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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十七章 クランを立ち上げました

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17-01 新しい繫がりができました

 一月十二日、土曜日の午前十時。寺野家は今、四人の来客を迎えて談笑の最中だった。

 正確には、来客は五人。なのだが、その人物は将来一人息子のお嫁さんになるのが確定している。そんな訳で、家主は彼女を既に家族扱いしているのだった。


 そんな家主は笑みを浮かべて、来客の中の一人に視線を向けた。

「いやぁ、まさか心愛ここあちゃんもAWOをプレイしていたなんてなぁ」

「世間って狭いわねぇ……っていうかこの前私達が見た、あのイナズマちゃんなのよね? ビックリしたわぁ」

 仁の父・俊明と母・撫子がそう言うと、来訪者である仁の叔父【寺野てらの 義行よしゆき】も、しみじみとした表情で頷いた。

「本当にな。でも良かったよ……同じゲームをプレイしているなら、心愛ちゃんと仲良くやっていってくれそうだ」

 そんな義行の言葉に、心愛は満面の笑みで頷いてみせる。

「勿論! ボク、お二人の大ファンだから」

 曇一つない笑顔で心愛がそう言えば、親達からも笑みが零れる。そんな心愛を見て、姫乃もニッコリ。仁は必死に笑みを作っているものの、少しぎこちない。


――まさか、現実でも【ふぁんくらぶ】のメンバーに関わる事になるとは……それも、親戚。高校の先輩達でお腹一杯気味なのに。


 【忍者ふぁんくらぶ】と言えば、VR・MMO・RPG【アナザーワールド・オンライン】でも有名なファンギルドの一つである。

 有名プレイヤーやアイドルのファンを自称し、同好の士と共に立ち上げたギルド……それをファンギルドと呼ぶ。イナズマこと心愛が所属する【忍者ふぁんくらぶ】は、AWOで最も有名な忍者ムーブプレイヤー……つまり、ジンのファンギルドなのだ。

 しかしてその実態は……ジン信奉者集団、限界突破ファンギルド、忍者ムーブガチ勢、忍なので忍びます、ジン×ヒメ最推しオタク’s。お好きなものを選んでください、全部当て嵌まります。


 既に仁は、自分が通う[日野市高校]で【忍者ふぁんくらぶ】に所属する先輩二人と知り合っている。しかし、現実ではそれで打ち止めだと思っていたのだ。まさか親類縁者から、新たな【忍者ふぁんくらぶ】が現れるとは思ってもみなかった。

 仁としては彼等の事を嫌っている訳では無いし、関わりたくないという訳でも無い。ただ単に、自分に向けられる凄まじい熱量に胃もたれ気味なだけである。


 そんな仁の内心を知る由もなく、義行は話題を変える。

「それにしても、驚いたよ。仁君にまさか、婚約者が出来ていたなんてね」

「あはは……まぁ、この歳で婚約するなんて普通は思わないですよね」

 事の経緯を説明する際に、仁は姫乃を婚約者として紹介するのを忘れていなかった。詳細な事情は省いているものの、彼女の兄が良家のお嬢様と婚約した影響であるとは伝えている。

 さて、そんなゲームと変わらない仲睦まじさを見せる仁と姫乃。そんな二人を見て、心愛は満面の笑みを浮かべてニコニコしている。最も、その内心は表情とは裏腹だ。


――やったああああああ!! まさか現実で、頭領様と姫様の仲睦まじい姿を見られるだなんて!! ボク、前世で何か徳でも積んでたのかな!? こんなの、リアルガチャ限定☆5じゃん!! っていうか、リアル頭領様もリアル姫様もゲームとほとんど変わらないし!! 爽やかスポーツマン系美男子と、清純可憐な超絶美少女!! 最高オブ最高オブ最高!! あー、もう幸せ過ぎる!!


 流石は【忍者ふぁんくらぶ】の一員。ニコニコ笑顔のその下で、心の中ではテンションMAXの歓声を上げていた。これは向こう三日三晩、彼女の心はジン×ヒメ祭り開催だろう。

 ちなみにAWOにおける彼女の身体アバターは姫乃と同じくらいの身長だが、現実はもっと小柄である。これは前衛アタッカーとして戦う際に、手足の長さが勝敗を分けるという判断から……というのは、後付けの理由。心愛の「成長したらこんな風になりたい」という理想、それを仮想現実で形にしたのが真相である。


