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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二十章 第四エリアを目指しました

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20-16 幕間・ダンジョンに挑む者達

挿絵(By みてみん)


本作をご閲覧下さる皆様へ、作者より残暑お見舞い申し上げます。

残暑……かな? かなり暑いが……?

まだまだ暑い日が続きますが、皆様も熱中症などに気を付けて日々をお過ごし下さいませ。


滑り込みで、何とか描けました。せめて主人公達は描きたかった。

ちょっとしたスキマ時間に読むのに最適と言っても過言ではな……いや、過言ですかね。

ともあれ、【忍者ムーブ始めました】を今後共宜しくお願い致します。

 クラン【十人十色ヴェリアスカラー】がエリアボス攻略に向けて、ダンジョンを進んでいくその頃。同じ様に、地底奥深くのダンジョンにあるパーティが居た。


「やはりさっきのモンスターは、[試練の塔]二百階から三百階の間くらいのレベル設定かね?」

「そうみたいだな。やれやれだ、他のパーティの奴等は大丈夫かどうか」

 そうぼやくのは、ジョーとカガミ。【絶対無敵騎士団】に所属するメンバーであり、仁達と同じ[日野市高校]に通う面々である。

 つまりクラン【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】も、エリアボス討伐の為にダンジョンアタックを敢行している……という事だ。


 現時点で、このパーティに大した損害は無い。故にジョーとカガミは、他のパーティの安否に意識を向ける。

 そんな二人のぼやきに、先頭を歩くフデドラゴンが振り返って微笑んだ。

「第五回イベントで、俺達のギルドもバッチリ鍛え直す事が出来ただろう? 他の皆も大丈夫だと信じて、今は前に進もう」

「フデドラさん……はい、そうですね!」

 力強さと優しさを兼ね備えた、爽やかな笑み。そんなフデドラゴンの言葉と笑顔に、ジョーとカガミは即座に気合いを入れ直した。


 その様子を見ていたアスナは、フデドラゴンに熱の籠もった視線を向けていた。そんな彼女の様子を見ていた魔法職の女性プレイヤー・ニコルが、さり気無く近付いて小声で声を掛ける。

「良かったね~、アスナ。今回のパーティ編成、フデドラさんと一緒でさ」

「ニ、ニコっ!? ま、まぁね? フデドラさんは、ウチの最高戦力だから? 頼もしい限りだし?」

「愛しいし、切ないし、心強いし?」

「平成の名曲でイジんないでよ」

 そう言ってアスナは、ニコルにジト目を向け……そして、すぐに苦笑した。

「そっちは残念だったね、ヴェディさんと一緒が良かったんでしょうに」

「ま、しゃーないけどね。ウチのツートップは、男女問わずに競争率高いからねぇ」


 ギルド【絶対無敵騎士団】は、元々はエンジョイ勢に近い雰囲気のギルドだった。その要因は主にギルドマスターであるフデドラゴンと、サブマスターであるヴェディにある。

 温厚で優しい性格だが、言うべき時にはしっかり言うフデドラゴン。そしてノリが軽く大雑把そうに見えて、細部に気を配り面倒見の良いヴェディ。このツートップの人望によって、ギルドに加入したメンバーが大半を占めるのだ。

 故に彼等のパーティに参加したいと考えるメンバーは、男女問わずに多いのである。


「フデドラさんとヴェディさんのパーティは、いつもすぐ埋まるしね。ダン君とタイガー君のパーティは、何か申し訳ない感あったね……」

「ねー。本人達のせいでは無いんだけどね……残念ムードが漂ってたよね」

 フデドラゴンかヴェディのパーティに入りたい……という希望が叶わなかったメンバーが入る事になった事で、ダンとタイガーがパーティリーダーを務めるパーティは開幕から残念ムードだったらしい。


