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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十七章 クランを立ち上げました

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17-11 防衛戦を開始しました

 エクストラクエストの前半……≪聖樹の苗≫を植える場所の特定に成功したジン達は、いよいよモンスター達との戦闘となる後半戦に突入した。迫り来る大量のモンスターと、毒の霧が蔓延する中での戦い。四組のレイドパーティによる、≪聖樹の苗≫防衛戦である。

 この戦いで重視されるのは、HP管理とモンスターの処理能力。前者は回復要員の頑張りによるが、後者はある手段での底上げが可能であった。それは、第四回イベントの上位ランクイン報酬である≪ギルドフラッグ≫だ。


 六分間のステータスバフを活用すれば、モンスターとの戦闘も有利になるだろう。しかし≪ギルドフラッグ≫は一度使用すると、しばらく使用できない事を事前に確認済みだ。再使用可能になるまでのクールタイムは、十二分である。

 そこで彼等が立てた作戦は、各ギルドが順繰りに≪ギルドフラッグ≫を使用するというものであった。

 その戦略を採用した為、≪聖樹の苗≫を守る為の布陣は『四方に各ギルドメンバーを均等に配置する』というものとなった。勿論ダメージディーラー役のプレイヤー、盾職タンク回復役ヒーラーが分散する様にしなければならない。

 突発的な戦闘であれば、流石の彼等も慌てる所だろう。しかし今回は、事前に大規模な防衛戦になる事が予想できていた。お陰でメンバー決めの段階で、配置についても打合せ済みだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――

■東側

 盾役:ゲイル

 前衛役:アイネ・コタロウ

 遊撃役:アヤメ・ココロ

 支援役:ビィト・クラウド・ハナビ

 回復役:フレイヤ

 主砲役:ハヤテ


■西側

 盾役:シオン

 前衛役:ヒイロ・ダイス

 遊撃役:バヴェル・サスケ

 支援役:レーナ・トーマ・イズナ

 回復役:ヴィヴィアン

 主砲役:レン


■南側

 盾役:ヒビキ・ケイン

 前衛役:センヤ・ジライヤ

 遊撃役:ゼクス

 支援役:ミリア・ルナ・シャイン

 回復役:タスク

 主砲役:イリス


■北側

 盾役:ハンゾウ

 前衛役:レオン・イナズマ

 遊撃役:ジン

 支援役:マール・ジェミー・ディーゴ・メイリア

 回復役:ヒナ

 主砲役:ヒメノ

―――――――――――――――――――――――――――――――


 これが今回の配置……連携と役割、そしてギルドのバランスを考慮して組まれた陣形だ。

 勿論の事だが、彼等は一つの役割にのみ徹する訳では無い。ルナは元々は魔法職だから回復役も務められるし、ケインとヒビキは攻撃にも定評があるプレイヤーだ。フレイヤやヴィヴィアン・タスクは、回復以外でも魔法による火力支援が可能である。ヒイロは【千変万化】を駆使して、一人で様々な役割を担う事も可能だ。

 ジンに至っては遊撃だけでなく回避盾も務められる上に【分身】や【変身】、最終武技【九尾の狐】に即死攻撃【ディザスター】がある。ボス級のモンスターが相手だったとしても、即死耐性が無い場合は一撃死させる可能性があるという事だ。


 と、役割は大まかなものとして設定されており、実際には各々が臨機応変に対応する形となる。

 これは練度が十分ではない寄せ集め集団の場合、致命的な要因となりかねない。回復や支援が被ったり、逆にマークすべきモンスターを見逃したりといった事態が起きる可能性もある。

 しかし彼等はトッププレイヤーにして、十分な信頼関係を構築したクランだ。その辺りに関し、不安要素はそこまで高くないと言って良いだろう。


 さて、いよいよモンスターを迎え撃つべく、各メンバーが駆け出す瞬間。

「イリス、頼む!!」

 先陣を切るのは、【桃園の誓い】の面々だ。

「オッケー、いくわよ!! 総員、【奮励努力せよ】!!」

 イリスが≪ギルドフラッグ≫を地面に突き立て、キーワードを宣言。その瞬間、≪ギルドフラッグ≫を突き立てた点から光の輪が広がる。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 アイテム≪ギルドフラッグ【桃園の誓い】≫

