04-08 土地探しをしました
ジン達が新たなギルド【七色の橋】を結成した、その翌日。彼等は新メンバーであるハヤテとアイネを連れて、ユージンの工房を訪れた。
「成程。ジン君の従兄弟に、ヒメノ君とレン君の学友なんだね。良いね良いね、身近なメンバーで新しいギルドの結成か」
いつものごとく、ユージンは二人を歓迎した。にこやかに微笑むユージンに、二人も緊張をほぐせている。第一印象はやはり、胡散臭そうなおじさんだったのだが。
「そうだねぇ、二人もやっぱり和装にするよね?」
そして、いつものである。しかし、ハヤテとアイネは眉尻を下げる。というのも二人は、現在のユージンの状況を聞き及んでいたのである。
「ユージンさんは、今お忙しいと聞いていますから……」
「落ち着いた時にでもお願い出来たら、それでいいッス」
二人は遠慮してそう言うが、ユージンは苦笑する。
「子供が遠慮なんかするもんじゃないよ。少し時間は貰うけど、デザインは先に決められるだろう?」
作業部屋に視線を向けると、ユージンはふむ、と頷いた。
「それに今は、進捗率1000パーセント……」
「いつからザ●アの社長になったんですか」
すかさずツッコミを入れるジン。タイミングバッチリの、切れ味鋭いツッコミであった。流石はAGI極振りである、関係無いけど。
「あぁいや、嘘嘘。進み具合は、およそ50パーセントくらいだね」
「早くないですか……?」
五割は出来ていると聞いて、ヒイロが顔を引き攣らせた。この生産職人、本気で何者だ? と思うのも無理はない。
「いやなに、縫製は縫製でまとめて済ませたんだ」
鍛冶をやって縫製、そしてまた鍛冶……となると、行ったり来たりで効率が悪いのは確かだろう。そして、既に済ませているのは縫製分の依頼品らしい。
「それに普段は露天に顔を出したり、フィールドに出て素材集めをしているんだけどね。今回はイベントでそれなりに稼がせて貰った。君達の依頼品も相当量の素材を受け取っているから、今回の依頼分に関しては素材に不自由してないのさ」
確かに、今回のイベントで手に入った素材は多い。お陰でユージンに依頼するのにも、新たな素材を集める必要が無かったのだ。
特に新メンバーを除くジン達【七色の橋】は、最前線で猛威を振るった。集まった素材の量も、半端な数ではない。お陰で、しばらくは金策にも不自由はしないだろう。
「という訳で、遠慮なく依頼してくれるかな? ついでに言うと、二人の和服分で次のレベルに届くかもしれないし」
最後のが本音か? と思わなくもないが、二人はそれならば……という気になって来た。あまり固辞し続けるのも、ユージンに失礼だと感じたのもある。
「ユージンさんがこう言ってくれているし、お言葉に甘えようか?」
決め手は、ヒイロのそんな言葉だ。二人は戸惑いつつも頷き合い、ユージンに向き直る。
「それじゃあ……お願いします」
「お願いするッス」
待ってましたとばかりに、ユージンがデザインについてヒアリングをしていく。この時の生産大好きおじさんは、本当にイキイキとしていた。
二人の希望は、やはり他のメンバー準拠。
「ジン兄やヒイロさんみたいな感じで、お願いしたいッス……走り回るんで、鎧は無くても良いかな?」
「私も、レンさんやヒメノさんみたいな服で……鎧は軽装が有難いですね」
ハヤテのは簡単に決まったが、アイネの分は少しばかり試行錯誤を凝らす事になった。というのも、ヒメノとレンが会議に参加したからである。
「私とレンちゃんは、襟のところの着方が違うからねー」
「アイネちゃんの分も、何か差別化を持たせたいところね」
ヒメノとレン、やはり彼女達も女の子。服についてはこだわりたいお年頃だ。心得たとばかりに、ユージンのデザインにも熱が入る。
そこでアイネからの要望は、片方の襟を脱いで肩を出してしまうという大胆なモノだった。そういった着方は、片肌脱ぎと呼ばれている。
「槍使いだっけ? それなら肩の所に、こう……」
そう言ってユージンが描くのは、和風の肩鎧だ。そこに花を象った飾りを付ける。ユージンが選んだのは、椿の花だった。
「あ、格好良い……」
どうやらユージンのデザインは、アイネにも気に入られたようだ。
……
そうこうしている内にデザインも決まり、ユージンの淹れたコーヒーで一心地つく。
「そういえば、ギルドは結成出来たんだよね? なんていう名前にしたんだい?」
「あ、【七色の橋】という名前にしたんです!」
