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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二十章 第四エリアを目指しました

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20-24 封印されました

「感慨深いけど、のんびりする時間は無いな。皆、行くぞ!」

「御意!」

「はい、お兄ちゃん!」

「行きましょう、ヒイロさん」

「お供させて頂きます」

「任せるッスよ!」

「いつでも行けます!」

 ヒイロの言葉に、各々の言葉で応じる六人。そして左端に立つシオンからレン・ヒイロ・ジン・ヒメノ・アイネ・ハヤテの順で両腕を交差させた構えを取っていく。別段、皆で練習などをしたわけではないが……そのタイミングは、ピッタリと一致している。


 そこからそれぞれが考えたポーズを取って、七人は同時に静止し……そして、声を揃えてスキル発動を宣言する。

『【変身】!!』

 その台詞と同時に右手を振り上げ、そして地面に向けて振り下ろしたその瞬間、七人の姿を煙幕が包み込んだ。

 立ち上る赤い炎、噴出する青白い幽体の光。電撃が迸り、地響きが鳴り響くと共に土煙……そして同じ様に硝煙が煙幕に混じって、更には花弁が舞い散っている。

 それぞれの変身エフェクトが混ざり合い、少々ごった煮状態に見えてしまうのはご愛敬というべきか。各々の印象や象徴をイメージした変身専用の演出なので、個性がぶつかり合っている様にも見える。


 その間に七人の身体は、黒いラバースーツの様なモノ……≪スキン≫と呼ばれるスーツで覆われる。同時に中空に召喚された鎧が、自動的にスキンの上に装着されていく。その際に発生する、パーソナルカラーのライトエフェクト。煙の外側からは、ただ光が発生しているだけに見える事だろう。

 そして≪ヘルム≫が頭上から装着され、最後に≪仮面マスク≫がヘルムに接続。それが終わった瞬間に、ジン達はそれぞれが腕を振るい……そして、その姿を覆い隠していた煙幕が一気に晴れる。


 雉と椿の花をモチーフとした、アイネの変身専用装備≪剣聖の花鎧≫。

 隼とタクティカルベルトを融和させた、ハヤテの変身専用装備≪隼の銃鎧≫。

 ユニークスキル【酒呑童子】をイメージした、シオン変身専用装備≪山の鬼鎧≫。

 同じく【神獣・麒麟】をモチーフにした、レンの変身専用装備≪雷の巫女鎧≫。

 右腕の≪鬼神の腕≫にマッチさせた、ヒイロの変身専用装備≪幽鬼の鎧≫。

 火のユニークスキル【八岐大蛇】を象徴する、ヒメノの変身専用装備≪火の姫鎧≫。

 そしてAWOの最前線を風の如く駆け抜ける忍者、ジンの変身専用装備≪風の忍鎧≫。


 ギルド【七色の橋】結成メンバーであり、見た目も名称もマッチさせた七人の姿。それが横一列に並ぶ様は、その見た目も相俟って心を躍らせるものがある……かもしれない。

「改めて思うんだがよ……どう見ても、見た目仮面ラ〇ダーで、並びはスーパー〇隊なんだが」

「イ、イカヅチさん? あまりそこは言及しないであげた方が……!!」

「ゴ〇イダーってネタ、確かあったよね? あんな感じ?」

「センヤちゃん、シッ!」

「い、良い……なぁ……私も、ガチャで、【変身】……出ない、かなぁ……」

「あ、よく考えたら……ジンさんにお願いして、もう一人行けたかもしれませんね?」

「あー、まぁ良いんじゃない? 丁度ウチらしく、七人勢揃いバージョンってことで」


 仲間達がそんな反応をしているのを、知ってか知らずか……ジン達七人は、ヘル・デュラハンに向けてそれぞれの武器を構えた。

「それじゃあ行こう。エリアボス戦、最終局面だ!」

 その号令と同時に、ジン達は全力攻撃を開始すべく動き出す。それと同時にミモリが、託された≪ギルドフラッグ≫を掲げる。

「それじゃあ行くわよ、皆!! 【あざやかなることにじごとく】!!」

 ボス部屋の地面に≪ギルドフラッグ≫を突き立てて、キーワードを宣言。その瞬間【七色の橋】メンバー全員に、全ステータス+10パーセントのバフが発動。効果時間360秒の内に、決着を付けたいところだ。

