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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十八章 第五回イベントに参加しました

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18-05 キーアイテムを見付けました

 第一エリア[ダイモス山]の一角で発生した、エクストラクエスト。それに挑むクラン【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】の面々は、必死の戦闘を継続していた。

 そんな最中エルリアが思いを馳せたのは、先程遭遇したとある極振り夫婦。もしもこの場に居たら、協力を仰ぎたいと思いつつ……既に、このマップを去っていると思っていたのだが。

「来るはず、ないと思ってたんだけどなぁ……!?」

 恐る恐る頭上を見上げてみれば、山間の戦場を構成する切り立った崖の上に忍者とお姫様が居た。

「ジン君に、ヒメノちゃん!?」

「ど……どうしてここに!?」

「ウオオオ!! 本物だぁ!!」

 即座に、騒がしくなる戦場。それくらい、インパクト抜群の存在なのだから仕方がない。


「あ……失礼したでゴザル、邪魔をするつもりはござらぬ故……」

「あ! 待った待った、ちょっと待って貰って良い!?」

 思わず、トロロゴハンも声を上げた。そんな制止の声に、ジンとヒメノはその場で待機する姿勢を見せた。

 二人が立ち去らないでいるのを確認したトロロゴハンは、カイセンイクラドンに向けて声を張り上げる。

「あなた~! さっきモンスターハウスを譲って貰ったんだし、ここはレイドに招待するのはどうかしら! ささやかだけど、お礼にもなると思うのよ!」

 その言葉に、カイセンイクラドンはトロロゴハンの考えの半分が建前だと察して溜息を吐く。


 ジンとヒメノの力を借りて、クエストを達成する。更に二人の戦いを、近くで観察できる。そういった考えがある事は、否定できないだろう。

 だがしかし。建前とも言えるのだが、モンスターハウスを譲って貰ったお礼にもなるのでは? という考えもまた事実。エクストラクエストの報酬ならば、モンスターハウスよりも良いモノが手に入る可能性が高い。経験値以外にあまり旨味の無いモンスターハウスよりも、実入りが良さそうなのは間違いないだろう。

 そして何より……二人を利用するつもりではなく、二人と共に戦うつもりなのがトロロゴハンだ。彼女はジン達の事を心底気に入っており、彼等の前ではサブマスターの顔よりも素の彼女の顔になる。

 何だかんだで、共闘したのは【禁断の果実】との乱戦くらい。これは千載一遇の機会かもしれない。


「はぁ……ユウシャ、オーディン!」

 彼等の力に頼るという事に抵抗はあるが、実際にお礼になりそうなのも確かだ。カイセンイクラドンは同盟相手である二人のギルドマスターの名前を呼び、意見を求めた。

「良いと思うぜ? 彼等なら、人柄も実力も信頼できるしな!」

「むしろ是非ともって感じだな。あの子達と一緒に戦うとか、最高かよ!」

 ギルドやクランの垣根を越えて、時には競い合い時には共闘する。そんな関係を構築していきたいという思いは、【遥かなる旅路】だけではなくクラン【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】全体の総意だった。

 そう言われてしまっては、自分とて同じ気持ちだと認めるしかない。


「トロ!! 彼等さえ良ければだ、断られたら諦めろよ!!」

「……という訳だけど、どうかしら?」

 カイセンイクラドンの返答と同時に、ジンとヒメノに呼び掛けるトロロゴハン。すると、返事は即断即決だった。

「了解でゴザル、そういう事ならありがたく」

「皆さん、ありがとうございます!」

 礼儀正しく、ペコリとお辞儀をする二人。更にリンとヒナ、コンまでもが同じ様に一礼する。


――天使かな?


 いいえ忍者とお姫様、くノ一と妹姫と忍狐です。

 それはさておき、崖から滑り降りた四人と一匹。ジンとヒメノはすぐにレイド参加の申請を送り、トロロゴハンがそれを承認。これで、ジンとヒメノのパーティが正式に参戦した。

 それを視界に表示されるアナウンスで確認した面々が、歓喜の声を上げる。そんなレイドパーティに苦笑しつつ、ジンは両手に小太刀を装備。その隣に同じく小太刀を携えるリン、【成獣化】して臨戦態勢のコンが並ぶ。