 しかしその際に、あるプレイヤーの様子を見ていたアスナ。彼女はその事について、思い出した。

「でもパラちゃんは、ベディさんじゃなくエム君が目当てっぽくない?」

「あー、パーランドね。PKKの時に組んでから、エムの近くに居る気がするなぁ……これはもしや、【無敵ウチ】初のカップル誕生とか?」

「最近のエム君は良い感じだし、あり得るかも。そうだったら素敵だよね」

 後衛は自分達とPACパックだけなので、二人はそんな会話を小声でしながらフデドラゴン達の後に続いていく。

 [試練の塔]を完走出来たプレイヤー達にとって、それくらいの余裕があるのが現状であった。


************************************************************


 一方その頃、同様にエリアボスの居る場所を目指して攻略する面々。白を基調とした服に、銀色の防具で統一されたギルドのメンバー達。

「うっし、ここのモンスターは掃討完了! 全員、HPや装備耐久はどうだ?」

「ブレイクさん、特に大きな損害無しです! デバフも皆、喰らってません!」

「よし、オーケー! それじゃあ引き続き、先に進むぞ!」

『はいっ!』

 彼等も【絶対無敵騎士団】同様、クラン【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】に加入しているギルド【白銀の聖剣】である。彼等は【絶対無敵騎士団】とは異なり、真剣そのものの様子でダンジョン攻略に全力を注いでいる。


 その理由は、今回のエリアボス討伐のルールによる所が大きい。

 ジン達【十人十色ヴェリアスカラー】は、ギルド単位での編成を中心とした三箇所を同時に攻略する方針を取った。これは第四回イベントの報酬である≪ギルドフラッグ≫の効果を、最大限に得られる点が大きい。それ故、五枠のレイドパーティは攻略前に決まっている状態だ。


 一方【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】は、パーティ自体はギルド統一編成だ。しかし攻略するのは西側のエリアボスが待ち構える、地底ダンジョン。そしてレイドパーティは、エリアボスの前で初めて確定となる。


「今の所、順調だねブレイク」

 サブマスターであるスパーダに声を掛けられたブレイクは、視線は前に向けたまま頷く。

「あぁ、だが油断は禁物だ。一番最初にボスに挑むレイドパーティに参加出来るかは、早い者順。その一枠を勝ち取って、エリアボスを最速で倒してみせよう!」

 今回【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】が採用したのは、クラン全員が一つのダンジョン攻略に挑み、パーティが五組揃った時点でレイドパーティとしてエリアボスに挑むというものだった。

 これは「どの勢力よりも早くエリアボスを討伐して、クランの威光を示す」という意図がある。


 恐らく真っ先にエリアボスの待つ場所に辿り着くのは、アーク率いるパーティだろう。彼はギルドメンバー上位二十名を選び、自分のパーティメンバーにはシルフィ・ベイル・アリステラ・セバスチャン・クルス・ホープといった強者を選抜している。

 そしてサブマスターに復帰したギルバートのパーティには、ライデン・ルー・ヴェイン・バーベラ。アークを支えて来たコンビという事もあり、全パーティの中で一、二を争う実力者揃いだ。


 それに次ぐとしたらフデドラゴン、次にヴェディのパーティだろうとブレイクは考えた。

 この二人は元々実力は高かったが、仲間達の実力がそれに及ばなかった為に脚光を浴びるには至らなかった。しかし第四回イベントで【絶対無敵騎士団】の実力は大きく底上げされ、ランキング内に入る程に成長していた。

 恐らくフデドラゴンとヴェディのパーティは、【聖光の騎士団】精鋭に次ぐ強力な布陣となっているだろう。


 となれば、残るのは一枠しかない……ブレイクは、そう確信していた。

 最後の一枠に収まるのは【聖光の騎士団】か、それとも【絶対無敵騎士団】か。否、それは自分達【白銀の聖剣】だ。

 だからブレイクはギルドでも選りすぐりのメンバーを集め、そしてパーティを決定した。

「アークもフデドラゴンも俺達を傘下じゃなく、肩を並べるギルドだと言ってくれたんだ。そこまで言われたら、実力でそれを証明してみせないとな」

『はいっ!!』

「俺達だって[試練の塔]を、最後まで攻略出来たんだ。トップクランの一員の底力、見せてやろう!」

『おぉーっ!!』

 ブレイクの気合いの籠った言葉に応じて、パーティメンバー達が拳を突き上げる。

 彼等を突き動かすのは憧れでも無ければ、対抗心でも無い。自分達を認めてくれた者達と、肩を並べる存在であると証明したい。

 そんな純粋な向上心により、実際に【白銀の聖剣】は第四回イベントの頃よりも大幅に実力を付けていた。その成果が示されるまでの道のりは、まだ始まったばかりである。


************************************************************


 二つのクランがダンジョンアタックを開始したのと時をほぼ同じくして、【開拓者の精神フロンティア・スピリット】のパーティも北側の地底ダンジョンに入っていた。


 こちらは【十人十色ヴェリアスカラー】同様に、対エリアボスのレイドパーティ五組を事前に想定した編成だ。だが万一に備えて別の組み合わせにも対応できるように……というコンセプトの下で決定していた。だからこそ、全戦力を一つのダンジョンに集中させていた。

