17-28 気になる事について相談しました
メルルルイィーッ!!(巻き舌) クリスマァス!!
はい、皆様クリスマスは如何お過ごしでしょうか。
作者からのささやかなクリスマスプレゼントは、【忍者ムーブ始めました~こぼれ話始めました~】にございます、ハイ。
ハヤテVSイカヅチの壮絶なバトル(種目・あっちむいてホイ)がひと段落して、数十分後。
「なぁ……一言、言って良いか……? このドラゴンは、結構強いヤツなんじゃねーのか?」
地面に這い蹲って、ぐったりしている巨体のドラゴン。燃える様な赤い鱗が特徴的な、南側第一エリアボスであるフレイムドラゴンさんである。
イカヅチをクラン拠点建設地に連れて行く為には、まず西か南どちらかのエリアボスを突破しなくてはならない。そこで今回、不運にも選ばれたのは綾●……ではなく、フレイムドラゴンだったのだ。
ちなみに全員でわざわざ行く必要は無いだろうという事で、一部のメンバーは既にポータル・オブジェクトを使用して転移済みである。
イカヅチ以外の参加メンバーは、【七色の橋】からはジン・ヒメノ・ヒイロ・レン。【忍者ふぁんくらぶ】から、イナズマとハヅキ・アヤメである。
ちなみに、イカヅチの初期装備は大剣だ。その為、ステータスはSTRとVIT中心のビルドである。
フレイムドラゴン戦闘待機列は、相変わらずの混み具合だった。
これは未だに第二エリアに到達できていないプレイヤーが多いのではなく、年末年始を経て新規参入したプレイヤーが多いのが実情。冬のボーナス、クリスマスプレゼント、お年玉……そういった臨時収入を活用して、新たにAWOに参入したプレイヤー達が第二エリア進出を目指しているのだ。
尚、当然ながら待機列の順番待ちをする間、ジン達は変装して正体を隠していた。八人パーティで挑んだのも、大人数だと目立つと判断したからである。
「このドラゴンは第一エリア……えーと、ゲームを始めてから、すぐに行けるエリアのボスの一体だよー」
「東西南北で、それぞれボスが配置されているんですよ」
イナズマとハヅキにそう教えられて、イカヅチはバツが悪そうな表情を浮かべる。
「そうか……本当なら、レベル上げたり腕を磨いてから挑む相手なんだよな?」
その言葉から察する事が出来るが、イカヅチは「高レベルプレイヤーにキャリーして貰って、楽にボスを突破出来てラッキー!」なんてことを考える、プレイヤーでは無かった。
尚、今回の戦闘で自分が戦闘に少しでも貢献したとは一切思っていない。なにせ、相手が悪すぎる。
メンバーはイトコとその婚約者、その兄とそのまた婚約者。義妹とその親友に、二人が所属するギルドのマスター。それだけ羅列するならば、ただ近しいメンバーで八人パーティを組んだと思う事だろう。
しかしそこに、個人名を付け加えたら事情は一変する。
最速忍者・ジンと、一撃必殺姫・ヒメノ。武装変化と幽鬼召喚のヒイロに、最上級魔法職・レン。更に忍者ガチ勢の首魁・アヤメと、巨大な戦槌で戦う美少女・イナズマである。
そして、もう一人。
「はn……いや、ハヅキさん?」
「はい、何でしょうか?」
「それ、めっちゃ凄かったんだけど……ナニ?」
尚、ハヅキは戦闘向きの性格ではなく、生産がメインのプレイヤー。戦闘向きの性格ではない……ないのだが、性格的な意味では。戦闘が出来ないとは、誰も言っていない。
「これは私が開発した、連弩という武器です。中国で使用された≪諸葛連弩≫という武器を、イメージして作ってみたんですよ」
自分の発明品をこれでもかと、収納に収めているハヅキである。折角の機会だからと、フレイムドラゴンさん相手に試用テストをしていらっしゃった。自分の製作した作品をテストするという名目の場合、ハヅキは戦闘に向かない性格を超越した何かを発揮する。決して、マッドなサイエンティストの気がある訳では無い……と、思いたい。
ちなみに今回使用したのは、カタパルトと弓が一緒になった大型の弩で、連射性の利く連弩だ。
