20-28 思い掛けない遭遇でした
北側第三エリアの海岸付近に入口がある、エリアボスが待ち受けているダンジョン[エルティア海底洞窟]。
このダンジョンはクラン【開拓者の精神】が既に攻略を完了し、その情報は【アナザーワールド・オンライン】公式サイトの掲示板に公開済みである。
そこを訪れた【七色の橋】【魔弾の射手】とフリーランスのプレイヤー、ユージン・ケリィ・クベラ。
攻略開始から一時間半が経過した頃合い、現実世界では二十二時に近い時間。彼等は既にダンジョンの攻略を進め、既に中層の終盤を進んでいる所だった。
その攻略速度は、順調と言って差し支えないものである。やはり攻略情報を事前に得られている事が、大きな要因だろう。手探りで進んだり、モンスターの挙動を検証しなくていいのは大きい。
そして順調にダンジョンを進んでいたジン達は、難なくボス部屋の前に到達していた。
「無事にボス部屋まで来られたでゴザルな。ここで他のパーティを待ちつつ、小休止といくでゴザル」
「そうですね! それにしても、私達以外も居るのかなと思っていたんですけど……居ないみたいですね?」
ヒメノが言う『私達以外』とは、クラン外のプレイヤー達……つまり、別の勢力のプレイヤー達の事だ。
昨夜の内に公開された、ダンジョンとエリアボスの情報。それを見たプレイヤー達のエリアボス攻略は、加速するのではないかと言うのが【十人十色】の予想だった。場合によっては、ボス部屋の前で他のパーティと鉢合わせする可能性も考慮していたのだ。
「ヒメノちゃんの予想は、確かに私達も考えていたけれど……恐らく理由は、北側第三エリアの環境だと思うわ」
「環境……ですか?」
「そう。ほら、この地方って寒冷ダメージがあるでしょ?」
氷雪都市[アイザン]から始まり、広大な雪原や険しい雪山……更には氷河の上を移動するマップ等、北側の第三エリアは環境的に厳しいマップとなっている。
その上、街の外……つまりフィールドマップにおいては、寒冷ダメージを受けるデメリット付き。それを防ぐには、寒冷ダメージ対策アイテム≪火竜の溜息≫を購入する以外の手段がないとされている。
「つまり手間も掛かるしゴールドコインも掛かるから、後回しになりがちなんでしょうね」
「成程、≪火竜の溜息≫も安くは無いですしね……」
「そう言われると、納得ですね。でも前から気になっていたんですけど、≪火竜の溜息≫ってもしかして……?」
「あー、サラマンダーの……溜息……?」
ヒメノとネオンが顔を見合わせ、苦笑を浮かべるが……火の精霊に遭ったプレイヤーならば、同じ考えに至ってしまうだろう。火竜と言われて思い出されるのは、[精霊郷]に居る火の精霊・サラマンダーだ。もしかしたらNPCの何者かが[精霊郷]に赴き、サラマンダーの溜息を集めて瓶に詰め販売しているのだろうか? なんて考えが浮かんでしまうのも無理はあるまい。
それはさておき、ジン達は小休止に入る事にした。二回目という事もあり、特に相談や確認をする事も無く腰を下ろして回復に努める。
そんなこんなで数分が経過した頃に、小部屋に他のパーティが転送されて来た様だ。
「おっ、今回もジン達が一番か」
「お待たせしました、皆さん。お疲れ様です」
ヒイロとレンがそう言って笑みを浮かべれば、ジン達もそれを出迎える。
「お疲れ様でゴザル、皆。拙者達も、つい先程着いたばかりでゴザルよ」
ジン達がそう言ってスペースを開けると、ヒイロ達はそれに応える様に腰を下ろす。
「そっちも順調だったみたいだね? こっちはヒイロ君とシオンさんの前衛と、レンちゃんの後方支援はヤバかったね」
「安定感が半端じゃなかったよ」
「……安心感の、塊」
レーナやトーマ、メイリアがそう言うと、ヒイロは照れ臭そうに……レンはお淑やかに微笑み、シオンはいつも通りの澄まし顔で応じる。
「こちらこそ、皆様のお陰で安定して進んで来られたと思います」
「お嬢様の仰る通りです。遠距離も近距離も対応頂けたので、私も盾役に専念出来ました」
やはり前日とメンバーを変える事で、仲間内でも交流が活発化するという目論見は成功した様だ。ビィトやクラウドも、ヒイロと肩の力を抜いて談笑している。
そうこうしていると、また一組のパーティが転送されて来た。
「あら、皆! お待たせー!」
