06-08 初めての……でした
レンとアイネからの相談に乗り、探索を終えたジン達。合流の為にギルドホームへ帰還すると、既にヒイロ達は帰還した後だった。
「ただいま……あれ、ヒメは?」
そこにはグッタリした様子のヒイロとハヤテ、澄ました顔で紅茶を飲むシオンしか居ない。
「おかえり……ヒメは、部屋だよ……ほんと、申し訳ない……」
「ジン兄、ごめんなさいッス……ほんと、俺等が悪かったッスから……」
机に突っ伏してグッタリしたままの二人だが、その言葉の意味は要領を得ない。そこでジンは、シオンに視線を向ける。
「どうしたんですか、一体……ヒメに、何かあったんですか?」
まさか、またマリウスの様な不快な輩が? そんな予感に、ジンの身体が強張る。
しかしてその真相は。
「大した事ではありませんよ。ただヒメノ様が、終始不機嫌だっただけです」
「……ちょっと土下座して来る」
「あ、私も謝らないと……」
「そう、だね。ヒメちゃんには悪い事をしちゃったな……」
シオンの言葉を受けて、たちまち三人の心は一つになった。【七色の橋】のお姫様は、怒らせると怖いのだ。
ヒメノが不機嫌になるのも、無理はない。
ジンとヒメノは付き合い出したばかりで、今が一番相手と一緒に居たいと感じる時期である。しかしながら二人は学年も、通う学校も違う。登下校のわずかな時間と、星波家でお茶と勉強をする少しの時間……それだけでは、物足りないのだ。
それにゲーム内ならば、二人は身体的ハンデを気にしなくて済む。VR世界での触れ合いが、二人のかけがえのない時間なのである。
二人きりではなく、仲間と一緒に行動するならば二人に異論は無い。しかし離れ離れになってしまうとなれば、話は別だ。
慌てた三人がヒメノの部屋に急行するのを見送って、シオンがボソリ呟く。
「……まぁ、勇気を出せない殿方が原因の様な気も致しますが」
「「うっ……!!」」
その一言が、ヒイロとハヤテの胸にグサリ!! と突き刺さる。シオンの言葉には、ぐぅの音も出ない。自覚がある分、その言葉によるダメージは深い。
自分達が躊躇っているせいで、レンとアイネがヤキモキする。そのせいでレンとアイネが、ジンを連れて行ってしまう。ジンが連れて行かれた事で、ヒメノの機嫌が悪くなる。ヒメノの機嫌が悪くなり、自分達は居た堪れない。なんという負のスパイラル。
片手で目を覆い、天を仰ぐヒイロ。とはいえ、彼も彼で悩んでいるのだ。
「はぁ、恋愛って難しいんだな……」
そんなヒイロのぼやきに、ハヤテが目を丸くする。
「……あれ、ヒイロさんはモテそうッスけど……」
イケメンで性格も良く、面倒みの良いヒイロだ。モテるだろうと、ハヤテは常々思っていた。事実、彼は毎日学校で女子生徒に囲まれている。
しかし、ヒイロは力なく首を横に振る。
「全部断って来たよ。上辺だけで好きになられても困る……というのもあるけど。俺自身、特に好きでもない相手と付き合うのは、不誠実だと思ったから」
ちなみに、断って来た理由はもう一つある。ヒイロとヒメノを見れば、彼がヒメノを優先して恋愛を遠ざけて来たのは一目瞭然だ。だが、それを口にするのは野暮だろう。
とはいえ、今日は分が悪かった。そんなイケメンムーブが許される状況ではない。
「まぁ本当に誠実でありたいのならば、いつまでも問題を先延ばしにしない方が宜しいかと」
「うぐ……っ!!」
再び、シオンの言葉がヒイロの心を抉って来た。今日のシオンさんは、容赦が無い。