「では定番の台詞みたいでゴザルが……助太刀致す!!」

「行きますよ、コン」

「コンッ!!」

 ジン・リン・コンが前衛部隊の方に向けて、高速移動を開始した。その速さは、正に風の如し。


「スーパー忍者タイム、いざ開幕!!」

 そんな決め台詞と共に、エルダーゴーレムに苦無を投げるジン。それはジンが得意とする戦法、【狐雷こらい】による麻痺だろう。カイセンイクラドン達も、これでチャンスが訪れる……と思いきや、ゴーレムの身体に苦無が刺さらなかった。

「なんと……ならば、【天狐てんこ】!」

 魔力で生み出した足場を駆け上がり、ジンはゴーレムの後方に苦無を投げる。ゴーレムに刺さらないなら、地面に刺せば良いのだ。

「今度こそ、【狐雷】!!」

 わざわざ後方に苦無を投げたのは、【狐雷】の電撃が味方に及ばない様にする為だ。ギリギリ、ゴーレムの足元までが効果範囲になる様にしたのである。

 そうしてエルダーゴーレムに電撃が到達し、その身体を駆け巡る……が、エルダーゴーレムは麻痺しなかった。

「むっ!? もしや、雷耐性……? それとも、デバフ耐性か……」


 そうしている内に、エルダーゴーレムはジンに視線を向ける。そしてその剛腕を振り上げた所で……。

「させませんっ!! 【スパイラルショット】!!」

 ヒメノの放つ矢が、その腕に命中した。

「すげぇ!!」

「流石が過ぎるゥ!!」

「あんたら、うっさい!! でも、本当に凄いわ……狙いも正確だし」

「今のもダメージ半減されてたのか……? それでも普段の俺の矢より、全然高い数値だったんだけど……」

「あ、はい。いつもの三分の一くらいでした」

「「「「Oh……」」」」


 そんな後衛をよそに、忍者・くノ一・忍犬ならぬ忍狐の猛攻は続く。

「【一閃】!!」

 リンがエルダーゴーレムを挑発するかの如く、その顔面を小太刀で斬り付ける。その間に、コンはその足元に駆け寄った。

「【狐火コン】ッ!!」

 地面から噴き上がる火柱。しかしそれでも、エルダーゴーレムには大した影響はない。しかしリンとコンの狙いは、エルダーゴーレムの注意をジンから逸らす事。

 それを証明するかのようにジンは高く跳び上がって、ゴーレムの頭上で≪大狐丸≫の切っ先を天に掲げた。

「【狐雨こさめ】!!」

 魔技の発動と同時に、エルダーゴーレムの頭上からデバフ効果を引き起こす雨が降り注ぐ。だがデバフは発動せず、ゴーレムはそれを意に介する事無く腕を振り上げた。


 その瞬間、ゴーレムの右足から罅割れる様な音が発生した。


「むっ?」

「ん……?」

「今のは……」

 プレイヤー達の視線が、エルダーゴーレムの右足に向けられる。そこには火柱で熱された後に、雨水を受けて発生した蒸気。そしてほんの一部だが、蒸気が上がるそこには亀裂が出来ていた。

「……水に、火……そうか、そういう事か!!」

 真っ先に、その理由に気付いたのはタイチだった。

「皆、複数の属性魔法だ! 今のは火柱で熱された直後に、水で急速に冷やされた……だから、強度が下がったんだ!」

 その言葉を受けて、誰もが驚愕し……そして攻略の糸口が見えた事によって、衰えかけていた戦意が再び盛り返す。


「なら、検証ね!」

「オッケーですよん!」

 トロロゴハンは火属性魔法、オヴェールは水属性魔法の詠唱を進めていた。そして詠唱が完成した瞬間に、二人はタイミングを合わせて魔法を発動させる。

「【ファイヤージャベリン】!!」

「【ウォータージャベリン】!!」

 同時に放たれた魔法の投擲槍は、エルダーゴーレムの左腕に命中。その瞬間、蒸発音と蒸気が発生し……そして、先程よりも大きな罅割れ音が起こった。


「ふむ、だとすると……姫!!」

「はいっ!!」

 ジンは≪大狐丸≫と≪小狐丸≫を手に跳び上がり、ヒメノも≪大蛇丸≫を構える。

「【水蛇すいじゃ】!!」

 狙いは、亀裂の入った左腕。そこにヒメノが放った【水蛇】が絡み付いた。特に、亀裂が入っている箇所を重点的にだ。

「いざ、雷鳴の如く……!!」

 更にその場所へとジンが駆けて、両手の小太刀を思い切り突き刺す。

「【狐雷】ッ!!」

 亀裂から発生した電撃が、エルダーゴーレムの外装部を駆け巡る。それだけではなく、亀裂部分から内部にも電撃は奔る。これはヒメノの【水蛇】が、亀裂から内部に入り込んだからだろう。


