19-12 マッチングしました3
北側にある[試練の塔]三百二十階層。そこで三人組のパーティが、ある二人パーティとマッチングした。
「えっ!? リ、リリィちゃん!?」
「うそっ、コヨミさんもいるじゃん!!」
「マジ……!? やっべ、すげぇ嬉しいんだけど……!!」
マッチングして早々にそんな反応をされたリリィとコヨミは、内心で苦笑しつつも笑みを浮かべて一礼する。どうやら男性二人に、女性一人のパーティらしい。そんな反応を見せる彼等が、PKerであるはずもない。頭上のカラーカーソルを見れば、それは一目瞭然だ。
その中で、一人の男性が「あっ」と声を上げた。
「二人も今、マッチングPKの対応中……なんだよね?」
彼女達がクラン【十人十色】に所属しているのは、有名な話だ。既に掲示板には仲間達からの討伐報告も書き込まれているので、その考えに行き着くのは至極当然の事である。
「はい、仰る通りです」
「私達もコンビで、PKerと戦う為に周回中ですね」
リリィとコヨミの返答に、男性は残念そうにしながら笑みを浮かべる。
「そうだよね。折角マッチング出来たけど、それじゃあ……」
マッチングをし直そうか。そう言いかけた彼に、コヨミが待ったをかけた。
「あ、このまま攻略でオーケーですよ!」
男性二人は意外そうな反応をするか、純粋に驚いていた。女性は嬉しそうに「本当!?」と、喜色満面の笑顔だ。
そんな三人に、今度はリリィが笑顔で話し掛けた。
「PK阻止も勿論大切ですが、こうしてマッチング出来た人と一緒にプレイする事も大切な事ですから」
これは勿論、トップクラン連合で話し合った末の結論だ。
PKerを阻止する為に周回をするのが今回の流れであるが、その中でPKerではないプレイヤーとのマッチングは当然起きる。そして今回、多くの二人一組が作戦に参加している。
その中で何度も作戦参加組とマッチングし、その度にマッチングのやり直しをされたら……他のプレイヤー達が、迷惑に感じる可能性は大いに有り得るはずだ。
故にPKer以外とマッチングした場合は、そのまま十層を攻略して次のマッチングをする……という方針に決定した訳だ。要するに、PKer以外から悪感情を持たれる可能性は避けようという事である。
そんな訳で、リリィ・コヨミペアとマッチングした三人は大喜び。そのまま早速、攻略を開始する事になった。ここで話題になるのは、リリィとコヨミが連れている二人……彼女達が契約したPACについてだ。
「その娘達は、やっぱり二人のPAC……で良いんだよね?」
「はい。こちらが私のPACの、スピカちゃんです」
「スピカよ、今回は宜しくお願いするわ」
「で、こっちが私のPACのリゲル!」
「コヨミちゃんのPACの、リゲルです。宜しくお願いしますね~」
スピカが刀一本であるのに対し、リゲルは盾と打刀を装備している。身に纏う装備もネコヒメが製作した、リリィやコヨミのアイドル風衣装に合わせた装い。見た目は勿論、性能も折り紙付きの装備である。
この布陣であれば後衛リリィ・盾役リゲル・攻撃役がコヨミとスピカとなり、実にバランスが良いチームと言えるだろう。
対する三人組はPACを連れていないが、長槍使いの男性と大盾持ちの男性……そして女性が弓使いという布陣の為、リリィ・コヨミペアとの相性は実に良い組み合わせだった。互いに足りない部分を補完出来るので、攻略における不安要素はかなり軽減出来るだろう。
「それでは、張り切って行きましょう!!」
マッチングパーティのリーダーは三人組とコヨミの希望で、リリィが務める事になった。そんな彼女の号令に、全員が腕を突き上げ声を揃える。
『おーっ!!』
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一方、南側[試練の塔]三百階層。こちらでも一般プレイヤー三人組と、トップランカー二人組のマッチングが起きていた。
「ふむ……PKerではなかったが、悪いマッチングではない様だ」
