18-10 第五回イベントが始まりました
二月五日……第五回イベントが開始されるその日、多くのプレイヤー達が普段よりも早くログインしている。そんな彼等は今現在、始まりの町[バース]の門の外に集まっていた。
その理由は勿論、イベントに関わる情報があったからだ。ログインすると同時に、視界の上に運営からのアナウンスが流れたのである。
『20:00より、第五回イベント・オープニング演出があります。始まりの町に設置されている、四つの門の前でお待ち下さい』
これまでのイベントでは、オープニング演出といったものは無かった。
第一回ではオーウェンによるアナウンスだけで、第二回イベントの場合はアンナによる司会進行とトーナメントの抽選といったものである。
そして第三回イベントで、運営ミーティングの場に魔王軍が乱入。公式キャラクターによる寸劇と、イベント内容の説明がされた。しかしイベント開始前の告知であり、オープニング演出とは言い難い。
第四回イベントはセインによる挨拶の後、イベントマップに転移しイベント開始といった流れである。
「どんな演出なんだろうな」
「わざわざ告知するくらいだし、派手なのが来るんじゃない?」
「もしかして、魔王ちゃん様が出て来るとか!?」
「始まりの町に魔王が来るとか無いだろwww」
そんな賑やかなプレイヤー達の中に、勿論ジン達も紛れていた。当然、変装した上で。
囲まれてしまうのは避けたいが、折角のイベントである。オープニング演出とやらも気になるし、ここは実際に自分の目で見ておきたかった。
ちなみに、全員一緒に居るとすぐにバレてしまうかもしれない。なので、それぞれいつも通りの組み合わせで分散している。
変装用のフルプレート鎧で顔を隠しているジンは、隣に立つヒメノに声を掛ける。ヒメノはヒメノで魔法職らしいローブと、トンガリ帽子を目深に被って変装中だ。
「わざわざ演出って書くくらいだし、ストーリー的なものもありそうだよね」
「そうですね。この世界の事って、結構小出しで明かされていますし」
この【アナザーワールド・オンライン】の世界設定は、あまりプレイヤーには知られていない。しかしながら、秘匿されている訳でも無い。
「色々と、設定がありそうだよね。モンスターが居て、魔王が居て、精霊や妖精も居て……そう言えば、[神竜殿]に祀られている竜も実在したんだっけ」
「確かそうでしたよね。神竜【アルカンシェイル】と、七竜王でしたっけ」
他にもスキルオーブのフレーバーテキストや、NPC達から得られる情報もある。ジン達にとって縁深いのは、セツナやカゲツの出身地らしき[遥か東の地]だろうか。
************************************************************
そんな事を話していると、いよいよ時刻が二十時になる。すると、どこからともなく鐘の音が鳴り始めた。
「おっ?」
「いよいよ来たぞ!」
期待に胸を膨らませ、ざわつき始めるプレイヤー達。そんな彼等の頭上から、白い羽根がひらりひらりと舞いながら落ちて来る。
「……へ?」
「う、上!! 上だッ!!」
誰かがそう言えば、プレイヤー達の視線は上空に向けられる。そこには、空からゆっくりと舞い降りて来る人の姿があった。
「……天使?」
「あぁ、天使っぽいな」
白い布地に、金色の装飾。頭上には天使の輪があり、背には一対の大きな翼。正に天使と呼ぶに相応しい姿である。
そんな天使達は、それぞれの門に一人ずつ舞い降りて来ている。東と南には男性の天使、西と北には女性の天使。
ジン達が居るのは北門なので、長い髪の女性天使である。ちなみに半数以上の男性プレイヤーが、天使の腰から下を凝視している……が、勿論彼等が望むモノはどうあっても見る事は出来ない。
そうして天使達は、ある程度の高さで降下を止めた。そのまま空中に浮遊し、自分達を見上げるプレイヤー達に視線を向ける。
すると、天から声が響いてきた。
『異邦人達よ……よくぞ集まってくれた』
それは、透き通る様な女性と思われる声だった。