 するとゴーレムの動きが止まり、麻痺状態を示すアイコンが点灯した。

「やはり! 複数の魔法攻撃で表面を割った所からなら、デバフも発動する様でゴザル!」

「ふむ……あともう一つ、試しておくか」

 そう言うと、カイセンイクラドンが愛用の剣を構えた。狙いは、最初に小さな亀裂の入った右足だ。

「こいつはどうだ……【エキスパンド】!!」

 スキル発動宣言と共に、カイセンイクラドンの剣がそのサイズを変化させていく。それこそ長身のカイセンイクラドンが持っているにも関わらず、その背丈を越える大きさだった。

「すごく……大きいです……」

「やかましい」


―――――――――――――――――――――――――――――――

 スーパーレアスキル【エキスパンド】

 効果:片手武器又は両手武器のサイズを二倍にする。その際、与ダメージ値・質量も二倍となる。

    発動中は装備耐久値が半減する。

    消費MP10。攻撃した後、このスキルの効果は切れる。

―――――――――――――――――――――――――――――――


「【デストラクトスラッシュ】!! せぇぇいっ!!」

 渾身の力を込めた一撃を、裂帛の気合と共にゴーレムの右足に叩き込む。そんなカイセンイクラドンの攻撃によって、小さな亀裂が一気に広がり……そして、音を立てて砕け散った。

 光沢のある外装部が砕け散れば、そこには岩で出来たゴーレムの足がある。ゴツゴツとしたその足は、見るからにそこまで頑丈では無さそうである。


「攻略法が見えたな……感謝するよ、ジン君」

「いやいや、お役に立てたなら幸いでゴザルよ」

 二人がそんな会話を交わせば、他の前衛メンバー達もその場に集まる。

「テンション上がって来たな?」

「あぁ、こっからは俺達のターンだ」

「目にもの見せてやるぜ、デカブツ!!」

「くノ一さん、狐ちゃんもよろしくな!」

「はい、お任せ下さい」

「コンッ!!」


「それじゃあ、魔法職わたしたちの全力を見せてあげましょうか」

 同様に後衛職も、一斉に詠唱を開始。魔法攻撃の組み合わせが外装部を破壊するのに重要と解り、自分達が仲間を守るのだと気合いを入れ直している。

「水魔法の担当は、こっちに!!」

「私、水魔法使えます!」

「キャー、ヒナちゃーん!!」

「じゃあ、火属性を担当する人はこっちね。さっさとあの厄介な殻を剝ぎ取っちゃいましょう!!」

「あ、それじゃあ私もこっちに参加しますね!」

「え? ヒメノ……ちゃん?」


 そうして攻撃態勢はすぐに整えられ……レイドパーティ側が、攻勢に出る。

「炎魔法チーム、放て!!」

「【エレメンタルアロー】……【炎蛇えんじゃ】ッ!!」

 後衛から放たれた炎魔法が、エルダーゴーレムの全身を熱していく。既に詠唱は完了しており、水魔法チームも準備万端だ。

「水魔法チーム、放て!!」

 号令に従って放たれる、水属性魔法の数々。それらが過熱されたエルダーゴーレムの外装部を濡らし、冷やす。その急激な温度差によって、外装部のあちらこちらから罅割れる音が発生した。

「前衛、突撃だッ!!」

「気を引き締めろよ!!」

「お前等、一気に砕くぞぉっ!!」

「では拙者も……幻影の如く!! 【分身】ッ!!」

 一斉に前衛陣がエルダーゴーレムに殺到し、耐久度が下がった外装部を叩き割っていく。


……


 そうして次々と外装部を剥がされたエルダーゴーレムは、その本当の姿を晒した。所々が崩れ落ち、今にも砕け落ちそうな岩くれで出来ている。頭部にある一つしか無い赤い玉が、先程から点滅している。

『おのれ……!!』

 HPゲージももう、残り一割。戦闘の終盤戦に発生する、ボスの行動パターン変化の予兆だろう。

『許さん……許さんぞ……!!』

 エルダーゴーレムの身体を構成する岩が崩れ落ち、そして集まって形を形成していく。そうして出来上がったのは、巨大な手だった。

『叩き潰してくれる!!』

 そのまま、前衛メンバー目掛けて殴り付けようとする巨大な手。彼等がそこから退いても、その後方には後衛メンバーが居る。ここで止めなくては……そう思って、攻撃すべく構える面々。