「だな。んじゃあ、今回のマッチング宜しくな」
青髪の青年と黒髪の青年がそう言うと、マッチングした女性プレイヤー二人に男性プレイヤー一人の三人は「あ、ハイ……」と返事をするしかなかった。
――おしゃぶりとマッチングするとはなぁ……。
そう……マッチングしたのは【ベビーフェイス】のサブマスターであるパルスと、大盾使いのヴォイドの二人。ある意味では、有名なプレイヤー二人組であった。
三人は「これはハズレマッチだな」と考えていたが、戦闘が始まればそれは間違いであったと思い知らされる。
「ハッ……俺の後ろには行かせねぇぞ!! 【ウォークライ】!!」
襲い来る天使達のタゲを引いて、その攻撃を自分に集中させるヴォイド。三百階層ともなれば一度に出て来る天使の数もそれなりの多さだが、彼のHPは五割を下回る事は無い。
その間に詠唱をしていたパルスから、三人組に支援魔法が掛けられる。
「【アジリティアップ】!! すぐに【ストレングスアップ】も掛けますので、それまではヴォイドを狙う天使のカットをお願いします」
「「「りょ、了解っ!!」」」
「カールとダイは、彼等の支援を!!」
「了解した、パルス殿」
「お任せ下さい、マスター!!」
堅牢な盾職に守られ、十分な支援魔法を施されているのだ。更にパルスのPACである機弓使いのカールに、ヴォイドのPACである槍使いのダイ。彼等も実に心強いPACであり、心強い事この上ない。
思っていた以上に、戦いやすい。これで戦いにくいならば、それは余程の連携下手か低レベルのプレイヤーくらいのものだろう。
一度の戦闘に掛かる時間も大して多くは無く、順調に階層を攻略していく一行。既にパルスとヴォイドはこの階層を攻略済みで、最適なルートを通っている。よってその道中、敵が出現しない場面は少なくない。
「成程~! じゃあ【ベビーフェイス】の皆さんも、例のマッチングPKを企てるPKerを討伐する為に来たんですね!」
「あぁ、そうなるね。こういう迷惑な輩を放置しては、折角の楽しいゲームが寂れていく原因になりかねないからね」
「それに、今回のPK手法は卑劣なやり方だろ? 三対二で最初から有利な状況でのPKとか、漢のする事じゃねーよな」
「仰る通りですね……その為に不利を承知で挑むとか、凄く格好良いです!!」
話を聞く限り、至極真っ当な理由で彼等はPKKに参加したらしい。あと、何だかんだで顔は良い。PACも含めて顔が良いので、マッチングパーティの顔面偏差値が上がっている。
そんな訳で会話が弾んでいる……三人組の内の一人(男子)と。女子二人は、賑やかに会話しながら先へ進む彼等に黙ってついていく。
理由は簡単で、パルスとヴォイドの言動はそうでもないが……視線からは、時折下心を感じるのだ。男子がそれに気付いていないのは、常に下心丸出しでは無いからだろう。恐らく男子との応対の時は、真剣にPKKに意識を向けている時。しかしふとした時に出て来る下心、正におしゃぶりイズム。
――言っている事はマトモだし、実際に行動を起こしているけれど……。
――どっちかというと、浸透しているおしゃぶりっぷりを払拭したいってのがありそうよねぇ……。
年下であろう女子達に見抜かれている、パルスとヴォイド。どうやら一度浸透したイメージを拭い去るには、まだまだ精進が必要そうであった。
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同じ頃……とある二人組とマッチングした三人は、緊張感を滲ませて武器を構えていた。
「クソッ……まさかPKerと遭遇するとはな……!!」
一人はソロプレイヤーで、イベント参加で得られるマッチングポイントを最大限稼ぎたいという青年。彼は「ソロであればPKerとマッチングする可能性を、減らせるはずだ」と考えていた。もし同じ様な考えのソロプレイヤーが居たら、その限りでは無い。