とはいえシオンが苦言を呈したくなるのも、無理はなかった。居た堪れなかったのは、ヒイロとハヤテだけではなかったのだから。
拗ねているヒメノは可愛らしかったが、中々の強敵だったらしい。
「それと、いざという時しか男らしくないのは如何なものかと」
「今度は俺を狙ってるッスね……」
「さて、何の事かさっぱりでございます」
シオンさんの口撃は、まだまだ続きそうだ。二人は潔く諦めると同時に、今後の事について考えを巡らせていく。
”彼女”の隣に立つのは、自分でありたい……そんな譲れない思いが、確かにあるのだから。
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「ヒメ、本当に済みませんでした」
忍者イズ土下座なう。部屋の中には入れてくれたのだが、そっぽを向かれてジンは大慌てだ。
「……むぅ、謝る様な事をしたんですね。二人とデートですか?」
「断じてノー! 二人の、恋愛相談に乗っていました!」
「ふーん、そーですか。私は一緒じゃダメでしたか、そーですか……」
拗ねたヒメノさん、中々に手強い。大好きなジンが相手でも、むくれっぱなしである。
「ごめんなさい、ヒメちゃん……ヒメちゃんにも来てもらっておけば……」
アイネがそう言うのだが、レンが口を挟む。
「あ、いや待って……それは、私が本気で恥ずかしいやつだから……」
赤面するレンとは、非常に珍しい。貴重なレン様の赤面シーン。
しかし、そんなレンの様子にヒメノがピクリと反応した。
「レンちゃん」
「は、はいっ!」
いつもより低い声に、レンの背筋がぴんと伸びる。いつもと違うヒメノさんは、とっても怖いのだ。
「レンちゃんがお兄ちゃんを好きな事くらい、解っているよ?」
「ジンさんのみならず、ヒメちゃんにもバレてた……なんてこと……」
私ってば、そんなに解りやすかったかしら? と肩を落とすレン。何だか居た堪れない。
「はぁ……ごめんなさい、ヒメちゃん……お兄さんの事だから、ヒメちゃんに聞かせるのはどうかと思って……」
「むぅー、私はレンちゃんとお兄ちゃんの事を応援してるのに……」
「本当にごめんね、ヒメちゃん。今度は私もレンちゃんも、ヒメちゃんには必ず相談するね」
二人掛かりでヒメノを宥めに掛かると、少しばかりヒメノの纏う不機嫌オーラが和らいだ。
ジンは、畳みかけるならば今だと察した。
「本当にごめん、ヒメ。お詫びに一つ、ヒメの言う事を聞くから」
真剣な顔でそう告げるジンに、ヒメノはジト目を向ける。
「……三つ」
「三つ言う事を聞きます」
「その言葉に、二言は無いですか?」
「ありません、神に誓って」
浮気がバレた旦那の様な状況下だが、ジンも自分が悪かったと本気で反省しているのだ。自分に出来る事ならば、何だってしてあげたい……心の底から、そう思っている。
何とか収まりそうな気配に安堵の溜息を漏らすレンとアイネ。だが、お咎め無しは精神衛生上よろしくない。
「二人の時間を奪っちゃったものね、私達もヒメちゃんの言う事を聞くつもりよ?」
「私達にも、遠慮なく言ってね?」
レンとアイネの言葉に、ヒメノは少し思案し……要望を口にした。
「……じゃあレンちゃんとアイちゃんは、明日の帰りにクレープをご馳走してくれたら許します」
「「はい喜んで」」
何だかんだで、仲の良い三人である。その程度で済ませる方も、それを快諾する方も苦笑いしつつ嬉しそうだ。
ひとまずは決着が付いたので、二人は気を使って退室する事にした。二人きりの時間を奪ってしまった事を、やはり気にしていたのだ。
「じゃあ、私達は大広間に戻るね」
