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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十八章 第五回イベントに参加しました

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18-15 三百階層を目指しました

 イベント開始二日目は、ジン達の想定した通りの流れで攻略を進められた。

 各チームは攻略中の[試練の塔]の、二百階層のボスを討伐。そこで得られるモノを確認し、そのまま隣接する塔の攻略に移行した。勿論、百階層まで突破する事に成功している。

 そして三日目は、攻略の中で得られたものについての報告会から始まった。


 まず百階層の≪エンジェルヘイロー≫は、やはり性能強化が可能だった。同時に≪エンジェルヘイロー≫の外観もだ。

 既に≪エンジェルヘイロー≫を装備している時に、≪エンジェルヘイロー引換券≫を使用するとマッチングポイント取得率が更に増加する事が判明した。

 それに加えて最初に選択した≪エンジェルヘイロー≫を、彩る様な装飾を選ぶことが出来た。例えばジンの場合、手裏剣型のヘイローの周囲に渦巻く風の様なエフェクトが追加された。

 これによってプレイヤーは、更に独自の≪エンジェルヘイロー≫を装備する事が出来るのだ。


 そして同時に、メンバーの背中には天使の様な羽が装備されている。これが二百階層で手に入れられる報酬で、アイテム名は≪エンジェリックフェザー≫だ。

 その大きさはそこまでではなく、オープニング演出で登場した天使達よりもかなり小さい。正面から見たら、ほぼ見えない程度のサイズ感だ。≪エンジェルヘイロー≫と比べると、ラインナップはそこまで多くなかった。天使モチーフの物に限定されるので、無理もないだろう。

 得られる効果は≪エンジェルヘイロー≫と同様で、イベントマップでのマッチングポイントボーナスが付いている。


 そうなると、百階層ごとに似た様な装備品が手に入る可能性が高いわけで。

「三百階層で何が得られるかも、気になると言えば気になるな」

「≪ヘイロー≫と≪フェザー≫と来ると、次は何が来るでしょうね……多分、マッチングポイントボーナスが付いたモノだとは思いますけど」

 現時点でクラン【十人十色ヴェリアスカラー】が到達している階層は、ジン達のパーティの二百四十階層が最高到達点。そして学友であり好敵手であるギルバート・ライデンも、二百九十階層で攻略がストップしているらしい。


「三百階層で得られるモノも気になりますけど、≪ヘイロー≫の強化が出来たという事は≪フェザー≫も強化出来ると考えて良いんでしょうね」

「それはそうだな。今は背中にちょっと表示されている感じだけど、もしかしたらここから大きくなったりするのかもな」

 現時点では申し訳程度の大きさの≪エンジェリックフェザー≫だが、重ねる事でサイズが大きくなる可能性もある。それっぽいヴィジュアルにしたいプレイヤーからすると、ここは譲れない部分だろう。


「そして、かなり重要なのが……四神スキルのドロップか」

「あぁ。初イベ以来手に入らなかったスキルが、確率とはいえドロップする。これはかなり重要だよな」

 第一回イベントに登場したレイドボスである四神と、そんな四神をバフで守っていたイベント限定モンスター。そのいずれかにトドメを刺す事で得られるフィニッシュ・アタック・ボーナスが、四神スキルを手に入れられる≪宝玉≫シリーズだ。


 そして手に入れられる四神スキルは、東西南北で四つまでだった。しかし、今回のイベントでそれらをドロップするという事態が発生したのだ。

 この事は既に掲示板でも公にされており、ちらほらと四神スキルを手に入れたというプレイヤーが書き込みをしている。そこには四神ボスの撃破時の状況など、詳細に記載されたものもあった。それらを確認しても法則性等は感じられず、単純に確率ドロップである可能性が高いと思われる。


 クラン【十人十色ヴェリアスカラー】でも、今回のイベントで【忍者ふぁんくらぶ】のメンバーである【アゲハ】……そして【魔弾の射手】のトーマが、≪宝玉≫シリーズで手に入れられるスキルを入手した。

 アゲハが手に入れたのは、百五十階層で朱雀の【軽量】を。トーマが手に入れたのは百三十階層で、玄武の必殺技である【玄の衝撃】だ。

 これだけの人数で、まだ二人しかドロップしていない……となると、結構な低確率である可能性が高い。


「気になる点は三百階層の報酬、四神スキルのドロップ。そして、天使装備の強化か……」

「思っていた以上に、攻略要素が目白押しです!」

 コタロウ・シャインの言う通り、今回のイベントはやりこみ要素が強いといった印象を受ける。

 ジン達だけに限った事ではないが、プレイヤー達は今回のイベントを『純粋なタワーアタックイベント』と思っていた。しかし蓋を開けてみれば四神スキルを入手する機会であったり、イベント後もオシャレ装備として使用できそうな装飾品を得られる機会だったりするのだ。

