに街の外にいるモンスターを倒せばいろいろ手に入るけどね』


「宿代ってことは、また何日も旅するのか?」


ヒュプノスが説明していると、一人の男子が声を上げる。


『その通りだよナイト君。現実世界1日あたりDC内で3日過ごしてもらうよ。そして現実世界で一週間、DC内で21日以内に『終点の地』にたどり着いたものだけに願いを叶えてあげよう。じゃあ早速始めよう……と言いたいところだけど、1人旅は寂しいだろうから、パーティーを組む時間を10分だけあげよう。多すぎても駄目だから6人くらいまでかな。じゃあ頑張って探しなよ』


ヒュプノスが言い終わると、天井の風景が消えて時間が現れる。

09:59、09:58、09:57と1秒毎にカチカチと音をたててカウントしていく。

それを見た高校生たちは慌てて仲間を探そうと騒ぎ出す。


「そこの可愛い君!パーティーを組まないかい?」


「結構です」


エアは次々と声を掛けられる度に即答で断っていく。


「莉亜ちゃーん」


「はぁ、一応期待してたけど何か嫌だなぁ」


エアは声の主を見てため息をつく。

空を歩いて近付いてくる(ベル)

“八節”の能力をさっそく活用していた。


「お待たせー。もう組長たちも集まってるよー」


「うん、じゃあ案内し……っ!?」


エアは突然後ろを振り向く。

鈴はわけも分からず首を傾げて地面に降りる。


「どうしたの?」


「いや……なんか背筋がゾッとしたようn「エアちゃーん!」うわっ!?」


エアは突然現れた女性に抱きつかれる。


「シトロンさん!?」


「逢いたかったよぅ」


柚希(シトロン)は胸の間にエアをうずめてぎゅーっと抱き締める。


「ちょっと!苦しいかr……服の中に手を入れるな!」


「良いではないか良いではないか」


シトロンは器用にエアの服の中の素肌をまさぐっていく。


「相変わらず胸はないわね、エヘヘ」


「あるわけないd……ぁ、んっ!?」


「エアちゃん敏感ね。これはどうかしら?」


「ひゃぁっ!?つ、つまむなぁ。助けて」


エアは鈴に助けを求める。


「私も混ざるぅ~」


が、余計に悪化するだけであった。

美少女3人(?)が絡み合う絵が一分ほど周囲の男子の注目を集めた。






「ったく。2人共もう少し危機感を保ちなよ」


エアは人をかき分けて鈴の後について行きながら、2人に言う。


「ごめんなさいねエアちゃん。つい嬉しくって」


その後ろに歩くシトロンが満足そうな表情で謝る。


「いっつもそう言ってるくせに」


エアがぼやいていると見知った顔が見えた。


「春日井!……いや、ここではエアかな」


「合流できてよかったねナイト君」


“うん、さっき質問してたし、場所もみんな把握してるけどね”


エアは心の中で笑いながらナイトとやりとりをする。


「柚希様!」


「あら?羽哉」


シトロンに羽哉(リーフ)が駆け寄る。


「やっぱりシトロンさんてリーフが捜してた人だったんだ」


鈴がうんうんと満足げに頷く。

エアは鈴に近付いて訊く。


「あれ制服なの?」


「ん?執事服らしいよ」


リーフは1人だけ明らかに格好が違う。

女子としてもそうであり、男子の制服よりもピシッとした格好の良い執事服を着こなしている。


“……柚希……宇津宮の娘か………………宇津宮ぁ、後で覚えてろよ!”


シトロンから受けた愛情(仕打ち)をしっかりと親に返そうと決めたエアだった。

名前は知っていたが、顔までは知らなかったため、今まで気付かなかった。


「ん?そっちの人はナイト君が言ってたサク君かな?」


エアはナイトの陰に隠れるサクを見付けて訊く。

エアは一応知っているが。


「ああ、ほらサク隠れてないで出て来なって。さっき言ってたエアだ」


「あ、サクです。……よろしくお願いします」


ナイトの陰から恐る恐る出て来てサクが挨拶する。

そしてそれを目ざとく見付けるシトロン。


「男の娘!?」


「柚希様!?」


「ゾッ!?サク君逃げて!!」


「え?えっ!?」


※以下よりイメージのみでお送りします。


シ)サッ!(≧∇≦)


サ)ビクッ!?Σ(・ω・´)


シ)ワシッ、ワサワサ(´>ω<`)


サ)ジタバタ(°□°;)


シ)ギュー(´>ω<`)


サ)ジタバタジタバタ(°□°;)


シ)スリスリ(≧ε≦)


サ)ボンッ!(//О//)

クタッ(=。_。)


シ)?(・ω・´)


ベ)…………(^_^;)

エ)…………(-.-;)

ナ)…………(°□°;)

リ)…………( ´Д`)







--------------------------------------





一段落ついて落ち着いた6人が簡単に自己紹介を済ますと、ちょうど時間になり、ヒュプノスが再び話し始めた。


『はい時間だよ。パーティーはちゃんと集まったかな?それじゃあ転移陣を出すよ』


ヒュプノスがそう言うと高校生たちのいない空いたスペースに大きな幾何学模様が4つ現れる。

そしてその上に王都以外の4都市の風景も一緒に現れた。


『好きな所から選ばせてあげるよ。ただ王都は人気がありそうだから駄目。じゃあ早速好きな所に足を踏み入れてね。あ、制限時間は5分』


天井に再び05:00と時間が現れる。

6人は相談し始めた。


「どこがいいですかね?ナイトさん」


「そうだな、商業都市か港湾都市が情報が集まりそうだけど、みんなはどう思う?」


「ええ、私もナイトの考えには異存はありません」


「私もリーフと一緒」


「僕も同じかな」


「私はエアちゃんとサクちゃんがいればどこでも良いわ」


「……柚希様」


「リーフ、ここではなんと呼ぶように言ったかしら?」


「……シトロン」


「それでよろしい」


満足げにシトロンは笑みを浮かべる。

ナイトは溜め息をついて話を進める。


「じゃあどちらかだな。時間も無いようだし、さっさと決めたいところだが」


「じゃあ商業都市で!」


ベルが即決する。

エアは呆れ顔で理由を訊く。


「なんでさ?」


「なんとなく!」


またもや即答するベル。

エアは溜め息をついたが、他の4人は異存が無かった。


「すぐ決まって良かったわね」


「では早速転移陣とやらの方に行きましょうか」


「そうだな。行こうかサク」


「はいっ」


(ちっ、ナイトの奴)


(柚k……シトロン。少し声が出てますよ?)


4人は商業都市ヘリオス行きの転移陣に向かう。

何組かのパーティーはすでに各所に向かっていた。


「じゃあ行こっかエアちゃん♪」


「だからちゃんつけるなって」


エアとベルも4人の後を追う。

転移陣の前に近付き、6人は意を決して同時に足を踏み入れた。


6人は光に包まれ、『始まりの地』から消えた。







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