19-17 マッチングPK・1-潜んでいた者-
※後書きに次回投稿予定日の記載が漏れていましたので、追記致しました。
トップランカー達による、マッチングPK阻止作戦が続く中。その傍らで、彼等を支援するプレイヤー達も居た。
「【暗黒】は残り六人……二組を討伐したら、壊滅出来るわね」
「ギ、≪ギルドクレスト≫によると……残りは、ダリル・バーラ・ライカに……【ウドゥ】、【シニエ】と……【シシオ】……です」
「首謀者達の壊滅は~、目前みたいね~?」
「問題は他のPKギルド……そして、無所属のPKerがどれだけ残っているかですね」
クラン【十人十色】の拠点[七色城]の、大広間。そこを活動拠点として、PKK参加勢力の面々が集合していた。彼等は掲示板に書き込まれた情報を取り纏め、PK側の残存勢力がどの程度か……そして彼等がどこでマッチングPKを画策しているのか等の、情報収集に勤しんでいる。
その中心となるのは、この拠点の持ち主である【十人十色】所属メンバー。PKer戦に不安がある、生産メインの面々だ。しかし、今この大広間に居るのは彼女達だけではない。
「ハレルヤが、【獄炎】の≪ギルドクレスト≫を発見したそうだ! メンバー数は十五人らしい!」
そう報告したのは、【聖印の巨匠】ギルドマスターであるトール。彼の報告を聞いて、顔を上げたのはサブマスターを務めるネフィリム……そして、【森羅万象】ギルドマスターのシンラであった。
「そうなると、残りは一組ですねぇ」
「あら~、助かるわね~」
彼等もミモリ達と協力して、情報の取り纏めに尽力している。理由は当然、現地で戦っている面々に全てを丸投げなど出来ないと考えたからだ。
自分達が彼等の為に出来るのは、残存勢力の確認とその情報を現地のメンバーに伝える事。そうすれば、戦っている彼等の精神的な負担を軽減できると考えたのである。
いつ終わるのか解らない戦いでは、戦闘メンバーが疲弊してしまう。少しでも先の見通しがつけば、心境的にも楽になると考えたのだ。
「うーん……≪ギルドクレスト≫で情報を得られない、フリーランスが厄介ですね」
ネコヒメがそう言うと、シンラがミモリとカノンに視線を向ける。
「そういえば~皆さんは以前、大規模PKの標的にされていたわね~?」
スパイSNS【禁断の果実】を追い詰める際に、公になった大規模PKの一件。その騒動には、確かに無所属と思われるPKer達が大勢参加していた。
「全部が全部、フリーランスかは不明ですが……実際、とんでもない数でしたね」
「た、多分……最初に襲って来た、のが……百人、くらい? そ、その後に……五十人、くらいの……PKerが……」
その数を聞いて、トールは唖然としてしまう。
「マジか……? そんな大勢で襲われるとか、考えたくも無いな……」
実際にそれを体験したミモリとカノンは、苦笑いしかできない。実際に【七色の橋】と増員前の【桃園の誓い】、そして【魔弾の射手】とリリィ・クベラというメンバーでなければ……そして偽名で正体を隠していた頃の、あの人物の助太刀がなければ危険な状態だっただろう。
――皆、どうか気を付けて……ユージンさんとケリィさん達は、無用な心配な気がするけど。
心の中で仲間達の無事を祈りつつ、ミモリは視線を掲示板に向ける。そこにまた、新たな書き込みがされたところだった。
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351 【情報屋】スオウ=ミチバ
活動中の皆さんに耳より情報!!
PKギルド【キリングドール】は無事壊滅しましたー!!
352 名無し
( ゜Д゜)!?
353 名無し
>351
情報屋……だと!?
