17-04 クランについて会議しました
クラン勧誘を受けた【魔弾の射手】とユージン・ケリィ夫妻と、リリィ・クベラ・コヨミ・ネコヒメ。彼等は揃って、[虹の麓]を訪れていた。
そして同様に勧誘を受けた【忍者ふぁんくらぶ】からは、全員だと迷惑が掛かるという事で七名が訪問している。何故七名なのかというと、某頭領様の所属ギルドの名前にあやかったからだ。
メンバーはまず、ギルドマスターのアヤメとサブマスターのコタロウ。ジンのイトコとなった事が発覚したイナズマと、その親友であるハヅキ。ジン・ヒイロと同じ学校に通う、イズナとココロ。責任者・親戚&その親友・同じ学校の生徒というラインナップ。
そして残った一枠を巡った、壮絶な戦いに打ち勝ったのがジライヤである。戦いの内容? じゃんけんです。
さて、かねてから同盟関係にあった【七色の橋】【桃園の誓い】【魔弾の射手】と、交友関係の深いユージン・リリィ・クベラ・コヨミ。この面々は、普段通りの雰囲気で落ち着いている。ケリィはケリィで、穏やかな笑みを浮かべているので緊張した様子はない。【忍者ふぁんくらぶ】は初めてお邪魔した[虹の麓]を見渡して、何だか感激している。
なので、緊張しているのはたった一人だけである。
「あわわわわ……わ、私、本当にここに居ていいんですかね……!?」
今回新たに仲間として迎え入れる方針となった、服職人のネコヒメだ。【七色の橋】【桃園の誓い】とリリィ&コヨミだけでも、会えただけで感無量だった彼女。更に【魔弾の射手】と【忍者ふぁんくらぶ】……そして、生産界のレジェンド。そう、彼女の「いつか会ってみたいプレイヤーランキング第二位」である、ユージンまでもが一緒なのだ。そんな訳でネコヒメさん、緊張でガッチガチになっている。
そんなネコヒメの状態を知ってか知らずか、ユージンは愉快そうに笑いながらヒイロに声を掛ける。
「いやはや、賑やかだね。声を掛けてくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ来て頂いてありがとうございます……内心、受けて貰えるか心配だったんですが」
ユージンはかつて、【七色の橋】の加入要請を断った事がある。その理由は「生産職人としては、一ギルドに所属すると活動に影響が出る」というものだった。
故にヒイロが、勧誘を受け入れて貰えないかもしれない……と考えたのも、無理のない事である。とはいえ、これまで通りの協力関係は継続出来るという確信はあった。
苦笑するヒイロに、ユージンは笑みを深めつつそれに答えた。
「確かに見方によっては、クランは『一つの勢力』になり得るね。しかしギルドとは違って、クランは複数の勢力が集まった集合体だろう? それなら、そこまで客とのやり取りに影響は出ないだろうさ」
そう言って、ユージンは最後に「それに、今更だしね」と笑った。第四回イベントで【七色の橋】にゲスト参加している以上、ユージンと彼等の間にある強い繫がりは周知の事実。それならば、深く気にする必要は無いだろう……というのが、彼の考えだ。
尚、ユージンがクランの結成に参加するのを決めた、最大の要因……それはケリィからの一言だったのだが、その内容についてはジン達の前では言及を控える様だ。
同様の理由で、クベラもクラン結成に参加する意向を示した。とはいっても、本当の理由は恋人であるカノンの存在が大部分を占めるだろう。それは二人を知る者ならば、言われずとも理解している事だ。
「こうして集まると、ほんまにそうそうたる面子ってヤツやなぁ」
「第三エリアの時の、同盟……それに、【ふぁんくらぶ】と、ケリィさんとネコヒメさん……も、いますから……」
ちなみにクベラとしては、他にも理由があった。
一つは、【七色の橋】【桃園の誓い】の販売窓口契約。その範囲を広げ、【魔弾の射手】とも提携関係を結ぶ事を考えたのだ。既に【魔弾の射手】とは話を付けているらしく、窓口契約はクラン単位になった。