 例えば【森羅万象】パーティ五組によるフルレイドパーティを想定しているが、その内の一パーティで問題が発生した際は別のギルドのパーティが代わりに加わる……といった方向性だ。


 これは【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】同様に「いち早くエリアボス討伐を果たす」という目的もあるのだが、それよりも重視しているのは「エリアボス攻略情報を確実に手に入れ公開する」という点にある。

 つまりは武力を以って存在感を示すのではなく、確実な情報を提供して存在感をアピールする。【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】とは異なる形で、トップクランとしての立場を確立する。

 これが今回、【開拓者の精神フロンティア・スピリット】が第一に掲げている方針である。


 そんな【開拓者の精神フロンティア・スピリット】に新たに加わった、【深緑の大樹】。そのギルドマスターであるメルセデスが率いるパーティは、危なげない様子でモンスター達を倒していた。

「皆、手早く頼むぞ!!」

「了解!!」

 パーティの最前に立ち、大盾を構えるメルセデス。彼女は大盾をモンスターに向けると、【盾の心得】ではポピュラーな武技を発動させる。

「【ウォークライ】!!」

 武技【ウォークライ】によってメルセデスへのヘイト値が上昇し、モンスター達は標的を彼女に定める。そのままエリートゴブリン達の武器が、矢が、魔法攻撃がメルセデスに向けられるが……。

「全て受け切ってみせる……【アイギス】!!」

 ウルトラレア装備、大盾≪シールド・オブ・アイギス≫。全サーバーに五つしか存在しない、最高レベルの大盾の一つだ。これは武装スキルを発動させた際、使用者のVITを大幅に上昇させる。その上昇値は、強化レベル最大で三倍である。


 メルセデスはギルドマスターの中では珍しく、攻撃するタイプではない。大盾を構えて仲間を守る、盾職タンクだ。これは彼女の性格によるもので、モンスターならばまだしも人を攻撃するのが苦手だからである。

 それもあって第四回イベントでは成績が振るわなかったが、イベント報酬のチケットで運良く入手したこの≪シールド・オブ・アイギス≫によってその防衛性能が大幅に向上。第五回イベントではPKKにも参加しており、サブマスターにして同じ大学の友人であるダンテと共にPKer達の蛮行を阻止していた。


 そんなメルセデスの作り出したチャンスを生かし、相手を狩って行くのがダンテ達の役割だ。

「一気に決めるッ!!」

 長剣を振るうダンテを含む前衛メンバーが、一斉にモンスターの前衛に攻撃。その合間に遊撃メンバーがゴブリンアーチャーやゴブリンマジシャンに迫り、一気にダメージを与えていく。

 プレイヤー相手には効かないが、モンスター相手ならばこの戦術はかなりの効果を発揮できる。


――課題となるのはPvPだけど、それはこのダンジョンアタックの後で改善しても遅くは無いわよね……それにいざとなれば、()()()()()があるし……!!


 メルセデスは[試練の塔]で四神スキルの情報を知り、四神戦の周回を行っていた。攻略と並行して、暇さえあれば周回に時間を費やしていたのだ。その甲斐あって、彼女はジン達の様に複数の四神スキルを保有している。

 本人は自覚していない様だが、実際にはそれを考慮すればPvPでもかなり優位に立ちまわる事が出来るのである。


************************************************************


 同じ頃、メルセデス達と同じくらいの深度には【陽だまりの庭園】の面々の姿があった。丁度エリートゴブリン達の襲撃を受け、大した損害も無く返り討ちにしたところである。

「ナコトさん。パーティメンバー全員、ダメージは軽微です。このまま進みますか?」

「えぇ、そうね。そろそろ空腹度も下がって来たし、歩きながら食事にしましょっか」

 空腹度が一定値を下回ると、ステータスダウンとHPとMPが徐々に減少する。長丁場のダンジョンアタックである以上、空腹度を一定以上に保つのは必須である。

「そうしましょうか。じゃあ、私は索敵しながら進みますね」

 エリートゴブリン達が待ち受けているはずなので、サブマスターのセーラが【感知の心得】を駆使して索敵を担当する。


 万が一別行動になった時の為に、食料は各自が≪収納鞄≫に保管している。勿論、時間が掛かる事を想定して、その量は多めだ。

 それぞれが食料を取り出し、それを口に運びながらダンジョンを進んでいく。そのラインナップは、ジン達と同様に片手で食べられる軽食系が多い。ホットドッグやサンドイッチ、おにぎりや串焼き等である。