ジンがそう返すと、ユージンはその名前を噛み締めるように呟く。
「【七色の橋】……もしかして、虹をイメージしたのかな?」
ユージンは、すぐにその名の意味する所に気付いた。
「はい。僕らの飾り布の色、虹を構成する色だと思って」
ジンの紫、ヒイロは藍色、ヒメノは赤で、レンは青、シオンは緑。残るは黄色と橙だ。
「あぁ、それでハヤテ君が橙、アイネ君が黄色の飾り布だったんだね。それは確かにピッタリくる名前だ」
自分が考えた名前を褒められ、ジンは嬉しそうに笑う。そんなジンの様子に、他の面々も笑顔であった。
「じゃあ、今頃【七色の橋】の証明証が騎士団詰め所に飾られているんだね」
そう、ギルド結成クエストで作成する、あの証明証……それは最後に騎士団に引き渡され、騎士団詰め所の壁に飾られる。
こうしてギルドが正式に結成されると、騎士団にギルドフラッグやギルドエンブレムの製作を依頼出来る様になる。
無論、ユージンの様な生産職人に依頼を出す事も可能だ。その場合はギルドからの依頼となり、装備品にギルドクレストを簡単に入れる事が出来るようになる。
ちなみに騎士団詰め所の証明証をタップすると、所属するメンバー名が確認出来るウィンドウが現れる。これは誰にでも見る事が出来る。
例えばジン達【七色の橋】ならば、こう表示される。
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ギルド【七色の橋】
ギルドマスター:ヒイロ
サブマスター:レン
メンバー:ジン、ヒメノ、シオン、ハヤテ、アイネ
所属PAC:リン、ヒナ、ロータス
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もし、この証明証を確認する者がいたら驚くだろう。イベント上位入賞者が五人居る上に、他のギルドにはまだ居ないPACの記載があるのだから。
PAC含めて十人の、小規模ギルド。しかし、その戦力は小規模とは言えない。
「そうだ、ケインさん達は何ていう名前にしたんだろう?」
協力関係にあるケイン達のギルド。その名前を、まだヒイロ達は聞いていないのだ。
「あぁ、彼等は【桃園の誓い】だそうだ」
それは三國志で有名な、劉備・関羽・張飛が義兄弟の契りを交した逸話である。
「ケインさん達らしいね」
「でも格好良いです♪」
ヒメノはお気に召した模様である。
「さて。ユージンさんも作業があるだろうし、長居は申し訳無いね」
そう言って、ヒイロが席を立つ。それに合わせて、ジン達も立ち上がった。
「気を遣わせて済まないね。この後の予定は?」
「ギルドホームを建てる土地探しですね。この格好ですから、やっぱり和風建築かなって」
始まりの町では、和風建築は似合わないのは良くわかった。なので、フィールドで探すつもりである。
「成程ね。それなら、一つオススメの場所がある……北門から少し東寄りに行ってみると良いよ。ちなみに、ホームを建てる依頼も喜んで引き受けよう。いいレベル上げになるし、遠慮は要らないよ」
ユージンのアドバイスに、ジン達は顔を見合わせて頷き合う。
「ありがとうございます、そこを見に行ってみますね」
「ホームの件も、了解です。ユージンさんに、まずは相談する事にしますね」
……
ユージンのアドバイスを受け、ジン達はフィールドに出る。北門から出たら物陰に隠れて装備を切り替え、PACを呼び出した。
ヒナとロータスはともかく、リンがどこからともなく現れるとくノ一感が半端無い。
「よし、それじゃあ早速行ってみようか」
ヒイロの号令で、十人での移動を開始する。
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■プレイヤーネーム/レベル
【ジン】Lv22
■ステータス
【HP】92/92≪+40≫
【MP】31/31≪+20≫
【STR】10【-50%】≪+20≫
【VIT】10【-50%】≪+20≫
【AGI】62【+85%】≪+60≫
【DEX】10【-50%】≪+20≫
【INT】10【-50%】≪+20≫
【MND】10【-50%】≪+20≫
■スキルスロット(4/4)
【短剣の心得Lv9】【体捌きの心得Lv8】【感知の心得Lv7】【投擲の心得Lv3】
■拡張スキルスロット(5/5)
【九尾の狐Lv8】【刀剣の心得Lv9】【分身Lv3】【超加速】【達人の呼吸法】
■予備スキルスロット(5/5)