はい、クラン単位です。【忍者ふぁんくらぶ】がその話を聞いて、「それならば我々とも!!」と名乗りを上げたのだ。ジンの顔が盛大に引き攣ったのは、言うまでも無いだろう。
もう一つの理由は、商人仲間であるネコヒメだ。現状で彼女が交流が深いのは、このクラン内ではクベラだけなのだ。友人として、商売仲間としてフォローをしてあげたい……クベラは、そう考えていた。
ちなみにその件については、しっかりとカノンとも話し合っている。カノンも流石に少しだけ嫉妬したが、クベラが必死に言葉を尽くして納得して頂いたそうな。
さて、この集団の中で最も楽しそうに会話を楽しんでいる面々。主に、学生メンバーの面々だ。
「これだけの豪華な顔ぶれだと、何だかお祭りみたいですよね」
「そうですね、姫様! ボク、お祭り好きなので楽しいです」
「イナズマちゃん、去年の夏祭りも凄いバイタリティだったもんね」
「夏祭りかぁ。AWOにもそういうの、あったらいいッスよね~」
「それは僕も、興味がありますね。とても楽しそうです」
「あはは、トーマ君もお祭り好きだもんね」
共有スペースの中央から少し外れた、リラクゼーションスペースとなる一角。設えられたソファに座りながら、和やかに会話しているメンバーだ。
「めちゃくちゃリラックスムードねぇ」
「そうだね、姉さん。まぁこれから一緒のクランでやっていくなら、良い事じゃないかな?」
「私もジンさんと同じ考えです。このメンバーなら、これからの冒険も大いに楽しめそうですね」
ジンとミモリ・レンも、楽し気に会話に花を咲かせる面々を見て笑みを零す。
その間にギルマス達が集まり、クランシステムについての認識を擦り合わせる。その中で話題に上るのは、やはりクラン名とクランホーム……そして、結成するタイミングについてだった。
「システム実装後、すぐにクランを結成する方針が良いと思うんですが」
「その場合、メリット・デメリットはあるのかな?」
「クラン名は先に決めておくのが、やはり良いかと思われます」
「後から、あーでもないこーでもないするのは嫌だものね」
「第四イベの報酬で、クランホームの土地を購入するのはどうだろう」
「一つ目のギルドで購入権を使用して、残りのギルドで拡張権を使えば……」
ヒイロ・ケイン・ジェミー・アヤメの議論は、まだまだ続きそうだった。
とはいえ、四人だけで決める訳では無い。大まかな方針を事前に定めておく事で、全員で採決を取る為の段取りをしているのである。何だか、地区やマンションの管理組合総会みたいだ。
……
そうして段取りも終えて各ギルドごと、もしくはソロプレイヤー同士で集まっての決議段階に入った。
議長役を務めるのは、ギルドマスターの中で最年長のケインだ。
「それじゃあまず、大前提の部分から。ここに居るギルド、またソロプレイヤーでのクラン結成に異議のある方は、挙手を」
ケインのその言葉を受けて、挙手する者は一人も居ない。そもそもここに集まった時点で、意思は固まっているのは誰もが解っていた。ただ単に通過儀礼として、そしてこの後の議案に進む為に必要な手順としての採決である。
「では、クランの結成は満場一致で可決となりました」
何だか本当に、組合総会の様相を呈してきている。
「では続いて、ヒイロ君」
「了解です」
二つ目の議案は、ヒイロが引き継ぐ事になったらしい。となれば、ジェミーやアヤメも後にその出番があるのだろう。
「二つ目の議案ですが、クランを結成するタイミングについてです。ギルドマスターで意見を擦り合わせて、システム実装後すぐに結成する方針が良いと判断しました」
ヒイロはそこで一度言葉を切り、集まったメンバーに視線を巡らせる。誰もが真剣に自分の話に耳を傾けているのを確認し、更に言葉を続けた。