「んー、美味し!」

「ナコトさん、サンドイッチめっちゃ美味いっす!」

「ふふっ、ありがと」

 今回のダンジョンアタックに備えて【開拓者の精神フロンティア・スピリット】は大量の食糧を用意したのだが、調理チームにナコトも参加しサンドイッチ班を担当していた。その為【陽だまりの庭園】のメンバーは、少なくとも三食分はナコトの作ったサンドイッチを確保していたりする。


「自分で作ったものを食べるのも何だし、おにぎりにしよっかな……うん、シンラちゃんのおにぎりも美味しい! 味付けまで自分で調整出来るのは、本当に良いよね」

「DKCだと、味の微調整は出来なかったですもんね。塩が多めならこれって感じで、味が固定されてましたから」

 VR・MMO・RPGの多くは、使用した材料とその分量で()()()()()()()()()()()()()()()()()仕様が多い。つまり、決まった味になるという事である。

 これはある程度の範囲を設定しなければ、複雑な演算処理が必要となって膨大なリソースを必要とするからである。


 しかしAWOは材料の差や、調味料の差……更には調理時間や温度による差などをも反映して、料理の見た目・味・食感・匂いが再現されるのだ。

「ぶっちゃけここまで自由度の高いゲーム、他には無いっすよね」

「確かに。どんな技術が使われてるんでしょうね」

 この点にはゲームを開発するクリエイター達も、どんな技術が使われているのかと必死になって調査をしている。その調査とは現実での技術提供交渉以外にも、実際にAWOをプレイし……どんな超技術なのか見当もつかず、頭を抱えていたりするのだ。


「また、生産系のイベントもあるかもしれないわよね。その時は、私も参加してみようかな」

 ナコトがそう言うと、男性陣が歓声を上げる。

「ナコトさんなら絶対入賞できますよ!」

「そうそう! 本当に美味しいですから!」

「投票制なら、俺絶対にナコトさんに票入れます!」

 彼等がこうまで熱弁するのは、実際にナコトの料理が美味しいからだ。しかし、勿論それだけではない。


 ギルドだけで活動している時は、料理担当が決まっていたのでナコトの料理する姿を見る機会は無かった。むしろギルドマスターとして、処理しなければならない案件に掛かり切りだったのだ。

 しかし料理をしているナコトの姿が、クラン加入以降よく見られる様になった。最初は「レアな光景だ」と思われていたのだが……実際に彼女の作る料理の美味しさに加え、感想を伝えたら嬉しそうに微笑む姿を見る事が出来たのである。

 普段はギルドマスターとしての顔しか見る事が出来ない、ナコトの可憐で家庭的な一面。それを見たギルドメンバー達は、ぶっちゃけチョロ過ぎじゃないか? と言いたいレベルでイチコロだった。

 もっともそのお陰でギルド内も活気付いているので、一概に悪い事とは言えないのがなんとも。


 ちなみにその実情を知っているサブマスターであるセーラは、手が空いている時は料理の方を手伝って欲しいとナコトに進言している。

 ギルド男子の士気向上も出来るし、ナコトの手料理が食べられる。彼女にとって、一石二鳥だったから。


************************************************************


 ちなみに、ナコトのその人気は【陽だまりの庭園】だけに収まるものではなかった。

「うまうま。ナコトの料理の味は、やっぱり安心する味だわ」

「ナコトさんの料理を毎日食べられるギルマスに、全俺が嫉妬」

 ナコトの双子の妹であるノミコがギルドマスターを務める、ギルド【朧月夜】。【陽だまりの庭園】とは文字通り姉妹ギルドで、DKC時代から協力体制を確立していた間柄だ。

 そんな訳で、ナコトの女性としての魅力は彼等もよく知っていた。しかし料理上手な件は、クラン加入で新たに知られた新事実だった。それによってこちらでも、ナコトの人気が上がっていたりする。