火薬などを用いる大砲を製作するには、素材に≪大破した砲塔≫が必要となる。大砲より小さい場合は、≪壊れた発射機構≫だ。
しかし破損品シリーズはガチャ限定で、そう簡単に手に入る品ではない。そこでハヅキが試行錯誤して、製作した対ボス兵器……それがこの、≪諸葛連弩・試作”乙”型≫である。≪大破した砲塔≫や≪壊れた発射機構≫を用いずとも、攻城兵器を製作できないか? という考えから生まれた、ロマン兵器であった。
「他にも≪投石器・試作”甲型”≫とか、≪投石具・試作”丙型”≫もあったんですけど……やはり頭領様や姫様、将軍様に御台様は凄いです。連弩の次を出す前に、終わってしまいましたね」
ちなみに”御台様”とは”御台所様”の略称で、将軍の正室をそう呼んでいたそうな。故に将軍様ことヒイロの恋人兼婚約者であるレンは、本人の知らぬ間に”御台様”と呼ばれるようになっていた。
「……そっか、まぁ確かに凄かったもんな」
視線を向ければ、そこにはジンとヒメノの姿がある。二人はフレイムドラゴンを倒して、和気藹々とした雰囲気を醸し出しているが……つい先程まで最速忍者っぷりと、絶対破壊姫っぷりを発揮していた。
ヒイロもヒイロで、武器が次々と変化させて怒涛の攻撃を繰り出していた。レンの放つ魔法は、イカヅチでも相当な威力の攻撃だと見ただけで解ってしまう。
アヤメはその素早さと身のこなしで、ジン達の攻撃をサポート。イナズマが巨大な戦槌を振り回して、フレイムドラゴンの頭を強打していた姿には正直驚いてしまった。
結果、フレイムドラゴンは成す術なくあっさりと倒されてしまった訳だ。
「こんな戦いが、あちこちで繰り広げられてんのか」
「ふふっ、頭領様達は特別ですよ。全プレイヤー中でも最上位の実力者ですから」
ハヅキとそんな話をしていると、ジンが二人に声を掛けた。
「二人共、そろそろ進むでゴザルよ。もう、【桃園】と【魔弾】も現地に向かっているそうでゴザル」
「かしこまりました、頭領様!」
「……おう」
声を掛けられた二人は、慌ててジン達の方へと駆け出した。イカヅチは、何か釈然としない感情を抱きながら。
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移動はさしたる問題も無く進み、[ウィスタリア森林]に到着したジン達。そこでは既に、クランの面々が集まってそれぞれ会話をしていた。
また彼等から離れた場所で、様子を覗ったり何やら相談している外部のプレイヤー達の姿もあった。そこそこの人数が集まった集団は、恐らくどこかのギルドなのだろう。もしかしたら、クランに加入したいと考えている者達かもしれない。
「外部のプレイヤーについては一先ず置いておき、クランメンバーと合流しましょうか」
「あぁ、そうだね。合流するまでは、変装したままの方が良いか」
八人はエリアボスとの戦いを終えた後で、既に変装済みである。このままクランメンバーと合流した後で、変装を解けば特に問題は無い。
ジン達が歩き始めると、周囲のプレイヤー達からの視線が飛んで来る。最もその視線を気にしても仕方がないので、足を止める事は無い。
そうしてクラン拠点建設地へと到着すれば、仲間達がそれを出迎える。
「やぁ、待っていたよ」
ケインが朗らかな笑みでそう言うと、ジン達は変装用の装備を解除してみせた。それだけで、クラン外のプレイヤー達がざわめくのだが……それは、無視して良いだろう。
「お待たせしました」
「話は既に、皆から聞いているよ。そちらがイカヅチ君かな?」
「えーと……初めまして。ジンのイトコで、イナズマの兄貴のイカヅチです。ジンや妹が、いつもお世話になってます」
ケインだけでなく他の面々にも向ける様にそう言うイカヅチに、誰もが「お世話になってるのはこっちかなぁ」みたいな雰囲気で笑みを浮かべる。
さて、簡単な自己紹介が済んで、まずはイカヅチの事について話し合いが始まる。
「イカヅチ君の所属は、やっぱり【七色】になるのかな?」