「早期結成のメリットとしては、クランシステムの結成で得られる効果があった場合、それを先行して得られる事。更にクランメンバー同士での探索人数上限が十人になる事で、メンバー間の連携がし易くなる事です」
現時点で判明しているクランシステムによる恩恵は、クランメンバーでパーティを組む場合はギルドメンバー限定パーティと同じ十人パーティが組める事。それとクラン間のギルドホームの施設が一部利用可能になる点と、クランホームを共有できる点だ。
他にも恩恵があるかもしれないが、それは公式からの情報を得るか……もしくは、クランを結成して見付けるしかない。
「デメリットとしては、クランシステムを結成する前にやっておいた方が良い事などの情報が、事前に得られない事。それと他のプレイヤーやギルドが加入する際、その意向が反映されない事です」
結成前に済ませておくべき事等の情報が後から発信されたとして、結成後にそれをやり直すことが出来ない……等の可能性は、あるのかもしれない。しかしそれらの情報が揃うのを待っていては、いつクランを結成出来るか解らないだろう。
そして後々クランに加入希望のプレイヤーやギルドが現れたとしても、クランの名前やホームの場所等は変更が効かない。そこに意見を出されても、対応できなくなってしまうのだ。
それらのメリット・デメリットを考慮し、その上でギルドマスター達は早期結成を大方針として打ち出した。
「では……システム実装後、早急にクランを結成する事に異議のある方は、挙手をお願いします」
ここでも、誰一人として手を挙げなかった。
その理由の一つは、集まった仲間達とならば多少のデメリットなど気にならないくらい、良いクランを作れるという思いからだ。
同時に、彼等は情報を待ってから踏み出すタイプではないからである。なにせ、AWOにおいてそれぞれの分野で高位に位置するプレイヤー達がほとんどだ。誰かの情報を待つより、自分達で情報を見付け出して発信する側であった。
「ありがとうございます。ではクランシステム実装後、クラン結成に向けて行動を開始する方針を取ります」
そう言って、ヒイロはアヤメに目配せをした。アヤメは真剣な表情で一礼すると、一歩前に出る。頭領様の主君な将軍様なので、礼を尽くしているのだろう。ヒイロは、「うーん、よくジンはこれに慣れられたなぁ」とか内心で思う。でも、ジンも慣れた訳では無い……色々と、諦めただけなのだ。
「それでは、僭越ながら三つ目の議案についてご説明致します。三つめは、クランホームについての議案となります」
クランホーム。それはクランメンバーで共有し、メンバーならばその施設を誰でも使用出来る建物だ。
「と言いましても、立地等はまだ検討段階にもなっていない状態です。これは明日以降、探索の中で候補地を見付け次第共有するのが基本指針となるでしょう。その為に、立地条件についての意見を募る事とします」
現在のAWOは第三エリアまで開放されており、その範囲は非常に広い。その中から好条件の候補地を見付けるのは、時間が掛かるだろう。ならばまずは優先すべき条件を決めて、条件に合わない候補地は除外するのが手っ取り早い。
「その前にまず取り決めておきたい事項として、第四回イベントで各ギルドが入手した報酬……【土地購入権】と【土地拡張権】を使用し、クランホームの敷地を確保します。この案に反対の方は、挙手をお願いします」
アヤメの言葉を受けて、リリィとコヨミが少し苦笑した。
「ソロプレイヤーとしては、ギルドの皆さんに甘える形になって申し訳ないですが……」
「その分、ホームを建てる費用なんかで貢献しましょう!」
二人の会話に、ユージンやケリィ……そしてクベラとネコヒメも、頷いて同意する。
「そうだね。ホーム建築には、僕も全力を尽くすつもりだよ」
「はい、勿論です」
「ワイも費用面や建材調達で、役に立てると思うで」
