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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二十章 第四エリアを目指しました

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20-31 甘やかしました

ここの所、攻略続きで糖分足りてなかったでしょう?

っ【極糖警報】

 ギルド【天使の抱擁】と共闘した後、ジンはマイルームのベッドの上に座っていた……胡坐をかいたその上に腰を下ろした、可愛らしいお嫁様を抱き締め撫でながら。

「むっすー」

「……口で言うんだね、それ」

 何故、このような事態になったのか? それは三十分程、時間を遡る。


************************************************************


 まずギルド【天使の抱擁】は結局、翌日【十人十色ヴェリアスカラー】と一緒に西側第三エリアボス討伐に参加することを了承した。厳密に言うと、折れたのだ。

 理由は単純で、【十人十色(ヴェリアスカラー)】側がそれを歓迎している事。ギルドマスターであるアンヘルが、やけに乗り気な事。そして、その場に居ないが事情は知らされていた【桃園の誓い】から、メッセージが入った事だ。


 既にエリアボス討伐前の段階で、シオンから【天使の抱擁】パーティとレイドパーティを組む事……その中に、元・ドラグことヴィクト=コンが居る事が伝えられた。そしてエリアボス戦の後にメッセージを見れば、こんなメッセージが入っていた。

『ドラグの確保と、【天使の抱擁】の引き留めを宜しく』

 それを知らされた【天使の抱擁】とドラグは折れる以外の選択肢が無く、翌日の夜に現地で合流する予定となったのだった。


 尚、ダンジョンに入る為の≪領主の許可証≫は、【十人十色ヴェリアスカラー】側には余裕がある。そこで【十人十色(ヴェリアスカラー)】と【天使の抱擁】で、一名ずつメンバーを交換してパーティを組む事になった。

 これは≪領主の許可証≫が、他人に譲渡する事が出来ないアイテムだからである。代わりにこのアイテムは見張りの兵士には提示するだけなので、消費する事はない。

 クラン外のプレイヤーとパーティを組む事で、パーティ上限は八人になる。つまり戦力となるPACパックを二人外す事になってしまう。これも承知の上で、ジン達は【天使の抱擁】とレイドパーティを組む事を選択していた。

 交代要員を誰にするか話し合った結果、ユージンが【天使の抱擁】パーティに同行する事に決定。代わりに【天使の抱擁】側から一名……勝ち抜けジャンケンの結果、ソラネコが【十人十色ヴェリアスカラー】側に入る事で決定した。


 ちなみに他のレイドパーティ……【桃園の誓い】と【ラピュセル】、そしてリリィ・コヨミ・ネコヒメによるレイドパーティと、【忍者ふぁんくらぶ】統一レイドパーティはまだ攻略中らしい。

 どちらにせよ報告会は明日の夜と取り決めているので、ジン達はそのまま自由時間になったのだ。


 さて、ここで問題です。

 Q.ヒメノさんの笑顔から、妙に圧を感じるのは何故でしょうか?

 A.ご機嫌斜めだから。


 ジンとアンヘルの会話そのものを聞いた訳ではないだろうが、何があったのかはおおよそ察したらしい。げに恐ろしきは、女の勘か。

 【天使の抱擁】を交えて会話をしている間も、ヒメノの表情は笑顔であった。だがそれは、普段のそれとは全く異なるものだった。

 貼り付けた様な笑顔を浮かべ、話を振られなければ何も自分からは言葉を発しない。この時点で、彼女を良く知る者からすれば「あぁ、これはおこだな」と察するのは容易だった。

 ちなみに最も彼女を良く知る三人……ジンとヒイロ、そしてレンは「激おこぷんぷん丸だぁ……」と戦々恐々としていた。特に、ジンは。


 そんな訳でジンは、自由行動になったら即座にヒメノを伴ってマイルームへ直行。流石に今回はリンとヒナにも遠慮して貰い、ヒメノと二人だけの状態にした。

 目的は勿論、事情の説明と御機嫌取りの為である。


************************************************************


「という感じで、アンヘルさんからは好意を感じさせる言葉を言われたけれど、友人枠であれば受け入れると伝えたよ。彼女の治療の事を考慮して、突き放す事が出来なかったのは申し訳ないけれど」