「わ、私達が……三番手……だったの、かな……?」
ミモリとカノン、ヒビキ・センヤに加え、ユージン・ケリィ・クベラのフリーランス組で編成したパーティだ。やはり全員がいつも通りの様子で、大して苦戦をした様子は見受けられない。
「お疲れ様です。その様子だと、楽勝だったみたいですね?」
ヒイロが笑みと共に問い掛けると、ユージンが良い笑顔で頷いてみせる。
「特にヒビキ君が頑張ってくれてね、心強い盾役っぷりだったよ」
「そ、そんな! 僕なんて、まだまだで……」
「そんな謙遜せんでええで、ヒビキ君? 数が多い上層の敵はまとめて引き付けてもろたし、更に強い中層の敵にも一歩も引かんかったやろ。格好良かったで!」
「クベラさんの仰る通りですね、お陰で私とセンヤさんが攻撃しやすかったですよ」
皆に褒められて、照れ臭そうにするヒビキ。それを見て、ジン達も笑みを浮かべる。
本人は自己評価が低いようだが、トップギルドの一員は伊達ではない。ジン達に付き合って数々の強敵と戦って来た経験もあり、ヒビキの成長は著しい。勿論これは、センヤやネオンにも言える事だが。
その防御力は並の盾職より強固で、格闘ではそこらの格闘プレイヤーより鋭く重い。十二分に、戦力として頼れる存在になっているのである。
……
ジン達がしばらく待っていると、また一組のパーティが転送されて来た。それがハヤテ達のパーティだと思ったジン達は、これでレイドパーティが揃った……と思ったのだが、そこに居たのは身内ではないパーティだった。
そのパーティは皆、装備も年齢層も統一感は感じられない八人組。その内二人だけが、黒い衣装と目元を覆う仮面でお揃い感があるのだが……それが、逆に怪しげな雰囲気を醸し出している。
そんな八人はジン達の姿を見て、どこか戸惑った様子だった。恐らくこの不人気マップのダンジョンで、他のパーティとそうそう出会う事は無いと思っていたのだろう。
逆にジンからしてみれば、その八人の内数名とは顔見知り……否、既にフレンド登録を済ませたのだから、フレンドと称して良いはずだ。そう考えて、ジンは立ち上がった。
「【天使の抱擁】の方々! 奇遇でゴザルな、ここでお会い出来るとは!」
ジンが腰を上げれば、彼に寄り添うように腰を下ろしていたヒメノもそれに倣う。彼女も先日、【天使の抱擁】の面々と出会いフレンド登録を交わしている。だからこそ、自分も一緒に彼等を出迎えようと考えたのだろう。
「あ、あぁ……本当に、奇遇……だね……?」
「あはは……まさかここで、君達に会うなんて……ねぇ……?」
ハイドやソラネコがそう言ってジン達に応えるが、その態度はどこかぎこちないものである。その様子に、ジンは内心で「おや?」と首を傾げた。
つい三日前に会った時、最後には笑顔で談笑できるくらいには打ち解けていた。その時から今日に至るまでに、何か変化があったのだろうか? と考えて、すぐに前回と異なる要素に気が付く。
パーティメンバーなのであろう、黒い衣装の二人組。顔をマスクで隠した、一組の男女……三日前に会った時に、この二人はいなかったのだ。
女性の方はそれなりの長身で、スラリと長い手足とメリハリのあるボディラインが目を引く。栗色の長い髪は一目見ただけで、上質な絹糸の様にサラサラなのが分かる。その腰に差した細剣から、遊撃向きの前衛職だろうか。
男性も整えられた黒髪と、長身細身ながらしっかりとした体格の青年だ。背負っているのは戦斧だが、デザインから第三エリアのNPCショップで購入できる店売りの品らしい。
そしてやはり目を引くのは何よりも、目元を隠すその仮面だ。
「……ハイド?」
女性の方がハイドに声を掛けると、ハイドは何とも言いにくそうな表情で振り返る。
「あー、アンヘルさん……? 一旦、ここは俺に任せて貰っても……良い、かなぁ……?」
「そう、解ったわ。ヴィクト、良いのよね?」
「……あぁ」
そんな短いやり取りだったが、ジンには今がどういう状況なのかが解った。そして同時に、ハイド達の態度の理由についても察する事が出来た。
──だって、声に聞き覚えがあるし……。
そこでジンは、ヒイロ達に視線を向ける。ヒイロもレンも、ジン同様に事情を察した様子である。
――気持ちは解らないでもないけど、このまま知らないフリをして行くと居た堪れないよね?