「ど、どこから声が?」
「あの天使じゃなさそうだよな」
ちなみにそんな天から響く声に、浮遊中の天使さんが何故か軽く右手を胸元の前で握り締めていた。何だか、「頑張って!!」みたいな動きである。
『我は遍く世界をお創りになった創世神様より、この世界の守護と管理を任されし神【エル・クレア】』
「いきなりスケールでかいな!?」
「神様キター!!」
「エル・クレア? エクレア?」
「おいこらやめろ」
神様らしきエル・クレア神の言葉に、一部のプレイヤー達がそんな事を話し始める。それが聞こえているのかいないのか、エル・クレア神は更に言葉を続ける。
『異邦人達よ……其方達の日頃の奮闘は、我もよく見ている。しかしながらこの先に待ち受ける苦難を乗り越えるには、十分とは言い難い』
どうやらエル・クレア神は、今のプレイヤー達の力では所謂「まだまだだね」と考えたらしい。
そして、彼女の言う『この先に待ち受ける苦難』。それは暗に、ゲームの先の段階……第四エリアの事を言っているのだろう。
『そこで其方達が心身を鍛えられる様に、試練を用意した』
つまりはそういう事らしい。神であるエル・クレアが、異邦人達を鍛える為の試練を課す……それが、第五回イベントのシナリオなのだろう。
ここへ来て、神や天使が登場するとは思っていなかったプレイヤー達。ちなみに一部のプレイヤーは天使達をスクリーンショットで撮影したりと、話をあまり聞いていない者も居るのだが。
ちゃんと聞いてあげて、エル・クレア神も頑張っているんだから。
『では……【ミカイル】【ガヴェリィ】【ウレルス】【ラーファ】』
「「「「御意」」」」
天使達が地面に手を向けると、地面に魔法陣が描かれていく。魔法陣の色は聖属性魔法と同じ純白で、その大きさは半径十メートル程だ。
魔法陣が完成すると、地面から生える様に建造物が姿を現した。見た目は円形の神殿で、七本の柱の間から中の様子を見る事が出来る。神殿の中央には、大きな門が設置されていた。
『その≪転移門≫を潜る事で、我が用意した[試練の塔]に転移する事が出来る。そこで待ち受ける敵と戦い、勝利し、次の階層へ続く門を潜って頂点を目指すのだ。またこの機会に志を同じくする者と出会い、縁を結ぶ事もまた力となろう』
今回のイベントは、とにかく戦って戦って戦い抜くタイプらしい。ガチガチの戦闘系イベントであり、所謂ダンジョンアタックだ。
そして事前に告知されている通り、プレイヤーの人数上限は五人。普段のパーティ人数の上限の半分というのも、試練の意味合いが含まれているのだろう。
『勿論其方達の努力に応じて、我から報酬を授けよう。それでは、また会おう異邦人達。我は、其方達の更なる成長を願っている』
そう言って、エル・クレア神の天の声……言うなれば、神託はこれで終わった……はずだった。
これでイベント開始だろうから、召喚された≪転移門≫に向かおう……そう思ったプレイヤー達の目の前に、システム・ウィンドウがポップアップした。
そして、ウィンドウはどこか解らない場所を映していた。とても広い、白を基調とした厳かな場所。そしてその場所には玉座があり、そこに一人の少女が座っていた。
『…………はぁ~っ!! ちょー緊張したぁ!!』
天から響く声は、まだ終わっていなかった。しかしながら、その雰囲気は一変した。
『どうだった? 私、ちゃと神様らしく出来た!? 【ラージル】、どう!?』
それは、どうやら神様の世界の様子らしい。先程までは声だけだったが、今はシステム・ウィンドウに映し出されてその姿もバッチリ見えている。
少女はそう言って、左側に控える男性に声を掛けた。ラジールと呼ばれた男性も、下界に降臨した天使達と似た姿である。
『そ、それは無論ですが。あの、クレア様……?』
ラジールが”クレア様”と呼んだ事から、彼女がエル・クレア神であるのは確定だろう。
亜麻色の長い髪はウェーブがかっており、均整の取れたプロポーションは彫刻の様だ。身に纏う装束とも相まって、見た目に関しては女神様と称していい美しさである。