 ジンはアンヘルと二人で会話した時の事を、包み隠す事無くヒメノに明かす。

 伏せておきたい事など無いし、ヒメノに顔向けできない様な事は何も無い。なので婚約者でありお嫁様である彼女には、しっかりと自分の口から説明するべきだと思ったのだ。


 そんなジンの弁明を聞いたヒメノの対応は、まだご機嫌斜めであった。ご機嫌斜めなのだが、マイルームに入った直後とは態度が異なっている。

 ヒメノは最初からジンに対して本気で怒っていたり、拗ねたりしている訳ではないのだろう。そうでなければ彼に包まれる様に座ったり、抱き締められたり撫でられたりする事もないはずだ。

 逆に彼女はジンの胸元に自分の頭を擦り寄せて、マーキングでもするかの様に擦り付けている。


――これはやっぱり、「少し不安になったから、甘やかして欲しい」っていうアピールなんだろうな。


 他人の心の機微に聡いジンは、ヒメノは今無性に甘えたい心境なのだろうと察していた。故にいつもより積極的にヒメノを抱き締めて、その艶のあるサラサラの髪を丁寧に撫でる。

「解ってくれているのは承知の上で、あえて言うよ。僕が姫以外に目を向ける事は、絶対に無い」

「……知ってます」

「こうして抱き締めるのも、撫でるのも姫だけ」

「……解ってます」

「愛しているのは、姫だけだよ」

「……私も、愛しています」


 ジンは言葉を尽くして、態度で示して、彼女の不満や不安を一つ一つ解消していく。

 面倒だとか、重いだなんて気持ちは微塵も浮かびはしない。彼女が機嫌を損ねているのは、自分を愛しているが故と理解しているから。

 だからジンにしてみれば、こうして彼女を甘やかす事は苦でも何でもないのだ。


 ヒメノもヒメノで、ジンが自分に対してマイナス方面の感想を抱いていないと確信している。それは彼の性格や人柄を、よく理解しているからだ。

 そうしてジンの愛情を確かめる事が出来れば、自身を省みる余裕が戻って来る。自分が不満や不安を抱いたのは、どうしてなのだろうか? と。

 そうしてまず気が付いたのは、()()()()()()()()()という事実だった。


「私とジンくんが、出会ってから……私以外に、ジンくんに想いを伝えた人は……初めて、ですよね?」

 ヒメノの発した問い掛けに、ジンは一瞬言葉に詰まる。だが自分の感情と折り合いを付けたのだろう、彼女の声は責める様なものではなかったし、純粋に感じたことを口にしただけのものだと解った。

「あー……考えてみれば、うん。確かに、そうだね」

 であるならば、この場合の正解は素直に答える事だろう……もとより、嘘を吐いたり誤魔化す気は無かったが。


 ヒメノも知っている、カノンの初恋事情。これについては、ジンは知らない事だ。

 彼女は想いを伝えなかったし、伝える気も無かったのだから無理もない。それでもヒメノに自分の気持ちを打ち明け、ミモリにも打ち明ける事が出来た。それで、彼女的には十分だったのだろう。