そう問い掛けるのは、ユージンだ。彼が手にしているのは、【七色の橋】メンバー共通アイテム……≪飾り布≫である。ちなみに、黄色で染め上げられている。
黄色なのは彼の名前的にピッタリなのと、【七色の橋】二期メンバーの配色の都合だ。緑・紫・青・赤・藍・橙は既に埋まっているので、残るは黄色枠になる為である。
「あー……いや、義妹もいるし、その親友のハヅキさんも居るからな……一応これでも兄貴な訳だから、イナズマ達が嫌じゃなければそっちに……」
イカヅチはそう言って、イナズマとハヅキに視線を向ける。少し照れ臭そうなのは、年相応の態度だ。父親の再婚以降、心愛にとって良き義兄であろうと心掛けて来た彼である。そういった考えに至るのも、決して不思議では無いだろう。
あと、イカヅチの考えている”ジンのファン”とは、普通に追っ掛けとかファンクラブ的なものを想像していた。だからこそ彼は「ジンのファンの集まりなら、まぁ上手くやっていけるんじゃねーかな」なんて考えがあった。
「兄さん!!」
「お兄さん……」
イナズマとハヅキが笑みを浮かべ、イカヅチに歩み寄る。義妹とその親友からは、否定的な様子が見受けられない。それならこのまま、そちらのギルドに……と、思ったのだが。
「「じゃあ、色々と準備をしないと!!」」
二人が浮かべるその笑みは、イカヅチが知っているものではなかった。目は爛々と輝き、口元はとってもとっても緩み、呼吸が若干荒くなっている。
――何か、とんでもない間違いを……選択肢をミスした気がする……ッ!?
そう、彼は知らない。ギルド【忍者ふぁんくらぶ】は決して、普通のファンギルドではない。忍者ムーブプレイヤー・ジンに魅了され、信仰宗教真っ青なガチ崇拝者達の集い……ガチ勢集団なのだという事を。
「会長、兄さんなら入会手続きは省略で良いですか!?」
「安心しろ、イナズマ。頭領様のイトコであり、君の義兄となれば構わないだろう」
「副会長、お兄さんに合う忍者服の在庫ってありましたっけ!?」
「うむ、各種取り揃えてあるから安心しろ!! しかし、イカヅチ殿は大剣使いか……だとすれば、大太刀が良いか!!」
「大太刀は在庫切れなので、鍛えなくてはいけないですね!!」
ん? どうしたんだろう? 何か、凄い熱量を感じるぞ?
「とりあえず、必須スキルの取得支援をしないとな」
「ジライヤ殿、私とサスケが担当しますか?」
「うむ、【隠密】【体捌き】が無いと、【忍者ふぁんくらぶ】としては始まらないからな」
何か、大変な事が始まりそうな気がして来るイカヅチ。背筋を寒いものが駆け上がり、嫌な予感がビンビンする。
イカヅチが、一体何が起きるんです? と言わんばかりに、視線をジンに向けると……。
「イカヅチ、悪い事は謂わない。大人しく、【七色】に来た方が良い……我が事ながら、そっちに行ったらダメだと思うんだ……」
めちゃくちゃ、憐みの視線を向けられていた。ジンという少年の事を知る者ならば、誰もが思うだろう……すっごく、珍しいと。
「ひとまず、イカヅチ殿をギルドホームに案内しようか。頭領様、皆様方申し訳ございません。しばしお時間を頂きます」
「いや、アヤメ殿。ちょっ……待っ……」
「クラン拠点の件については私共は、頭領様や皆様方のご意向に沿う次第。ですので、遠慮なく進めて頂きたく。では、御前失礼!!」
イカヅチはイナズマとハヅキによって、両腕を抱きかかえられ連れ去られていく。美少女二人を相手に、両手に花状態なのだが……どうしてだろう、何故かこれっぽっちも羨ましくない。
そうして【忍者ふぁんくらぶ】が総出でイカヅチを連行していき、残ったのは三ギルドとフリーランスの面々だ。
「あちゃー、あれは限界オタクの導火線に火が点いたパターンだね」
「ユーちゃん……あの崇拝っぷり、何だか懐かしいですね?」
「あー……何か覚えがあると思ったら……」
……
ドナドナされたイカヅチと、【忍者ふぁんくらぶ】については一旦置いておくことにしたらしい。クラン【十人十色】の面々は、拠点開発についての会話を進めていた。