「ジンさん、後の事をお願いします」
二人の言葉に、ジンは強く頷く。
「うん、任されました」
……
二人が去った後の、ヒメノのマイルーム。残されたジンとヒメノは、無言だ。ちなみにジン、未だ正座状態継続中である。
そんな気まずい沈黙を打開したいジン。ならば、やるべき事は一つ。誠心誠意、謝る事である。
「……本当にごめん、ヒメをないがしろにするつもりは無かったんだ」
ひたすら謝罪するジンに、ヒメノはようやく矛を収める気になったらしい。自分の隣をポンと叩き、柔らかい声でジンを呼ぶ。
「ジンさん、隣に来て下さい……」
「うん」
お許しが出たので、正座をやめて立ち上がるジン。VRのアバターなので、足が痺れた! なんて事にはならない。
ジンがヒメノの横に腰掛けると、ヒメノはジンの肩に頭を預ける。
「今日は、ログアウトまでずっと二人きりが良いです……これが一つ目でも、良いですか?」
ヒメノの可愛らしいお願いに、ジンは苦笑する。その程度で”何でも言う事を聞く”権利を使っては、勿体無いにも程がある。
「それは、言う事を聞く一つには含まれないよ。今日は落ちるまで、ずっとヒメと一緒に居たい……これは、僕からヒメにお願いしたい事だから」
そう言って、ヒメノの肩を抱くジン。
「ね、それでも良い?」
ジンの言葉にヒメノは照れくさくなって、彼の肩に頭をグリグリと擦り付けた。マーキングだろうか。
しばらくそうしていると、ヒメノがポツリと呟く。
「じゃあ、ぎゅっと抱き締めて下さい」
「それも僕がしたい事だね」
ヒメノのおねだりに、ジンはすかさず反論してその華奢な体を抱き締める。いつになく力強い……更に言えば、真正面からの抱擁は初めてだ。
ジンの抱擁に、ヒメノは表情が緩みかけ……しかし、グッと引き締め直す。無理やり不満そうな顔を作るが、顔がにやけないように必死なのは内緒だ。
「……ずるいです。私のお願いが、ジンさんのお願いにすり替わっています」
不満そうな言葉だが、声の調子から本気で不満を抱いているのではない。それは、ジンにも伝わっている。そんな様子が愛おしくて、ジンはヒメノの耳元で優しく囁いた。
「三つのお願いに、有効期限は無いよ。ヒメの好きな時に使ってね」
大好きな相手が、自分を想ってくれているのが伝わって来る。更に、これまでになく甘い言葉だったのだ。
そんな甘い甘いジンの囁きに、ヒメノの顔は蕩けるように緩む。
だからこそ。ヒメノは、勇気を振り絞って、少し大胆に攻めてみる事にした。
「じゃあ……じゃあ、ジンさん」
顔を上げて、ヒメノはジンを見る。その頬は赤く染まって、瞳は潤んでいた。
「キス、して……下さい……」
その表情は不安げながら、期待感を滲ませた表情。蕾のような唇から紡ぎ出された、彼女の忍者の心を撃ち抜く言葉だった。
そんなヒメノのおねだりに、ジンは心を決める。いつか、そうなる日が来ると解っていた。それが、今日だっただけだ。
しかし、今日はヒメノを甘やかす。そう決めていたので、ジンはまたあの流れに持って行こうとする。
「ヒメ、それも……」
自分がしたい……そう言おうとしたジンの口に、ヒメノの人差し指が触れる。
「ダメです。これで、一回です……ね?」
そう言って、ジンに向かって真正面の立ち位置になる。ヒメノは唇を突き出し、潤んだ瞳を閉じる。
そんな愛しのお姫様を前にして、ジンは困惑した。
彼の名誉の為に言うが、この期に及んで怖気づいた……なんてヘタレ展開では無い。ならば、何故か?
――こ、これは指摘したほうが良いのかな?