しかし先程までの威厳はどこへやら、社面接の緊張から解放された所で、友達と会って早口になっている就活生みたいな様子だった。どんな例えか。
『塔の方は大丈夫だよね? 異邦人達が太刀打ち出来ないような相手とか、入れてないよね? 【スーリエ】、報酬の数は大丈夫? ちゃんと、異邦人達に行き渡る?』
『抜かりはございません、クレア様。ところで、そのですね……』
スーリエと呼ばれた女性も、ラージル同様に何かを言いたそうだ。何を言おうとしているのかは、言わずもがな。
しかしエル・クレア神は大仕事を終えて緊張から解放されたからか、玉座にもたれ掛かってグッタリである。
『あー、【レミール】お茶の準備をお願いして良い? 勿論、異邦人達の所に行った皆の分もよ? 皆でお茶会にして、異邦人達の頑張りを応援しましょ』
『……か、かしこまりました。ですがクレア様、その前に……』
そこで、下界に絶賛降臨中の天使達の一人が上空に向けて声を上げた。それはジン達の居る、北門に降臨した天使である。
「クレア様、御声が下界に聞こえております!! ついでに申し上げますと、御姿も投影されておりますよ!!」
『ん-? ラーファ、戻りが早い……え!? あれっ!?』
どうやら北門の天使は、ラーファというらしい。彼女は可愛らしい女性の姿をした天使で、少しばかり衣装も女性らしさを強調するデザインだ。それでも下品に見えないあたり、キャラクターをデザインしたスタッフはかなり思い入れを込めて良そうである。
まぁ、それはそれとして。
『あ、あれぇっ!? 何で!? 声ナンデ!?』
『クレア様……恐らく音声伝達のボタンと、映像伝達のボタンを間違えて押されたのでは……?』
『いやいやいや、私がそんな凡ミスをするはず……って、してたぁっ!?』
『『『しちゃってたかぁ……』』』
プレイヤー達に伝わる、そこはかとないポンコツ臭。威厳? あぁ、奴さん死んだよ。
そんなエル・クレア神に、プレイヤー達の表情はほっこりしていた。
「愛い神め」
「ん-、駄女神ではないけど、こう……空回っているというか」
「何だろうね、この……神様一年生みたいな感じ」
「そうそう……こういうのでいいんだよ、こういうので」
「放送事故、ありがとうございます!!」
「推せる、むしろ推させて頂く」
「ポンコツ神・エクレアちゃん様、爆誕」
掲示板を思わせるノリで、好き勝手言い始めるプレイヤー達。その声が聞こえているのか、エル・クレア神は顔を真っ赤にして異邦人達に反論した。
『聞こえてるわよ、あんた達ッ!! あぁもうっ、折角イメトレして本番も上手くいってたのに……!! こうなったら、よし。目撃者であるあんた達を……』
『クレア様、それ以上はいけない』
寸劇は続いていた。魔王軍のあれやこれ並に愉快な光景に、プレイヤー達も盛り上がっていく。
『むぅ……まぁ、流石にそれはナシなのは解ってたけどね? でもさっきの異邦人達の言葉も不敬だったから、試練に神獣を配置しちゃおっと』
『クレア様ァ!?』
神の怒り(?)によって、イベントの難易度が上がったらしい。いや、もしかしたら元からそういう予定で設定だったかもしれない。
ともあれこれで、寸劇も終盤を迎えた様だ。
『ま、既にあんた達のほとんどが知ってる神獣だし、何とかしなさいな。うん、多分いけるいける……多分ね? ってか、あんた達には”復活の加護”があるんだし。そんな訳で、試練に挑んで頑張って強くなってらっしゃい。成長したあんた達に会えるのを楽しみにしているわよ、異邦人達』
不敵な笑みを浮かべたエル・クレア神は、今度こそ終わりだとウィンドウに手を伸ばす。その際に「こ、これよね? これで良いのよね?」と小声で言っていたのが、また何とも。
そうしてシステム・ウィンドウが自動的に閉じられ、エル・クレア神達の声が聞こえなくなった。そうなると、プレイヤー達の視線は……まだこの場に残る天使に向けられた。
「……い、異邦人の皆さん!」