「そうですね! 私もそこそこは稼げているので、頑張りますよ!」
フリーランス組は、ギルド報酬とは無関係。つまり、四つのギルドに甘える事になる訳だ。それを申し訳ないと思うらしく、その分クランホーム建築で貢献するつもりらしい。
それはさておき、第四回イベントの報酬を使ってクランホームの土地を確保する事に異論は誰からも出ない。それを確認したアヤメは、続けて進めるべき要素について言及する。
「報酬の使用は可決となりました。続いては皆様から立地条件の要望を募り、共有したいと思います」
ここから、本格的にジン達も議論に加わる事になる。それぞれが、どんな場所にクランホームを建てるのが良いかと考えを巡らせる。
「始まりの町や、各都市に建てるのはやめておいた方が良いよね?」
「そうだな、外部のプレイヤーが凸って来るかもしれない」
「しかし、あまり先のエリアに置くのもどうだろうな。新たに仲間が増えた時、合流するのに時間が掛かる」
「でもギルドホームからクランホームに、ポータルで飛べるでしょ」
「建物の外観が決まっているなら、それに合う場所が良いかも……です」
「和風建築、水上コテージ……【魔弾】と【ふぁんくらぶ】はどんなホームなんですか?」
「うち? うちは煉瓦造りの建物で、草原の隅っこにあるわ。ラミィさん、今度遊びに来る?」
「我々は、始まりの町に拠点を構えています。購入した建物なので、外観は洋風ですね。興味がおありでしたら、今度……」
「それ、拙者にとっては公開処刑なのでゴザルが……!?」
……
議論は白熱し、様々な意見が出ては精査されていった。誰もが真剣に話し合いに参加し、ついでに建造物についても協議していった。
「まぁ、確かにあの拠点を使わない手は無いわよね~」
「特に【七色】のはね」
「私達は隠れ家っぽい感じだったから、そのままは使えないですねー」
「まぁまぁ、リサイクルして資材の足しには出来ますよね?」
「あぁ、問題ないよ。腕が鳴るね」
彼等はクランホームを用意するにあたり、第四回イベントの拠点を再利用する方針を固めた。ユージンが手掛けた【七色の橋】の[風雲七色城]をベースに、他ギルドの拠点資材を用いて改良するのだ。
ちなみに外観については協議の結果、和と中を組み合わせた近代的なデザインにする方針となった。結構な難題なのだが、ユージンは楽しそうにその仕事を引き受けていた。
「えーと……大丈夫なんですか?」
ミモリが不安そうに声を掛けるも、ユージンは笑みを絶やさず肩を竦める。
「性分でね、新しいモノを作るのは大好きなんだ」
「無理しないで下さいね。何かお手伝いできる事があれば、相談して下さいよ」
「ありがとう、そうさせて貰うよ」
ある程度の要望が出揃えば、候補地探しもある程度の目安がつく。
「明日から早速、候補地探しですね」
「はい。我々も全力で捜索にあたります」
「というか、既に情報は共有しておりまして……留守番組が早速、数組に分かれて候補地探しを開始した様です」
どうやら今回の集まりに参加出来なかった面々、既にクランホーム候補地を探すべく行動を始めている様だ。ジン及びクランの為に、全力を尽くすその気概。全くブレない。
「忍者パネェな!?」
「さすが、ジャパニーズニンジャ……」
そんなこんなで、今回最後の議題だ。
「それじゃあ、残り一つの件は私から。クランの名前をどうするかについて……案はあるかしら?」
ジェミーがそう呼び掛ければ、全員が良い名前が無いかと考え始めた。
「んー、和風・中華・近代・忍者だもんなぁ……」
「今のメンバーやギルドに限定しない方が良いかもしれないですね? もしかしたら、仲間が後から増えるかもしれませんし」
ネオンがそう告げると、誰もが「確かにそうだな」と頷く。今のメンバーだけでやっていく、とは決まっていないのだ。後から……例えば極論だが、インディアン風のギルドが新たに加入したら? となるので。尚、インディアン風のギルドは現段階では居ない。