354 名無し
この人確か、第四回初日の夜に……
355 名無し
情報屋ってギルドなのかと勘違いしたw
356 【情報屋】スオウ=ミチバ
リーブロ・オナラマジン・ザリーフは【魔弾】の人が書き込んでたね
ギルマスのマックイーンとサブマスの【ダイアー】【バルログ】を討伐したよー
ちなみにマックイーンは昨夜、【コラソン】【ベルディ】と一緒に【漆黒】の人にやられていたそうな
予備の装備やスキルでマッチングPKしようとしてたみたいだね
357 名無し
情報屋なら何か情報売ってくれよ
誰かのスリーサイズとか
358 名無し
>355
ギルド【情報屋】とかwww
359 名無し
>354
エグい戦い方の人だよ
360 名無し
>357
ギルティ
361 名無し
また脳味噌が下半身に直結してそうなコメが
362 【情報屋】スオウ=ミチバ
>357
俺のスリーサイズ、悪いがトップシークレットなんだ
363 名無し
ともあれPKギルドが一つ消えたのはめでたいな!
364 名無し
>362
wwwww
365 名無し
>362
草www
366 名無し
>362
お前のじゃねーよwww
367 名無し
>362
クッソwww
くやしいでも笑っちゃうwww
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そんな掲示板の書き込みを見ながら、一人の男がくつくつと笑う。
「スオウも随分、楽しんでいるみたいだね」
愉快そうな男の言葉に、同行する美女がクスリと同じく笑った。
「そうですね。スオウさんは認めないでしょうけれど、こうして皆のフォローをして動くのがお好きですから」
談笑する二人の足元には、三人のプレイヤーがHPを失い倒れ伏していた。その内の一人が、歯軋りをしながら二人を見上げて口を開く。
「ユージンに、ケリィ……何者だ、テメェらは……ッ!?」
「こんな、こんな手も足も出ないなんて……ッ!!」
そう、談笑していたのはユージンとケリィだ。二人は未だ【変身】したままであり、見た目は特撮ヒーローと変身ヒロインである。
PKer三人を討伐した二人は、ろくにダメージを与える事も出来ないまま討伐されたらしい。現在は蘇生猶予時間で、地面に転がる事しか出来ずにいる。
そんな男達の言葉に、ユージンは肩を竦める。
「何者か、ねぇ? ふむ……良いだろう、企業秘密だが教えてあげよう。僕は定年退職して老後を楽しんでいる、ただのしがないジジイだよ」
ユージンがそう宣うと、ケリィは苦笑しながら小首を傾げる。
「それだと私も、同じく老後を楽しむお婆さんですね?」
「……君達をお婆さんと呼ぶのは、何かなぁ……」
ユージンもではあるが、ケリィに至っては二十代の美女にしか見えない。老婆と言われても、はいそうですかとはならないだろう。
おちょくられている。そう感じた男達は怒りの声を上げようとしたが、その前にユージンが言葉を続ける。
「ところで、そこの君……【シュライク】という名の、戦鎌使いの君。転生して、名前を変えた様だね」
ユージンが何気なく言ったその言葉に、シュライクは目を見開く。他の二人は、何の話だろうかと視線をシュライクに向けている。
「確か前の名前は、【モズ】じゃなかったっけ? 名前の由来は”モズの早贄”……かな?」
ユージンの一言に、シュライク以外は驚き目を見開いた。モズという名を聞いたPKer達は、どうやらその名を知っていたらしい。
「貴様ッ!? どうしてそれを知っ……」
シュライクがその言葉を言い切る前に、PKer達の蘇生猶予時間が尽きる。
「企業秘密、その二……僕の目は特別製だからだよ。もっとも、もう聞こえていないだろうけどね」