 効果:設定したキーワードを宣言し、≪ギルドフラッグ≫を地面に突き立てた際に効果発動。

 発動マップ内のギルドメンバーの全ステータス+8パーセント。効果持続時間360秒。

 設定キーワード:【奮励努力せよ】

―――――――――――――――――――――――――――――――


「行くぞ!!」

「さーて、始めますかぁ!!」

 ケインとゼクスが駆け出せば、他の前衛メンバーも迎撃を開始する。勿論、【桃園の誓い】以外のメンバーも一緒だ。

「HPが徐々に減るからな、事故に注意しろよ!」

「掠りダメージでも、バカにならない状況だからなぁ……」

 レオンとダイスの言うように、スリップダメージが継続している状況下では些細な被弾も命取りになりかねない。状態異常攻撃も、それは同様だ。デバフを受けたが最後、気が付けばあっさりと戦闘不能に……という事態も、おおいに有り得る。


「さて、まずは試してみよう」

「そうっすね~」

 そう言ってクラウドとビィトは、愛用の銃を構えて引き金を引く。

 クラウドの銃は≪SVU≫という狙撃銃マークスマンライフルを基に製作されたもので、その名の通り狙撃に特化した装備だ。連射性能は高くないものの、その分一撃の威力は高い。

 そしてビィトの銃は、≪UZI≫というサブマシンガンをモチーフとした武器だ。しかもそれを、両手に持っている。連射性能でごり押しする為だろう、こうした乱戦でも十分な成果が期待出来そうだ。

「うん、そこまで硬くはないねぇ」

「……やはり、最初はこんな所か? 後になった場合は解らないが」

 彼等が口にした通り、現状襲い掛かって来るモンスターは然程HPが多い訳でも、VITが高い訳でもない。故に攻撃を喰らったモンスター達は、あっさりと倒れていく。


 そんな銃使い達を見つつ、ハヤテはモンスターの構成に意識を向けつつ≪FAL型アサルトライフル≫でモンスターを撃つ。モンスターはこれまで遭遇して来たものと何ら変わらず、特殊個体といった特別な要素も何も無さそうだ。

「予測通りにマッシュ系と昆虫系、それに猛獣タイプ。やっぱ、森に出没するモンスターが多い。そうなると、ボスの傾向も予測できる……問題は頻度と編成、それにエクストラ特有のギミックか……」

 逆に中盤から後半にボス級や特殊個体が出現したり、硬いモンスターが連続で襲い掛かって来る等の可能性がある。

 最初の内は、様子見がベター。そう判断したハヤテは、全員に聞こえる様に声を張り上げた。

「最初の内は、弾や矢を温存するのが良いと思うッス!! 多分、後で数が多い癖に硬いのが出るはず!!」

 特にそういった傾向が強いのは、外殻の固い昆虫系モンスターだ。そういった硬い敵に対しては、VITを無視できる固定ダメージ……銃による攻撃が大いに効果を発揮する。


 そんなハヤテの提言に、反論する者は皆無だった。それはVRMMOの経験に長けており、更に判断力や情報収集能力が高いハヤテに対する信頼度の高さからである。

「【魔弾の射手】、撃ち方止め!! 序盤は近接戦闘で応対!! 銃撃戦への切り替えは、必要と思った場合か参謀役の指示に従う事!!」

『了解』

 銃火器を主武装とするギルド【魔弾の射手】は、ギルドマスターであるジェミーの指示に従い銃以外の装備に切り替えた。

 彼等は銃一辺倒のギルドではなく、高い戦闘センスを保有しているギルドでもある。それは第二回イベントの決闘トーナメントや、第四回イベントのギルド対抗サバイバルで認知されている。


――ほんと、軍隊みたいだ……味方になると、ほんっと頼もし過ぎッスね。


 銃の扱いのみならず、それ以外の面でも優れている【魔弾の射手】。第四回イベントでは彼等に散々苦しめられたものの、味方と考えればこれ程頼もしい存在はそういない。

 そんな事を考えつつ、ハヤテは前衛メンバーにも指示を飛ばす。

「モンスターも、最初の内は数頼みッス!! だから、こっちも手数だけで処理可能ッスよ!! 武技もまだ温存でおkッス!!」

 それはつまり、遊撃部隊が前に出てモンスターを処理。その取り零しを前衛役・盾役で処理するだけで事足りるという意味合いだ。


 そんなハヤテの指示を受けて、真っ先に動くのはやはり彼である。

「心得た……では、参る!!」

 その言葉と同時に、ジンの姿が掻き消える。彼が居た場所の草や落ち葉が、そのスタートダッシュの踏み込みの衝撃で舞い上がっていた。

 次の瞬間、北側のモンスター達の周囲を一陣の風が通り過ぎ……そして、そのHPをいともたやすく刈り取った。

「他のチームとの間の防衛は、イナズマ殿とレオン殿にお任せするでゴザル!! ハンゾウ殿はそのまま、二人の中間で万一に備えて頂きたい!!」

 北側正面は現状、ジンのみで十分処理が可能。今の攻撃の手応えで、ジンはそれを即座に察知した。ならば攻撃役のイナズマとレオンには、東側と西側の間にある隙間を埋めて貰う方が良い。そしてハンゾウには、万一の取り零しを処理して貰える位置で待機して貰う。


