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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十八章 第五回イベントに参加しました

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18-12 [試練の塔]に挑みました

 いよいよ第五回イベント、[試練の塔]攻略が開始。ジン達は情報収集の為、最初はパーティマッチングによる攻略を敢行した。

 ちなみに登場する敵は、普段戦うモンスター達とは異なるデザインのものだった。神の用意した[試練の塔]であるからして、通常モンスターが現れるのは展開的におかしいと考えたのかもしれない。

 現在ジン達を迎え撃つのは、人型の敵。その外観は純白の鎧と同色の兜で、頭上には光の輪がある。頭上に表示されているのは、【エンジェルナイト】や【エンジェルガーディアン】といった個体名で、やはり天使らしい。


「イベント限定の敵じゃない……よな? 今回だけだとしたら、勿体無いくらいデザインが良い」

 そんな事を言いながら、ヒイロは≪妖刀・羅刹≫を大太刀に変えて振り抜く。纏めて三体の敵が吹き飛ばされ、そのまま倒れて消滅した。低階層であるからか、敵のレベルもそこまで高くない。

 そして消滅時のエフェクトも、モンスターと違い天に還る様なものだ。実に、芸が細かい。

「このイベントが終わった後も、またどこかで遭遇するかもしれませんね。先のエリアや他のイベントでも、こうして戦う機会があるかもしれません」

 レンがそう言うと、本当にそうなりそうな気がしてならない。


「マップも結構、力の入った造りですよね! 構造自体は、そこまで大きくないダンジョンといった感じですけれど」

「そうですね。見た目は厳かな感じですけれど、ダンジョンと造り自体は似ていると思います」

 ジン達が現在攻略を進めているのは、九階層。ここまでは低階層だからか時折分かれ道になったりするものの、後で合流できるらしくほぼ一本道だった。しかし、上の階層も同じとは限らない。

 そこでヒメノとリリィの会話が聞こえていたらしく、天使を両手の小太刀で倒し切ったジンが振り返って会話に加わる。

「後々、袋小路で行き止まりになった所で背後に天使が現れて……なんて階も、後々ありそうでゴザルなぁ」

「「あぁ~、ありそうですねぇ……」」

 確かに上の階層に行くと、そういった面での難易度上昇も有り得そうだ。


 さて、今回は行ける所まで行くという方針の為、全力パーティ構成だ。そしてプレイヤーの編成は五人が上限だが、やはり予想通りPACパックを編成する事が可能だった。そこでジン達はPACパックを引き連れ、十人で攻略している最中だ。

「リン、特に問題は無いでゴザルか? まぁ、リンならば大丈夫だと思うでゴザルが」

「はい、主様。特に問題は御座いません、普段通りに援護させて頂きます」

「今のところ順調ですね、ヒナちゃん!」

「はい! まだ一回も、回復魔法を使っていないです! 痛いのは嫌ですから、良い事ですね~♪」

「……主よ、上の階層に行けば少しは骨のある相手が居るのだろうな?」

「あー、セツナには物足りないだろうな……大丈夫。何階まであるか解らないけど、上に行けば行くほど敵は強くなるはずだから」

「ロータス、支援魔法バフは必要ですか?」

「いえ、お嬢様。現状ですと、特に問題は御座いません。MPを節約出来ますので、現状維持で宜しいかと」


―――――――――――――――――――――――――――――――

【北側】

 ヒイロ・レン・ジン・ヒメノ・リリィ 

 PACパックセツナ・PACパックロータス・PACパックリン・PACパックヒナ・PACパックスピカ

―――――――――――――――――――――――――――――――


 リン・ヒナ・ロータスの最初期トリオ、元エクストラボスであるセツナと共に同行する少女。銀色の長い髪と、キリッとした琥珀色の眼が印象的なNPCである。年の頃はヒメノ達と同じくらいで、身に纏うのは黒い和風衣装だ。手にしているのは≪打刀≫で、前衛タイプだと解る。

「【スピカ】ちゃん、調子はどう?」

「問題無しよ、マスター。この刀や装備も使いやすいし、契約して本当に正解だったわね」


 リリィの問い掛けに対し、勝気そうに笑う彼女……スピカは第五回イベントを前に、リリィと契約を果たしたPACパックだ。クラン参加ギルドの応援NPCとの契約ではなく、リリィがソロプレイの最中に出会ったNPCである。