彼等は強制ログアウトになり、そのまま二十四時間はログインが出来なくなった。同時に所持品とスキルオーブを全てドロップして、残されるのはプレイヤーレベルのみとなる。
しかしながら、ユージンは「やっぱりね」とドロップした品々を見て頷いた。
「モズことシュライクの所持品だけは、必要最低限。KILLされて全ロスした時の損失を、最小限に収めるつもりだったんだろう」
「こうして違いを目の当たりにすると、よく解りますね。そして同じ様な対策をしているのが、【暗黒の使徒】……という話でしたね?」
「あぁ、タイチ君とエルリア君が報告してくれていたね。他の【暗黒】を討伐した面々にも、聞けるだけ聞いたんだが……どうやら、対策しているのはほぼ確定だよ」
今回の騒動は【暗黒の使徒】が始めたマッチングPKに、他のPKer達が乗っかった事で話が拡大した形となる。そしてマッチングPKに乗っかったPKer達は、所持品やスキル等はいつも通り持ち得るだけ持った状態だ。
それは当然と言えば当然で、PKerは総じて重犯罪者プレイヤー。彼等はシステム的に町に入る事が出来ないので、出来合いのホームを購入したり出来ないのだ。荷物を保管する倉庫は、プレイヤーホームやギルドホーム……もしくはクランホームに設置される。ホームを持たないPKer達は、所持品をそのまま持ち運ぶしかないのである。
「そして、それは【暗黒の使徒】も同じはず。彼等は[サナトス]サーバーの産業都市[ディヤス]に、ホームを構えていたはずだ」
「ホームを手放して、町の外に新たにホームを建てたのでしょうか? それだと結構な費用が掛かりますし、何より生産職が居なければ……」
ケリィはそう言って考え込むが、ユージンが首を横に振る。
「【暗黒】は土地さえあれば、いつでもホームを新たに設置出来るんだよ。僕達がそうだったようにね」
「あ……! イベントで使った、拠点ですね?」
「恐らくね。何処に設置したのかは解らないけど、第四回イベントの拠点を町の外に建てたんだろう。第四回で二十位以内に入った彼等も、【土地購入権】を手に入れる事が出来た訳だしね」
そこまで言って、ユージンはケリィに視線を向ける。
「何か、違和感を感じないかアリス? 今までの【暗黒】らしからぬPK手法……それもわざわざ、自ら重犯罪者になってまでだ。アイテムやスキルのドロップを抑えている事から、彼等が町の外にギルドホームを建て直したのは確実だろう」
「つまり重犯罪者堕ちに備えて、準備をしていた訳ですね。そして彼等と同じ様に事前準備をして、マッチングPKに臨んでいる勢力が居る……となるとこの二つの勢力は、繋がっている可能性が高い。しかもその勢力は、かつてある事件で壊滅させられたことがある……ですね、ユート君?」
二人の考えは、共通の認識へと向かっていた。
……マッチングPKを目論んだ【暗黒の使徒】には、ある共謀者達が居る。
「あと、僕はユージンだからね?」
「最初に名前を呼んだのは、ユージン君ですけどね?」
「すんません」
そんなやり取りをしていたら、掲示板に新たな討伐報告の書き込みがあった。
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375 【桃園の誓い】ダイス
西側[試練の塔]三百六十階層で【不滅の獄炎】のメンバーを討伐
名前は【カガリ】【ロダン】【マドカ】
376 名無し
ダイスニキ!!
ダイスニキじゃないか!!
377 名無し
名前からしてカガリとマドカは女性プレイヤーだったのかな?
PKerって男性ばっかのイメージあるけど……
378 名無し
もうマッチングPKするPKerもほとんど居なくなってきたんじゃない?