そして彼の両脇で武器を構えるのは、二人の女性プレイヤーだ。二人は「自分達は同性で、PK対象にはならないから大丈夫だろう」という考えからコンビでマッチングをしていた。相手が【暗黒の使徒】ならその可能性はあるが、他のPKギルドはその限りでは無い……彼女達は、その点を失念していた。
そんな彼等に、朗報です。
「PKerじゃなかったか……どうする?」
「ん-、なんか警戒されてますね? あの、御三方……私は【漆黒の旅団】に所属する【ビヴァリー】、彼は同じくムジークさんといいます。我々と同行するのが嫌でしたら、再マッチングでも構いませんがどうしますか?」
彼等は生粋のPKerだが、今回の場合はPKK側のPKer。そう、【漆黒の旅団】に所属するギルメンである。
「【旅団】のメンバー、か……」
「え……じゃあ、もしかして私達をPKしたり……しない?」
「い、いやいや……でも、PKerなのは同じじゃない……?」
そんな反応を見せる三人に、ビヴァリーは笑みを浮かべて肩を竦める。
「今回我々は、PKerのみを標的としています。まぁ信じられなければ、このまま再マッチングで構いませんよ」
「出来ればこのまま、攻略をした後にマッチングし直す方がありがたいな……その方が、無駄な手間が無い」
三人はそんなムジークとビヴァリーの言葉に対して、少し考え……そして、結論を出した。結果としては、そのまま同行して攻略するという形だ。
勿論、警戒は緩めていない。ムジークとビヴァリーが前に出て、自分達はその後ろからついていくという形である。背後から襲われたら、溜まったものでは無いという事だろう。
しかし、それも攻略の半ばとなる三百十五階層までであった。
攻略中はムジークの魔法攻撃と、ビヴァリーの鞭による攻撃だけで攻略して来た形だ。しかも苦戦などする事無く、圧倒的な実力で。その実力差に、三人は痛感させられてしまった……自分達をKILLしようと思えば、簡単に出来てしまう事を。彼等は本当に、自分達をPKするつもりは無いのだという事を。
そうして三人は、決意を固めた。
「クソッ、このままただ付いて行くだけじゃ寄生と同じじゃねーか!! 俺も前に出る!!」
「こんだけの実力差じゃ、前に居ても後ろに居ても同じよね!!」
「援護射撃は任せて!!」
三人も前に出て、ムジーク・ビヴァリーと共に戦闘に参加。その甲斐あって、攻略は順調に進んで行く。
その中で青年は、同じ前衛であるビヴァリーに視線を向けた。くっきりとボディラインが解ってしまう、身体に密着する様なボディスーツ。高校生から大学生くらいであろうあどけなさを感じさせる顔立ちに、絹糸の様なサラサラの銀髪ツインテール。そして穏やかな笑みに、丁寧な言葉遣い……何故彼女の様な少女が、PKギルドに所属しているのだろうか……そんな疑問が、拭い切れない。
「……アンタ、PKerっぽく無いな……」
思わずそんな言葉が、口を吐いて出てしまった。そんな青年の言葉に、ビヴァリーはニッコリと微笑んで「そうですか?」と返した。言われた言葉に対して、あまり気にしていないと言わんばかりである。
「まぁ、第四回イベントの後にギルドに加わりましたし……それまではPKerではありませんでしたから、そのせいかもしれませんね。でも、油断は禁物ですよ? こう見えて、こわ~いPKerですから」
「……そうは見えねぇけどな」
「ふふ、見た目で判断したらいけませんよ? こう見えて、実戦経験は【漆黒の旅団】の中でも随一のはずですから」
脅す様な言葉ではあるが、悪戯っぽい言い方や愛らしさすら感じさせる笑顔のせいか……青年には、全くそうは感じられなかった。
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続々とPKer討伐の報告が、Qチャンネルの掲示板に投稿されていく。その様子を見て、自分達もPKKに加わろうと動き出すプレイヤーはそれなりに居た。そして、それはAWOのトップを目指すあるギルドも同様であった。