 その主力となるのは当然【変身】状態の七人と、同じく【変身】状態のユージン・ケリィ夫妻。残るメンバーは、そのサポートメインとなる。


「疾風の如く!! 【クイックステップ】!!」

 先陣を切るのは、勿論ジンだ。そのAGIを駆使してヘル・デュラハンに迫り、≪大狐丸≫と≪小狐丸≫で斬り付ける。目にも留まらぬ素早い連続攻撃により、ヘル・デュラハンのヘイト値が上昇。左側に着地したジンを標的にして、向き直る。

 その際、ジンは不思議な手応えを感じた。いつもよりも、確かな手応えを感じたのだ。実際にヘル・デュラハンのHPバーを見ると、ハッキリとそのHPが削られている。

 それに、身体が羽根の様に軽い。ヘル・デュラハンに接近した時も、小太刀を振るった時も更にスピードが上がっていた。


――何故だろう……? まだ【変身】だけで、最終武技は使っていないのに……。


 しかも今の攻撃を叩き込んだ際の手応えは、最終武技を使用した時よりも強く感じられた。何故こうなったのかは、ジンにも解らないのだが。

 しかし、これはチャンスでもある。より速く、より強くなったのは好都合だ。ジンはもう一度ヘル・デュラハンに接近し、両手の小太刀を振るう。

 だがそこで、ジンはハッキリと違和感を覚えた。自分の身に纏っている変身専用装備≪風の忍鎧≫が、軋んでいる様に感じられる。更に自分の身体アバターにも、ピリピリとした感覚が全身にある。

 これは一体、何だろうか……と考えた、その瞬間だった。

「ジン君!? HPが、いつの間にか減ってる……!!」

「いや、HPだけじゃない!! APも同時に減っているぞ!!」

 ルナとビィトの声が耳に届いて、ジンはすぐに自分の視界に表示されるHPとAPに視線を移す。すると確かに、いつの間にか自分のHPとAPが減少していた。


――何でだ……!? いつも通り、普通に【変身】しただけなのに……!! もしかして、ボスのスキルか何かか……!?


 ボスが何か、特殊なスキルでも使用したか。そう考えた瞬間に、ヘル・デュラハンがジンに向けて突進。四本の腕で武器を振るい、ジンを叩き潰そうと襲い掛かる。

 ジンは武技を使用せずにバックステップで距離を取ったが、その瞬間にHPとAPが大きく減少した事に気付く。

「くっ……これは、一体……!?」

「僕が替わろう、ジン君」

 そう言ってジンの前に飛び出したのは、ユージンだった。

「【一閃】!!」

 ユージンはヘル・デュラハンの攻撃に合わせて、【一閃】を発動。ヘル・デュラハンの大剣と≪地竜丸≫が接触した瞬間に、激しいライトエフェクトが発生した。

 相手の攻撃に合わせて武技を放ち、その攻撃を強制中断させるプレイヤースキル【スキル相殺】。ユージンはその鍛え抜いた技巧で、ヘル・デュラハンの攻撃を引き付けるつもりらしい。


 だが、ヘル・デュラハンの動きはまだ止まらない。ヘル・デュラハンの攻撃は四連撃で、どうやら一撃を止めても完全に相殺は出来ないらしい。

 ユージンは相殺状態だが、ヘル・デュラハンはまだ攻撃を続けている途中。すわ、直撃か……といった所で、両者の間に滑り込んで来たのはケリィだった。

「【一閃】!!」

 手にした細剣は、魔法剣状態。それでヘル・デュラハンの攻撃に合わせて、【スキル相殺】を発生させたらしい。

「ナイス、リイン!! 【一閃】!!」

「細剣は不慣れですが、何とかなりました!! 【一閃】!!」

 二人で一撃ずつ、【一閃】を攻撃にぶつけて【スキル相殺】を発動させたユージンとケリィ。この二人でなかったら、今頃ヘル・デュラハンの攻撃をもろに喰らっていただろう。

「【一閃】を使えるように、≪女神の細剣≫に≪刀剣≫を合成して正解だったな……というか、難易度上げすぎな気がしないか?」

「そう簡単にはクリアさせないという、鉄の意志を感じますね……接近戦なら、装備と役割を切り替えたいですけど……」

「その隙は、与えて貰えそうにないな……随分と熱い視線を感じるよ、デュラハンには首が無いけどね」


……


「ジン、大丈夫か!?」

「まずは、HPだけでも回復を……!!」

 アイネがジンに≪HPポーション≫を掛けると、ジンのHPは全快した。だが、またすぐに僅かながらHPが減少をし始める。

 ジンのHPとAPの減少する様子を見ていたシオンが、一つ頷いてみせた。

「……どうやら一秒につき、ジン様のHPとAPが1ポイントずつ減少している様です。とにかく一度、【変身】を解除した方が宜しいかと。HPは≪ポーション≫で回復できますが、変身専用装備は修理しなければAPが回復致しません」