 彼女は【桃園の誓い】のマークやファーファの様に、冒険者稼業で生計を立てていたNPCであった。その容姿に加えて、戦闘能力が高そうである事は装備や周囲のNPCの情報からすぐに解る。故に、彼女と契約しようとするプレイヤーも少なくはなかったのだ。

 そんな彼女との契約クエストを進めて来たプレイヤーの中で、一番早く彼女のクエストを達成したのがリリィだったのだ。ちなみにその際、≪オリハルコンチケット≫は使用していない。純粋な、正規ルートでの契約である。


 尚、PACパック契約クエストの難易度が高いNPC……要求するアイテムの入手難易度が高かったり、クエスト自体が長いまたは条件が多いNPC程、契約時の恩恵は大きい。

 スピカの場合は達成すべき条件が多く、それによって多くのプレイヤー達が右往左往していた。リリィは、それを効率的にクリアしたのだ。

 その甲斐あって、スピカの契約時点でのレベルは最初から50と高めである。当然ながらトッププレイヤー達には劣るものの、ここから成長する事を考えると十分な性能を有していると言える。


 そんなスピカがリリィの護衛役を務める事で、ジン達の戦闘効率は上昇する。リリィの護りに専念できる存在がいる事で、より攻撃的な編成が組めるのだ。

 普段は鉄壁の盾職タンクである、シオンが不在の現状……だが回避盾のジンとリンのコンビに、攻撃も盾役もこなせるヒイロが居る。更にヒナの【癒しの聖女】での魔法防御も可能な為、一般的なパーティと比較しても防御面での不安要素は薄いと言える。

 そして物理攻撃特化のヒメノとセツナ、魔法攻撃では他の追随を許さないレン。更に暗殺戦術で敵に大ダメージを与える事が出来るロータスと、確率即死攻撃を持つジンが居る。

 回復面でもヒナとリリィという優秀な回復役ヒーラーに、それが間に合わなかった時の保険としてレンとヒメノがいる。

 そんな訳で、このメンバーはクラン全体で考えても、特に安定感と突破力に長けたパーティである。


 九階層を順調に進んで行ったジン達は、次の階層への道を阻む天使達の群れを発見した。階層の道中で徘徊する天使達は多くても五体までだが、最後に現れるのは最低でも十体以上。九階層の場合、十五体が待ち構えていた。

「低階層でも、基本人数の三倍。このイベント、意外と難易度高めで設定されているかもしれないな」

「後々、天使達のレベルも上がるはずでゴザルな。今はまだそこまで硬く無いが、この先もそうとは限らないでゴザルよ」

 そう言いながら歩を進めるジン達は、身を隠したりはしていない。堂々と通路を進み、天使達に近付いていく。


 そうしてジン達が天使の索敵範囲に入れば、一体の天使が接敵に気付く。その一体に連動する様に、天使達は一斉に臨戦態勢に入った。

 その瞬間、天使達に向かって一陣の風が吹く。紫色のマフラーを靡かせた、忍者とくノ一のコンビだ。

「「【一閃】」」

 ジンとリンが同時に小太刀を振るえば、二体の天使がHPを失い倒れた。AGI特化の二人でも、この低階層の敵ならば問題無く瞬殺できるらしい。また仲間達の協力を受けて、ジンの【九尾の狐】によるAGI以外のステータスダウンはマイナス10%まで軽減している。ユニークアイテムや高性能な装備による強化もある為、万全な状態での攻略と言える。

 更にヒイロ、セツナ、ロータスが二人に続く。後衛の出番無く、あっさりと十五体の天使が消滅していった。


「さて、いよいよ最初のボスが居る階層でゴザル」

「そうだね。鬼が出るか、蛇が出るか……」

 ヒイロはそう言って、この言い回しは微妙だったかもしれないと考えた。鬼が出るならば、自分の右腕の籠手から。そして蛇が出るのは、可愛い妹からである。おまけに尾が九本の狐と、麒麟も出るまであるのだから。


……


 そうして十階層に到達すると、そこは迷路の様なダンジョンではなかった。広い広間はこれまでの道中と変わらず、白を基調とした厳かな雰囲気の造り。そしてその中央に鎮座するのは……。