「本当に、何階層まであるんだろう……天使シリーズ、コンプしたいなぁ」

「私はどうせなら、≪ヘイロー≫と≪フェザー≫を最大強化したいわね」

「俺は四神スキルが気になるな……特に【縮地】は絶対欲しい」

「現時点で盛り沢山だけど、まだ何かある気がするのは僕だけかな」

 メンバー達の会話も、このイベントで何を達成したいかという方向にシフトする。更にこれでもまだ、何かが隠されているならば……という考えもある。


「はいはい! 皆、一旦落ち着いて」

 手を叩きながらイリスがそう言えば、全員が素直に私語を慎む。現在は今夜の方針を決める会議の場であり、この時間が長引けば長引くだけ攻略に費やす時間が減るのだ。

「当初の予定では、今日も攻略中の階層を更に上っていく……だったわね。これについて、意見はあるかしら?」

 最も攻略が進んでいるのは、初日に攻略した[試練の塔]。既に全員が最低でも二百階層に到達済みで、恐らく今日中に三百階層に到達できる可能性が高い。

 それぞれが求める物を手に入れられる様に動くか、それとも最高到達階層を上げるか。これは意見が分かれそうな所だ。


 そこで、コヨミが手を挙げる。

「今日の所は予定通りに進めて、明日以降で希望する場所の攻略を進めるのはどうでしょうか? 攻略が進んでいる階層が高ければ高い程、再スタートがしやすいですし」

 クラン全体で足並みを揃えるのは今日までとなっており、そこから先は各々の自由となる。そう取り決められている以上、その予定を崩さずとも良いだろう。

「確かに、コヨミ殿の意見はご尤もだ」

「今のメンバーで行ける所まで行った方が、最終的な目標達成に近付きそうよね」

「うん、異議無しかな」

 そんなコヨミの意見に、反対する者は居なかった。ギルドマスターとサブマスター達も、その様子を見て問題無いだろうと頷き合う。

「それじゃあ、今日の攻略は当初の予定通りですね」

「明日以降の事は、後で決めても遅くないわ。早速、今日の攻略を始めましょうか」

 レンとジェミーがそう言えば、メンバー達はやる気十分と言った表情で頷き応える。こうして、イベント三日目の攻略が開始された。


************************************************************


 ジン達は初日に攻略を開始した、北側の[試練の塔]へ向かった。それぞれのパーティが到達階層からリスタートし、上の階層を目指していく。

「出て来る敵のラインナップも、少し増えたか?」

「最初は剣士と盾使い、弓使いくらいでしたものね」

 モンスターが登場しない代わりに、プレイヤー達を迎え撃つのは天使達。最初は【ナイト】【ガーディアン】【アーチャー】くらいしか居なかったが、更にバリエーションが増えていた。

 近接職では槍を持つ【エンジェルランサー】や、短剣を両手に持つ【エンジェルスカウト】。魔法職として攻撃魔法を撃つ【エンジェルソーサラー】と、味方を回復したりバフをかけたりする【エンジェルヒーラー】。

 更に飛行モンスターの代わりとばかりに登場したのは、翼の生えた卵型のエネミー【エンジェルエッグ】。攻撃手段はデバフを与える魔法攻撃で、物理攻撃で倒すとパリーンと割れる。