 そんな雰囲気の中、一人黙って仏頂面をしている少年が居る。仁と同じ年のイトコである、数満かずまだ。

 明るめの茶色い髪は染めたもので、顔立ちは仁と似ているものの雰囲気がだいぶ違って感じられる。

 最も違うのは、身に纏う雰囲気だろうか。爽やかな印象を抱かせる仁に対し、数満は表情や仕草から不良っぽい雰囲気を醸し出している。


「……数満、ご機嫌斜め?」

 はい、人の心の機微に敏い仁さんです。数満が仏頂面をしているのは、拗ねているのだろうと察したらしい。

「別に」

 素っ気なく返す数満に、義行は呆れたような表情を見せる。


「? とうりょ……「仁で良いから。お願いだから」……あ、はい。仁さんと兄さん、もしかしてあまり仲良くは無い……ですか?」

「そんな事は無いと思う。昔はよく、一緒に遊んだりしたしね」

 実際に、仁と数満は仲の良いイトコだった。幼少期は共に遊ぶ機会も多く、周りの人からは双子の様だと思われていたくらいだ。

「ふん、俺がお前の遊び相手になってやってたんだよ……お前が中学に上がって、陸上を始めるまでな」

 数満のその言葉に、義行が厳しい視線を向ける。陸上の話題を振るのは、仁の心の傷を抉るに等しい事だ。安易に陸上の話題を振った数満を、非難するような視線である。


 しかし、数満も考えもなく陸上の話題を出した訳ではない。ある事を確認する為に、あえて話題を振ったのだ。

「あー、確かにそうかも。小学校時代までは、結構一緒に遊んでたんだけど……中学からは僕が、陸上一筋になってたもんね」

「夏休みまで陸上、陸上。遠征合宿行くだので、ここに顔出してもいやしねぇ」

「ごめんごめん、寂しかった?」

「バカ言うな」

 仁があっけらかんと返せば、数満も何でも無い事のように言葉を打ち返す。それは幼少期を共にした者同士、通じ合う部分があるからこそだろう。


 そうして数満は、あえて再度仁に踏み込む。

「……ちっとは、吹っ切れたか?」

 それは仁を心配していたからこそ、溢れ出した言葉だろう。

「うん。周りの人達のお陰でね」

 強がっている素振りも、無理をしている様子も無い。数満はそう判断して、肩の力を抜いた。

「ふん……そりゃ何よりだな」

「心配してくれてたんだよね。ありがとう、数満」

「勘違いすんな、辛気臭いツラされるのは迷惑だってだけだ」

 ぶっきらぼうな物言いだが、それは照れ隠しなのだろう。視線を仁から逸らして誤魔化そうとしているが、それは誰の目から見ても明らかだった。


「つーか、VRだっけか。心愛もやってるけど、そんな楽しいのか?」

「うん、楽しいよ。本当に、もう一つの世界を生きてるって感じがするんだ」

「兄さん、興味出た? ボク達と冒険しちゃう?」

「気がはえーよ……あれだろ、心愛が使ってるVRなんちゃらって機械が必要なんだろ? クソ高いらしいし」

 仁と、数満と心愛。三人は自然な様子で、楽しげに会話に興じる。その様子に、姫乃はふにゃりとした笑みを浮かべて加わった。

「でも数満さんも加わったら、和美さんや隼さんも喜びそうですね♪」

 その言葉を受けて、仁の口から「あっ……」という言葉が漏れた。そして数満は視線を鋭くして、ポツリと呟く。

「隼……だと?」

 それは、とても不機嫌そうな声だった。数満はその鋭い視線を緩めずに、姫乃に向けた。

「アイツも、同じゲームに居んのか?」

 それはまるで、姫乃を睨んでいるかの様な目付きだ。仁は事情を知っているものの、流石に最愛の存在を睨まれるのは心穏やかではいられない。なので数満を窘めようと口を開きかけ……。


「こら、カズ君。女の子をそんな目で睨んじゃ駄目よ」

 その前に、同席する女性がハッキリと数満を叱った。


 彼女は義行と再婚した、心愛の実母である【寺野てらの 心海ここみ】。柔らかな眼差しと穏やかな雰囲気で、会話に興じる面々を見守っていた彼女だが……数満の素行を前にして、ピシャリと叱りつけたのだった。その表情はどこか哀し気であり、見る者に心を締め付ける様な錯覚を覚えさせる。

「うっ……そ、そだな! 星波さん。悪かった! アンタがどうこうじゃないんだ、本当にすまん!」

 慌てて視線を緩め、姫乃に向かって謝罪する数満。しっかりと頭を下げるその姿からは、その場しのぎではなく本当に申し訳ないと思っているのだと察する事が出来る。

「いえ、大丈夫ですから……お気になさらず」

 姫乃としては、どことなく仁に似た面立ちの彼に睨まれた事でちょっと胸に来るものはあった。しかし誠心誠意の謝罪から、数満に悪気があったのではないのだろうと納得して謝罪を受け入れる。