「おー、第一回イベント以来ですねー!」

「塔が四箇所にある理由は、これですか」

「あの時よりも、大きさが抑えられている様ですね?」

 エル・クレア神が配置した神獣の正体は、このボス階層でプレイヤー達に開示された。彼女の言った通り、多くのプレイヤーがその姿を一度は目にしている。

 北側の[試練の塔]のボス……それは、第一回イベントでプレイヤー達を苦しめた……苦しめたかな? 苦しめていた気がしたり、しなかったりする玄武さんである。


 ちなみに第一回イベントでの戦いで、一番哀しい結末を辿ったのがこの玄武だ。

 朱雀はアーク達を含むプレイヤー達を苦しめたが、ギルド結成前のジン達による連携プレイの前に敗れ去った。

 青龍は当時調子に乗っていたギルバート達を苦戦させたが、南門から応援に駆け付けたアーク達の勢い溢れる猛攻で討伐。

 白虎はダイスによって纏め上げられたプレイヤー達を翻弄したものの、当時はユアンという偽名を名乗っていたユージンの【チェインアーツ】ラッシュとプレイヤー達の反撃により撃沈。

 ここまではまだ、四神達としては格好の付く戦いだった。


 北門に現れた玄武は、その硬さを生かしてプレイヤー達を襲った。しかし固定ダメージを与える銃を両手に握るレーナと、最前線級のプレイヤー達によって着々とHPを削られた。

 そしてジン達が北に合流し……土魔法によって引っ繰り返され、その状態のまま腹の上に乗られ、チクチクダメージを積み重ねられて敗北したのだ。可哀そう。


 さて、そんな玄武さんであるが……今回も、非常に相手が悪かった。

「【スパイラルショット】!!」

 硬いはずの甲羅に五段ヒットの矢を射られ、三段目で命中した箇所の甲羅が割れ、矢が身体に突き刺さり残る二段でHPが残り一割以下に減少した。

「一撃とはいきませんでしたか……では、【サンダーボール】」

 涼しい表情と声でそう言ったレンが放つ、【サンダーボール】。それがダメージを受けて怯んでいる玄武の頭部に命中し、そのHPがあっさりと散った。


『[試練の塔・北]十階層ボスモンスター【小玄武】を討伐しました』


「あ、ボス階層だからアナウンスが出るんだ」

「そのまま玄武じゃなくて、小さい玄武……幼体でゴザルかな?」

 特段、感慨も無さそうなジン達。そこで、更にアナウンスが発生する。


『スピード・アタック・ボーナス!』


「おや?」

「おー」

 低階層でも、どうやらボス戦であればスピード・アタック・ボーナスは出るらしい。またレンのシステム・ウィンドウには、フィニッシュ・アタック・ボーナスの通知が出た。

「SABは……ゴールドコインだね」

「まぁ、低階層ですからね。FABは≪ブロンズチケット≫でした」

 レア度は各種チケットで最低ランクの≪ブロンズチケット≫だが、一応は課金アイテムである。その為、ハズレという訳ではない。


 ボスを撃破した後は、ボス部屋の先に通じる扉を潜ってチェックポイントへ向かう。そこにはポータル・オブジェクトに似た装置があり、その装置でマッチングシステムを発動させるのだ。だがジン達はフルパーティで挑んでいるので、他のプレイヤーとマッチングはしない。五人パーティで得られる、1マッチングポイントが加算されるのみだ。

 これで次回から、十一階層からリスタートが可能になるが……当然、ジン達がここで攻略をやめるはずもない。

「さぁ、次だ」

「はい、続けて上に向かいましょう」

 ギルマス夫婦の宣言に、ジン・ヒメノ・リリィも頷いて応え、そのまま次の階層へと進むのだった。


************************************************************


 そうしてゲーム内時間で、三時間が経過。ジン達は二十時半から攻略を開始したので、現実世界の時刻は二十一時半である。

 ジン達の目の前で倒れ伏すのは、百階層のボスだった。十の位が奇数の階層では玄武が登場し、偶数の階層では【エンジェル】シリーズが出て来る傾向だったが……百階層で登場したのは、【エンジェルパラディン】という初出の敵だった。


 そんなパラディンであったが、ジン達と一応の戦闘は成立させるも早々に倒されていた。

 ジンとリンが翻弄している間に、リリィのバフを受けたヒメノとレンの攻撃であっさりとダウン。そこへヒイロとセツナの猛攻撃を受け、HPが一気に減少。更に追撃の【スパイラルショット】と【バーニングジャベリン】を受けて危険域に到達。