 それらの敵を次々と倒して、ジン達は階層の奥へ奥へと向かっていく。もう少しで最奥部という所で、ジンの持つ【感知の心得】が進む道の先に天使達が居る事を報せる。

「む……十五メートル先のT字路、両脇に天使が居るでゴザル! 数は左右それぞれ十!」

 合計二十体の天使が、待ち構えているという訳だ。【感知の心得】が無いパーティだと、その挟撃で大打撃を喰らってもおかしくはないだろう。

「一気に倒したい所ですね」

「あぁ、そうだね。ジン、頼む!」

「了解でゴザル!!」


 ヒイロの言葉を受けて、ジンが走る速度を速める。あっという間にT字路の手前に辿り着けば、ジンは両手に苦無を構えて投擲する。

「【狐火きつねび】!!」

 曲がり角から姿を現すその前に、天使達が地面から吹き上がる火柱で火傷状態に陥る。その隙にジンはT字路に到着し、小太刀を両手に構える。

「鎌鼬の如く……【狐風こふう一閃いっせん】!!」

 魔技と武技を、同時発動させる複合スキル。その攻撃で天使達を倒すには至らなかったが、ダメージを与える事には成功した。


 ダメージを受けた天使達は、反撃に転じようと動き出す。前衛天使達はジンを標的にして駆け出し、後衛天使達は弓に矢をつがえたり詠唱を開始する。

「疾風の如く、【クイックステップ】」

 天使達が殺到する前に、ジンは【クイックステップ】で後退。そこには、頼れる仲間達が既に準備万端で構えていた。

「【ラピッドショット】!!」

 ヒメノは速射法に加え、【ラピッドショット】で射速を上げた矢で天使達を攻撃する。その効果でSTR値は半減するのだが、矢を射るのはヒメノ……STR半減など関係ないとばかりに、強力な攻撃であった。

「【ウォーターアロー】!!」

「【サンダーボール】!!」

 更にレンの【ウォーターアロー】が天使達に命中し、そこへリリィの【サンダーボール】が飛んでくる。濡れた状態で【サンダーボール】を喰らうと、威力が上がると同時に麻痺確率も高まるのだ。


 この攻撃だけで、前衛天使達はほぼ壊滅状態。残るは後衛の天使達が、T字路の曲がり角の先で攻撃態勢を整えていた。

「ジン!」

「うむ!」

 それを承知の上で、ジンとヒイロが並んで駆け抜ける。その後に続くのはリン・セツナと、リリィのPACパックであるスピカだ。

 T字路の曲がり角、そこに二人が到達した瞬間。【エンジェルソーサラー】が魔法を放ち、【エンジェルアーチャー】が矢を射る。

「【狐雷こらい】!!」

 ジンは【エンジェルソーサラー】の魔法目掛けて苦無を投げ、【狐雷】を発動。その中心を見事に捉えた事で、【スキル相殺】が発生した。

「全く、とんでもない……なっ!!」

 ヒイロはそう言いながら、ジンを庇う様に左手に持った大盾で……そして右手側は【霊腕れいわん】を駆使して構えた大盾で、矢を防いだ。

 そうして二人が遠距離攻撃を退けたところで、PACパック達が追い付く。

「ふはははっ、右手はそれがしが引き受けようぞ!」

「了解、頼みます」

「左は任されたわ!」


 セツナは単身、右側の曲がり角に突っ込み大太刀を振り上げる。

「簡単に倒れてくれるでないぞ!? ハハハハハッ!!」

 そう言いながら、セツナは嬉々とした表情で刀を振るう。その度に、天使達が吹き飛ばされたり壁に叩き付けられていた。

「いや、俺達的には、さっさと倒れて欲しいんだけどね」

 そう言いながら、セツナに追い付いたヒイロが【千変万化】で大太刀に変化させた刀を振り下ろす。ちなみに、ヒイロのツッコミをセツナは聞いていない。


「参る……!!」

「行くわよッ!!」

 リンは天使達の行動を妨害して、魔法詠唱や弓を構えるのを阻害。そして純粋な近接戦闘タイプであるスピカが、天使達にダメージを与えていく。

 更にそこへ、ジンが駆け込んで来た。

「【空狐くうこ】……【ラピッドスライサー】!!」

 繰り出された猛攻撃が、天使達にダメージエフェクトを刻み込んでいく。


 そうしてヒメノ・レン・リリィと、ヒナ・ロータスが追い付いた頃には天使達は全滅していた。

「うん、順調ね」

「そうだね、レンちゃん!」

 そう言って微笑み合うヒメノとレンだが、その会話を聞いていたリリィは苦笑してしまう。

 これがソロマッチングなら……いや、パーティで挑んだ場合でも、このレベルの天使達をほんの一、二分程度で倒し切るプレイヤーはそう多くない。


――まぁ、このクランではそれが出来るメンバーが、多いものね……うん、私も頑張らないと!


 仲間達への信頼感と共に、自分も負けていられないと奮起するリリィなのだが……彼女も元々は、野良パーティなどに参加していたソロプレイヤーである。

 支援・回復に長けていると同時に、先程の様に攻撃魔法での戦闘もこなせる。必要に応じて立ち回りを切り替える事が出来るので、魔法職としてはオールラウンダーの部類である。