「ふむ、今回のマッチング相手は君達か」
二人組側の青年がそう言うと、相対していた三人の内の一人がニヤリと口元を歪めた。
「……ヘェ、アンタ確か【竜の牙】のギルマスだったよな?」
そう口にした瞬間、男は短剣を構えて青年……リンドに向けて踏み込む。男達三人はPKerであり、その頭上のカラーカーソルも赤である。
勿論、それは青年……リンドも気付いており、襲い掛かって来るだろうと判断していた。
「不意打ちは無駄だ、君達がマッチングPKをしているのは一目瞭然だからな」
リンドは攻撃をサラリと躱し、そう口にする。その間に彼の同行者……【竜の牙】のメンバーあるヨルが動いた。
「既にこっちは臨戦態勢……そういう事よ、PKer」
彼女の持つ槍がPKerの首を斬り、激しいライトエフェクトを発生させる。その一撃でPKerのHPが半減し、彼は危機感を感じて大きく跳び退いた。
そこからは三対二の戦いが繰り広げられるが、やはりリンドとヨルの方が地力は上。PKerの一人が戦闘不能になった事で、流れは【竜の牙】側に傾いた。
「く、くそぉっ!!」
「こんなぽっと出の奴等に……っ!!」
悔し紛れの言葉が、戦況を巻き返す要因になるはずもない。残った二人はリンドの剣とヨルの槍によってHPを削り切られて、地面に倒れ伏した。
「よし、倒せたな」
「えぇ……お疲れ様です、リンドさん」
ヨルはそう言って微笑み、リンドに≪ポーション≫を差し出す。その視線には熱が込められており、ここに【暗黒の使徒】のメンバーが居たら騒ぎ出すところだろう。
しかしそんなヨルの視線に気付く事なく、リンドは≪ポーション≫を受け取って一気に飲み干す。その間に脳裏に浮かぶのは、一人の女性の事だった。
――このPKKに、ヴィヴィアンも参加しているのだろうか? 彼女の実力も考えれば、十分参加していてもおかしくはない……その場合、誰と行動を共にしているのだろうか?
心奪われた女性は誰と組んでいるのか、PKer相手に苦戦はしていないか、無事だろうかといった思考が、どうしても頭に浮かんで来てしまう。
それ程までにヴィヴィアンに執着するのは、やはり彼女がリンドのストライクゾーンど真ん中だからだ。しかし、その想いが報われる気配は一向に訪れない。
――クラン加入の作戦も失敗、かといって彼女だけを引き抜くのは現実的ではない……せめて【桃園】か【魔弾】のどちらかと接触し、我々の有用性を認識させることが出来れば……。
クラン【十人十色】のギルド枠は、二つしか残っていない。そしてその決定権は、【桃園の誓い】か【魔弾の射手】が持っている。そのどちらかに近付く事が出来れば……リンドはそう考え、何か良案が無いか試行錯誤していた。しかしながら、その努力はまだ実っていないらしい。
隣に視線を向けておけば、そこには自分を信頼し尊敬している美女が居るのだが……リンドはどうあっても、ヴィヴィアンへの想いを貫くあまり視野狭窄に陥っているらしい。
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リンドからガチ恋クソデカ感情を向けられている事など知る由もない、当のヴィヴィアン。彼女はバヴェルと二人一組を組んで、PKerを相手に奮戦していた。
「純粋な魔法職は、近付かれるのが嫌いだよなぁ!!」
「それは……っ!! そうですねっ!!」
短剣使いが接近して、ヴィヴィアンを斬り付けようと両手の得物を振るう。その瞬間、ヴィヴィアンは手にした杖を前方に突き出した。ヴィヴィアンの持つ杖は、数ある魔法杖の中でも特に長いタイプだ。それをPKerに押し当てた事で、短剣の攻撃範囲に入るのを阻止出来ていた。
「……っ!? この女……っ!!」
「【ブロー】!!」
ヴィヴィアンはそのまま武技を発動させ、杖を振り上げてPKerの顔面を叩き上げる。
――バヴェルさんに習った護身術、上手くいった……!! ここからも、落ち着いて……慎重に!!