 そんな彼女も、現在はクベラという素晴らしいパートナーに恵まれたので、ヒメノとしても良かったという気持ちでいっぱいである。


 また、【忍者ふぁんくらぶ】のアレは……そのギルド名の通り、ファン心理のそれでしかないだろう。恋愛感情に基く好意とは、また別のモノだ。

 ちなみに重さで言えば良い勝負かもしれないが、ヒメノが心配する様な展開にはならないだろう。


 根津さんに関しては、想いを伝えるに至っていない。ジンの認識範囲外で好意を寄せていて、学園祭でそれが表面化しかけたが……その後、浄化に至っている。

 今ではジンとヒメノの行く末を見守るつもりらしいので、ノーカウントだろう……多分。


 ちなみに実を言うと、ジンは中学時代に何度か告白をされた事がある。しかし初めての恋人がヒメノだったことを考えると、結果は推して知るべしだ。

 理由としては、夢を優先していた事に加え……ジンの陸上の成績を知って、その知名度目当てで擦り寄る女子ばかりだったのだ。

 そんな理由もあってその女子達と交際するには至らず、全てお断りするという結果に落ち着いていた。

 高校に入る頃には事故の影響で塞ぎ込んでいた為、告白される様な事は無かった。


 だから少なくともヒメノが知る限りでは、ジンに明確な好意を伝えた女性はアンヘルが初めてだった。だからこそ、ヒメノも初めて感じる不快感に心を搔き乱されたのだろう。

「私は、ジンくんを信頼しています。ジンくんが、私だけを見ていてくれるって信じてます……それでも、他の女性ひとがジンくんに好意を伝えたのは……なんか、嫌です」

「うん、多分僕も同じ事があれば、同じ様に感じると思う」


 ヒメノの言葉に同意を示して、ジンは彼女の髪を撫でる。しかしそれでも、ヒメノの表情はまだ曇っていた。それは、他にも嫌だと感じた事があったからだ。

「……はい。それに……ジンくんが、()()()のも嫌です」

「……」

 ヒメノの知る限り、ジンは誰よりも優しく、そして誠実な少年だ。そんな彼が、自分に好意を寄せられたらどうするか? 間違いなく、相手の想いに応えられないと伝えるのは間違いない。それは、ヒメノを愛しているが故だ。

 相手の想いを受け入れられず、断るのは確定事項だとして……それで終わらせられる者もいれば、それでは終わらせられない者もいる。そしてジンの性格を考えれば、彼は後者に該当するはずだ。


「ジンくんは……告白を断る時に、仕方が無いって割り切れないですよね?」

「……まぁね。お見通しだったんだ?」

「……ジンくんの事ですから、解りますよ」

 相手の好意に対しては、ありがたいし嬉しいと思うだろう。告白を断らなくてはならない事に、彼はきっと申し訳ないと感じるだろう。

 それでも、受け入れるという選択肢はない。


 それも仕方の無い事と、割り切ってしまえれば良いのだろう。だが、そう上手くは出来ない人間も居るのだ。そしてそういった人間は、意識せずに相手の心情を慮ったり、気遣ったりする事が出来る……つまり、常日頃から相手を気に掛ける事が出来るタイプの人間だ。

 間違いなくジンは、そういった人間だろう……だからこそ、彼は人の心の機微に聡いのだ。

 だからこそ、表面上は笑顔でいても……心の中では、相手の想いに応える事が出来なかった自分を責めている。それが、ヒメノには解るのだ。


 自分という婚約者がいるのに、ジンに言い寄られるのが嫌だった。

 ジンの愛情は自分に向けられているのだから、そこに割り込もうとされるのが嫌だった。

 その相手の事を、ほんの少しでもジンが思い遣る事が嫌だった。

 そして何よりも……相手の想いを受け入れられない事で、ジンが自分を責める事が嫌だった。

 だから、こんなにも胸がざわつくのだろう……冷静になれたヒメノは、そんな自分の本心に気付く事が出来た。


 そこまで考えが至れば、あとは簡単な事だった。まずは不機嫌そうな態度で振り回したジンに、お詫びと愛情の気持ちを伝えるのだ。

「えいっ」

 ヒメノは振り返って、両腕をジンの首元に回す。そして目を丸くしているジンの唇を目掛けて、自分の唇を近付けていく。

 唐突なヒメノの行動に驚いていたジンは、その不意打ちに反応する事は出来なかった。そのまま二人の距離は縮まって、すぐにゼロに到達する。


 当然、ジンはヒメノの行動に驚きを感じずにはいられなかった。触れ合う唇の柔らかな感触に……ではない。ヒメノが、率先してそうした事にである。

 いつもならばおねだりをされて、ジンの方からキスをする事が多い。つまり、ヒメノの方から口付けるのは珍しいのだ。

 そしてそういった場合、ヒメノは受け入れる傾向が強い。だからジンの首に手を回して、離さないぞと言わんばかりにホールドするのはこれが初めてだった。

 しかも先程までは後ろ抱っこ状態だったが、ヒメノはジンの太腿に跨るようにして接近した。この体勢も、これまでした事のない大胆な体勢である。流石に視覚的かつ感触的にも、高校一年生の少年には刺激が強いものであった。