「流石だな。オーケー、任された!! 何かあれば声を掛けてくれ、すぐに駆け付ける!!」

「「かしこまりました、頭領様!!」」

 レオンはジンのスペックの高さに舌を巻きつつ、その合理的な判断に従う事にした。そしてイナズマとハンゾウは、ジン直々に指示を受けた事でテンションが上がった。アゲアゲになっていた。


 レオンは直剣を構えて駆け出し、迫り来る猛獣系モンスターに向けて剣を振るう。技後硬直による隙を晒す事を避ける為、ただの剣を振るうだけだ。しかし鍛え上げられたステータスと技量があれば、それで十分。更に≪ギルドフラッグ≫の効果でステータスが上昇している今、レオンに不安要素は何もない。

「ジン君にばかり、負担をかける訳にはいかねぇよな!!」


 迫るモンスターを難なく斬り伏せて、危なげの無い戦い振りを見せるレオン。その様子を見て、後方に控えているマールは口元を緩めた。

 最初は最前線級のプレイヤーという自負と、ギルド初期メンバーとの温度差から迷走していた彼だ。正直な話、その頃の彼をマールは要注意人物に近い存在と認識していた。

 しかし様々な問題や苦難を乗り越えた今、彼は実に頼りになる存在に成長した。ギルドのメンバーや同盟の仲間を、陰に日向に見守りサポートする様になった。


――随分と、頼りになる様になって来たじゃない。


 心の中でそう呟きながら、マールは視線を周囲に巡らせた。ジンとレオンは問題無し、イナズマも戦槌を巧みに操りながら雑魚モンスターを処理している。


「よい……しょっ!!」

 大型の戦槌を振り抜いて、イナズマはそのまま勢いを殺さずに一回転して第二撃を放つ。まとめて複数のモンスターを殴打して、文字通り吹き飛ばしていた。

 更にイナズマは戦槌を自分の脚で蹴りながら持ち上げて、素早く振り被った態勢にもっていく。そのまま振り下ろした戦槌がモンスターを叩き潰せば、彼女はその後方から迫るモンスターに視線を向けた。

「まだまだ、いっくよー!!」

 相当なSTRを持っているからか、イナズマは戦槌を軽々と構え直してモンスターを迎え撃つ。


************************************************************


 戦闘開始から六分が経過し、【桃園の誓い】の≪ギルドフラッグ≫が効果終了を迎える。モンスターの構成は変わらず、特殊な個体が出現した様子も無い。

 今のところは、予定通りだ。このまま≪ギルドフラッグ≫のローテーションを継続し、被弾と消耗を抑える。即座に現状を判断したアヤメは、後方のタスクに指示を出す。

「タスク、次は我々の番だ」

「御意に。いざ、【威風堂々】!」

 二番手の≪ギルドフラッグ≫が効果発動し、【忍者ふぁんくらぶ】の面々はステータス強化の恩恵を受けた。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 アイテム≪ギルドフラッグ【忍者ふぁんくらぶ】≫

 効果:設定したキーワードを宣言し、≪ギルドフラッグ≫を地面に突き立てた際に効果発動。

 発動マップ内のギルドメンバーの全ステータス+8パーセント。効果持続時間360秒。

 設定キーワード:【威風堂々】

―――――――――――――――――――――――――――――――


 設定キーワードの由来は、最早語るまでも無いだろう。ほら、四字熟語に”風”が入ってるし、意味合いも……ね? どう考えても、ジンを意識している。

 さて、ステータス強化の恩恵を受けた【忍者ふぁんくらぶ】の面々だが……それで動じる事は無く、彼等は淡々と己の任務を遂行していく。


「ふむ、実に手に馴染む」

 ジライヤはそう言って、モンスターを次々と斬っていく。流石は元最前線プレイヤーであり、立ち回りも技量も高いものだ。

 一見すると、冷静沈着な忍者らしい彼なのだが……その内心は、実は別であった。


――念願の刀……!! それも、頭領様達との共闘で初お披露目!! 上がる、テンションが上がるッ!! 最高にハイってヤツだッ!!