そこで、ネコヒメが「あっ」と声を上げた。
「”色”にちなむのはどうです?」
そう言われて、ジン達は自分達の特徴に思い至る。
「なーるほど、俺等は七色ッスもんね」
「で、私達が桃ね」
「ウチはギルド名に色味は無いけど、真っ黒だもんね」
「ふむ、そして我々が紫と」
【七色の橋】はその名の通り、各々が七つの色からイメージカラーを選択している。【桃園の誓い】も同様だし、名前にも色が含まれている。【魔弾の射手】は見た目が黒い装備で統一されているし、【忍者ふぁんくらぶ】はジンのイメージカラーである紫を身に着けているのだ。
「特定の色ではなく、色という概念そのものを名前に……良いかもしれませんね」
「はい! それならば後にプレイヤーやギルドが追加されても、問題なさそうですね!」
そうすると、今度は”色”にちなんだ言葉を探す事になる。
「んー、真っ先に思い浮かぶのは”色彩”?」
「ですね。でも【色彩】というギルドが既にありますから」
「他に思い付くのは、”原色”や”景色”、”音色”かな?」
「それか、”イロハ”とかどうでしょう?」
「ごめん……それは、絶対にヤダ」
「レ、レーナさん? まぁ、そう言うならこれは無しで……」
「あ、”色即是空”とか」
「……意味合いがピンと来ないかな」
次々と意見が出る中で、ヒメノがふと思いついた言葉を口にした。
「”十人十色”……というのはどうですか?」
それは、人は一律ではなく多種多様であることを示す四字熟語。多彩な要素が集まったこの面々を表すのに、ピタリと当て嵌まるだろう。
「うん、結構良いんじゃないかな?」
「ふむ、実にこのクランメンバーにしっくり来るかもしれないね」
レーナとユージンがそう言っていると、ヒメノの隣に座っているジンがポツリと呟く。
「十人十色……【魔弾】の銃、【ふぁんくらぶ】の忍、【桃園】が桃で、うちが色……」
その発言に、全員が「あっ」と声を上げた。
「銃忍桃色……あははっ、ピッタリじゃん、ひめのん!」
「ジ、ジン君も……よく、気付いた、ね……」
「これは面白いな」
「そうすると、”十人十色”が第一候補になるかな?」
そこで不思議そうな顔をしていたシャインが、ルナに問い掛ける。
「ルナ、ルナ……”十人十色”ってどういう意味です?」
外国人の彼女なので、まだ解らない日本語も少なくない。日常会話でそう出てこない”十人十色”は、彼女にとって初めて聞く言葉だったらしい。
「ふふっ。あのね、”十人十色”っていうのは”色々な”とか、”様々な”っていう意味」
ルナの説明を聞いて、シャインは納得顔になり……。
「Oh……! それなら、”十人十色”と書いて”VariousCollar”と読むのはどうです?」
そんな提案をするのだった。
「”十人十色”で、”様々な色”ですか」
「正式名称にすると、クラン【十人十色】かな?」
「略すなら、【ヴェリアス】とかでいけそうですね」
「実に良き名では無いかと、私は思いますが……」
ギルドマスター達がメンバーに視線を巡らせれば、その表情だけで考えを察する事が出来た。
「ジェミー殿、もう採決をとっても良さそうですね」
「ですねー。それじゃあ、皆さん! 私達のクランの名前を、【十人十色】にする案ですが……」
一度そこで発言を切り、ジェミーは悪戯っぽく笑って言葉を続けた。
「ここはあえて、賛成の人は挙手で!」
彼女がそう言えば、一斉に手が上がる。挙手をせずに反対の意を示す者は、一人としていない。
「はい、それじゃあ満場一致! 我々のクラン名は【十人十色】に決まりました!」
その宣言の直後、示し合わせたかのように全員が手を叩く。クラン名決定を祝う拍手の音は、しばらく鳴り止まなかった。
次回投稿予定日:2023/10/8(幕間)