――それだけ、姫も不安だったのかな。


 いつになく積極的なヒメノからのキスに、最初こそジンは驚いたが……すぐに彼女の想いに応えて、その不安や不満を払拭しようと応じて受け入れた。

 薄紅色の唇がジンの唇に堪能する様に吸い付くので、お返しとばかりにヒメノの唇に食む様に吸い付く。

 ジンからのアクションがあった事で、ヒメノの身体が微かに揺れた。しかしそのまま彼女は、ジンに委ねる様に体重を預けて来る。


――うっ……やっぱり、この体勢は……ヤバい。


 そうするとヒメノの柔らかな部分の感触が、更にジンの触覚を刺激して来る事になる。これが現実であったならば、流石のジンでも健全な男子高校生としての反応が生じていただろう。

 その感触を遠ざける事は出来ないが、開き直って堪能する事も真面目な彼には出来ない。そうなるとジンに出来るのは、その感触を思考から追い出す様にキスに集中する事だけだった。


 しばらく唇を重ね合わせていると、ジンの首に回された腕からは力が抜けていた。今ではもう、ジンの首元に添える様に触れているだけだ。

 最初はヒメノの方が積極的だったが、ジンがそれに応じて返し始めたらすぐに、主導権がジンに移っていた。どうやらヒメノは自分からするのも好きだが、ジンにされる方が何倍も好きらしい。

 VRだから息が続くが、これが現実であれば二人は息が切れていたかもしれない。それくらい、二人が交わしていたキスは深いものだった。

 無論、深いとは言ってもキスの種類……所謂、ディープキスという訳では無い。触れ合う唇に込められた感情と、相手を求める気持ちが深かったのだ。


 やがてどちらともなく、触れ合っていた唇が離れる。

 ジンの上に跨る様な体勢である為、普段とは異なりジンの顔より高い位置にヒメノの顔がある。その瞳は潤みながらもとろんとしていて、その頬は少しばかり季節を先取りした桜色に色付いている。

 中学二年生が持っていい色気では無いな、なんて頭の隅で考えながら、ジンはヒメノの表情を伺った。

 見た限りでは、ヒメノは既にジンとの触れ合いで幸福感に包まれている様に思える。


――激おこモードでは無さそうなので、一安心……かな。


 しかし、それでもちゃんと確認はするべきだ。まだ心の中に溜まっているものがあるならば、吐き出してしまった方が良いだろう。そう考えて、ジンはヒメノに問い掛けた。

「不安や不満は、まだ残っている?」

 とろける様な顔をしたヒメノの頬に手を添えて、お伺いを立てる。その掌を受け入れながら、彼女はジンに問い掛けた。

「残っているって言ったら……どうしますか?」


 あぁ、これなら大丈夫そうだな……という確信が得られて、ジンの心にも余裕が戻って来る。フッと笑みを浮かべて、ヒメノの耳元に顔を寄せて囁いた。

「まだ足りないなら……ログアウト時間ギリギリまで、甘やかしまくるよ?」

 迷う事無くそう言い切れば、ヒメノの口元がふにゃりと緩んだ。

「ふふっ……嬉しいですけど、ドロドロに溶けてスライムみたいになりそうです」

「それは随分と、STRが高そうなスライムだね」

「ジンくんの場合は、AGIが高そうです」

 冗談を言い合って、二人は抱き締め合う。もう蟠りは一切なく、残っているのは互いへの信頼と愛情だけだ。


 ジンの愛情を確かめられた事で、ヒメノの機嫌はすっかり直ったらしい。少しだけ身体を離して、真っ直ぐにジンと向き合った。

「ジンくん。私はジンくんが、とても素敵な人だと知っています」

「最高レベルに素敵な女の子にそう言われると、素直に嬉しいね」

 あまりにも真剣な表情で言うものだから、ジンも謙遜して「それ程でもないよ」とは言えなかった。

 それはそれとして、ジンからしてみればヒメノの方こそ最高で素晴らしい相手だと思っている。なので、その点についてはストレートに伝えておく。

 そんなジンの返答にクスッと微笑んだヒメノだが、すぐに表情を引き締め直す。


「だから、むしろ遅かった方なのかもしれません……ジンくんが直接、誰かに好意を伝えられるの」

 どうやらヒメノ的には、ジンが他の女の子からいつ告白されてもおかしくない……と考えていたらしい。

「うん……ちなみに参考までになんだけど、告白されないという可能性は?」

「考慮しないものとします。正直に言うと、その可能性は最初から考えていなかったです。思っていたより、心が乱れてしまいましたけど……告白されること自体は、全然不思議には思いません」