視線に耐えられなかったのか、それとも台本通りなのか。エル・クレア神の遣いであるラーファは、プレイヤー達に向けてにっこりと微笑んだ。その笑顔が少し引き攣って見えるけど、多分気のせいだ。
「エル・クレア神様のご用意なさった、試練の塔はもう開放されました!皆さんの成長と健闘を、私共も願っています!それでは、私はこれで失礼致しますね! ノシ!」
そう言って微笑むと、天使ラーファは上空に向けて飛翔する。その飛ぶ姿を見て、一部のプレイヤーがまたしてもナニかを網膜に焼き付けようと視線を凝らしている……勿論、見えはしない。
「なぁ、今……天使が「ノシ」って言ったな」
「言ってたな……もしかして、オタク天使か?」
尚、この「ノシ」についてラーファの中の人は、後で注意を受けるのだがそれは別の話。
************************************************************
「……AWOの運営さん、お茶目ですよね」
ヒメノがそう言って笑うと、ジンも苦笑しながら頷く。
「本当にね。まぁ、広報責任者のあの人が一番お茶目で愉快なんだけど」
「そう言えば今回、レイモンドさんは出ませんでしたね」
DJ・レイモンドが出張って来たら、多分エル・クレア神もキャラ負けするかもしれないと思ったのだろうか。実際、それが有り得そうなくらいキャラが濃ゆい。それが、DJ・レイモンドである。とはいえ、エクレア……もといエル・クレア神もまた、別のベクトルで濃いキャラであったが。
「さてと、それじゃあまずは……」
「はい、予定通り合流しましょう」
イベント序盤はパーティ単位で攻略し、イベントマップの攻略情報を纏める。これは【七色の橋】だけではなく、クラン【十人十色】としての方針だ。
オープニング演出を終えて、我先にと≪転移門≫に向かうプレイヤー達の流れに逆らう様にして、ジン達は集合場所へと向かう事にした。
イベントに参加すべく≪転移門≫へ向かうプレイヤーの数は多く、ジンとヒメノはぶつからない様にと大きく距離を取る。
「サーバーが分かれていなかったら、更にたくさんの人が居る事になるんですよね」
「確かにそうだね。それに今回は、サーバーの中でも四箇所に分散しているから……」
今回のイベントではそんなプレイヤー達が、マッチングシステムによって五人一組のパーティを組むイベントだ。
勿論、プレイヤー全員を無作為にマッチングさせるというわけではない。ある程度は、実力が近いプレイヤー同士を選別する。
その判断基準はまず当然、プレイヤーレベルが参照される。レベル60とレベル20のプレイヤーがマッチングしても、実力差があり過ぎるのだから当然だろう。ちなみにパーティの場合は、パーティメンバーの平均レベルを参照するらしい。
次に参照されるのは、[試練の塔]の進行度だ。攻略達成済みの階層が近いプレイヤー同士が、マッチングしやすくなっている。
尚、この[試練の塔]の攻略は何階層まであるかは明言されていない。そして十階層ごとにチェックポイントがあり、そこで攻略進行度のセーブが可能となっている。
つまり十九階層まで攻略しても、二十階層で敗北しセーブ出来なければまた十一階層から再スタートとなるのだ。
またチェックポイントでは、マッチングをし直す事が可能となっている。マッチングポイントを早く貯めたいプレイヤーは、ここで再度マッチングをすると効率が上がる訳だ。
また五人パーティの場合でも、ここでマッチングシステムを発動させれば『マッチングを発動した』扱いになる。とはいえ、ソロでのマッチングよりもポイントは低いのだが。
「パーティ五人で1ポイント……パーティ人数が下がれば1ポイント増えて、ソロだと5ポイントになるんですよね」
「そうだね。あ、報酬の情報も公開されているはずだよね?」
ジンがシステム・ウィンドウを開くと、ヒメノがその画面を覗き込む。二人は夫婦なので、可視化設定にしなくても互いのシステム・ウィンドウを見る事が可能なのだ。
「流石に≪オリハルコンチケット≫は無いけど、≪プラチナチケット≫はあるんだ。でも、1万ポイントかぁ……」