「兄さん、サイテー」

「ぐっ……!!」

 心愛の一言が、数満の心を抉る。折角ここまで良いお兄ちゃんになれるように頑張って来たのに、今の一瞬の出来事で株が下がった模様。でもまぁ、自業自得ではある。


 そんな姫乃と心愛に、仁は苦笑しつつ数満の態度の真相を明かす。

「……隼とはソリが合わないんだよ、数満は。姉さんは何も問題無いんだけどね」

「えっ? そうなんですか?」

 仁の言葉を聞いて、意外そうに目を丸くする姫乃。その会話を聞いていた心愛は、和美と隼……という名前から、二人のプレイヤーの顔を思い浮かべる。


――ミモリ殿と、ハヤテ殿……だよね?


 この流れで、姫乃が親しみを込めて言及する二人。当然それは、AWOでもイトコ同士だと知られている二人だろうと察するのは簡単だった。

「それは、仁さんのイトコのお二人ですよね?」

「はい。心愛さんには、ミモリさんとハヤテさんと言った方が、解りやすいですよね」

 やはりあの二人だったか……と思いつつ、心愛は頷いて応える。そして姫乃と心愛の視線は、数満へと向けられる。心愛はちょっとジト目である。

「……別に。アイツが俺に突っ掛かって来るだけだ」

 そう言って、顔をプイッと背ける。口とは裏腹に、隼の事が気に入らないという内心が見て取れるようだ。


――……ちっ、あの野郎抜け駆けしやがって……貯金で買えんのか、VRなんちゃらは……バイクの免許資金だったが、あんにゃろうを放置しておく訳には……。


 内心では、隼の顔を思い浮かべて悪態をついていた。どうやら彼は、隼をライバル視している様だ。


……


 互いの近況報告なども済み、一緒に食事でも行こうかという話になる両家。

 姫乃は、自分はここでお暇する方が良いかな? と切り出したのだが、仁・俊明・撫子からは、やんわりと拒絶される。

「姫が良いんだったら、僕は一緒に来て欲しいな」

 その言葉だけでも、姫乃的にはクリーンヒットだった。そう言われては、もう返事は「はい」か「YES」か「喜んで」の三択だ。あれ、三択?


 更に心愛からは。

「姫様!! ボクは姫様も、一緒が良いですっ!!」

 と元気いっぱいに意思表示された。姫様呼びは、中々修正が出来ないらしい。

 そして数満も、姫乃に向けて。

「仁の婚約者なら、家族同然なんだろ。都合が悪くねーなら、一緒に来れば良いんじゃねぇの……その方が、仁も喜ぶし」

 とぶっきらぼうに言うのだった。口調は荒いものの、最後の小さな呟きから姫乃は彼の本心を感じ取る事が出来た。


――言い方はちょっと乱暴な感じですけど……数満さんは、仁くんの事を大切に思っているんですね……。


 数満の態度は不良っぽくて、少し苦手な感じではある。しかし仁に向ける思い遣りを感じ取る事が出来たからか、最初よりも苦手意識は緩和されていた。

 結果として、親達からも熱心に誘われた姫乃は、一緒に遅めのお昼ご飯へと向かうのだった。


************************************************************


「という事があったんです」

 夜、AWOにログインしたジンとヒメノは、【七色の橋】と【桃園の誓い】の仲間達に今日の出来事について語って聞かせていた。

「え、えーと? つまりどういう事だってばよ?」

「ジン君の父方の叔父さんが再婚して、そのお相手の娘さんが……【忍者ふぁんくらぶ】のイナズマさんだった……?」

「そんなピタゴラ、現実で有り得るんだ……」

「世間は狭いと言うけれど、狭いなんてもんじゃないな」

「イナズマさんとジンさんは、親戚だったんですね……驚きです」

「相関図書いてみよ! 色々ヤバイのが出来るよ!」

「センヤちゃん、どうどう」


 ジンとイナズマの、思わぬ接点に盛り上がる仲間達。そんな中で、一人視線を険しくさせる少年が居た。

「まさかあの野郎が、よりにもよってイナズマさんと義兄妹だと……? チッ……今度こそ、白黒ハッキリ付けてやろうか……」

「ハ、ハヤテ君? おーい、もしもーし?」

 いつになく不穏な気配を漂わせるハヤテは、アイネの呼び掛けも虚しく自分の世界に入り込んで悪態を吐いていた。どうやら数満だけでなく、ハヤテも彼をライバル視している様だ。