……そう、ヒメノは全力で目を閉じていた。めちゃくちゃ力を込めているのである。
キスに備えて唇を尖らせているつもりなのだろうが、ちょっとデフォルメされたタコが頭に思い浮かぶ。更にその状態でプルプル震えるものだから、ファーストキスなのにコミカルシーンになってしまいそうだった。
「あー、えっと……ヒメ?」
力を抜いてね、と言おうとしたのだが、ヒメノさんは全力全開モードだった。
「はい! 来ますか!? キス、しますか!? ばっちこいですよ!!」
全力キス待ち態勢のヒメノさん。緊張と恥ずかしさが高まって、テンションがおかしな事になっている。
――ファーストキス、このまま行くべき?
ジン、真剣に悩み始める。キスをする事に悩むのは、本来こういう方向じゃないよな……なんて思考が逸れかけてしまう。
何とか軌道修正をかけ、ヒメノを見る。
――ヒメにとっても、キスはこれが初めて……だよね、この様子は。
それならば、ヒメノにとって最高の初めてにしてあげたい。ジンはそう心に決めて、ヒメノの頬に手を添える。
上手く出来るだろうか? そう思い……迷いを振り切る。
「ヒメ、力を抜いてごらん?」
「力ですか!? 抜きますか!?」
「うん、一度僕を見てごらん?」
プルプル震えてたヒメノは、ジンの言葉に従って目を開ける。そこには、優しく微笑むジンの顔があった。
「……緊張してるよね?」
「……はぃ」
照れて顔を俯かせるヒメノに、ジンは微笑む。
少し、一度リラックスした方が良いだろう。そう判断して、ジンはヒメノに優しく語り掛けた。
「ヒメ、右手貸して」
ジンがそう言うので、ヒメノは右手をジンへ差し出す。ジンはその手を優しく取ると、自分の左胸に押し当てた。
「ほら……実は、僕も超緊張してる」
「……私と同じですね……あ、私の心臓の音も聞きますか?」
「それはダメなやつ」
「……あっ、何でも言う事を聞く二回目という事で……」
「こらこら。節度あるお付き合い、ね?」
ジンに窘められ、ヒメノはムーッと唇を尖らせる。それくらいの尖らせ方が、キスをするには丁度良いだろう。
「ヒメ、顔をこっちに向けて?」
「……はい」
言われるがまま、ヒメノは顔を真っ直ぐジンに向ける。
「右手はそのままにしようか。そのまま少し上を向いてみて」
「こう……ですか?」
「うん、そう」
あとは、互いに目を閉じて顔を近付けるだけ。
「それじゃあ……ゆっくり目を閉じよう」
「ジンさんも、ですよね?」
「うん、勿論」
ヒメノの左頬に、ジンが手を添える。そのまま指で頬を撫でると、ヒメノが気持ち良さそうに目を細め……徐々にその瞳が閉じられていく。
「ジンさん……大好きです」
そう言って、完全に瞳を閉じるヒメノ。そんなヒメノが愛おしくて、ジンは顔を近付けながら返事をする。
「僕も……大好きだよ、ヒメ」
そして、ゆっくりと二人の距離が縮まり……重なった。
……
ジンとヒメノ……初めてを終えた二人は、身体を寄せ合っていた。その距離感は、これまでと比較にならない程に近い。
「ジンさん……キス、どうでしたか?」
「……めっちゃ柔らかかった……」
「ふふっ、私も……です」
初めてのキスは、二人にとって強く心に刻み込まれただろう。
ヒメノは幸せそうにふやけた微笑みを浮かべ、ジンから視線を逸らさずにいる。ジンもジンで、ヒメノを見つめながら抱き締める腕の力は緩まない。
「ジンさん、もっと……」
その言葉を口にしたヒメノは、これまでに無い色気を身に纏っている。可憐な少女は、ファーストキスを経て大人の女への一歩を踏み出していた。
そんなヒメノのおねだりに、ジンが抗えるはずもない。その頬に手を添えて、唇を寄せる。
目を閉じた二人の唇が重なる。感じられるのは触れ合う身体の温もりと、混じり合うかのような唇の感触。そして触れ合う唇から漏れる音だ。
そうして二度、三度と二人は唇を重ね、ログアウトの時間が来てしまう。
「……え、延長を……」
「当店はそういうシステムじゃありません」
ルールには厳しい、元・陸上界期待の新星。一時の感情に流され、そのまま堕落するジンではなかった。
「だから……続きは、明日ね」
いや、これ堕落したかも。色香を感じさせるヒメノの魅力と、キスという行為の魔力にヤラれているのではなかろうか。
「現実では……しますか?」
「うん、しようよ……生身のヒメの唇も、僕のものにしたい」
そう言って、ジンはヒメノの唇を奪う。いつになく積極的なジンに、ヒメノはなされるがままだ。
そのまま唇を重ねては、離して重ねる。
結局、いつもより五分程オーバーしてのログアウトになったのだった。
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ログアウト後、仁は自室に設えられたVRドライバーから起き上がる。すぐ側に用意していた杖を取ると、シートから身を起こしてベッドへ向かう。
そのままベッドに横たわると、徐に頭を抱えた。
――やっちまったあぁぁぁ!!