【毒耐性(小)】【採掘の心得Lv1】【体術の心得Lv3】【銃の心得Lv2】【隠密の心得Lv2】
■装備
≪闇狐の飾り布≫HP+20、MP+20【自動修復】
≪夜空の衣≫全ステータス+20【自動修復】【縮地】【朱の羽撃】
≪初心者のポーチ≫
≪大狐丸≫AGI+20【自動修復】
≪小狐丸≫AGI+20【自動修復】
≪生命の腕輪≫HP+20【HP自動回復(小)】
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【ヒイロ】Lv25
■ステータス
【HP】98/98≪+15≫≪+10%≫
【MP】34/34≪+10%≫
【STR】28≪+3≫≪+10%≫
【VIT】27≪+8≫≪+10%≫
【AGI】15≪+3≫≪+10%≫
【DEX】20≪+2≫≪+10%≫
【INT】10≪+10%≫
【MND】15≪+8≫≪+10%≫
■スキルスロット(4/4)
【長剣の心得Lv9】【刀剣の心得Lv4】【盾の心得Lv8】【盾の極意Lv4】
■拡張スキルスロット(1/1)
【魔剣術Lv1】
■予備スキルスロット(2/5)
【体捌きの心得Lv2】【採掘の心得Lv1】
■装備
≪ユージンの和風装束≫MND+3【青の咆哮】
≪ユージンの飾り布≫MND+1【白の狩猟】
≪ユージンの具足≫VIT+3、HP+5
≪ユージンのパンツ≫MND+2
≪ユージンのブーツ≫AGI+3
≪冒険者のポーチ≫
≪ユージンの打刀≫STR+3、DEX+2
≪大騎士の大盾≫VIT+5、MND+5、HP+10
≪鬼神の右腕≫全ステータス+10%、HP・MP+10%【幽鬼】
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【ヒメノ】Lv24
■ステータス
【HP】96/96≪+25≫
【MP】33/33≪+25≫
【STR】61【+70%】≪+61≫
【VIT】10【-50%】≪+20≫
【AGI】10【-50%】≪+20≫
【DEX】10【-50%】≪+25≫
【INT】10【-50%】≪+20≫
【MND】10【-50%】≪+20≫
■スキルスロット(4/4)
【弓の心得Lv9】【刀剣の心得Lv3】【狙撃の心得Lv5】【八岐大蛇Lv5】
■拡張スキルスロット(3/3)
【採掘の心得Lv1】【ゴーストハンド】【鞭の心得Lv3】
■予備スキルスロット(0/5)
■装備
≪桜花の衣≫全ステータス+20【自動修復】【縮地】
≪大蛇の飾り布≫HP+20、MP+20【自動修復】
≪初心者のポーチ≫
≪八岐之具足≫STR+20【自動修復】【軽量】
≪狩人の大弓≫STR+1
≪大蛇丸≫STR+20【自動修復】
≪覇者の矢筒≫DEX+5、装填上限50
≪桜の髪飾り≫HP+5、MP+5
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【レン】Lv28
■ステータス
【HP】104/104≪+20≫
【MP】37/37≪+20≫
【STR】10【-50%】
【VIT】15【-50%】
【AGI】15【-50%】
【DEX】15【-50%】
【INT】49【+70%】≪+50≫
【MND】15【-50%】≪+10≫
■スキルスロット(4/4)
【火魔法の心得Lv9】【水魔法の心得Lv7】【回復魔法の心得Lv6】【神獣・麒麟Lv5】
■拡張スキルスロット(5/5)
【杖の心得Lv4】【雷魔法の心得Lv8】【風魔法の心得Lv8】【刀剣の心得Lv1】【フロートLv1】
■予備スキルスロット(5/5)
【土魔法の心得Lv3】【聖魔法の心得Lv3】【光魔法の心得Lv3】【補助魔法の心得Lv2】【合成魔法Lv2】
■未装備スキルオーブ
【HP自動回復(中)】
■装備
≪桃花の衣≫全ステータス+20【自動修復】
≪神獣の飾り布≫HP+20、MP+20【自動修復】
≪冒険者のポーチ≫
≪鳳雛扇≫INT+20【自動修復】【朱の羽撃】
≪伏龍扇≫INT+20【自動修復】【青の咆哮】
≪精霊の指輪≫INT+5、MND+5、MP+10
≪大賢者の首飾り≫MP+10【INT強化(小)】【MND強化(小)】
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【シオン】Lv27
■ステータス
【HP】102/102≪+20≫
【MP】36/36≪+20≫
ステータスポイント57