 最後はロータスのパッシブスキル効果を得た【一閃】で、力尽きたのだった。


 そうしてまたも、スピード・アタック・ボーナスが発生。ここまでゴールドコインしか出なかった為、ジン達もそこまで期待はしていなかったが……システム・ウィンドウに表示されているのは、思わぬアイテムの名前だった。

「……≪エンジェルヘイロー引換券≫?」

 ここへ来て、予想外のアイテムが登場した。


 エンジェルヘイローとは、所謂天使の頭に浮かぶ輪っかである。今回≪引換券≫を手に入れた事で、交換可能な≪エンジェルヘイロー≫のページを閲覧できる様になっていた。その数は、ゆうに百種類を超える。更にカラーリングも、自分で好きに設定できるらしい。

「わぁ、色々な形のがあります!」

「本当ですね……あ、音符型がある」

「星に花に動物モチーフ、バリエーション豊富ですね」

 女子三人組は、どうやら≪エンジェルヘイロー≫のラインナップが気になる様だ。やはり女の子、オシャレ要素には目がないらしい。

「へぇ……この≪ヘイロー≫を装備すると、マッチングポイントボーナスが付くんだ」

「ふむ、今回のイベント特効アイテムでゴザルな」

 この≪エンジェルヘイロー≫を装備する事で、二倍のマッチングポイントが得られるらしい。五人パーティであれば、1ポイントずつだったのが2ポイント。ソロであれば、5ポイントは10ポイントになるのである。


「折角だし、装備しておこうか」

 ヒイロがそう言うと、女子トリオは我が意を得たりといった様子でシステム・ウィンドウに目を走らせる。

「これは長くなるかな?」

「まぁ、ここまで順調に進んでいるでゴザルし……少しくらいは、構わないと思うでゴザルよ」

 ヒイロと苦笑し合いつつ、ジンもシステム・ウィンドウで≪エンジェルヘイロー≫を選び始めるのだった。


……


 そうして五人のプレイヤーの頭上には、各々が選んだ≪エンジェルヘイロー≫が浮かんでいる。

 ヒイロは刀の鍔を象った≪エンジェルヘイロー≫で、カラーリングは藍色である。

 レンはやはり、お馴染みの桃の花をモチーフとした≪エンジェルヘイロー≫。ヒメノも同様に、桜の花をイメージしてデザインされた≪エンジェルヘイロー≫だ。こちらもやはり、各々のパーソナルカラーで染められている。

 リリィが選んだのは、五線譜と音符で構成された≪エンジェルヘイロー≫だ。彼女の≪ヘイロー≫は白色で、現在の装備≪法衣・姫白百合≫との相性も良い。


 そして、ジンだが……女子トリオが見つけてしまった、アレである。

「おー、手裏剣だ」

「はい、手裏剣ですね」

「ちゃんと手裏剣だと解りますね」

「はい、バッチリ手裏剣です!!」

「何であるんでゴザルか、手裏剣型が……」

 彼のパーソナルカラーである、紫色。形状は、誰がどう見ても手裏剣。「これもう、ジン(+【忍者ふぁんくらぶ】)の為に作ってない?」と言いたいくらいに、見事に手裏剣スタイルの≪エンジェルヘイロー≫だった。ヒイロの刀の鍔型もそうだけど。

 他のにすれば良かった? ヒメノに期待の籠った瞳で見つめられてしまっては、他の形状を選べるジンではなかった。また、これだと思う物が他にも無かったというのも大きな理由である。


 ちなみに≪エンジェルヘイロー≫は、プレイヤーが装備すると自動的にPACパックに同じ物が装着されるらしい。つまり、リンの頭上にも紫色の手裏剣型≪エンジェルヘイロー≫が浮かんでいる状態である。

「他の塔でも、百階層のSAB報酬は同じなんでしょうか?」

 リリィがそう言うと、ジン達もその点について考えを巡らせる。どの塔を攻略するかで、得られる物がそこまで大幅に変わるだろうか?