 めっちゃ喜んでいらっしゃる。それも、最高にハイッてやつだった。超エキサイティン!!

 でもその叫びは心の内に押し留めているので、傍から見たら真剣にモンスターを処理するイケメンだ。これだから忍者は、もー。


 そう、手にしているのは今まで使用していた長剣ではなく刀。【忍者ふぁんくらぶ】は現在、全員が刀を装備していた。

 元々刀を持っていたアヤメやコタロウを除く面々の持つそれは、ユージンやカノンの指導を受けて自分達で鍛え上げた品だ。


 実は今回のクラン結成に合わせて、【忍者ふぁんくらぶ】は≪刀剣≫の鍛冶レシピを贈られていた。今後の販売に向けた生産活動で、彼等の力を借り受けるのだから当然の措置だろう。

 流石にユニーク装備や、ユージン・カノンの製作した物に比べると性能はまだ劣る。しかしながらNPCショップで売られている装備品や、彼等が販売日に売りに出す商品よりもグレードは高い。


 前衛メンバーのサスケは大剣使いだった為、大太刀に持ち替えた。

 盾職のハンゾウは、ジョシュアの持つものと同型の大盾。そしてサブウェポンに、脇差を装備している。

 イナズマも打撃が効かない相手対策に、打刀を背負っている。現状は使用する機会がなかなか無いが。

 ココロは≪仕込み杖≫から、打刀に主武装を変更。これは第四回イベントで≪仕込み杖≫を衆目に晒しており、ミスリードが出来なくなった為だ。

 イズナとハナビは前衛ではないが、護身用に短刀を装備していた。

 そして、アヤメとコタロウ。二人は【七色の橋】が購入掲示板を用いて販売していた際に、購入した刀を使用していた。その刀を素材にして、改めて打ち直したものである。その性能は、第三回イベントで魔王に贈った≪月虹≫と同レベル……最高級品質だ。


 そんな【忍者ふぁんくらぶ】の戦い振りは、実に爽快なものだった。攻撃役や遊撃役はモンスターをバッタバッタとなぎ倒し、後衛メンバーも他の仲間のサポート役として攻撃の隙間を埋めていく。

「成程、そういう点も本当に忍者っぽいのね」

 ミリアがそう言って笑うと、タスクから回復魔法が飛んで来る。被弾は無いが、スリップダメージが蓄積していたからだろう。

「ありがとう!」

「いえ、これが務めですから!」

 打てば響く返答に、彼女は口元を緩める。

「うーん、戦いやすいわ」

 これまでは基本的に、【魔弾の射手】のみでの戦闘が主だった。しかながら、こうして背中を預けられる存在がいるのは良いものだ……ミリアは、そんな感慨に耽るのだった。


……


 その六分後、≪ギルドフラッグ≫ローテーションの三番手。レンはヒイロに託された≪ギルドフラッグ≫を掲げ、地面に突き立てる。

「行きます……【其の鮮やかなること虹の如く】!!」

 光の輪が≪ギルドフラッグ≫を中心に広がれば、ジン達のステータスが強化される。その強化率は、≪ギルドフラッグ≫の仕様において最高値の10パーセントだ。

 同時に【七色の橋】は、≪ギルドフラッグ≫の設定をする際に細かい点まで拘っていた。ギルドフラッグ発動時、身に纏うライトエフェクトは各々のイメージカラーにしたのだ。

 その状態で【七色の橋】の面々が動き戦えば、そのキーワードの通りとなる。


「……参ります」

 大盾≪鬼殺し≫でモンスターを殴打し、続けて大太刀≪鬼斬り≫を振るうシオン。彼女は武技や魔技、スキルを使わずに次々とモンスターを屠っていく。

 初音家のご令嬢を守るという目的で、それ相応の護身術等を学んだからだろう……その動きは一切の淀みがなく、また落ち着きを感じさせるものだ。


「はっ!! やぁっ!!」

 その小柄な体躯からは想像もできない、強烈な一撃を次々とモンスターに喰らわせていくのはヒビキである。両手の籠手≪護国崩城≫で、攻守共にこなせる彼は最前衛として戦っている。