――そうだね、地獄だね。
――おいたわしい空気感ですし、何とかしてしまいましょう。
恒例の視線による会話で、大方針は決まったらしい。シオンやミモリ、カノンはその様子に首を縦に振ってみせる。センヤ・ネオン・ヒビキ・ナタクに至っては、賛成の意を示す様に拳を軽く握ってみせた。
「皆さん、ちょっと失礼」
「えぇ、大丈夫よ」
「僕達にはお構いなく」
ヒイロが【魔弾の射手】やユージン達に声を掛けて、そして彼等は立ち上がってジンやヒメノの側に歩み寄る。ジンやヒメノに丸投げするのではなく、共に話をしようという事だろう。
「ジンくん」
ヒメノはジンに軽く寄り添って、ふにゃりと微笑みかける。混じり気の無いその笑顔には、安心して欲しいと言わんばかりだった。
「ん、そうでゴザルな」
ともあれ、あちら側としては気まずいのかもしれないが……ジン達としては、察していながら気付かないフリをする方が尚更気まずい。それならさっさと、腹を割って話せるようにした方が良いだろう。
そもそも仮面プレイヤーの片割れは、赤の他人という訳でも無い。様々な事があったのは事実だが、それについて蒸し返す様な事をするつもりもない。
という事でギルドの代表として、まずはヒイロが話を切り出した。
「あー、ハイドさん。あまり回りくどいのはお互いの為にならないと思うので、手短に確認なのですが……そちらの女性は、あなた方のギルドマスターであるアンジェリカさん……そして、そちらの男性はかつて【桃園の誓い】に所属していたドラグさんではありませんか?」
ザ・単刀直入。ジャブやフックは必要ないとばかりに放たれた、ストレートパンチを思わせるド直球の言葉である。
その問い掛けでハイド達は言葉に詰まり、ヴィクトの肩がビクッと跳ねた。唯一平然としているのは、取り合えず大人しくしていようと言わんばかりのアンヘルだけである。
そして、そんな彼等の背後から近付く一団も居た。
「あー、えーと……どういう展開ッスか、これ?」
あまりに気まずい雰囲気で向き合っていたせいか、到着に気付かれなかったハヤテパーティの面々。意図せず、挟み討ち状態になってしまったのはご愛敬である。討たないけど。
ちなみに今回のハヤテパーティは、何となく状況を察しているハヤテとアイネ。何か微妙な雰囲気を察しているジェミーとディーゴに、現実での立場故におおよその事態を把握しているカイル・アクア・アウス。そしてスパイ騒動より後にAWOに参加した為、またしても何も知らないイカヅチ(16)という内訳である。
期せずして【七色の橋】フルメンバーに挟まれてしまった【天使の抱擁】の面々は、沈痛な面持ちで肩を落としている。思い掛けない遭遇によって、お通夜ムードに突入した様だ。
「年貢の納め時……かしらね? どうする、ハイドさん?」
「うっ……そう、だな……誤魔化し様は無いんだろうけど……ええと、アンヘルさん? どうしますか」
「うん? うん、そうだね……どうしたら良いと思う、ヴィクト?」
「あのさ……俺に判断を委ねるのは、一番ダメだと思うんだ」
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結局その場で、【七色の橋】と【天使の抱擁】が向き合って話をするという事になった。
まず最初に口火を切るのは、観念した様子の青年……ヴィクト=コンこと元・ドラグである。仮面を外した彼の素顔は、ドラグだった頃の面影が残っていた。目や髪の色と、髪型……それに服装などしか、変えていないのだろう。
そんなヴィクトだったが、まず彼がした事。それは……。