「多分、報酬の性能自体は同じじゃないですかね。ただもしかしたら、≪エンジェルヘイロー≫以外の物という可能性もあるかもしれません」

「確かに、その辺りはあるかもしれませんね……他に考えられるのは、他の塔でも同じように≪エンジェルヘイロー≫が手に入るという可能性でしょうか」

 そうなると、他の塔で手に入れた物と被ってしまうのではないか? と考えるかもしれない。しかしヒイロとレンの予想は、むしろそれが利点となるのではないかというものだった。


「二つ目以降は、≪エンジェルヘイロー≫の性能を強化できるかもしれないです。俺達のこの≪付け髪(エクステ)≫みたいに」

「あ、成程。他の塔でSABを達成したら、≪エンジェルヘイロー≫が強化されてマッチングポイントの取得率が上がる……って予想ですね?」

「まぁ、実際に取得してみないと解りませんけどね」

 ≪エンジェルヘイロー≫については、現時点では予想の範疇でしかない。ひとまず≪ヘイロー≫を装備できたので、ジン達はマッチングシステムを発動させて先を急ぐことにした。


 そこから先もジン達は、上層階を目指して攻略を進めて行く。しかし徐々に敵のステータスも強化されていき、戦闘時間も少しずつ長引き始めていく。

 更に三時間が経過した時点で、ジン達は百六十八階層をクリアした所だった。

「もう間もなく、現実では二十二時半でゴザルな」

「はい。百七十階まで、あと少しなんですけど……」

 ジン達は真面目な学生なので、遅くても二十三時までにはログアウトする。そして今回は、一度クラン拠点に集まり報告会をする事になっているのだ。そろそろ拠点に戻らなくてはならない……という訳で。

「よし、それじゃあ残りは……()()を出そうか」

 ヒイロがそう言えば、プレイヤー四人は真剣な表情で頷いて応える。


「「【我等は比翼の鳥、連理の枝】」」

 ジンとヒメノは夫婦専用スキル【比翼連理】を発動し、互いのステータスを分け合う。それも、全てのステータスを半分ずつだ。それはつまり、同じステータスの……それも、STRとAGIに特化したプレイヤーが二人居るという事である。

 この時点で、二人のステータスはSTR・AGI型と考えれば最前線クラス。PSプレイヤースキルも考慮すれば、生半可なプレイヤーでは太刀打ちできないレベルである。


 しかしながら、ヒイロの指示オーダーは、()()だ。これだけで終わらないのが、【七色の橋】である。

 それを証明するかの様に、ジン・ヒメノ・レンが両手を前にクロスさせながら突き出し……そして、各々ポーズを取る。

「「「【変身】」」」

 三人の設定した【変身】専用エフェクトがシンクロし、煙幕の中で炎が弾け雷が迸る。そしてジンが手を振るう事で発生した風が、煙幕を吹き飛ばした。これで三人のステータスは二倍となり、ジンとヒメノに至っては互いの普段のステータス値になる。


「最終武技は、百七十階層のボスまで温存しよう。それじゃあ、行こうか」

 ヒイロがそう言って次の階層へ歩を進め、ジン達もそれに続く。そうして百六十九階層に、足を踏み入れた瞬間。

「ジン、ヒメ。宜しく頼んだよ」

「御意ッ!!」

「はいっ!!」

 ヒイロの言葉に返事を返しながら、ジンとヒメノが駆け出した。その速さは凄まじく、あっという間に二人の背中が見えなくなる程である。


 その後、高速機動で戦うジンとヒメノによって道中の天使が軒並み全滅させられた。

「うーん……この何もしていない感が嫌で、避けていたんだけどな」

 道中を進むヒイロ達は、天使達が居ない階層をひたすら進むだけだ。仲間同士で協力してプレイするにあたって、特定人物にだけ戦わせるわけにはいかない……という意図で避けていた手段を駆使したせいで、申し訳なさそうである。

「それは何か、解りますね……」

「まぁ、致し方ない事ですから。その分、この後のボス戦で私達も貢献しましょう」


 極振り夫婦の全()()によって、百六十九階層はあっさりとクリアとなった。

 そして続く百七十階層で、待ち受けていた階層ボスである玄武だが……最終武技を発動したジン・ヒメノ・レン、【幽鬼】を発動させたヒイロ、そんな四人とPACパック達を支援するリリィの連携の前に瞬殺された。

 そこまでの所要時間は、約十分……全力を出したジン達は、特に感慨に耽る事も無く拠点へと帰還するのだった。

次回投稿予定日:2024/3/25(本編)

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― 新着の感想 ―
[一言] ヘイロー!!(多段エコー付きバリアンの面白き盾ボイス)
[良い点] お労しや玄武…w このメンバーとSABは相性が良すぎるw
[良い点] 塔攻略がギャグ回にwww [一言] 頭領様 姫様 塔は破壊しないよう くれぐれもよろしくお願い致します
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