「ジンくんは、≪プラチナチケット≫で何か欲しいものがあるんですか?」
「んー、そこまでこれが欲しいっていうのは無いかな? 強いて言うなら、≪大破した砲塔≫くらい」
何でもない事の様にジンはそう言うが、それが自分の為だとヒメノは即座に気が付いた。先日、カイセンイクラドンから譲り受けた≪大破した砲塔≫。それを受け取った際に出た話題が、ヒメノのユニークスキル【八岐大蛇】だ。ジンは恐らく彼女の保有する≪四門大砲・桜吹雪≫を、その名にちなんだ装備に進化させようと考えているのだろう。
そんな彼の心遣いが嬉しくもあり、申し訳ないとも思う。しかしやはり嬉しい気持ちの方が勝るので、ヒメノはジンの手を取った。
「ありがとうございます、ジンくん」
「気にしないで。ヒメが更に強くなって、一番助かるのはやっぱり僕だし。それに、進化した≪桜吹雪≫が見てみたいっていうのもあるしね」
やはり、ジンも男の子。普段はあまりそういった素振りは見せないが、大砲などに浪漫を感じるらしい。ちなみにジンの本心は、正確には『進化した≪桜吹雪≫を装備したヒメノが見たい』だろう。
そんな会話をしていると、集合場所が見えて来た。そこには【七色の橋】のメンバーと、一部のクランメンバーの姿がある。
「お待たせ、皆」
ジンとヒメノが歩み寄れば、仲間達が二人を出迎える。
「待ってたよ二人共、こっちのグループは全員集合だね。南側の【桃園】組と、西側の【魔弾】組も揃ったみたいだ。東側のグループは、既に攻略に移っているよ」
ヒイロの説明に、集まった仲間達が頷く。北側は【七色の橋】を中心とした、攻略部隊だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
【北側】
ヒイロ・レン・ジン・ヒメノ・リリィ
ハヤテ・アイネ・センヤ・ヒビキ・タスク
ネオン・ナタク・イカヅチ・イナズマ・ハヅキ
ミモリ・カノン・ユージン・ケリィ・クベラ
【南側】
ケイン・イリス・ゼクス・チナリ・マール
ダイス・ヴィヴィアン・バヴェル・シオン・サスケ
フレイヤ・ゲイル・レオン・コヨミ・ネコヒメ
ヒューゴ・ゼクト・ラミィ・ココロ・イズナ
【西側】
ジェミー・メイリア・ディーゴ・ビィト・クラウド
レーナ・ミリア・ルナ・シャイン・トーマ
他、【忍者ふぁんくらぶ】二組
【東側】
アヤメ・コタロウ・ジライヤ・ハンゾウ・ハナビ
他、【忍者ふぁんくらぶ】五組
―――――――――――――――――――――――――――――――
シオンは今回、【桃園の誓い】組に合流している。本人はレンの側に控える方を選ぼうとしたのだが、そうすると南側攻略チームが不足するという理由でレンが押し切ったのだ。
また【忍者ふぁんくらぶ】も分散し、攻略メンバー数を可能な限り均一化している形だ。
「まずは情報収集、行けるところまで行ってみようか」
「ぶっちゃけ俺等の足が止まるより、タイムリミットが先に来そうな気がするッスねぇ」
何階層まであるかは解らないが、AWOの運営チームの用意したイベントマップだ。たかだか百階層程度で、イベントマップが終わるとは到底思えない。ジン達も「運営の事だから千階層くらいはあるのではないか?」などと予想していた。
そんな訳でイベントの初動は、遊び心抜きのパーティ編成。攻守と支援のバランスを重視した、全力攻略シフトである。
更にジン達は、イベントマップ内でPAC召喚が可能だと推測していた。そうすれば最大人数が五人から、通常パーティと同数の十人になる。これは運営による、PAC契約を進めるべきだというメッセージだろう。
何はともあれ、いよいよ第五回イベントの幕が上がった。ジン達は早速、神殿の中央に配置されている≪転移門≫へ向けて歩き出すのであった。
次回投稿予定日:2024/3/18(幕間)
魔王ちゃん様とは違った魅力の愛され公式キャラクターを出したいと思って、ポンコツ神エクレアちゃん様を作った。後悔も反省もしていない。
そんな彼女と天使達の様子は、次回の幕間にて。