 力強い断言に、ジンは苦笑する。本人からしてみれば、悪くも無いが飛び抜けて良くも無いという自己評価だったりするのだ。


 しかしながら、実際にジンは容姿良し・性格良し・実力良しの三拍子が揃っている少年だ。ついでに言うと、運もべらぼうに良い。

 唯一の懸念点は右足の後遺症だが、それで彼の魅力が損なわれる事は無い。むしろ陸上一辺倒だった彼が足を止めた事で、見えなかったものが見える様になり視野が広がった……という見方も出来る。

 つまるところ、一般的に考えてもジンは優良物件という評価になる少年なのである。


「ジンくんは目移りしたりしないし、誰かに奪われたりするとは思ってなくて……私を裏切ったりしないし、大切にしてくれるって解っています」

「うん、勿論」

 確信めいたその言葉に、ジンは心の奥底から温かな感覚が湧いて来るのを感じる。

 ヒメノの強い信頼はとても嬉しいものだし、自分自身そうであり続けるという決意を抱いているからだ。自分の決意はヒメノにも伝わっていて、彼女はそれを信じてくれている。それは何よりも、ジンにとって嬉しい事であった。


「でも、なんだか……嫌でした。私の旦那様なのにって、思ってしまいました」

「……うん、無理もないよ」

 それも、理解出来る事だ。そう考えたジンは、ヒメノが吐露した心情に同意を示す。

 自分だって誰かがヒメノに言い寄っていたら、不快に思うし遠ざけたいと感じるだろう。彼女は自分の婚約者で、お嫁さんだ。彼女の隣は自分の特等席であり、既に売約済みである。

 互いにそう思っているからこそ、自分達の間に誰かが割り込む事を許容する事は出来ない。その想いは、ちゃんと一致している。


 自分も同じ気持ちだと、しっかり伝えよう……そう思って口を開きかけたが、その前にヒメノの言葉が紡ぎ出された。

「ジンくんが素敵な人だっていう事に気が付いても、もう遅いです。絶対に、この場所は譲りません。ジンくんの腕の中は、私の居場所です」

 それはハッキリとした、迷いのない言葉。彼女にしては珍しい、強固な意志を感じさせるものだった。

「ジンくんのお嫁さんは、私です。だから、誰が相手でも……絶対に、負けません」

 そう言ってヒメノは、ジンを強く抱き締める。アンヘルだけではなく、他の誰が来ても負けない……そんな、強い決意を込めて。


 そんな最愛の少女の言葉に、ジンはフッと微笑んだ。

 いつになく力強く、これまでにない情熱的な決意の言葉。それがむず痒くてくすぐったいが……しかし、それだけ想われているという事に、強い喜びを覚える。

 だがもう少しだけ、彼女の肩の力を抜いた方が良いだろう……そう考えて、ある例外条件を認めて貰える様にお願いする事にした。


「それは嬉しいんだけど……姫? 僕と姫の間に生まれた子には、ちゃんと手加減してあげてね」

 自分達の子供であれば、抱き締めて甘やかしても良いだろう? ジンのそんな言葉を耳にしたヒメノは、一瞬何を言われたのだろうかとポカンとして……すぐにその意味に気が付いて、顔を真っ赤に染め上げるのだった。

ジンくんがヒメノちゃんをひたすら甘やかす回です。

この夫婦の間に挟まれるのは、二人の子供だけでしょうね(満面の笑み)

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― 新着の感想 ―
あま…あま…。 そして流石のジンさん、カウンターが鋭いw
おかしいな? コーヒー豆倍量のエスプレッソ飲んだのに口の中が甘ったるいでござる?
先生ぇ〜コンは子供に含まれますか?(バナナはオヤツに的に)w
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