姫乃とのキスを反芻しては、照れ臭さに悶絶する仁。ベッドの上を転がっては、愛らしさと色気を身に纏った姫乃の姿が脳裏に蘇る。
唇の感触も、触れ合う温もりも、現実と遜色ないくらいにリアルだった。それらを思い返すと、気恥ずかしさから頬が熱を帯びていくのが解る。
――正直、理性を保つのに必死だよ……あんな可愛いくせに、ちょっと色っぽくて……反則だぁ……。
更に言えば、姫乃の身体付きも刺激が強い。中学生レベルとは思えない、発育の良いスタイル。そんな魅惑の肢体を持ちながら、顔立ちは可憐な美少女であり、性格も良い。
そんな少女が、自分の恋人なのだ。思春期の男子高校生である仁は、そっちについてもそれなりに興味もある。ただ彼の、鋼の自制心で本能を押さえ込んでいるだけで。
明日は、姫乃から現実でのキスをねだられるのでは無いだろうか。それを思うと、我慢するのが更に大変そうだと仁はまた悶える。
そのまま仁は中々寝付けず……姫乃の事を考えては、悶々とするのだった。
……
一方その頃、星波さん家の姫乃ちゃん。彼女も、最愛の彼氏同様にベッドで悶絶中だった。実に、実に似た者同士なカップルである。
――あぁぁ……!! しちゃったよ、しちゃったよぅ……!!
VR世界の中とはいえ、初めてのキスを捧げたのだ。いや、結局ログアウトまで何度もしたのだが。
ともあれ、年頃の少女にとっては重大な事件である。悶絶するのも無理はない。
思い起こされる、初めてのキス。仁への想いが溢れそうになる感覚。AWOの五感再現率が、それに拍車をかけた。感触も、吐息も、温もりもリアルだった。
脳が蕩けるのではないかというくらい、頭が真っ白になった。そんなファーストキスに、姫乃の中の乙女心に火が点いて……何度もおねだりをしてしまったのだ。
――ああぁぁ、私、もしかしてえっちな子なのかなぁ……!?
キスを求めるのがえっちな子ならば、思春期の男子など全員ドスケベになってしまうだろう。仁も英雄も、隼も例外ではない。ドスケベだらけだ。
更に姫乃が思い起こすのは、仁の言葉だ。全力キス待ちモードの自分を、優しくリードした時の仁の声。
いつも通りの優しさの中に、どことなく艶っぽさを感じさせる声だった。その上、彼のリードする言葉……そんな言葉に、自分が彼のものなのだと強く実感させられてしまったのだ。
あの時の姫乃は、仁の言葉に為すがままになっていった。あんな声でリードされたら、何だって言う事を聞いてしまいそうになる。
姫乃はベッドに横になるも、仁の事を思い出しては悶々としてしまい……寝付けたのは、更に一時間後であった。