 ジンを守る様に≪大盾・鬼殺し≫を構えながら、シオンがそう提案する。


 AP……アーマーポイントは、アバターのHPやMPとは違う扱いだ。武器や防具にも存在する装備耐久値そのものであり、それがゼロになると装備が破損する。そうなれば【変身】が使えなくなるし、変身専用装備の修理も更に困難になって来るのだ。

 何よりこの≪風の忍鎧≫は、ヒメノとカノンが製作してくれた大切な装備である。それが壊れてしまうのは、ジンとしても本意ではない。


「そうでゴザルな……」

 ジンがシステム・ウィンドウを開くと、真っ先に表示されるのは【変身】専用の画面だ。これは【変身】発動中の仕様で、誰がやってもこの画面が最初に展開されるらしい。

 中央には変身専用装備を纏ったアバターが映し出されていて、その左側にHPとMP、そしてAPが表示されている。アバターの右側は各種ステータス、アバターの上部にはプレイヤーのアバター名と、変身専用装備の名称。そしてアバターの下部に、『変身解除』というボタンがある。

 ジンはすぐにボタンを押して、【変身】を解除。その時点で≪風の忍鎧≫のAPは、もう50を切って48ポイントという所だった。


 同時に、そこでジンはもう一つ気付いた。

「……むっ? HPの減少が、止まった……?」

 ジンが【変身】を解除した途端に、HPの減少が収まったのだ。全身に感じていたピリピリする感触も、もう無くなっている。

「本当だ……何故でしょうか?」

「……気にはなるが、それは後に回そう。真相解明は、エリアボスを倒してからでも遅くは無いはずだ」

 ヒイロの言う通り、今はエリアボス戦の真っ最中だ。HP減少が無くなったのならば、それはそれで良しとしておくべきである。


「ジン、【九尾】は……」

「ダメージを受けたせいで、カウントはリセット状態でゴザル。バフは≪フラッグ≫のみでゴザルな」

「解った、ジンは遊撃で頼む」

 【変身】抜きの生身……素のアバター状態では、事故が起きる可能性もある。メインアタッカー組に加わらない方が、安全だろう。

 そんなヒイロの指示に、ジンも素直に頷いて一歩下がる。真剣な表情ではあるものの、その眉間には僅かに皴が寄っていた。

「シオンさん、お願いします。俺とアイネは、左右から」

「かしこまりました、ヒイロ様」

「了解です」

「では、参ります」

 ヘル・デュラハンに向けて突撃する三人を見送って、ジンは意識を切り替える。仲間達と共に攻撃に参加出来ないのは悔しいが、事故って皆に迷惑を掛ける方が大問題だ。


――僕がやるべき事は……ヘル・デュラハンに攻撃する為の、チャンス作り。なら、出来る事はまだある……!!


「幻影の如く……【分身】ッ!!」

 つい先日まで開催されていた第五回イベント……[試練の塔]攻略でスキルレベルを上げて、更に限界突破したジンの【分身】。分身体は七体まで召喚できる様になり、効果継続時間も少し延長されている。