「その節は自分の愚かさで、【七色の橋】を始めとする皆様に多くのご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございませんでした!!」
初手、全身全霊を込めた謝罪と土下座だった。地面に額を擦り付けるその姿に、ジン達は何とも言えない顔だ。
ちなみにアンヘル以外の【天使の抱擁】の面々は、そんなヴィクトに冷ややかな視線を向けている。その様子から彼がパーティに同行するのは許可しても、快くは思っていないのだろう事が推測出来た。
そんな中、またしても何も知らないイカヅチは、首を傾げるしかない。
「おい、話が全く見えねぇんだけど……この兄ちゃん何で土下座してんだ?」
「後で教えてやるから、大人しく待ってるッスよ」
「あぁ? ガキ扱いしてんじゃねぇぞ、クソガキが」
ついついいつものコントに入ってしまう二人だが、今はそういう空気が許される場ではない。という訳で、ミモリのお姉ちゃんスイッチがオン。
「ハヤテ君、イカヅチ君……静かに。真剣に謝罪している人の前で、ふざけるのは人としてダメよ」
「「……はい、ごめんなさい」」
ミモリに頭が上がらない二人は、強めのお叱りに大人しくなってしまう。
いい加減に、この暗い雰囲気を払拭したい。そう考えたジンは、ヴィクトに向けて何と声を掛けるべきかと思考を巡らせ……そして、ある事について質問してみる。
「そういえば、ドラグ殿……いや、ヴィクト殿と呼ぶべきでゴザルな。もしかして、そのアバターは転生でゴザルか?」
「……っ!! 君の言う通りだ、ジン君……本来は他のスパイ達と同様に、俺もAWOから追放されるべきだったが……【ユートピア・クリエイティブ】から、条件付きで転生を許可されたんだ」
「条件……? というかヴィクト殿、喋りにくいでゴザろう? 顔を上げて欲しいでゴザルよ」
ジンがそう促すので、ヴィクトは立ち上がらないものの、ようやく顔を上げる。
「済まないが、その条件は俺の口から話せる内容ではない。俺自身の事に関してなら、いくらでも話せるが……」
申し訳なさそうに顔を歪ませながら、また頭を下げそうな雰囲気のヴィクト。すると、その横に立った女性が口を開く。
「それなら、私が話せばいいよね。ヴィクトは私の治療の為に、一緒に居てくれてるんだよ」
『アンヘル(さん)!?』
アンヘルの言葉に、ヴィクトや【天使の抱擁】の全員が慌てふためく。それはアンヘル……アンジェリカの真相に深く触れる事情であると同時に、彼女の人生そのものを狂わされた忌むべき話に繋がるのだ。
が、ここで両者の話に割って入る、一人の女性。
「ストップ……それ以上は、話すべきではないわ」
そう言って二つのギルドの間に入るのは、【魔弾の射手】のアクアである。その側に、カイルとアウスも立っていた。
「はぁ……旦那様、連絡はどう?」
「あぁ、予想通りだ。俺は一時離脱して、指示を出して来る。十分以内には戻るから、それまでアバターを頼む」
「解りました。アンヘルとヴィクト=コンの二名、そして【天使の抱擁】の人達はこのままここに残って」
有無を言わさぬアクアの様子に、【天使の抱擁】の面々……そしてアンヘルとヴィクトは、思わず「はい!」と肯定の返事を返す。それ程までに、アクアの発する圧が強かった。
「各ギルドの年長者として、シオンとクラウドさんとビィトさん……それと、ユージン様とケリィ様にも残って貰います。宜しいかしら?」
システム・ウィンドウを操作して一次離脱するカイルを見つつ、アクアは矢継ぎ早に指示を出していく。
「かしこまりました、アクア先輩」
「ふむ、了解した」
「俺も良いぜ、アクアちゃんがそう言うなら重要な事だろうしな」