 でもその前に。

「【狐雷】」

 サクッと苦無が刺さり、バチッと電撃が奔った。その瞬間、巨大な手となったエルダーゴーレムの動きが止まる。

「ナイス、ジン君!! あらよっと!!」

 更にロビンが数回切り付けて、遅延ディレイのデバフが発動した。これで、エルダーゴーレムの攻撃速度は格段に下がるだろう。

「先程の外装が無ければ、デバフも発動する様でゴザルな」

「だなぁ。いや、攻略法が解ってホッとしたよ」


「さっきの赤い玉、あれ怪しかったよな。首領ドン、あれをぶっ叩いてみない?」

「……確かに。よし、周りの岩を削ぎ落とすぞ!!」

 前衛メンバーが駆け寄って、エルダーゴーレムを攻撃し始める。すると身体を構成していた岩が崩れ落ちて、徐々に体積を減らしていく。

「さっきの苦戦は何だったんだか……」

「いや、ギミックに気付いてからはすぐだっただろ? やっぱ、第一エリア相当のエクストラクエストなんだろうさ」

 実際にギミックに気が付いてからは、レイドパーティ側が優位に立っていた。第三エリアでの探索に耐え得る実力者達だ、攻撃が通るならばそれも当然の帰結だろう。


「【一閃】……おっ! 皆さん、あったでゴザルよ~!」

 ジンが【一閃】で岩を崩した所に、大きな赤い玉があった。ジンは駆け寄るカイセンイクラドン達に、道を譲る様にしている。

「良いのかい?」

「拙者達は、あくまで助っ人でゴザルから」

 決着を付けるのは、クラン【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】のメンバーが良い……ジンはそう考えていた。

「ありがとう、ジン君……ユウシャ、オーディン! 決めるぞ!」

「あぁ!!」

「おうよ!!」


 三人が横に並び、武器を構える。そして、渾身の力を込めて武技を発動した。

「【デストラクトスラッシュ】!!」

「【ブレイクインパクト】!!」

「【ミリオンランス】!!」

 剣と大剣、長槍の攻撃が赤い玉を攻め立てて……その玉が罅割れると、罅はどんどん広がっていく。そしてエルダーゴーレムのHPバーがゼロになると同時に、赤い玉が砕け散った。


『エクストラクエスト【山間の主】をクリアしました』


 そのアナウンスが流れると同時に、レイドパーティに参加したプレイヤー達から歓声が巻き起こる。


************************************************************


 システム・ウィンドウがポップアップしたので、内容を確認するレイドパーティの面々。そこにはドロップしたアイテムが表示されており、主に鉱石系の素材アイテムが豊富だった。

「これはカノンさんが喜びそうでゴザルな」

「はい、販売会の準備資材に出来そうですね」

 ジンとヒメノの取り分も、中々の量だった。


 そんな中、カイセンイクラドンが「おや?」と声を上げる。

「どうしたの、あなた」

「……ふむ。ジン君、ヒメノちゃん。ちょっと良いかな」

 カイセンイクラドンに呼ばれた二人は、顔を見合わせて頷き合うと彼の方へと歩み寄る。

「俺のドロップ品の中に、初めて見るアイテムがあった。アイテム名は……≪土精霊の落とし物≫というものだ」

 自分達が呼ばれた理由を察すると同時に、それがどんな用途のアイテムなのか……二人はすぐに、それに思い至る。


「恐らく、精霊関連のクエストに必要なアイテムでゴザルな」

 これについては隠す必要が無いし、教えても問題の無い範囲だ。ジンがそう答えた事で、クラン【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】の面々がざわつく。

「おい、精霊関連って事は……」

「例のマップ浄化クエスト……!?」

「マジか、こんな所で手掛かりを見付けられるなんて……!!」

 マップ浄化クエストを達成すれば、クラン拠点となる土地が手に入る。その可能性に一歩近付く事が出来たのだ、誰もが期待感を表情に浮かべていた。


「やはりそうか。ありがとう、教えてくれて」

 そう言いながら、カイセンイクラドンは更にシステム・ウィンドウを操作する。

「ちなみに今回のエクストラクエストなんだが、どうやら一定時間内にマップ内のトラップ……つまりモンスターハウスを全て発動させる事が条件だった様だ」

 返礼のつもりであろう、エクストラクエストについての情報を共有するカイセンイクラドン。そんな彼にジンも表情を綻ばせ、自分達が過去に遭遇した同種のクエストについて説明する。