【STR】20【-50%】≪+20≫
【VIT】55【+75%】≪+60≫
【AGI】15【-50%】≪+20≫
【DEX】10【-50%】≪+20≫
【INT】10【-50%】≪+20≫
【MND】22【-50%】≪+20≫
■スキルスロット(4/4)
【盾の心得Lv9】【槌の心得Lv5】【刀剣の心得Lv4】【酒呑童子Lv6】
■拡張スキルスロット(4/4)
【大剣の心得Lv4】【バーサーク】【ガーディアンLv1】【不屈の闘志】
■装備
≪新緑の衣≫全ステータス+20【自動修復】
≪戦鬼の飾り布≫HP+20、MP+20【自動修復】
≪冒険者のポーチ≫
≪鬼斬り≫VIT+20【自動修復】【軽量】
≪鬼殺し≫VIT+20【自動修復】【硬化】
≪守護の首飾り≫MND+3
≪聖なるメダル≫
≪覇王の腕輪≫HP+30【VIT強化(中)】
≪覇王の指輪≫HP+30【VIT強化(中)】
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【ハヤテ】Lv20
■ステータス
【HP】88/88≪+5≫
【MP】29/29
【STR】25≪+3≫
【VIT】23≪+6≫
【AGI】20≪+2≫
【DEX】15≪+2≫
【INT】10
【MND】10≪+4≫
■スキルスロット(3/4)
【長剣の心得Lv6】【盾の心得Lv5】【投擲の心得Lv2】
■予備スキルスロット(0/5)
■装備
≪探索者のチュニック≫MND+3
≪冒険者のパンツ≫MND+1
≪冒険者の鎧≫VIT+3、HP+5
≪戦士の靴≫AGI+2
≪冒険者のポーチ≫
≪戦士の長剣≫STR+3
≪騎士の丸盾≫VIT+3
≪狩人の投げナイフ≫DEX+2
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【アイネ】Lv18
■ステータス
【HP】84/84≪+5≫
【MP】27/27
【STR】25≪+3≫
【VIT】20≪+6≫
【AGI】15≪+3≫
【DEX】19≪+≫
【INT】10≪+≫
【MND】10≪+2≫
■スキルスロット(3/3)
【長槍の心得Lv7】【体捌きの心得Lv5】【感知の心得Lv3】
■予備スキルスロット(1/5)
【短槍の心得Lv3】
■装備
≪冒険者のチュニック≫MND+1
≪冒険者のスカート≫MND+1
≪狩人のブーツ≫AGI+3
≪狩人の鎧≫VIT+3
≪冒険者のポーチ≫
≪戦士の長槍≫STR+3
≪体力の腕輪≫HP+5、VIT+3
―――――――――――――――――――――――――――――――
■PACネーム/レベル
【リン】Lv5
■契約プレイヤー
【ジン】
■ステータス
【HP】58/58
【MP】14/14
【STR】10
【VIT】10
【AGI】25≪+7≫
【DEX】10
【INT】10
【MND】10≪+6≫
■スキルスロット(2/3)
【刀剣の心得Lv2】【短剣の心得Lv2】
■装備
≪ユージンの和風装束≫MND+3
≪ユージンの飾り布≫MND+1
≪ユージンのスカート≫MND+2
≪ユージンのブーツ≫AGI+3
≪ユージンの小太刀≫AGI+2
≪ユージンの小太刀≫AGI+2
―――――――――――――――――――――――――――――――
■PACネーム/レベル
【ヒナ】Lv5
■契約プレイヤー
【ヒメノ】
■ステータス
【HP】58/58≪+5≫
【MP】14/14
【STR】10
【VIT】13≪+3≫
【AGI】11≪+5≫
【DEX】11≪+6≫
【INT】15≪+10≫
【MND】15≪+16≫
■スキルスロット(3/3)
【刀剣の心得Lv1】【杖の心得Lv2】【癒しの聖女Lv1】
■予備スキルスロット(1/5)
【短剣の心得Lv1】
■装備
≪ユージンの和風装束≫MND+3
≪ユージンの飾り布≫MND+1
≪ユージンの弓具足≫VIT+3、HP+5
≪ユージンのスカート≫MND+2
≪ユージンのブーツ≫AGI+3
≪聖女の杖≫INT+10、MND+10
≪ユージンの短刀≫AGI+2、DEX+3
―――――――――――――――――――――――――――――――
■PACネーム/レベル
【ロータス】Lv5
■契約プレイヤー
【レン】
■ステータス
【HP】58/58
【MP】14/14
【STR】10
【VIT】10
【AGI】10≪+10≫
【DEX】15≪+8≫