 そして野良パーティに参加する都合上、それ相応の技量が求められる。そして彼女は、そういった場合でも組んだプレイヤー達から掛け値なしの称賛を贈られる程の腕前なのだ。

 要するにリリィも何気に、一般的の枠組から大きく外れたプレイヤーなのだ。


************************************************************


 その頃、運営メンバー達はイベントマップでの様子をモニターで見守っていた。

「いやぁ……二百から三百階も、余裕を持って突破されそうかぁ」

「トッププレイヤー達の足を止められるとしたら、三百階層以降だろうなぁ」

 現時点で、トップ層のプレイヤー達が攻略を中断しているのは、時間的な要因が主である。HPやMPが保たなくなったり、装備の耐久が限界に来たり、消耗品が足りなくなるといった様子は見受けられない。


「クランシステムによる効果は、今の所は想定通りか」

 そう口にするのは、運営責任者のシリウスだ。その視線が向けられる先……モニターに映し出されているのは、クランを結成した面々の姿だ。

 そんなシリウスに、運営メンバーの男性が答える。

「そうですね。トップ層は相変わらずガンガン進んでいますが、それを追う様に階層を攻略していくパーティも見受けられます」

 クランシステム実装前から、クラン結成を表明する勢力はそれなりにいた。そして第五回イベントが開幕する段階までに、結成されたクラン……その数は、十五組まで増えているのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 クラン【十人十色ヴェリアスカラー

 所属ギルド:【七色の橋】【桃園の誓い】【魔弾の射手】【忍者ふぁんくらぶ】


 クラン【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ

 所属ギルド:【聖光の騎士団】【聖印の巨匠】【絶対無敵騎士団】【白銀の聖剣】


 クラン【開拓者の精神フロンティア・スピリット

 所属ギルド:【森羅万象】【陽だまりの庭園】【朧月夜】


 クラン【導きの足跡(パイオニア・ステップ)

 所属ギルド:【遥かなる旅路】【初心者救済協会】【おでん傭兵団】


 クラン【無限の可能性(ワイルドカード)

 所属ギルド:【白狼の集い】【真紅の誓い】


 クラン【ルーチェ&オンブラ】

 所属ギルド:【闇夜之翼】【フィオレ・ファミリア】


 クラン【ズルくに

 所属ギルド:【新鮮組】【SAMURAI】


 クラン【中華連合】

 所属ギルド:【三國無双】【天上天下】【唯我独尊】【天下無敵】


 クラン【HERO’s(ヒーローズ)

 所属ギルド:【異世界戦隊オレンジャイ】【KARATカラット


 クラン【騎士道シヴァルリィ

 所属ギルド:【楽園聖騎士団】【月下騎士団】【北風騎士団】【鉄血工房】


 クラン【HUNTERS】

 所属ギルド:【獲物ヲ屠ル狩人】【バウンティハンターズ】【イェーガー】


 クラン【勇者の集い】

 所属ギルド:【勇者育成PROJECT】【ブレイブハーツ】【紅蓮蒼天】


 クラン【FairyTail】

 所属ギルド:【妖精の耳飾り】【御伽の國】


 クラン【スカイハイ】

 所属ギルド:【サンシャイン】【月夜の夢物語】【ルナティック】


 クラン【TSUBASA】

 所属ギルド:【純白の双翼】【片翼の堕天使】【片翼の女神】

―――――――――――――――――――――――――――――――


 クラン結成済みの勢力全てという訳ではないが、攻略の進行度合いはギルド単体よりも進んでいる傾向にある。

 その中でも特筆すべきは、第四回イベントでランキング入りを逃したギルドだ。クランを結成する事で自ギルドの不足を埋めると同時に、同盟相手から刺激を受けて向上心が芽生えているのだ。

 その成果が表れたのか、クランに属するパーティは全て二百階層を突破している。


「それに以前に比べて、PACパック契約をしたプレイヤーが大分増えた印象ですね」

 プレイヤーとPACパックが共に戦う様子を見て、笑みを浮かべるのはアンナだった。第四回イベントまでは、PACパック契約をしていないプレイヤーが多かった。しかし今回のイベントが始まる段階で、PACパック契約を交わしたプレイヤーが確実に増加している。

 最前線に近いパーティには、必ず一人か二人のPACパックが同行している。これはクラン所属のパーティだけでなく、クラン契約未締結の勢力も同様だ。


 ちなみに【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】と【開拓者の精神(フロンティア・スピリット)】は全体を四つに分け、一つの塔をひたすら攻略する方針。基本的に、彼等は同一ギルドでのパーティ編成だ。

 【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】も全体を四分割しているが、ギルド混成パーティで攻略を進めている。元より交流の深いギルド同士である為、連携も特に問題が無い様だ。

 それに対し【無限の可能性(ワイルドカード)】は、一つの塔をクラン全員で攻略中。【ルーチェ&オンブラ】は、百層毎に他の塔へ移動して攻略階層を四箇所全体で均一にしている。