一晩待っていて欲しい……そう申し出たユージンから、開発についての草案が公開される。その草案とは、拠点開発におけるレイアウト……それは、しっかりと図案化されていた。相も変わらず、芸の細かいおじさんである。
「城のデザインについては、まだちょっと時間を貰いたいんだけどね。ヒイロ君が提供してくれたフレーバーテキストに目を通したんだが……この拠点マップ内は賃貸が可能で、その賃貸料が貸出人の収入になるそうだ。という事で、この辺りは店通りにする事を考えている」
それは南側第二エリアの小さな町[マルム]から来たプレイヤーが、立ち入りやすい位置に展開された店舗通りだ。
「うーん、”地主”というよりは”領主”みたいなシステムですね。最もこの拠点で店を開きたいというプレイヤーが、どの程度居るでしょうか……」
レンがそう口にすると、すかさず手を挙げる少女。勿論、服飾を専門とする生産職・ネコヒメだ。
「皆さんさえよければ、ここで自分の店を持つのも良いのかな~なんて……」
ネコヒメはクランメンバーであるが、ギルドには所属しないフリーランスのプレイヤーだ。クランシステムが実装されれば、クラン加入ギルドのホーム利用権限を得る事が出来る。しかし、それはあくまでお客様だ。
やはり、自分の空間があると……そして商売をするならば、自分の店舗があると嬉しい。そんな思いもあって、ネコヒメはこの拠点で店を構えたいと思っていたらしい。
「ちなみに、僕もここに店を構えるつもりでいるね」
ユージンはユージンで、店舗を移転するつもりだった様だ。既に自分の店を持っているユージンなので、これには他の面々もびっくりである。
「でもユージンさん……もう、お店を持っていますよね?」
アイネが不思議そうにそう言うと、ユージンは苦笑した。
「[バース]の店舗は出来合いの店を借りているから、自分好みに改良が出来ないんだ」
「あー……ユージンさんは、自分好みにカスタマイズしたいタイプですもんね」
ミモリがそう言うと、誰もが「それはそうだ」と納得する。ユージンはデザインや機能性等、気になる点についてはとことん突き詰めるタイプだ。出来合いで満足する性格では無いのは、これまでの付き合いで十分理解できた。
「店舗通りはこんな所かな? で、このスペースについてだ。ここは畑や田んぼを作れる様に、あまり弄らないつもりでいるよ」
「そうなると、お婆ちゃんに色々とアドバイスして貰いたいわね」
「この歳で、自分の畑を持てるとはねぇ……若い子達には、お手伝いをお願い出来ればありがたいねぇ」
幸いな事にユージンが指し示した地域には水源があり、土の質も良いものだとメーテルから太鼓判が得られた。生産に必要な素材を育てる事も、十分可能らしい。その為、メーテルとミモリ用の畑は最優先で確保する方針だ。
そして憩いの場となる様に公園の様なスペースを設け、そこと畑の間に用意する区画についての話題になる。
「昨夜も言った通り、今後は神獣が増えるんじゃないかと予想していてね。ここら辺は、そういった神獣達の遊び場にしようと思っているんだ」
「神獣の……あ、そうだ!」
そこで、ジンは昼間……友人達との会話の中で、気付いた事について相談する事にした。
「その神獣の事で、気付いた点があるでゴザル」
……
ジンの推測を聞いたクランメンバーは、確かに有り得そうな話だと納得していた。
「成程ね、これは確かめておきたいところだ」
「しかし森の中が、安全地帯になっていたなんてな。全然気付かなかったぜ」
「それは、私達があの森で散々戦闘をしたからだと思いますよ」
そう言うのは、ミリアだ。このマップを浄化するクエストは、エクストラクエストだけあって激しい戦いの連続だった。
探索はスリップダメージを受けながら、迫り来るモンスター達の排除。そして聖樹を受けてからの戦いは、絶え間ない防衛戦と≪精霊の座≫起動の為の探索戦。クエストを開始してからは、息を吐く暇もないくらいの激しい戦いの連続だったのだ。