第四回イベントで、苦戦した事を気に病んでいたヴィヴィアン。そんな彼女に声を掛けたのは、想い人であるバヴェルだった。
「そういう事なら、僕が護身術……と言って良いか解らないけど、そういう立ち回りを教えましょうか? ヴィヴィアンさんが良ければ……ですが」
優しい微笑みに、穏やかな口調。そして自分の事を慮ってくれる、その言葉。いつかは振り切らなければならないと解っていても、ヴィヴィアンはバヴェルのそういう所に惹かれてしまっていた。
そうしてヴィヴィアンは、バヴェルからちょくちょく指導を受けて……相手の攻撃を避ける術と、少しずつダメージを蓄積させていく反撃の仕方を会得していた。
「調子に乗るなよッ……!!」
相手が激昂すれば、それだけ動きは単調になる。そうすると視野が狭まり、注意深く見ていれば気付けるモノに気付く事が出来なくなる。
ヴィヴィアンの狙いは、それだった。
「ブッ潰す……うおっ!?」
背後から攻撃を受けて、PKerはバランスを崩してたたらを踏む。背後を振り返ると、そこには宙に浮いている一振りの≪中華剣≫があった。
「クソッ、あの眼鏡野郎かッ!!」
視線をバヴェルの方に向けたPKerは、仲間の一人が既に倒されている事に気付いた。残る一人は、バヴェルを倒そうと攻撃を繰り出しているが……その攻撃を、彼は軽やかに躱している。
「チッ、さっさとこの女を殺って……ゲェ!?」
忌々し気に、視線をヴィヴィアンに戻したPKer。その目に映ったのは、詠唱を完了させて自分に杖を向けるヴィヴィアンの姿だった。
「【ライトニングカノン】!!」
放たれた雷の砲撃魔法を回避しようとするも、雷属性の魔法は速度が速い。避ける事は適わず、PKerは魔法を正面から喰らってHPを散らした。
それと同時にバヴェルも最後の一人を斬り伏せ、これにて戦闘終了である。
「お疲れ様です、バヴェルさん。HPは……大丈夫そうですね」
「ヴィヴィアンさんも、無事で何より。凄いね、教えた護身術モドキを完璧に使いこなしているじゃないですか」
「ふふっ、先生の教え方が良かったので」
そんな会話を交わしつつ、二人はPKerの討伐報告を掲示板に書き込む為に行動する。ヴィヴィアンはPKerのアバター名と所属ギルドを確認し、バヴェルがそれを書き込んでいくのだ。
「【暗殺倶楽部】……初めて聞くギルド名ですね?」
「確かに……新興ギルドっぽいですね」
そうして戦闘後の処理も終えた二人は、次のマッチングへと向かう。マッチングシステムを起動して、転送が始まるのだが……そこで待っていたのは、二人の人物だった。
「ありゃ、バヴェルじゃん」
「オヴェール? 味方マッチしちゃったか」
ギルド【遥かなる旅路】のロビンと、オヴェール。ヴィヴィアンはいつになく気安いバヴェルの様子に驚き、ロビンもまたオヴェールの様子を見て目を見開いていた。どうやら彼女も、ギルドやクランで見せる時とは雰囲気が異なるらしい。
「ロビンさんも、お疲れ様です。そちらは順調そうですね?」
「え、えぇまぁ……そっすね」
「あ、あなたがヴィヴィアンさん? こうしてお話するのは、初めてかな?」
「ふぇ!? あ、はい……そう、ですね?」
なんとも微妙な空気が流れるのだが、更にそこへ最後の一人が転送されて来る。その一人が、これまたクセのある人物であった。
「おっと、皆さんお揃いで。PKKは順調そうだねぇ?」
目深にフードを被った、怪しげな風体の青年。ヴィヴィアンやロビンが彼を目の当たりにするのは、第四回イベント……その初日の夜、【禁断の果実】と対峙したあの戦い以来だった。
「あなたは……情報屋さんの……」
「スオウ=ミチバ……だったよな」
ヴィヴィアンとロビンに声を掛けられて、スオウはわずかにフードを持ち上げて笑った。
「どもども、情報屋のスオウ=ミチバでっす! 何か入用な情報はあるかい?」
スオウの言葉に対して、バヴェルとオヴェールが顔を見合わせ……そして、同時に同じセリフを口にする。
「「でもお高いんでしょう?」」
「ノンノン! PKKに参加している皆さんには、感謝の気持ちを込めて……出血大サービスの格安キャンペーン実施中ってなもんでね!」