379 【桃園の誓い】ダイス
>377
だが男だ
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相変わらずの掲示板のノリに苦笑しつつ、ダイスはシオンに視線を向ける。
「もう、PKKも終盤かね」
「そうね……ミモリ様からも相当数のPKerや、PKギルドが討伐されていると情報共有があった事だし」
ついさっき倒した三人で、【不滅の獄炎】が全員討伐済み。ギルド【キリングドール】に続いて、壊滅したPKギルドは二組目だ。
「残りは【暗殺倶楽部】に【深淵】……そして首謀者の【暗黒の使徒】だな」
この中で最も警戒しなければならないのは、やはり【暗黒の使徒】。まだギルドマスターであるダリルの討伐報告は、書きこまれていないのだ。
「ダリル……あの男の実力は、決して低くはないのよね」
「……まぁ、年明けのアレは相手が悪過ぎたってのがあるな」
年始に起きた事件の際に、ダリルが戦った相手はジンだった。ただでさえAWO最速忍者な彼が、ミモリが涙を流した事でブチ切れた状態……つまり容赦を捨てた、完全殲滅モードだったのだ。
それでもダリルは一方的に殲滅されるのではなく、ジンを相手に攻防戦を行えるだけの実力はある。即死攻撃が発動していなければ、ダリルはもう少しジンとの戦闘を行っていた事だろう。
それはつまり、AWOでも上位の実力を持つプレイヤーという事だ。
「ま、ここで言っても始まらないさ。それより、次に行くか?」
「そうね、行きましょうか」
この騒動の終着点は、恐らくもうすぐだ。二人はそう予想して、次のマッチングに向けてシステムを起動する。
二人が転送されると、そこには既に三人の男性プレイヤーが居た。カラーカーソルは緑で、PKerでは無いようだ。
「……【七色】のシオンさんに、【桃園】のダイスさん……ですね?」
三人の内の一人がそう言うと、ダイスが前に出る。ここまでずっと、ダイスはそうして来た……大切な恋人を、見知らぬ男性に近付けさせたくないのだろう。
「あぁ、初めまして……だよな? マッチング、宜しくな」
ダイスが軽く手を挙げて挨拶をすると、シオンはダイスの少し後ろで一礼する。
「【七色の橋】のシオンと申します、どうぞ宜しくお願い致します」
「俺は【ハンス】、フリーでプレイしている。使う武器はこの≪直剣≫で、前衛か中衛だな」
「【フェル】っつーもんだ。俺は見ての通り、槍使いさ」
「魔法職の【ライア】です……どうぞ、宜しくお願いします」
これまでマッチングした普通のプレイヤーの反応は、驚くか喜ぶか……もしくはシオンとダイスがコンビを組んでいる事に、目を丸くしているかだった。しかし今回マッチングした三人の様子は、実に淡々とした様子である。
――そういう事もあるでしょうし、不思議という訳ではありませんね。
――むしろ余計な時間を取られないから、楽と言えば楽か。
そんな事を考えていると、ハンスが二人に提案の言葉を告げる。
「ライアは後衛として……シオンさんに前に出て貰い、ダイスさんと俺とフェルでアタッカーですかね?」
「いや、一応ライアの護衛が必要じゃないか?」
「そうだな……居てくれるとありがたい。ダイスさん、お願い出来たりしますか?」
三人は真剣な表情で、編成について意見を出す。その意見に対して、シオンとダイスもその会話に加わっていく。
「おう、問題無いぜ」
「はい、問題ありません。私がタンク役として、タゲ引きを務めましょう」
編成が決まり、いよいよ攻略開始。次の階層へと続く扉へと歩き出した、その時だった。
最後尾を歩くライアが、音も無く腰の後ろに装備している短剣をダイスの背に突き立てる。
「な……ッ!? てめ……ッ!?」
振り返ろうとするが、身体が上手く動かない。どうやら、短剣には麻痺毒……≪パラライズポーション≫を仕込んでいたらしい。
「ダイス!? 一体、何を……ッ!?」
シオンがライアを止めようとして、大太刀の柄に右手を掛ける。そのタイミングを見計らっていたハンスが、シオンの右脇腹に直剣を突き出した。
「【ペネトレイト】!!」
発動したのは、防御力貫通効果を攻撃に付与するスキル【ペネトレイト】。その攻撃が突き刺さり、シオンのHPが減少する。
――私のVITを貫通するスキル持ち……!!
――こいつ等、最初から俺達を奇襲で殺る気で……!?
シオンが喰らった攻撃は麻痺ではなく、毒効果だった。これもまた、VIT特化のシオンに狙いを定めて対策したのだろう。
「油断はしねぇ……嬲るのも無しだ!!」
「あぁ、さっさと倒すぞ!!」
「それにしてもシオンと組んだのが誰かと思っていたが、まさか【桃園】のダイスとはな!! 何だ、お前等デキてたりすんのかぁ!?」
ライアは詠唱を始め、その間にハンスがシオンを攻撃する。そしてライアと交代したフェルが、動けないダイスに攻撃を打ち込んでいく。
PKer達の多くは、相手が苦しむ様を愉しむ手合いが多い。しかし彼等は倒す事自体を目的としているらしく、油断も慢心も無い。
その様子に危機感を覚え、シオンは思案する。
――アレがどうやら、役に立ちそうね……!!