「なので、戦場という印象が強いのかもしれません」
「確かに、ミリアさんの言う通りですね」
「それはさておき、神獣に出会える可能性があるとなると、気になる所ですね」
ケリィも興味津々の様で、森の方へと視線を向けている。
「そうですね、自分の神獣に出会いたいというのもありますが……コンちゃんに、仲間を増やしてあげたいですよね」
「ですね! せっかく、神獣用のスペースを作るんですから!」
リリィやコヨミも、神獣の獲得について乗り気らしい。その理由がコンの為にという面もあるのが、この二人らしい。
「どんな神獣が居るのか……凄く気になるわね?」
「あぁ、俺は名前的にも獅子系の神獣が居ると嬉しいんだが」
この[ウィスタリア森林]で、神獣と出会えるかもしれない。そう聞いたメンバー達は、どことなくソワソワし出していた。彼等もやはり、生粋のゲーマー。新たな要素……それも神獣案件となれば、気が逸ってしまうのも当然の事だろう。
「クラン拠点の建設と、神獣かどうかの検証。これはどっちも、重要な案件だ。ここは二チームに分かれて進めるのはどうかな?」
「えぇ、それが良いかと。各ギルドのメンバーを、二グループに分けるのが一番手っ取り早いでしょうか」
「……となると、早い内に【ふぁんくらぶ】には帰って来て欲しいですね。ジン、連絡してみて貰ってもいいかな?」
ギルドマスター三人が相談していると思いきや、ヒイロがジンに話を振る。
「あ、うん。そうだね、僕だね」
【忍者ふぁんくらぶ】の事に関しては、一番発言権がありそうなジンにお声が掛かる。次点で、ヒメノだろう。もしかしたら二人はある意味で、ギルドマスター・サブマスター並みの立ち位置になっているのではなかろうか。
『アヤメ殿。[ウィスタリア森林]にて拠点開発と並行して、神獣の捜索を行いたいのですが、ご協力頂けますでしょうか。ご連絡をお待ちしております。ジン』
ジンはひとまず、要点を簡潔にまとめてメッセージを送信する。メッセージに対する返答は、すぐに返って来た。ちなみにメッセージ送信から、一分も経っていない。
『頭領様からのご用命とあらば、すぐに伺います。少々お待ち下さいませ。アヤメ』
――僕個人からのお願いじゃないんだけどな……。
そう内心で思うものの、かのギルドを動かすのに一番効果的なのは自分からの言葉だという自覚もある。何だかなぁ……と思っていた、数分後。ある方角から、何やら声や音がする。
「急げ!! 頭領様達をお待たせする訳にはいかぬ!!」
「あと少しだ、気を抜くなよ!!」
全力疾走する、忍者な人達。それが五十人前後いると、それはもう何事かと思うだろう。
ちなみに【忍者ふぁんくらぶ】に在籍する面々にも、AGIタイプではない面々が存在する。そんな彼等は、いわゆる籠に乗せられていた。乗っているのはイナズマ・ハヅキ・イカヅチと、数名のメンバー……合計、八つの籠である。
「「「「うわぁ……」」」」
クランメンバーの大半が、その光景に引いていた。それ程までに、何とも言えない光景だったのだ。
尚、引いていないメンバーはというと。
「うーん、籠かぁ。拠点内の景色を楽しむ、籠での旅とか面白そうだね」
「ここまで来ると、呆れを通り越して感心しちゃうレベルかなぁ」
「中々、良いフォームで走ってる……僕のフォームに近いな。もしかして、映像なんかで研究された? もしかして仮想現実(VR)でフォームを覚え込ませれば、現実でも……」
黒竜さんは籠について真剣に思案し、黒猫さんは大したものだと認識を改め。そして九尾の狐な忍者は自分の出した指示に対するレスポンス以上に、思いの外仕上がっているランニングフォームについて思考を巡らせていた。
なんだろう、これ。
次回投稿予定日:2023/12/30(本編)
このしっちゃかめっちゃかな感じ、作者は割と楽しくて好きです。
皆様は如何でしょうか。