 憧れた存在に、いつか追い付きたい……そして、隣に並びたい。そんな彼の熱意も相俟って、正に快進撃といった戦い振りである。


「はいはい、ここは通行止めだよん!!」

 鞘から抜き放った刀≪勇往邁進≫の刀身が、モンスターのHPを刈り取っていく。ヒビキより少し下がった位置で、次々とモンスターを切り捨てていくセンヤも絶好調である。

 最初は格好良いからという理由で会得した抜刀術だったが、今ではすっかり彼女の持ち味となった。スムーズな動作で抜刀と納刀を繰り返し、モンスターを尽く倒していく。


「≪聖樹≫には、指一本触れさせないわ!!」

 白刃が煌めき、モンスターの断末魔の声が上がる。彼女……アイネは今、凄まじいまでの集中力を発揮して迫るモンスター達を迎撃していく。

 絶え間無い襲撃の中にあって、アイネの薙刀術は冴え渡る。突き、薙ぎ払い、斬り上げる。幼い頃から学び身に着けた薙刀の技は、仲間達の為に遺憾なく発揮されていた。


 そんなアイネの後方で、ハヤテは短刀を手にして戦っていた。ボスや特殊個体が出てくるまでの序盤の内は、銃弾やMPを温存すべきという考えからだ。

「FPSでもさ、意外とこういう近接戦は重要なんスよね!!」

 数は多いが、それだけだ。それを証明する様に、ハヤテは短刀で前衛が討ち漏らしたモンスターに迫る。そして短刀を突き刺して、首を搔き切った。


――うん、問題無い。今のところは順調そのものだな。


 同様に最前で戦い、冴え渡る技を見せるのはヒイロだ。

「邪魔だッ!!」

 マッシュを大太刀で斬り裂いて、即座に迫るキラービーに得物を突き出す。その際に打刀は薙刀へと変化し、キラービーをサクッと貫いた。

 モンスターに最適な武装の選択、それを可能とする【千変万化】。武装変化のみに特化したユニークスキルではあるものの、それを生かすのは使用する者の腕次第。それを実践するヒイロは、油断なくモンスターを迎え撃つ。


 スリップダメージを常時与える森の中での戦闘は、激しさを増していく。そんな中でヒイロの背中を時折見つつ、レンは回復魔法を発動した。

「【エリアヒール】」

 彼女が魔法を発動させたのは、シオンとダイスを効果範囲に収める位置取り。更に単発で【ヒール】を発動させ、同じ配置のヴィヴィアンと共に仲間達の回復をしていく。

 それが済んで初めて、レンはヒイロに【ハイヒール】を掛けた。彼のHPが一気に満タンまで回復したのを見て、レンは口元を緩める。


――危なくなった時は、私が必ず回復するって信じ切ってるんですから……本当に、もう。


「ヒナちゃんは、HPが半分以下になった人に【ヒール】していって下さいね」

「はい! 解ってますよ、お姉ちゃん!」

 今の段階では、【癒しの聖女】の強力な回復や支援も不要。ヒメノはそう思って指示を出したが、ヒナも自分でそれを察していたようだ。

 可愛いPACいもうとの返事に安心感を覚えたところで、ヒメノはジンに視線を向ける。そのHPが減っているのを見て、すぐに矢を構えた。

「【ハイヒール】!!」

 回復魔法【ハイヒール】を魔法の矢に変えて撃ち放つが、それはジンの位置とは離れている。しかしそれは、無駄撃ち等では決して無い。ヒメノはそれが、ジンのHPを回復すると確信して撃ったのだ。


――ジンくん……!!


 そんなヒメノの心の声に応えるかの様に、ジンは接近するモンスターに向けて駆け出した。両手の小太刀を振るってモンスターを斬ったところで、背中にヒメノの放った【ハイヒール】の魔法矢が到達する。

「……さすが」

 ジンはそれが、ヒメノの放ったものだと即座に察した。それを察しつつも、ジンは次の標的に向けて地を蹴る。懐かしのサーベルウルフに斬り掛かり、倒したら更に別の敵へ。

 これだけ縦横無尽に駆け回るジンに、回復魔法を命中させるのは困難を極める。しかしながらヒメノは先程から一度も外すことなく、【ハイヒール】の魔法矢をジンに命中させていた。


――これはやっぱり、愛の力かな……なんてね。


 この一連の流れを仲間達が知れば、誰もが口を揃えてこう言う事だろう……『それな!!』と

次回投稿予定日:2023/11/3(幕間)


最後の部分は、読者様からも「それな!!」来そうだなって。

それでは作者も言っときます。

それな!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 愛、愛ですよ……
[良い点] それな!!
[良い点] 序盤の雑魚狩りはキルスコア稼ぎとしても重要。 中盤は通過したはずなのに、だいぶ余裕があるのがさすがのメンバーっすわぁw
感想一覧
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