【INT】10
【MND】10≪+6≫
■スキルスロット(3/3)
【刀剣の心得Lv1】【弓矢の心得Lv2】【暗殺者の心得Lv1】
■予備スキルスロット(1/5)
【短剣の心得Lv1】
■装備
≪ユージンの和風装束≫MND+3
≪ユージンの飾り布≫MND+1
≪ユージンのパンツ≫MND+2
≪ユージンのブーツ≫AGI+3
≪ユージンの短刀≫AGI+2、DEX+3
≪仕込み機弓≫DEX+5、AGI+5
―――――――――――――――――――――――――――――――
和やかに会話しながら歩くジン達。道中のモンスターは主にハヤテとアイネ、そしてPACに討伐させる。PAC達のレベリングを図るのと、ハヤテ・アイネの実力を見る為だ。
「よっと……」
襲い掛かって来るモンスターの攻撃を、ハヤテがラウンドシールドで受け止める。その脇から、リンとロータスが飛び出した。
「【スライサー】」
「【一閃】」
同時に繰り出した武技で、モンスターが怯む。そこへアイネが加わった。
「【パワースラスト】……!!」
力強く突き出した槍が、モンスターの胸に突き刺さる。そこで丁度、モンスターのHPがゼロになった。
「バランスは良いね」
「盾役にトドメ役……それに遊撃と、回復役の後衛……確かにバランスは良いです」
ヒイロとレンが、五人の戦い振りを見て頷き合う。
「それにハヤテは、動きが凄い良いね。滑らかだよ」
「そうでゴザルな。ハヤテは、VRゲームに慣れているでゴザル」
ジンによると、ハヤテは中学に入る頃からVRゲームをプレイしていたという。つまり丸二年は、VRに慣れ親しんでいるという事だ。
「特に、何でゴザったか……えぇと、エフエフ? じゃなくて……」
「もしかして、FPSの事で御座いますか?」
パッと言葉が出て来ないジンに、シオンが助け船を出す。
「そう、それでゴザルよシオン殿! ハヤテはFPSで、結構いい成績を残していたと聞いたでゴザル!」
FPS……それは、ファースト・パーソン・シューティングゲームの略称だ。VR界隈では、プレイヤーが銃を持って戦うゲームである。武器の性能や立ち回り方が勝敗に直結するゲームである為、プレイヤーの実力が試される。
「成程ね……」
次いで、話題に上るのはアイネだ。
「アイネちゃんは、薙刀を習っていた事があるそうです」
「成程、道理で見事な槍捌きなわけだね」
槍を薙刀に見立て、モンスターの攻撃を受け、いなして、反撃する。その動きはヒイロの言う通り、惚れ惚れとする動きだ。相手の攻撃を受け流してから、鋭い反撃を叩き込む……そんなアイネの技術は、見事という外無い。
VRゲームでの戦闘には、現実のプレイヤースキルが影響する事もある。レベル15槍の素人と、レベル10の槍の達人が戦うとしよう。5ポイントのレベル差を、引っ繰り返す事など良くある事なのだ。だからこそ、VRゲームとは奥深い面があるのである。
新メンバーの二人は、即戦力レベルだと言って良いだろう。そうすると、次はPACだ。
「PACは、ギルドメンバーも連れて行けるんだっけ?」
「うむ、PACを傭兵としてフレンドやギルドメンバーに貸し出せる……と記述があるでゴザルよ」
ジンの返答に、ヒイロは満足そうに頷いた。それならば契約者の三人が不在でも、育成を手伝えると思ったのである。
ジンが言った通り、PACはフレンドやギルドメンバーに傭兵として貸し出せる。勿論、契約者の方が優先されるのは当然だが。
ただし、デメリットもある。契約者と共に行動する場合は、戦闘経験値は100パーセント得られる。しかし傭兵として別行動をする場合の取得経験値は、80パーセントに落ちるのだ。
その為、基本的にPACは契約者と行動するのがメインとなる。
「それにPACが戦闘不能になると、しばらくは行動出来なくなりますね……」
レンの言葉に、ジンとヒメノも頷いた。
PACが戦闘不能になると、しばらくは呼び出せない。ギルドホームならば、不在状態になる。復帰するまでに掛かる時間は、明かされていない。
そうなると、必要な時にPACを連れて行けないという事態になってしまうのだ。これは中々に辛い部分である。
「メリットもあれば、デメリットもあるか……よくよく考えていかないとな」
そんなヒイロの言葉に、ジン達も真剣な表情で頷いた。
ハヤテ&アイネのスペック公開と、PACの仕様についてです。
そして【七色の橋】が本格始動します。
次回投稿予定日:2020/8/3