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その頃ハヤテとアイネも、PKerを討伐した直後に三人のプレイヤーとマッチングしていた。
「じゃあ、俺が後方支援。アイと【ジェス】さんが、前衛アタッカーッスね?」
ハヤテがそう言うと、アイネと両手短槍使いのジェスが頷いて応える。そしてジェスとパーティを組んでいる片手斧とカイトシールドを装備した男【デュラン】、両手短剣使いの【バルドリアス】が言葉を続ける。
「はい、そして私が盾役を務めます」
「で、俺が遊撃だね。バランスが良い編成になるんじゃないかな?」
朗らかに笑ってそう言うバルドリアスに、ハヤテも「そうッスね」と笑顔で頷き返す。
そして攻略を始めるべく、先へ続く扉へ向かい歩き出したその瞬間だった。
「あぁ、そうそう……」
何かを思い出したかの様に、穏やかな口調で切り出しながら……デュランがハヤテに片手斧を投げる。
「ッ!?」
ハヤテは咄嗟に身体を仰け反らせて、片手斧を避けてみせる。しかしそれを読んでいたバルドリアスが、短剣でハヤテの左腕を斬り付ける。
「ククッ……!! 斬った!! 斬ってやったぜ!!」
先程までの穏やかな表情が嘘の様に、バルドリアスは醜く歪んだ笑みを浮かべている。
「ハヤテ君ッ!!」
アイネはハヤテが攻撃を受けた瞬間、無意識の内に身体が動いていた。ハヤテを斬り付けたバルドリアスに、意識を向け……そこで、ジェスの動向を確認していない事に気が付く。
「流石、気が付くのが早かったな……だが遅ェ!!」
突き出されたジェスの短槍を薙刀で弾くアイネだったが、彼は両手に短槍を持っている。そして今弾いたのは左手で繰り出された攻撃であり、続く右手の攻撃は一撃よりも早く鋭い。ジェスは恐らく、右利きなのだろう。
薙刀で二撃目をも弾くアイネだったが、ジェスの攻撃は止まない。弾かれる事を前提で、彼は攻撃しているのだろう。
「アイ……ッ!! くっ、身体の動きが鈍い……遅延効果か!!」
「正解だ」
更にバルドリアスがハヤテを斬り付ける間に、デュランが片手斧を回収。そのまま、ハヤテを攻撃するべく走り出す。
「今度は反撃の隙は与えねぇッ!!」
デバフを掛けた上に二人掛かりでハヤテを封じ、アイネには手数勝負での足止め。そしてその練度は、これまで遭遇して来たPkerよりずっと上だ。
――今度は……? 今、こいつ今度はって言ったか!?
――マッチングした相手をPKするのが目的じゃなくて……私達に狙いを定めて、倒そうとしているみたい!!
その違和感に気付けば、答えはすぐに導き出せた。そしてこのマッチングPKという騒動自体が、自分達を引き摺り出す為の罠だった事も。
「お前等……元【漆黒の旅団】か!?」
「お? 気付いたか……そうだよ、元だよ!! クソッタレがッ!! てめぇらさえいなければ、俺達はよぉっ!!」
動きの鈍いハヤテに、容赦無い攻撃が繰り出される。彼が身に纏う装備が、現環境で最高ランクの装備でなければ、既に倒されていただろう。
「お前達をブッ殺すこの為だけに、俺達はひたすら耐えて来たんだぜぇ!!」
「ハッハァ!! 俺等は大当たりだ!! あん時のクソガキ二人が、ノコノコ来たんだからなァ!!」
相手から感じるのは、明確な殺意。それを感じ取って、ハヤテとアイネは一瞬視線を向け合い……そして、視線が合った事で互いに同じ事を考えていると確信する。
すぐに二人は目前の相手に意識を戻して、反撃のタイミングを計りつつ攻撃を凌ぐ。
――私達は、防戦一方だったあの頃の私達じゃないわ……!!
――残念だけどまだ俺達には、手札がある訳で……切り札は、揃ってるッスよ!!
次回投稿予定日:2024/12/31(本編)