 しかしノミコを差し置いて、ナコト派になるメンバーは居ない。その理由は、結構単純である。

「ナコトがサンドイッチを作ってくれたよ。ナコトはアンタ達がエリアボス討伐を果たせると信じてるんだ。ナコトにありがとうと言って」

「ノミコさんwww そのネタはwww」

「ありがとうwww」

「うんうん、ちゃんとお礼言えてえらい」

「追い打ちやめてwww」

 ナコトに比べて、ノミコは男女問わずに距離感が近い。別にボディタッチやスキンシップが、普通よりも多いという訳ではない。彼女は結構、こういったムードを率先して作ってくれるのだ。


 そして彼女は「ギルドマスターをしているけど、別にギルドで私が一番偉いとは思ってない」と公言している。実際にノミコは、誰とでも同じ目線で話す様にしている。

 彼女がそうする理由を、一度ギンガが聞いた事がある。その返答は、これまた単純明快……その方が自分も皆も居心地が良いと思うから、だ。

 そんなノミコの考えにギンガは感銘を受けて、居心地の良いギルド作りに協力するようになる。その結果、【朧月夜】はフレンドリーさが特徴的なギルドになったのだ。

 例えるならば【陽だまりの庭園】は生徒会的な雰囲気で、【朧月夜】は部活動の様な雰囲気だろうか。


「ちなみに、ノミコさんって料理とかするんですか? 確か、二人で暮らしてるんですよね?」

「やってやれなくはないけど、やらない。だってナコトの料理が美味しいから」

 という事にしているが、実際にはノミコは料理が不得手な方だ。理由は分量を量ったりするのが苦手で、目分量でやってしまうせいである。大失敗まではいかないが、ナコトの料理と比べると格が落ちるらしい。

「そうなんすか?」

「ちょっ、そんな目で見ないでよ。ナコトが料理と洗濯をしてくれる代わりに、掃除や買い物は私がしてるからいーの」

 運動神経が良いノミコに対し、ナコトはあまりそちら方面が得意ではない。なので力仕事だったり、身体を動かす様な家事はノミコの担当らしい。

 実際にそれで上手く回っているので、二人としてはそれが丁度良いのだろう。


「それよか、ギンガの方が気になるんだけど。確か、妹ちゃんと二人暮らしでしょ?」

「うっ……いや、まぁ……」

「可愛い妹ちゃんにお世話されて、VRMMOも文句言わないでやらせてくれるなんて……裏山」

「良い妹さんじゃねーか、今度紹介して」

「嫌だよ、普通に」


 だがノミコも、そしてギンガや他のメンバー達も、常におちゃらけている訳でも無い。

「皆、【感知】でモンスターの反応あったぞ! 前方に十、それにその左右にそれぞれ五だ!」

「おっと、いきなり二十体か。ここまでは、十体前後だったが……」

「難易度が上がった……って事は、ここらが節目って事かしらね。それが二分の一か、三分の一かは解んないけどさ」

 索敵担当の言葉を聞いて、サッと臨戦態勢に移行するノミコ。ギンガや他の面々も同じ様に、戦闘態勢を整える。


「まぁ、私達なら行けるでしょ。いつも通り、落ち着いてやれば大丈夫」

 先程までのおちゃらけた雰囲気はどこへやら、パーティメンバーを牽引するリーダーに意識を切り替えたノミコ。そんな彼女の背中は、彼等にとっては頼もしくそして誇らしい。

 本人にそのつもりが無いとしても、誰が何と言おうと彼女はギルドマスターだ。だからこそ【朧月夜】のメンバーは、全力でノミコの後に続くのである。

次回投稿予定日:2025/8/30

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― 新着の感想 ―
ここら編のギルドもトップ寄りだけど本当に雰囲気がいいなぁ…。 いや、どこぞの牙達がアレすぎるだけか?w
各々 攻略開始ですか さて 我らが頭領様率いるVCより早く 攻略出来るパーティーは 現れるのでしょうか?
各トップクランもダンジョン攻略に乗り出しましたかアーサーやアークなど主要メンバーの動向が気になって夜しか眠れませんw
感想一覧
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