「分身体、ヒイロ・シオン殿・アイネ殿の【援護】を!! 」

 ジンの指示……【援護】のキーワードを受けた分身体達は、その命令を実行すべく疾走。すぐに前衛三人に追い付いて、三人と共にヘル・デュラハンに接近していく。

「ユージンさん、ケリィさん!!」

「皆さん、お待ちしていました」

「助かる~ゥ。ヒイロ君とアイネ君が入ってくれるなら、一人一発狙っていけばオーケーだね。シオン君、ダメージディーラー役を頼むよ」

「承知致しました……【展鬼】!! 【励鬼】!!」


 その間にジンはサポート役……センヤとヒビキ、ナタクやイカヅチと合流。

「おい、ジン。行けんのか?」

「HP減少は止まっているから、大丈夫でゴザル」

「フン……そうかよ。いいか、テメェが落ちたら皆が迷惑すんだ……絶対に無理すんじゃねーぞ」

 態度が悪く見えるものの、イカヅチの本心はジンの身を案じている……というのは、ジンも仲間達も理解している。だから、その口の悪さを気にする者は居ない。

「心得ているでゴザルよ、イカヅチ」

 ジンはそう言って、仲間達の状態を確認する。PACパック含め、大きな損傷は見受けられないのは僥倖だ。


「ここからは、援護でゴザルな。右側からはナタク殿とマキナ殿、イカヅチで。センヤ殿とヒビキは、拙者と左側から攻める布陣でどうでゴザル?」

「解りました!! 行くよヒビキ!!」

「了解です!! ジンさん、お供します!!」

「バランスも良いし、理に適ってますね。イカヅチさん、良いですか?」

「あぁ、経験はお前等の方が豊富だしな。宜しく頼むわ、ナタク」

 流石、日頃から意思疎通を欠かさない【七色の橋】だ。戦況に応じて編成を変えても、自分の役割を察して即座に切り替える事が出来ている。


 そして、それはPACパックも同様だ。

「セツナはニコラと、アルクはジョシュアと一緒に中心に。ヒイロ達が引いた瞬間に、スイッチしてヘル・デュラハンを引き付けて欲しいでゴザル」

「うむ、うむ。現状を見た、良い采配だ」

「アタシはセツナを守れって事だね? 良いよ、任せときな」

「了解しました、ジン様」

「任せな、ジンの坊主」

 攻撃役と防御役の、二人一組。無難で鉄板な組み合わせになるが、これが乱戦での安定感に繋がるのだ。だからこそエクストラボスと元・応援者の組み合わせ、それを二組にした。そして予備役だけでは足りないのが、この戦場だ。頼れる前・中衛は、惜しみなく投入するべきである。

「リン、ロータスはヒイロ達の援護へ。タゲを引かない様に、注意して欲しい」

「お任せを」

「承知致しました、ジン様」

 やはり、自分達に力を貸してくれるPACパック達は頼もしい。ジンはそう考えながらも戦況を観察し、いざという時にはすぐに動ける様に姿勢を低くして構える。


 その間にヒイロ・アイネ・ユージン・ケリィがその技巧を駆使して、【スキル相殺】でヘル・デュラハンの攻撃を相殺。そこへシオンが【展鬼】から【励鬼】を発動して≪鬼斬り≫と≪鬼殺し≫を合体させ、金棒モードで滅多打ちにしている。

 更に後方からヒメノの矢と、レン・ネオン・シスルの魔法による火力支援。そしてハヤテとクベラ、【魔弾の射手】による援護射撃。

「む……あの四連撃を受け切ると、ボスが数秒隙を晒すらしいでゴザルな……」

「あん? お、本当だな。今なら殴れんじゃねえか?」

「いや、そろそろ……うん、動き出したでゴザル。大体、十秒くらいか……」


 しばらくしたら、ジンの分身体は制限時間を迎えて消滅。しかしそのタイミングでリンとロータスの援護が加わり、ヒイロ達の動きが更に良くなっていく。

 その頃には、ヒイロ達もヘル・デュラハンの攻撃に慣れた様だ。慎重に……だが確実に、彼等はその攻撃に対応していく。


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 エリアボス戦が始まってから、ゲーム内時間にして約三十分。そこでいよいよ、ヘル・デュラハン第二形態のHPが五割を切った。そのタイミングで、ヘル・デュラハンがこれまでと異なる挙動を見せる。

「これは……皆、特殊行動が来る!!」

「防御態勢!!」

 特殊行動が発生する……それは、誰もが予想していた事だ。第一形態でもHPが一定値を割ったタイミングで呪い付与攻撃を発動していたのだから、何か特別な攻撃を仕掛けて来る事の予想は難しくない。

 だがそれが、このヘル・デュラハン戦……第三エリアボス戦における、最大の難所である。であるのだが……それを知るのは、この場では運営の三人のみである。そして、三人がそれを仲間達に明かす事は無い。