 そんなハヤテの様子を見て、苦笑しつつ声を掛けるのはミモリだ。

「ごめんね、アイネちゃん。ハヤテ君、昔から彼とはバチバチに仲悪いというか……ほら、ハヤテ君。可愛い恋人を放置しちゃダメよ、めっ」

「んぐっ!? ……ご、ごめんアイ。聞きたくないヤツの名前が耳に入って、つい……」

 ミモリに窘められると、ハヤテはすぐに普段の様子に切り替わった。これはミモリから言われた事に加えて、アイネに対する申し訳なさからだろうか。

 様子を窺っていたジンは、ハヤテとミモリのやり取りを見て懐かしさを覚える。


――姉さんに言われると、すぐに矛を収めるのも変わらないなぁ。


 自分と、ハヤテと数満。三人は親戚同士の集まりがあると、最年長である和美ミモリに面倒を見て貰っていたものだ。和美は優しく、それでいて駄目な事は駄目だと教えてくれる優しい姉だった。三人はそんな彼女を心から慕っており、頭が上がらないのである。

 特に隼と数満は言い合いになる事がしょっちゅうで、その度に和美に窘められてシュンとしていた。


――そういえば姉さん、温泉旅行の時は何か悩んでいたみたいだけど……解決したのかな。いつもの姉さんに戻ってる。


 温泉旅行の時は、どことなく影を背負っている様に見えたミモリ。付き合いの長いジンには、彼女が何かに悩んでいるのがすぐに解った。

 しかし温泉旅行の後から、彼女は元通り……むしろ、どこか機嫌が良さげである。悩み事が解決したからこそ、そうなのだろう……しかしその悩み事も、どう解決したのかもジンには知る由もなかった。


 そんな事を考えていたジンだが、今日の本題は別にある。イトコ話題は後々、本人を交えてするでも良い。ミモリについては、そもそも悩み事か何かの話題だ。それならば、迂闊にこの場で聞くわけにもいかない。

 となれば、そろそろ話題の軌道修正をするべきだ。

「さて、本題に移らない? 例の件について、今日は話を進めるんだよね」

「あぁ」

「うん、そうだね」

 ジンが話題を振れば、ヒイロとケインが頷いて応える。今日の本題は、二つのギルドの今後について……新たに実装される、【クランシステム】について話し合うつもりだったのだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――

【クランシステム】


 ・クランを結成するには、二人以上のギルドマスターがクラン契約を交わす必要がある。

 ・クランシステムの統括権限は、ギルドマスター及びサブマスターのみが得られる。

 ・クランシステムの統括権限には、優先順位を設定できる。

 ・優先順位の決定及び変更には、統括権限を所有する者の過半数の承認を得る事で適用される。


 ・クランに所属するギルドは、同一クランのプレイヤーにホームの利用権限を与えられる。

  ただし専有スペースを与える事は出来ない。

 ・一つのクランにつき、クランホームを一軒建設する事が可能となる。

 ・クランホームは、クランメンバー全員に利用権限がある。

 ・クランホームは、ギルドホームと同等の施設・設備を設置できる。


 ・同一クランのプレイヤー同士でパーティを組む場合、最大人数は十人となる。

 ・一つのクランに加入できるギルドの上限数は七組、プレイヤーの上限数は七百人。


 ・統括権限所有者は、特定のプレイヤーをクランから除名申請をする事が出来る。

  除名処分は、統括権限所有者の八割が同意する事で実行される。

―――――――――――――――――――――――――――――――


 プレイヤー同士の集合体がギルドであるならば、クランは主にギルドの集合体。このシステムが実装される事によって、ギルド同士の結び付きが強固なものになるだろう。

 これまで友好関係にあったギルドや、同盟ギルドはいくつか存在していた。しかしギルド対抗イベントなどでは、敵対関係にならざるを得ないのがこれまでの仕様だったのだ。

 そんな現状が、クランシステムの実装によって大きく変わるのである。


「もしかすると、百人とか二百人を超えるクランが現れるかもしれませんね」

「ギルド同士の集合体ともなれば、それは大いにあり得そうよねぇ」

 レンとイリスがそう言えば、他の面々も同感だと頷いてみせる。

 二人が言う様に、このシステムによって大規模ギルドに匹敵する勢力が誕生する可能性もある。

 三百人程のプレイヤーが属する、AWO屈指の大規模ギルド【聖光の騎士団】と【森羅万象】。彼等を除けば、百人以上の規模のギルドは無い。次いでメンバーを擁するのは、中規模ギルド【遥かなる旅路】といくつかのギルドである。

