05-05 幕間・追跡者
俺は【聖光の騎士団】に所属するプレイヤーで、斥候役をしている【ヴェイン】という。
現在、我らが【聖光の騎士団】は、ギルドメンバーの増強を図っている。その為に、第一回イベントで活躍したプレイヤーをスカウトしているのだ。
斥候がスカウト……ふっ、意外と俺もジョークのセンスがあるのかもしれない。
さて……今回は[フロウド]サーバーの始まりの町で、イベント入賞者や有望そうなプレイヤーを探すとしよう。
……
ふーむ、やはりプレイヤーが増えているな。
先月行われた第一回イベント……この、始まりの町をモンスターの侵攻から守る防衛イベントがあった。あの時のプレイヤー達の活躍が、十五分程度の動画になっている。
恐らくはそれを見て始めたプレイヤーが多いのではないか? 俺はそう考えている。
動画にもよく映っていたのは、アークさんやギルバートさん、ライデンさんを始めとする【聖光の騎士団】のメンバー。それと、上位に入賞していたプレイヤー達だ。
その中でも特に目を引いたのが、やはり和服集団か。
あの集団には、以前は最前線のレイドパーティに参加していたレンさんとシオンさんが居た。彼女達は何故、最前線での攻略を放棄してまで、あの三人と行動を共にしているのだろう?
MMOというゲームはやはり、誰よりも先に最新エリアを攻略し、そこに存在するアイテムや装備を手に入れるのが王道だ。それが出来るのは、アークさんと俺達だけなのにな。
そんな事を考えていると、噴水広場に辿り着く。ここは初心者が初めて訪れる場所なので、初心者装備がやはり多い。
そう思っていると、一人の少年の言葉が耳に入って来た。
「ジン兄達が待っているッスからね。めっちゃ楽しみにしてたみたいッスよ」
……ジン、だと? それはもしかして、イベントランキング一位をアークさんから掻っ攫った、あのジンか?
「ふーむ……ねぇねぇ、ハヤテさん? ヒメノちゃん達ってどういうプレイヤーなの?」
見るからに初心者装備の四人組。しかし、ジンに続き聞き覚えのある名前が耳に入った。
ヒメノ……それは俺達が戦った南門で、猛威を振るった弓使いだ。ジンにヒメノ……まさか、こいつらは二人の知り合いなのか?
そう思っていると、彼等は歩き出す。その声に耳を傾けていると、四人のうち唯一の少年が言葉を続ける。
「先月あったイベントで、かなーり派手に活躍したんッスよ。俺はその時は、まだジン兄達とはゲームで出会って無かったんッス」
「私もそうなの。だからイベントの動画を見て、ヒメちゃんとレンちゃんに学校で声を掛けたのよね」
「あー、あの時かぁ」
「そういえば姫乃ちゃんと恋ちゃんが、お昼休みに出た事があったねぇ」
ジン……ヒメノ……更に、レン? 間違い無い、こいつらは和装の五人の仲間か。恐らくは現実での知り合いなのだろう。
俺は[フロウド]サーバーに居る【聖光】のメンバー全員に、メッセージを送る。
『イベント上位の、和装集団の情報を持つプレイヤーを発見した。[ギルト]サーバーのギルド本部への報告を頼む』
さぁて、それでは仕事をしよう……敏腕スカウトの俺としては、彼等がジン達と合流してからスカウトを一気に行うべきと考える。
さぁ、少年少女達よ……俺を彼等の下へ案内してくれたまえ。
まーた【聖光】かよ! と思った方!
また【聖光】です!
前話のラストを見て、マリウスかと思った方が多かったです。
期待(?)させて済みません!
まぁ、彼にはちゃんと活躍の場を用意しておりますので、しばしお待ちくださいませ!
次回投稿予定日:2020/8/22