「ふむ、僕も勿論構わないよ」
「アクアちゃんがそう言うのでしたら、そうしましょうか」
アクアが名前を呼んだ身内の面々に視線を向けると、五人はそれをすんなりと受け入れる。
「学生の皆は、アウスの指示に従って。アウス、レン達をお願い。クベラさんも、アウスと一緒に学生組をお願いします」
「かしこまりました、お嬢様。それでは皆様、申し訳ございませんがこちらへ」
「あー、何や解らへんけど……まぁ、了解や。皆、行こか~」
事情を把握しているアウスと、アクアに逆らうべきではないと確信しているクベラはジン達を離れた場所へと誘導する。
クベラとしても、事情は良く解っていはいないが……初音家の長女である彼女がここまでするという事は、当然それなりの事情があるはずである。彼はそれを考慮した上で、彼女の意に沿う様に動くべきだと判断した。
無論その判断には、彼女や初音家に対する信頼が多分に込められている。これにはレンとの交流に加えて、年始の温泉旅行で初音家と関わった影響もあるだろう。
アウスとクベラがジン達を誘導して離れるのを見送り、アクアは目元を覆う≪タクティカルグラス≫を外して眉間を軽く揉み解す。
「あまり時間は無いから、要点を簡潔に纏めて話すわ。そして今ここから話す内容は、絶対に他言は無用……この言葉を破った場合、私は初音財閥の長女として然るべき措置を取らせて貰うわ。そのつもりで、私の話を聞いて貰います」
そう言って、素顔を晒したまま顔をハイド達に向けるアクア。その顔を見て、ハイド達は目を見開いた。
「あ、貴女は……!!」
「運営の……!?」
動揺する面々を前にしても、アクアは一切動じずに話を進める。
「さっきも言ったけれど、時間は有限よ。だから手っ取り早く、誤解を恐れずに自己紹介といきましょう。 私は【ユートピア・クリエイティブ】運営主任の初音水姫……あなた達には、エリアと名乗った方が通りが良いかしら」
その名乗りを受けて、ハイド達の脳裏に浮かんだのは……第四回イベントの直前、【七色の橋】の不正騒動の内容だった。
それは【七色の橋】が運営と通じており、ゲーム内の情報を不正に得ているのではないか? というもの。その騒動が下火になったのは、運営の調査により潔白が証明された事と、その騒動がスパイ集団【禁断の果実】によって齎されたものだという事が大きな要因だった。
だがもしもその運営が単なる協力者ではなく、最初から身内に居たとしたら……?
――いや、無いな。
……と、そこまで考えたハイド達は、すぐにその考えを除外した。
これまでのジン達の様子を見て、間違いなくその可能性は無いと確信した。それ程までに、【七色の橋】の面々は真っ直ぐで善良なプレイヤー達だと断言できる自信があったのだ。
「解りました、お約束します」
真っ直ぐにそう答えるハイドに、他の【天使の抱擁】のメンバーも続く。その顔は真っ直ぐで、真摯だ。
そしてアンヘルとヴィクトも、アクアの言葉に異を唱えるつもりは無い。既に現実でも、何度か顔を合わせて事情説明やアンヘルの治療について話をして来ているからだ。
「主任さんだったんだ……いつも、お世話になってます。私も大丈夫」
「勿論、俺も従います」
返答を受け取ったアクアは、事の次第をその場に居る大人の面々に説明をし始めた。
「えぇ、良いでしょう。あとこの会話も運営チームは把握しているから、そのつもりでね。では、事の次第を簡単に説明するけれど……アンヘルさんは現在、治療が必要な状態なの。その為に採用されたのが、VR環境を活用した療法という訳なんだけど……」
次回投稿予定日:2025/11/23(幕間)