「拙者達が精霊クエストのキーアイテムを手に入れた時は、マップ内のモンスターを全滅させる……でゴザった。最も、ここよりも倒しやすいモンスターが多かったでゴザル」

「まぁ、ここのモンスターは硬いからなぁ。モンスターハウスを()()ではなく()()にしたのも、難易度のバランスを取る為だろうな」


 そこで、ヒメノがある事に思い至る。

「あの……ここって確か、ギルド結成クエストの為の素材を集める場所でしたよね?」

 ヒメノがタイチにそう問い掛けると、タイチは「そう言えば、そうだったな」と頷く。

「≪ギルドクレスト≫を作る為に必要な、≪岩人の破片≫を集められる場所だね。あの時は、モンスターハウスの情報が少なくて酷い目に遭ったよ」

 ヒメノとタイチの会話から、ジンもヒメノが言いたい事が解った。

「……拙者達がそのクエストを攻略したのは、[ビアンカ密林]でゴザった」

「……!! そうか、成程な……」

 ジン達が遭遇したのも、カイセンイクラドン達が遭遇したのも≪ギルドクレスト≫を製作する為の素材集めポイント。つまり……。


「≪ギルドクレスト≫を作る為に必要な素材は、七つあったわね?」

「えぇ……そう言えば、その素材もそれぞれ魔法属性にちなんだものだったわ。という事は……」

 トロロゴハンとネムレスも、どうやら気付いたらしい。

「≪ギルドクレスト≫の素材集めポイント。恐らくそこに、精霊クエストのキーアイテムが手に入るエクストラクエストが隠されている……」

 エルリアの言葉に、他の面々も神妙な表情で頷く。既に[ウィスタリア森林]に拠点を持つジン達よりも、クラン【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】の方が切実だ。


「ジン君、ヒメノちゃん。この情報なのだが……公開するのは、俺達に任せて貰えないか?」

 真剣な表情で、カイセンイクラドンがそう切り出す。情報を公開するか、それとも秘匿するかは。それは強制されるものでは無いし、言い方は悪いが早い者勝ちな面もある。それを理解してはいるものの、カイセンイクラドンはそれでもジンとヒメノに約束を取り付けたかった。

 そんな彼の言葉に、ジンとヒメノは……。

「心得たでゴザル」

「解りました!」

 良い笑顔でそう答えた。カイセンイクラドンも、何となくそうなるんじゃないかなって思っていた。だって、この二人だもの。


「……えーと、良いのかい? 二人共」

「随分とあっさり決めたけど……ほら、仲間と相談とかは?」

 思わずユウシャあああと、オーディンが戸惑い気味にそんな事を問い掛ける。彼等はカイセンイクラドンに比べて、ジン達との付き合いが浅い。なので【遥かなる旅路】の面々の様に、その口約束を信じたいが信じ切れないという思いがあった。

「私達は今回、助っ人として参加した立場ですから。最初から最後まで戦った皆さんに、お任せするのが良いと思います!」

「うむ、元々は皆さんが見付けたクエストでゴザル。優先権はそちらにあると考えるべき故、拙者達に異論は無いでゴザルよ」


――天使が過ぎる……!!


 クラン【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】のメンバー三十人の心が今、一つになった。


……


 ジン達に再度感謝の言葉を伝え、今度こそこのマップから移動する二人を見送った【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】の面々。

 キーアイテム入手の達成感と同時に、極振り夫婦パーティとの共闘による満足感に浸っていたが……カイセンイクラドンが、メンバー達に向き直って口を開く。

「さて……今回の件で、俺達はかなり有用な情報を得ることが出来た。しかし、ここから先が本番となれば気は抜けない」

 気を引き締めろ、そう言いたいのだろうと考える仲間達は「勿論、解っている」と言わんばかりに頷いた。だが、カイセンイクラドンの本当の狙いは彼等の予想を上回るものだった。


「その為にも、俺から一つ提案したい事がある……それは、この情報をアークとシンラに共有する事だ」

次回投稿予定日:2024/2/28(幕間)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前衛で複数属性を自己完結できるの本当に強いなぁ…。 しかさ【導きの足跡】は母体組織の方向性もあってかノリがよろしいw
[良い点] スーパー忍者タイム 再び 頭領様方 礼儀正しく  何よりで ございます 皆様方 見習ってくださいませ
[良い点] 忍者夫婦は物わかりが良くていい子過ぎる。悪い大人に騙されないかあたしゃ心配ですよw二人とも人を見る目はあるとは思いますし周りの大人はケインさんを筆頭にいい人に恵まれているので大丈夫でしょう…
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