 こういった所でも、クランの特色といった面が表面化している様だった。


 そんな彼等とクラン【十人十色(ヴェリアスカラー)】の一部のパーティは、三百階層目前といった所まで登って来ていた。

「三百階層でSABスピード・アタック・ボーナスを出せるかは、プレイヤー次第ですが……どちらかと言うと、ボス撃破時の初回ドロップがメインになりそうですよね」

 そう言って、アンナがモニターに三百階層のボスを映し出す。その姿を見たエリアは、神妙な面持ちで口を開いた。

「ここでSABを出せるプレイヤーが、どれだけ居るのでしょうね」

「それも含めて、お手並み拝見といったところだな」

 エリアの発言にシリウスが答えると同時……丁度モニター内に、三百階層に挑む最初のパーティが現れた。

「ふむ。一番乗りは、やはり彼等だったか」


************************************************************


 記念すべき三百階層最初の挑戦者を出迎える、階層ボス。その姿を前にして、アーク達は危機感を覚えていた。なにせ、これまで登場した天使達と異なる風貌……というよりも、今まで登場した天使と比べて質素過ぎる見た目だったのだ。

「あれが、この階層のボスか……」

「何と言うか……今までと比べて、貧弱そうに見えるねぇ」

 前衛役の天使の様な鎧も無ければ、後衛役の天使の様なローブやマント等も無い……簡潔に表現するとしたら、()()にしか見えないのだ。

「姉さんの言う通り、あれだけじゃ簡単に倒せそうだけど……そんな簡単なはずも無い」

 ベイルがそう言えば、アリステラとセバスチャンも同感だと告げる。


「ベイル、セバスチャンはサポートを頼む」

 目配せをしてそう告げるアークに、二人も真剣な表情で応える。

「これまで通りですね、了解です」

「かしこまりました、アーク様。全力でサポート致します」

 二人の返答に頷いたアークは、自分の両隣で武器を構える美女二人に声を掛けた。

「シルフィ、アリステラ……行くぞ」

「はいよ!」

「お供致しますわ!」

 三人が並んで駆け出すと、ボス天使の索敵範囲内に入るのはすぐだった。そうしてボス天使が構えを取り……瞬間、ボス天使が発光した。そこまで眩しい光ではなく、アーク達の足は止まらない。やがてその光が収まると、ボス天使は重厚な鎧を装備した姿に変化していた。


「まるで【変身】だね……硬そうだし、ナイフはあまり効かなそうだ。【ストレングスアップ】」

「【バイタリティアップ】、【アジリティアップ】!!」

 接触前に、ベイルとセバスチャンは支援魔法で三人にバフを掛ける。そうして三人が剣を振るうが……ボス天使はその両腕、正確には鎧と一体化した部位で攻撃を受けた。

「このダメージ値だと、これは盾……!?」

 攻撃を受けた際に表示された数値は、攻撃を盾で受けて軽減された数値と同程度。つまり、両腕に盾を装備しているという事だろう。


「む……!?」

 盾で攻撃を防御したボス天使は、またも発光する。問題は、その両腕……盾の重厚なシルエットが、一瞬で鋭利な刃のそれに変化した。

「離れろ!! 【クイックステップ】!!」

 アークの指示に従って、シルフィとアリステラも【クイックステップ】を発動。しかしその前に、三人の身体を鋭い剣先が掠めた。

「……形態変化か」

 そう口にしたアークの前で、ボス天使……【アークエンジェル・S】は、両手の鎧と一体化したブレードを構えた。

次回投稿予定日:2024/4/1(本編)


2020年4月1日から投稿を開始した本作ですが、いよいよ四周年となります。

ここまで執筆を続けて来ることが出来たのは、ひとえにご閲覧下さる皆様のお陰です。

仕事が多忙で感想へのコメント返しが滞っておりますが、いつかまとめて返さないと……((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

あ、ちゃんと全て拝見しておりますので、どんどん感想頂けると嬉しいです。


五年目もジン達の活躍をお届けしていこうと思っておりますので、今後共どうぞお付き合いの程、宜しくお願い致します!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 安定の十人十色 そして始まる天使VS聖騎士 [一言] 周年を飾るに相応しき 天上のBATTLEを見逃すな!!
[良い点] 4周年おめでとうございます! 千変万化…これは周回案件だなぁ?w 思ったよりクランが結成されてるけど、某牙含めてまだまだこれからの所も多いんだろうなぁ。
[良い点] 5週年突入おめでたいですね。きっとそこらかしこにウォズが現れては祝辞を述べていることでしょう。きっとここにも…祝え!
感想一覧
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