――何よりこの特殊行動は、回避もヒットストップも不可。その上、ランダム要素が強いし……お祖父様考案のコレ、初見殺しも良い所なのよね……。


 アクアが内心で苦笑したその瞬間、ヘル・デュラハンが全身から青黒い瘴気を放出。全方位に放たれたそれは、後衛にまで届く程の広範囲攻撃だった。

「……これ、は……っ!!」

「ダメージは上がったけど……少しだけ……か!?」

「むぅ……っ!! 【エリアヒール】ですっ!!」

 それは第一形態でも使用していた、呪い属性付与攻撃。恐らくは、強化版なのだろう。ダメージも少しばかり上がり、攻撃範囲は前方のみから全方位に変わっていた。

 だがこの攻撃の本当の恐ろしさは、単純な威力と攻撃範囲の強化ではない。


「あ、あれ……? マキナさんが消えちゃった……? たっくん、これは……?」

「嘘だろ……スキルオーブが、【ドッペルゲンガー】が……封印された……!?」

 視界に表示されたアナウンスを見たナタクが、驚愕の声を上げる。同時に、他の面々も自分のスキルオーブが一つ封印された事を自己申告する。

「……チッ、俺の【刀剣の心得】が封じられた!? 【一閃】禁止って事かよ、クソッ!!」

「マジか……俺は何も、封印されてないみたいッスね……確率系のデバフ……?」

「皆、ごめん! 【銃の心得】をやられた! 普通の固定ダメージだけになるわ!!」

「えー、誠に遺憾ながら、私がこの後披露しようとしていた【変身】が封印されました……」

「レーナさん、【変身】ゲットしていたの!?」

「わ、私……は、【採掘の心得】だった……から、問題は……無い、かも」

「ワイは何も封印されとらんな……まぁ、生産系スキルばっかやけども」

 確実に全員を呪い状態にするだけではなく、確率でスキルオーブの封印という厄介なデバフ効果を発動するらしい。


 この封印状態の恐ろしい所は、ここで初めて登場した状態異常である点が一つ。つまり、封印状態の解除方法が解らないのだ。

 そして封印は、特に強力なスキルオーブを持つプレイヤーにとってはかなり厄介である。主力スキルが封印された場合、パーティの戦力が激減する可能性がある。

 そしてそれは、どうやら……。

「くっ……皆、済まない!! 俺の【千変万化】が、封印された!!」

 どうやら……ユニークスキルも、例外では無いらしい。


 ヒイロは【千変万化】による攻撃力や攻撃範囲を、自由自在に操る事が出来る万能技巧派アタッカーだ。他の戦闘系スキルオーブは有効だが、それでも攻撃手段に制限が掛かるのはかなり手痛い。

 つまり現状のヒイロは、()()()アタッカーと変わらないという事……になるはず。

 それが【チェインアーツ】や【スキル相殺】が出来て、各種スキルもしっかり育て上げていて、しかも【変身】状態でステータス強化の恩恵を受けているだけである。

 要するに()()()、トップランカークラスのアタッカー……ユニークスキルを封印されていながら、十二分に戦力なのでは?

 とはいえ予想外の特殊攻撃に、スキルオーブの封印で浮足立っている仲間達。その混乱を消化して、態勢を立て直す為には時間が必要だ。


 そして、ジン。彼もまた、()()()()()()()()を封印されてしまっていた。それも切り札級の、エリアボス戦では是が非でも使いたい強力なスキルだ。

 スキルスロットに収められている主力スキルが封印されて、そのアナウンスが視界に入った瞬間……ジンの疑問が、瞬く間に氷解した。

「……成程、()()()()()か」

 納得した……とばかりに呟いたジンは、声を張り上げる。

「皆、拙者がボスのタゲを引き受ける!! その間に、態勢を立て直して欲しいでゴザル!!」

 そう言いながら一歩、また一歩と前に出るジン。その視線の先では、ヘル・デュラハンが再び攻撃を開始しようと動き出すタイミングだった。


――そして、時間稼ぎなら……僕の右に出るプレイヤーは、そうそう居ないはずだ!!


「いざ、再び……っ!! 【変身】!!」

 先程、自らの意志で解除した【変身】。ジンはそれを再び使用して、≪風の忍鎧≫を身に纏い……ヘル・デュラハンに向けて全力で駆け出した。

次回投稿予定日:2025/11/5(本編)

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― 新着の感想 ―
所有するスキルをランダムで潰してくるとか、下手に偏ったり一芸特化してたら詰むなぁ…。
安定のイカヅチくんのツンデレムーブほっこしました。いいですねツンデレ男子。しかし普通のトップランカーとはパワーワードが過ぎるw
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