 そして【遥かなる旅路】以外は、ほぼほぼライトプレイヤーが集まるファンギルドである。最も……ライトじゃないプレイヤーが集まる某ファンギルドも、五十人を超えたのだが。

「第四回で揮わなかったギルドの中には、次こそはと思う人達も居るかもしれませんね」

「で、ギルドは抜けたくないけど戦力は欲しい……ってなりゃあ、クランシステムは渡りに船だろうな」

「実装のタイミングが第四回の後なのは、その辺りを見越してるのかも」


 クランシステムの実装による、各ギルドの動きも気になる所ではある。しかし今日の本題は、自分達の事についてだった。

「さて、それじゃあ話を戻そう。今回の新要素は、我々にとっても重要なものになると俺は思う」

「えぇ、俺達も同感です。この場に全員が揃っていますし、早速始めましょう」

 ヒイロとケインは並んで立ち、仲間達に向き直る。そこには【七色の橋】と【桃園の誓い】、プレイヤーもPACパックも勢揃いの状態である。


「今日の議題は、『この二つのギルドで新たなクランを立ち上げる』事について」

「この事に、異論がある人は挙手を」

 勿論、手を挙げる者は一人としていない。

「うん、予想通りだね。それじゃあ次だ」

「他にも、誘いたいギルドやプレイヤーが居る……ですね」

 そこまで言えば、話は簡単だ。


「それなら善は急げ、だね」

「えぇ。早速連絡して、アポを取る事にしましょう」

 二人がそう言えば、仲間達も待ってましたとばかりに動き出す。

「じゃあ、ユージンさんとケリィさんに連絡してみるわね。カノン、クベラさんは任せるわよ」

「う、うん……ま、任せて……」

「じゃあ、【魔弾】への連絡は俺がやるッス!」

「じゃあ、私はリリィちゃんに連絡してみるわ」

「それならコヨミさんは、私がー!」

「ジンくん、【ふぁんくらぶ】も声を掛けますよね?」

「………………うん、そうだね。イナズマさん(イトコ)もいる事だし」

 クランに勧誘したいギルドやプレイヤーに、早速連絡だ!! といった具合に、システム・ウィンドウを開く面々。それを見て、ヒイロとケインは笑みを零した。

「賑やかになりそうですね」

「あぁ、そうだね。でもまぁ、悪いようにはならないだろうさ」

 なにせ名前が挙がるのは、気心知れた面々だ……半分は。


――【忍者ふぁんくらぶ】は、あまり面識がない人が多いけど……うん、心配いらないよね。

――えぇ、大丈夫です。ジンが居れば、彼等は問題ないと思いますよ。


 恒例の視線で会話をする、ギルマスコンビ。【忍者ふぁんくらぶ】はそこまで親しい間柄では無いのだが、ジンを崇拝する彼等ならばきっと、多分、メイビー、大丈夫、恐らく。

「あ、ネコヒメさんはどうする?」

「そうだね、一度会ったっきりだけど……うん、彼女なら大丈夫だと思う」

 イリスとケインがそんな会話をすれば、レンもすかさず【七色の橋】を代表して賛成の意向を示す。

「これは今後の協力体制の話を切り出す、いい機会かもしれないですね」

 それは、今後の展望を含めた意見でもあった。となれば、今は絶好の機会とも言える。

「うん、レンさんの言う通りだ。イリス、頼めるかな」

「おっけー、連絡入れるわね~!」

 こうしてこの日は、関係各所との連絡にほとんどの時間を費やすのだった。

次回投稿予定日:2023/9/28(幕間)


※2023/10/13、【クランシステム】フレーバーテキストに、クランホームについての記載を追記。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 心愛ちゃんが、頭領様と親戚になったことをメンバーに「いいですか、落ち着いて聞いてください」した時の反応が気になりますねw
[良い点] ふぁんくらぶ前にして姫様にガンつけると、好感度急降下間違いなしだなw クランシステムに個人を組み込むの、中々に豪華ですわな。 サブギルドとか作ってる大手は助かりそう。
[良い点] ツンデレ兄と暴走妹 頭領様 SAN値低下 姫様糖度投入 [気になる点] クランシステム ドリームチーム伏線完了?! [一言] 緊急指令! 全忍者ふぁんくらぶ イナズマを拘束せよ!!…
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